【A&A 其の二】   投稿者:小師様  推敲手伝い:事務員


 「ああ・・・!」

 愛娘がリングに上がる姿。それを見て、頭を抱えて震える壮年の男が居た。観客席ではなく、普通ならばVIPルームと呼ばれる場所に。しかし、男の心境はVIPなどというものではない。虜囚に等しい扱いだった。
 ある会社の社長であったこの男は、不景気の煽りで赤字経営が続き、やむなくある企業から大金を借りた。しかしわかっていたとはいえ、法外ともいえる利息率で首が回らなくなってしまった結果、会社は吸収され、代償という名の生贄として愛娘をリングに上げさせられていた。


*****


 犠牲者の名は「霧生(きりゅう)綾乃(あやの)」。17歳。身長158cm、B87cm(Eカップ)、W59cm、H83cm。顔のラインは卵形で、細く整えられた眉、煌くような丸い目、ふっくらとした唇には艶がある。肩まで伸ばした髪をポニーテールに纏め、綺麗というよりも可愛らしさを感じさせる美少女。
 高校生の綾乃は学業成績も上位だが、それ以上に運動神経が素晴らしかった。護身術として学んだ柔道は黒帯をとれるほど。大好きな野球は投手としてプロレベルで、たまに野球部に乱入しては打撃投手をさせてもらっている。監督が彼女を退場させないのは、偏にその投手としてのレベルの高さからだった。また別の趣味として、格闘技観戦をしてメイドに技をかけようとしては返り討ちにされるなど、充実した日々を送っていた。
 昨日までは。



 ガウンを纏って花道を進む綾乃は、俯きながら右胸のあたりをギュっと掴んでいる。まるで祈りながら進んでいるシスターの様でもある。しかし俯き震える様は、神への祈りとは違う。気合を入れて臨んだ筈だったのに、会場の熱気に呑まれている。その弱々しく小動物のような雰囲気に、観客が更に興奮の度合いを高める。
 綾乃はリングに上がってもまだ震えていた。顔面蒼白で、視線は定まらず、おどおどとし、挙動不審もいいところだった。



 「赤コーナー、『壊し屋柔道家』、恵比川福男!」

 コールされた名前に思わず相手を見遣ると、そこには自分よりも二回りは大きい男が立っていた。こちらを見て、薄く笑っている。

 「青コーナー、『魅惑のエース』、霧生綾乃!」

 自分の名前がコールされた。他人事のような感想を持ったまま固まっていると、レフェリーが声をかけてきた。

 「霧生選手、コールされたんだからガウンを脱いでくれないか?」
 「え・・・? あ、え?」
 「ガウンを脱いでくれ、と言ったんだが」
 「あ、す、すいません・・・」

 緊張しすぎて、最初はレフェリーが何を言っているのか聞こえなかった。気合を入れるために両手で頬を二回叩き、覚悟を決めてガウンを脱ぐ。その途端、場内が沸いた。
 綾乃の衣装は柔道着の上とTシャツ、そして黒帯のみだった。勿論ただの柔道着ではなく、側面が切られ、紐で五か所が×字に結ばれている。柔道着の下は無く、白いパンティが柔道着の裾からチラチラと覗く。
 粘つく視線を観客席から飛ばされ、綾乃は右襟と後ろの裾を掴み、赤くなって俯く。

 ガウンを脱いだ綾乃にレフェリーが近寄ってくる。

 「さて霧生選手、ボディチェックの時間だ」
 「え? 男性のあなたがボディチェックをするんですか?」

 綾乃のみならず、ここに上がったほとんどの女性選手は同じ疑問を抱いた筈だった。しかし、レフェリーが答えを返す前に綾乃の右手を思いきり引っ張った者があった。

 「ボディチェックは受けて貰わんと困る。凶器があったら怪我するではないか」

 そう言いながら羽交い絞めにするのは、対戦相手の恵比川だった。

 「な・・・!? は、離してください!」

 思いきり暴れるが、男性の、それも20cm以上身長差がある相手にがっちりと捕えられてはうまく動けなかった。それでも脱出する為、足の甲を踏みつけようと左脚を振り上げたが、レフェリーに太ももを抱えられてしまった。

 「ボディチェック前から相手選手に攻撃しようとするとは、たちが悪いなぁ霧生選手」

 などと言いながらレフェリーは柔道着の中に手を入れ、綾乃の胸を揉み始める。

 「触らないでっ! んうっ」
 「とは言っても、この柔らかい膨らみはなんだ? 何か隠しているから触るな、なんて言うんだよな?」
 「そこは胸です!」
 「本当か? これだけではわからないから、しっかり調べさせてもらうぞ」

 嫌悪感から頭を振って暴れる綾乃。だが男二人の拘束はびくともしない。
 一頻り揉み回した後、レフェリーが呟く。

 「うん、これは確かにおっぱいだった。失礼したな」

 胸から手を離すレフェリーにホッとする綾乃。これで試合が始まる。そう思っていたのはこの会場内では綾乃一人だけだった。

 「次はこっちだな」

 レフェリーの人差し指が綾乃の股間に当てられる。

 「!?」

 驚きのあまり、言葉にできない。まさかそこまで触られるとは思っていなかった。しかも恵比川が羽交い絞めにしていた両腕を背中側で極め、左手で掴んで拘束し、側面の切れ目から柔道着の内側に手を突っ込んで胸を揉んでくる。
 不快極まりないこの感覚から早く逃れたいのだが、秘部からの刺激が強く暴れられない。結果として、綾乃は目を閉じ歯を食い縛って耐える事しかできなかった。

 「ここは女性特有の隠し場所だからなぁ。しっかり調べないとな」
 「く・・・」

 鼻の下を伸ばしたレフェリーに対し、綾乃は俯いて震えるだけだった。



 「さて、こんなものか」

 秘部も一頻り触ったレフェリーは満足げに頷き、恵比川をコーナーまで戻す。拘束が外された綾乃は荒い息をしてその場にへたり込んでしまう。
 それでも恵比川のボディチェックが終わったのを視認すると、気合で立ち上がった。


 <カーン!>


 ゴングが鳴る。ここがどういう場所なのか理解した体が固くなる。小さな構えを取るが、体の震えが止まらない。と、恵比川が右手を伸ばして襟を掴みに来る。

 「!!」

 明らかに委縮している綾乃は大きく距離を取り、無意識に逃げていた。

 (違う、こんなんじゃだめ。もっと前に出なければ)

 もう一度頬を叩く。パチン、と乾いたいい音がして、綾乃の目に光が戻る。体の震えは止まっており、固さも見られない。
 そこにもう一度、今度は奥襟を掴もうとする手が伸ばされる。しかし綾乃はその手を弾き、素早く引手で左襟を取って見せる。その早さに驚く恵比川だが、釣り手は取らせず、逆に引手で右襟を取る。ここから素早い組み手争いが始まった。

 「面倒臭い相手だな」

 舌打ちをしながら呟くと同時に、恵比川が腕力で思い切り左右に揺さぶりをかけてくる。何度か凌いでいた綾乃だったが、ここで突然真下に引っ張られ、体勢を崩される。

 「あっ!」

 重心が前へと移った瞬間、恵比川が綾乃の下に入り込んでいた。即座に左腕を取って一本背負いで投げるだけでは終わらず、投げた勢いのまま自ら飛び、綾乃の上に体重を浴びせるように落ちる。

 「えぐっ!」

 この一撃に、綾乃は悶絶し腹を押さえて呻く。
 恵比川は更にここから袈裟固めに押さえ込むと、Eカップの胸を掴み、揉み回す。

 「久しぶりの試合だ。この感触、じっくり堪能させてもらおうかのう」
 「触らないで! いやあっ!」

 またも不快感を与えてくる恵比川に対して腕を振り回し、叩く。勿論ダメージなどほとんどなく、胸をいいように揉み回される。しばらく胸を揉まれる状態が続いていたが、たまたま掌が恵比川の鼻を直撃し、袈裟固めが緩む。そこを見逃さずに体を下から抜き、転がって距離を取る。その時見えた下着に観客が湧き、飛んできた野次に赤面する。

 「逃がしたか」

 鼻を擦った恵比川が立ち上がり、再び相対する。

 「っ!」

 奥襟を取ろうとする恵比川の腕を下がりつつ捌く。何度か繰り返すうちにコーナーポスト近くまで追い込まれる。

 「まだ逃げるのか?」

 恵比川が奥襟を掴むと思いきや、逆の前襟を狙って手を伸ばす。しかし綾乃はその袖を掴んで思い切り引っぱり、前に重心が傾いたところを双手刈りに入る。否、双手刈りというよりは下腹部付近に肩をぶち当てたスピアタックルに近かった。
 恵比川が痛みに堪らず倒れると、綾乃は迷わず横四方固めに入る。

 (よし、完璧!)

 内心の喜びも束の間だった。

 「ひうんっ!?」

 股下に通された恵比川の右手に股間をつつかれる。その刺激に驚き、体重を浮かしてしまった。

 「うおおおっ!」

 その瞬間、恵比川は左手で奥襟を掴みながら右手は太ももの裏に添え、そのまま左に転がるようにして床に叩き付ける。

 「うぐぅ・・・」

 叩き付けられたダメージで綾乃の動きが止まる。綾乃の脚の間に身体を入れ、恵比川が覆いかぶさってくる。

 「さて、捕えたぞ」

 先の柔らかい感触を思い出した恵比川がにやけ、胸を掴もうとする。しかし伸ばされた手は綾乃には届かなかった。

 (今!)

 悶絶していたはずの綾乃の目が鋭く光り、引いた足裏で恵比川の腹を蹴り上げる。

 「ぬっ!?」

 意表を衝いた攻撃に、恵比川の思考が止まる。その視界に、さらに衝撃的な映像が飛び込んでくる。中腰で固まってしまった恵比川に、ハンドスプリングから跳ね上がった綾乃が滑らかな太ももを首に巻きつけてきたのだ。当然恵比川の視界一杯に白の下着が映る。

 (これくらいはサービス・・・!)

 綾乃は勢いのままに恵比川の肩に乗ると、自分の体重を後ろに振り、後転しつつ相手の股下に潜り込んで足首を掴み、そのまま海老固めに極めて見せた。綺麗に決まった荒業に、観客がどよめく。

 「おいおい、マジか・・・!」
 「レフェリーさん、カウントを取って下さい!」

 急かされて、レフェリーも仕方なくカウントを数える。

 「ちっ・・・ワーン・・・ツーゥ・・・」

 しかしそこで恵比川が肩を上げる。上げるだけでなく、綾乃を体ごと跳ねのける。

 「あ・・・っ・・・」

 如何に奇策といえど、まだスタミナを奪っていない状態では完全には抑え込むことはできない。ましてや相手が男なら尚更だ。

 「油断しすぎたわ小娘。本気で行くからな」

 奇策は二度も通用しない。焦燥が彼女の動きを固くした。次の瞬間には恵比川に奥襟を取られていた。

 「く・・・!」

 引手を剥がし、朽木倒しを狙う。だが焦り固くなった綾乃の攻撃は単純で、完全に読み切られていた。綾乃よりも先に恵比川が身を沈め、打ち上げるように腹に肩を入れられる。

 「ぐぶっ!」

 カウンターをもらうような格好になり、足が宙に浮く。なんとか転ぶのだけは避けたが、たたらを踏んでいるうちにタックルでコーナーポストまで押し込まれ、恵比川の肩とコーナーポストで前後から強烈に挟まれる。

 「あぐあっ!」

 連続で体を強打され崩れ落ちる。しかもそれだけでは終わらなかった。咳き込む綾乃は袖を掴まれて恵比川の両肩に担ぎ上げられると、そのまま横回転での肩車で投げられる。受け身もとれずに投げ落とされ、意識が朦朧とする。

 「まったく、ようやっと止まったか、このじゃじゃ馬めが。しっかりその体にお仕置きしてくれようぞ」

 言い終わるよりも早く、恵比川が綾乃の帯を外し柔道着を剥ぎ取る。一気に観客のボルテージがあがり、その地響きのような声でだんだんと綾乃の意識が戻ってくる。

 「あ・・・んんっ」

 綾乃の意識が戻ってきたときには、馬乗りになった恵比川が綾乃の両手を頭上で押さえ、Tシャツの上から胸を揉み回していた。

 「こっ・・・この! 触らないで!」
 「ふん、意識を飛ばしておいて何を言うか。嫌ならば突き放して見せよ」

 綾乃の抗議など意にも介さず、思うままに胸を揉み回してくる。何とかして恵比川をどかそうとするが、手を押さえられ馬乗りになられてはどうにもならなかった。

 「霧生選手、ギブアップかい?」

 ここまで餌にたどり着けなかったレフェリーが、両脚を押さえ、ここぞとばかりに秘部を触る。これで力が抜けてしまう。

 「ギブアップしません! ふあっ! 触らないで!」
 「そうだよなぁ、できないよなぁ。ああ、気付けだから気にしないでくれ」

 わけのわからないことを、と叫ぼうとしたとき、何かが破れるような音がした。目がそちらに向くと、恵比川が綾乃のTシャツを破り取っていた。

 「きゃああああっ!」

 思わず悲鳴をあげる綾乃。白のフロントホックのブラが露わになり、観客が湧く。

 「この下着、男を誘う為の物か? ん?」
 「そんなわけありません!」

 気恥ずかしさから、必死になって否定する。何とか脱出しようともがくが、動かせるのが頭だけではどうしようもない。その間も秘部は弄られ続ける。
 突然ぷちん、と音がして、胸の圧力が弱くなる。恵比川がブラのホックを外したのだ。露わになった乳房に、観客席から歓声が起こる。

 「ほほう、素晴らしい物よのう」

 揺れる胸に誘われるように、恵比川の手が綾乃の右の乳房を揉む。

 「いやだ、離して! 触らないで! ああうっ!」

 直に触られると刺激が強すぎる。それでも綾乃は歯を食い縛って声を洩らすまいとする。

 「んあ・・・! く・・・」
 「最初よりも声が甘ったるいなぁ」

 レフェリーが言葉でも綾乃をいたぶる。二人は綾乃を喘がせようと、どんどん責めを激しくしていく。
 必死に声を堪える綾乃に我慢できなくなったのか、恵比川は綾乃の頬を舐めはじめた。

 「やめ・・・! くぅ・・・!」

 口を開けば声が漏れそうになる。目をつむって、ざらついた舌から与えられる不快感に耐える。恵比川は左頬から首、鎖骨、左胸と丹念に舐め上げていく。

 「あふ・・・うう・・・」
 「気持ちいいだろ?」

 レフェリーの指摘に首を横に振って否定する。しかし、少しづつとはいえ引き出されてきた快楽に、徐々に乳首が立ち上がってきてしまう。

 「あ・・・」
 「くくっ、感じてくれて嬉しいのお。体の方は正直なようだ」

 綺麗な鴇色をした乳首が男の目を引く。

 「ふむ、ではいただくとするか」

 小さく、可愛く佇む標的に、恵比川がむしゃぶりつく。

 「あ・・・あああああっ!」

 初めて与えられる強烈な快感に、背中を弓なりに反らし絶叫する。

 「そんなに気持ちいいのかい、お嬢様?」

 レフェリーの揶揄はもう綾乃の耳に入っていなかった。秘部をいじられ、乳房を揉まれ、乳首を吸われる。あまりの快感の強さに腰が跳ね、声を押さえられない。ただただ喘ぐしかできなかった。

 「ああんっ! あふうっ!」

 下着の上から秘部を弄っていたレフェリーの手が、中に侵入した。直に責められて、快感の量が一気に跳ね上がる。

 「だいぶ濡れてきたな」
 「あんっ! ああっ! くぅんっ!」

 綾乃の声が更に甘さを含み、男たちは更に責めの激しさを増す。そして。

 「あんっ! ああんっ! ・・・あはああああっ!」

 激しく体を反らし、綾乃は初めての絶頂を味わった。体の中を電流が走り回り、頭の中は真っ白になり、宙に浮いているようだ。やがて感覚が戻ってくると、自分の息の荒さに気づく。汗の滲んだ身体は全身がだるく、ここまでの倦怠感は生まれて初めてだった。

 「あ・・・・・・あ・・・・・・」

 激しすぎる絶頂の余韻で、綾乃は体を動かすことすらできない。しかし。

 「霧生選手、ギブアップか?」

 レフェリーの問いかけに、否、と首を小さく横に振って答えて見せた。最早女の意地、それだけだった。勝てるとか勝てないとかではない、ただ相手の思い通りにさせたくない。そんな思いだけが首を横に振らせた。

 「そうか。ならば・・・と」

 レフェリーがいとも簡単にパンティを脚から抜き取る。レフェリーが掲げたパンティは綾乃の愛液に濡れており、観客席がまた一段と盛り上がる。そのまま観客席に放り投げるとたちまち争奪戦が起こった。

 「みんな君のことが好きみたいだぞ。よかったなぁ、霧生選手。ところでギブアップは?」

 絶頂させられても、全裸にされてもまだ首を縦に振らない。これにはレフェリーも恵比川も呆れてしまう。

 「そうかい、それなら」

 しかし、拒否の報いは強烈だった。レフェリーが手を押さえ、右の乳房を揉み、乳首をノックする。恵比川は指で淫核をいじり秘裂をなぞりつつ、先程の続きとばかりにまた左胸から腹を舐めはじめる。

 「絶対ギブアップって言わせてやるからな」
 「あ・・・っ! んああっ!」

 先程絶頂まで持っていかれたばかりの体はとてつもなく敏感だった。与えられる強すぎる快楽に体が跳ねる。声を抑えるなんてできよう筈がなかった。また乳房を、乳首を、淫核を、秘裂を責められ、危険水域など一気に飛び越えて、また絶頂させられる。

 「・・・! ・・・・・・!! ・・・・・・」

 全身が痙攣するくらいの激しい快感に声が出ない。

 「ギブアップしてもいいんだぞ?」

 それでも否、と首を振る。

 「まったく、この淫乱なお嬢様には呆れるわい」
 「もしかして、もっとして欲しいってことか?」

 綾乃の乳首を弄りながら、レフェリーが嘲る。

 「くく、それなら納得だな。どれ、ここはどうだ?」

 腹を舐めていた恵比川の舌は、淫核に到達した。鋭敏なそこを舌で転がされ、甘噛みされると、身体の芯から痺れるような快感が全身を襲う。

 「あひいっ!」

 また腰が跳ね、喘ぎ声が出る。

 「気に入ってくれたようだな。どれ、頑張ってサービスするとしようか」

 恵比川の舌が淫核を蹂躙する。舐めしゃぶり、甘噛みだけでなく、舌で器用に包皮を剥き、振動を送り込む。

 「ひぃあぁっ! や、やめ・・・てぇっ! あああっ!」

 あまりにも強すぎる刺激に、綾乃の腰が何度も跳ねる。しかし恵比川は自分の体重で押さえ込み、ひたすら綾乃の淫核を嬲り続ける。

 「それだけ喜んでもらえるとこちらも嬉しいよ。ギブアップしたくないのは、こうして欲しいからだろ?」

 綾乃の乳房を執拗に揉み続けるレフェリーが、硬く立ち上がった乳首を弾きながら綾乃を言葉でもいたぶる。

 (違う! 私は父さんのために負けられないから・・・んんんっ!)

 最早言葉も出せず、綾乃は心の中でしか叫ぶことができない。

 「こっちは随分喜んでもらえたようだ。では・・・ここはどうだ?」

 そしてついに、淫核を転がしていた恵比川の舌が乙女の秘裂に到達する。

 「ああっ! そこは・・・いやあああっ!」

 恵比川の舌が秘裂を覆い、舐め回す。ざらついた舌が、秘裂を割ろうとする。

 「や・・・やめ・・・! ・・・っぷ・・・!」

 綾乃は反射的に叫んでいた。

 「ん? なんだって?」

 乳首を弄っていたレフェリーが聞き返す。

 「ギブアップ! ギブアップするから! もうやめてぇ!」
 「なんだ、いいところだったのに。もっと我慢してくれればより楽しめたのになぁ」

 レフェリーは最後にとばかりに乳首を弄り、試合終了の合図を出した。


 <カンカンカン!>


 ゴングが鳴らされ、試合が終わる。綾乃は凌辱への恐怖に耐え切れず、ついに心折れてしまった。

 「お父さんの事は残念だったな」

 綾乃の心に追い討ちをかけ、レフェリーは恵比川を引きつれて花道を戻っていく。

 「あ・・・・・・あ・・・・・・・・・うわああぁぁぁぁぁ・・・!」

 横たわったまま両手で顔を隠し、リングの中心で泣き叫ぶ乙女。強烈な汚辱感に、綾乃はただ泣くことしかできなかった。


*****



「あああ・・・綾乃ぉ・・・!」

 掠れた、しかし腹の底から絞り出したような呻き声だった。愛娘の無残な姿を見せつけられ、壮年の男は頭部を掻き毟る。

「結局は敗北を認めた、か」

 男の背中に、悠然とした響きで声が掛けられる。たった一言で、男の背が伸びた。鈍々とした動きではあったが、男は体ごと振り向いた。
 その視線の先に、椅子に座した白髪の老人が居た。否、白髪だけを見れば老人と感じるが、肌の艶がそれを裏切る。ただそこに居るだけで、男の脚は力を失い、跪いていた。

「ご、『御前』・・・」

 最高級の革張り椅子に座していたのは、「御前」と尊称される謎の男だった。圧倒的な存在感は、数多の死線を潜り抜け、鮮血を浴びてきた者の証だった。

「では、当初の約束どおり、お前の体を金に替えるとしようか」

「御前」の気楽な口調での死の宣告に、男ががくりと肩を落とす。

「頭髪、角膜、鼓膜、歯、骨、骨髄、血液、筋肉、神経、五臓六腑、爪、皮膚、そして脳・・・新鮮なそれらを闇のマーケットに流せば、お前の借金の全てとは言わずとも、大半は埋めることができような」

 淡々と告げられる未来に、男の全身が震え出す。覚悟を決めていた筈なのに、こうも具体的に描写されると死への恐怖が蘇る。

「・・・だが」

「御前」の口調が変化した。

「面白いおなごを飼っているようだな」

「御前」の言う「おなご」が誰を指すのか。男は即座に理解した。そして、「御前」が何を望んでいるのかも。

「まさか・・・暁子も・・・!?」
「何を驚く?」

 本心なのか、演技なのか、「御前」は小首を傾げて見せる。

「お前の命の取立てまでに猶予ができたということではないか。素直に喜ぶべきではないか?」

「御前」の口の端に、微かな笑みが浮かんでいた。

「義理の娘に感謝することだ。己が命を永らえさせてくれたことに、な」

「御前」の含み笑いが、やがて哄笑へと変わる。その哄笑は、「御前」が部屋から姿を消すまで、否、消してからも男の耳に響き続けた。

「ああ・・・あああ・・・っ!」

 一人室内に残された男。綾乃の実父であり、暁子の養父でもある霧生元社長は、自らの無力さに懊悩することしかできなかった。


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