【A&A 其の四】 投稿者:小師様 推敲手伝い:事務員
その部屋に立ち込めるのは、濃密な喜悦だった。それを掻き分けるかのように一人の女性が口を開く。
「・・・『御前』、本当に宜しいのですか? あの男たちをこのリングに上げて」
脇に立つ黒髪美女に声を掛けられた白髪の男は、唇の端を微かに上げた。
「見せしめよ。無闇に暴れれば更なる暴力で報いを受ける。洋子、お前も肝に銘じておけ」
「しかし大丈夫でしょうか? あの連中は・・・」
「負けるならそれはそれで良い。良い見世物になるではないか」
洋子と呼んだ美女の憂慮を杞憂だと切り捨て、「御前」は尚も言葉を紡ぐ。
「やり過ぎてしまいそうなときは、あやつが・・・」
「御前」が続けようとした言葉は、場内の歓声に掻き消された。
それを契機としたか、今まで言葉一つ発しなかったもう一人の男が前へとよろめき寄る。
「あ・・・暁子・・・暁子ぉ!!」
会場を一望できる窓から見下ろし、壮年の男が煩悶する。
またもVIPルームに連れてこられ、虜囚のような心境で試合を見させられる。この男にとっては生き地獄だった。いかに自分の行いが招いた罰とはいえ、これ以上の拷問はない。
生き長らえたことを喜ぶ感情も沸かず、男は養女を見守るしかできなかった。
犠牲者の名は「真里谷(まりがやつ)暁子(あきこ)」。17歳。身長161cm、B88(Eカップ)・W58・H87。年齢不相応に大人びた顔立ちをした美少女。細く整えられた眉、切れ長の目、高い鼻梁から形の良い小鼻へと続き、その下には濡れたような瑞々しい唇がある。何故か眼の色が左右で違うが、大人びた美貌を損なうどころか一層魅力的なものへと変えている。切れ長の目がキツイ印象を与えることもあるが、普段は柔和な表情をしている。栗色の髪を肩甲骨まで伸ばし、ポニーテールに纏めている。
前の養父が道場を開いており、そこで直接武術等を学んだ。才能もさることながら、意欲と伸び代と成長速度は他の門下生の比ではなかった。師範の逝去と同時に霧生家に引き取られ、今は霧生(きりゅう)綾乃(あやの)の傍付きとして一緒に過ごしている。
燕尾服を着た暁子が入場口に姿を見せる。既に会場は熱気に包まれていたが、暁子が花道を進んで行くとさらにヒートアップした。その美貌が屈辱に歪むことを望む野次が四方八方から飛ばされるが、暁子は平然と男性選手が待つリングに上がって見せた。
綾乃は高校の体操着の上に瑠璃紺のジャージを着て暁子の後を追い、とてとてと走ってコーナーの下に付く。その綾乃にも卑猥な野次が飛ばされ、綾乃は羞恥に顔を赤らめる。それでも暁子に声を掛ける。
「あ、暁子・・・がんばってね!」
「はい、何とかして勝って御覧に入れます」
頷いた暁子に対し、綾乃は強張った表情で男性選手を指差した。
「あの人・・・私を散々・・・」
「わかりました、仇は取って見せます」
青ざめ、震えている綾乃に輝く笑みを返す。プレッシャーも養父とのしがらみも感じさせない、眩い笑顔だった。
「赤コーナー、『壊し屋柔道家』、恵比川福男!」
コールに答えた大男が歓声に応える。前回の試合で綾乃を嬲りつくした恵比川に、今回も期待する者が多い。
「青コーナー、『馥郁たる武闘姫』、真里谷暁子!」
名前がコールされ、メイド風の挨拶で応える。燕尾服には不釣り合いだが、何故か違和感を感じさせない。
背中の部分が膝裏まで伸びた上着にウエストコート、クロスタイ、バタフライカラーのワイシャツにスラックスという、いわゆる執事をイメージさせる服だが、まるで漫画から飛び出してきたように文字通り絵になっている。恵比川が柔道の選手であるためそれに合わせたのか、素足だった。
恵比川のボディチェックを終えたレフェリーが近づいてくる。
「真里谷選手、ボディチェックだ」
「その前にひとつ伺いたいのですが」
暁子の美貌に鼻の下を伸ばすレフェリーに、暁子が問う。
「何だ?」
「お嬢様の試合を裁いたのは貴男ですか?」
「そうだが、それがどうした?」
突然暁子の目が鋭くなり、同時にレフェリーが崩れ落ちた。それを見た綾乃が小さくガッツポーズをし、観客がざわつき始める。ほぼ同時に数人の黒服たちがリング内に飛び入り、崩れ落ちたレフェリーを担架に乗せて運ぶ。
VIPルームでは、白髪の男が薄く笑みを浮かべていた。
「お前の飼うおなご、面白いではないか」
「ど、どういう意味でしょうか?」
霧生元社長には見えていないものが、「御前」には見えていた。
「霧生よ。あのおなごは忍びの者か?」
「聞いたことがありませんが・・・」
「そうか。ならばあの者の素養はまだまだ秘められている、ということか」
霧生元社長には通じない独り言を呟き、「御前」は暁子の美貌を見つめた。
リングに代わりのレフェリーが上がった。好色そうな中肉中背の中年レフェリーだ。暁子を見た途端、このレフェリーも美貌に鼻の下を伸ばす。
「さてぇ、審判に手を上げるとはお仕置きが必要・・・と言いたいところですがぁ、今回はペナルティで済ますそうですよぉ。よかったですねぇ」
「・・・いかなる内容でしょうか?」
「私のボディチェックを受けていただきますぅ」
「ちゃんとしたボディチェックでなければ受ける気はありません」
綾乃からは、ここでどういうことが行われたのかは聞いている。だからこその発言だった。
「そうですかぁ・・・では懲罰代わりにぃ、今から綾乃さんにもう一度試合をお願いしましょうかねぇ」
「な・・・!?」
暁子の考えでは、家よりはここの方が遥かに安全の筈だった。借金の取り立てが来てしまったら、綾乃一人では危ない。しかし、暁子が拒めばこの場でもう一度綾乃を嬲りものにする、とレフェリーが暗に言ったのだ。しかもいつの間にか、綾乃の周囲をさり気なく黒服が固めている。その中にはナスターシャもおり、いつでも綾乃を捕らえリングに上げることができるぞ、という無言の脅迫を投げかけてくる。さすがの暁子もこれ以上は我を通せなかった。
「・・・わかりました。ボディチェックをお受けいたします」
暁子が承諾した途端、ナスターシャだけを残して黒服の群れが消える。
「お話の分かる方で良かったぁ。では失礼いたしますよぉ」
口調は丁寧なレフェリーだったが、脚から撫でるように触っていく。
「・・・ただのスラックスですよ? それも貴男方が用意したものですが」
「いえぇ、念には念をいれないとねぇ。それとも綾乃さんに受けていただきますかぁ?」
(・・・こんの・・・!)
嫌悪感と怒りから拳を握って震える暁子の体を、ゆっくりと念入りに触っていく。わざと、あるポイントを省いて。
脚から胴、腕、首と一頻り撫でまわし、一旦手を離し一歩離れる。顎を擦り、暁子の肢体を上から下まで舐めるように見たあと、腰を抱き、尻に手をかける。
「さてぇ、ここにはまさか何か隠していませんよねぇ?」
ついにきた。まずは暁子の尻を揉み解してくる。
「引き締まったいいお尻ですねぇ。男達もほっとかないでしょぉ?」
目を閉じて俯いていた暁子だったが、顎に人差し指を添えて上を向かせられる。
「黙ってるってことはそうなのかなぁ?」
レフェリーを黙殺し、ただただ目をつむって時間が過ぎるのを待つ。石仏の様に反応しない暁子の顔色を見ながら、目標を別の場所へ移す。
「まぁ、いいやぁ。次はここですねぇ。いやぁ、同時に調べましょうかぁ」
「っ!」
暁子の体がほんの少しだけピクリと跳ねる。胸と股間を同時に触られては、暁子の体も反応を返してしまう。
「何か隠してるんですかぁ? どちらも柔らかいですねぇ」
レフェリーの手が中年男の厭らしさで胸を、股間を撫で回してくる。我慢だ、忍耐だ、と心の中で呪詛の様に唱える暁子をレフェリーが甚振る。
「どうしましたぁ、黙りこくってぇ。気分でも悪いんですかぁ?」
今度はレフェリーの両手が暁子の両胸を掴み、揉み回してくる。
「・・・そういうわけではありません」
「そうなんですかぁ、安心しましたよぉ」
そう言いながら暁子の背後に回ったレフェリーが密着してくる。そのまま右手で胸を、左手で秘部を弄ってくる。
「突然鉄扇を取り出す技をお持ちのようですからぁ、ボディチェックは完璧にしないといけませんよねぇ」
自分の股間を暁子の尻に密着させたまま、レフェリーは暁子の身体をまさぐり続ける。
間延びした喋り方まで癪に障り手が出そうになるが、綾乃と霧生家のため、暁子には己の両手首を掴んで耐えるしか選択肢がなかった。
「凶器はなし、とぉ。では始めましょうかぁ」
満足するまで暁子の体を堪能し、レフェリーはゴングを要請する。
<カーン!>
(こんなことまでされていたなんて・・・!! 不愉快だ、さっさと終わらせる!!!)
暁子は普段、とにかく冷静に行動することを心がけている。前の養父から「お前は熱くなりすぎる」と、いつも言われていたからだ。しかし先程の公開凌辱のようなボディチェックで、暁子は珍しく頭に血を上らせていた。綾乃もこんな激しいセクハラを受けていたのか。そう考えると綾乃の異常な怯えも理解できる。
怒りに任せて一気に距離を詰め、連打を放つ。ボクシングでも空手でもムエタイでもあるかのような型に囚われない動きが恵比川の読みを鈍らせる。それでも防御から一発の投げでの逆転を狙う恵比川が、ボディを狙う左腕を掴みに来る。
「ぐはっ!」
腕を掴み、暁子が宙を舞う姿を想像した者が多かったが、現実は左腕が掴まれるよりも早く暁子の掌底が恵比川の鳩尾を抉っていた。巨体が弾き飛ばされ、ロープ際まで転がっていく。
(・・・思い知ったか、この下衆め!)
しかしこんなにあっさりと終わるとは。拍子抜けしながら自コーナーに戻っていく。その時、暁子の胸に大きな手がかかった。
「しまっ・・・!」
「そんなに簡単には終わらぬわ。天狗にもほどがあるぞ」
胸を揉まれながら上着の襟元を掴まれる。暁子は恵比川の手の甲を叩き、力が弱まった瞬間に胸にかかる手を引きはがすと、燕尾服のボタンを素早く外して手を引き抜いた。
「・・・不埒な」
「難しい言葉を使うのう、小娘。そろそろ本気でいくからな」
燕尾服をリング下に投げ捨て、恵比川の巨体が動く。襟を、袖を、脚を掴もうとするが、暁子がすべて弾き、躱す。段々と恵比川が苛立ちを見せ始め、つい無造作に奥襟を掴みにくる。
(・・・なめられたものね)
掴まれる寸前、その恵比川の手首を掴み、小手返しでリングに叩き付け、そのまま裸絞めで締め上げる。
完璧に極まってしまい、最初は何とか引き剥がそうとしていた恵比川も、顔が赤黒く変色していく。そして白目を剥き、全身から力が抜ける。それを見たレフェリーが即座に試合を止めた。
<カンカンカン!>
「うわあ、速攻ですねぇ」
レフェリーが暁子に近づき、賞賛を送る。
「天誅です」
気絶した恵比川をリング下に蹴落としてそう呟き、暁子が一息入れる。すると、それぞれ体型の違う三人組の男がリングに上がってきた。
「連戦のお約束でしたねぇ。よろしいですかぁ?」
「構いません。ですが相手の方は・・・?」
「リングに上がってきたあれですねぇ」
「・・・明らかに三人いるんですが」
「ええ、そうですねぇ、三人を相手していただきますぅ。バトルロイヤル戦になりますのでご注意くださいねぇ」
レフェリーからバトルロイヤル戦の説明を受けている間、三人は暁子を見遣り、にやついている。顔に見覚えのある三人だ。大きい男二人はそれぞれ眉間と顎に刃物で付けられた傷があり、小柄な男は右頬に傷がある。
(まさか、ナスターシャさんの言ってた悪童ってこいつらのこと・・・?)
少し前に、顔に傷のある三人組が街中で傍若無人に暴れまわっている、と聞いたことがあった。そんな噂をここ最近全く聞かなくなったのは、ここに居たからなのだろう。
「あの顔、もしかして暁子ちゃんでしょうかね? 後ろには綾乃ちゃんらしき子もいますが」
「そうみたいだな。ちょうどいいや、ひん剥いて抱いちまおうぜ」
「・・・ダメだって言われてるだろ。俺はまだ消されたくないんだよ」
中学卒業後、この三人は巷を騒がせていたフリーター犯罪集団の一員となっていた。街中を暴れまわって店を破壊したり、金目のものを強奪したり、綺麗な女性を暴行するなど悪行三昧だった。それでも巧みに逃げおおせ、犯行を繰り返した。
しかし最後に侵入した店ではどういうわけか計画がばれており、警備員らと乱闘の末に捕えられた。そして気が付くと見知らぬ場所に軟禁されており、この試合で勝てば自由を与えられることになっていた。
「それにしても、二人ともまた一段と綺麗になったよな」
「そうですね。折角の機会なので僕は綾乃ちゃんと○○したいです」
「変わらねえなぁ。ま、俺は○○するならやっぱり暁子ちゃんかな」
「おいおい、どうせなら両方一度にだろ」
下衆な会話が暁子の耳に入ってくるが、表情は変えずにゴングを待つ。
「お待たせいたしました、続いて本日の第二戦です!」
すぐに終わってしまった第一戦に不満を持つものもいたが、この言葉にまた観客が湧く。
「まずは一人目、南永(なんえい)朱也(あけや)!」
一人目の男は180cmを越える長身と筋肉はあるがそれでも線の細い体をし、少し猫背になっている。朱色のボクサー用のパンツにリングシューズ、オープンフィンガーグローブという出で立ちだった。
「二人目、北伊地(きたいち)亀太郎(かめたろう)!」
二人目の男も180cmくらいの長身だが、筋肉と脂肪でガッチリというよりデップリしている。黒の道着に帯を締め、柔道家のような雰囲気を出している。
「三人目、森西(もりにし)虎次(とらじ)!」
三人目の男は170cmもないくらいの小さめの体ではあるが、筋肉質の引き締まった肉体をしており、観客が驚くほどのイケメンだった。白のスパッツとオープンフィンガーグローブをつけている。
この三人は、昔通っていた中学校で不良のなかでも刃物を使う危険な輩どもとして有名だった。綾乃に目をつけ搦め手から攻めるつもりだったが、その搦め手である暁子自身が返り討ちにしていた。
「そして最後は紅一点、『馥郁たる武闘姫』、真里谷暁子!」
(次はこいつらか・・・さっさと終わらせて、お嬢様と社長と三人で帰ろう)
名前がコールされ、暁子は執事ではなく普段のメイド風のあいさつで応える。
「第2戦はバトルロイヤル戦となります。スリーカウント及びリング下への落下は即失格となりますが、ギブアップは認められません。最後まで残った選手が優勝となります」
更に会場が盛り上がり、熱気に包まれる。男性選手への応援が増え、暁子をどう料理するかの注文の様な野次まで飛び始める始末だ。
リング下の綾乃が心配そうに暁子に声をかける。
「あ、暁子・・・」
「お嬢様、私の事よりも御身をお守りください。この状況では何が起こるかわかりません。あれは持っていますね?」
「あるよ。あるけど暁子、無茶しないでね?」
「確約はできませんね。勝ち残った上で、二人で逃げないといけないので」
そんなやり取りをしている二人に獣欲に滾る視線を向ける大男二人がいた。
「どんな声を出すんでしょうか? 早くよがらせてみたいですよ」
「ああ、めっちゃくちゃにしてやろうぜ。なんだったらこの場ででも・・・」
朱也も亀太郎も、暁子から顔に傷をつけられたことを逆恨みしており、特に最初から暁子に一目ぼれしていた朱也は、周りの状況など見えなくなり始めている。それを危ぶんだ虎次が雷を落とした。
「だから早まるなって言ってんだろうが!」
虎次の怒声で二人が黙り込む。彼はもともと三人組のリーダーといえる存在であるため、他の二人はまず逆らわない。これは中学時代から変わっていない。
「いいか? まずは・・・」
三人が小声で作戦を立てている他方で、暁子も戦術を練っていた。
(どうする? 相手は三人・・・一人は間違いなく武術経験者。後の二人はひ弱そうだけど・・・)
そんなことを考えていると、三人のボディチェックを終えたレフェリーが暁子に近づき、正面から声をかけてきた。
「では暁子さん、ボディチェックを」
「先程じっくりしていただきましたので結構です。それと、『暁子さん』などと呼ばないでください。馴れ馴れしい」
「そんなこと言わずにぃ、お願いしますよぉ。始められませんからぁ」
「お断りします」
「そうですかぁ、わかりましたぁ」
意外にも簡単に引き下がるレフェリーに、暁子の表情が曇る。このレフェリーは何を考えているのか、それが見えなかった。
「ではお手伝いをお願いいたしましょうかねぇ」
言い切るよりも早く亀太郎の右腕がレフェリーの後ろから伸びる。暁子は伸ばされた右腕を掴み、条件反射のように小手返しに投げる。朱也の前に亀太郎を落とし、動きを止める。その間に対角のコーナーへ逃げて距離を取ろうとした。
「きゃああぁっ!?」
暁子がいたコーナーの方から悲鳴が聞こえた。反射的に目を向けると、綾乃を引きずり倒して圧し掛かる白い柔道着が見えた。意識が戻った恵比川が綾乃に襲い掛かったのだ。
「お嬢・・・!」
「暁子ちゃん、余所見は感心しないぜ?」
背後からタックルを食らい、腹ばいに倒される。虎次に腕を極められたまま立たされるとそのままフルネルソンに捕えられ、立ち上がった朱也と亀太郎に片脚ずつ抑えられる。そこにレフェリーが近づいてくる。
「では始めますねぇ。あまり動かないでくださいよぉ」
「く・・・! は、な、し、て・・・!」
如何に暁子が強くても、男三人に捕えられてはピクリとも動けなかった。両手を伸ばしたレフェリーは、またも好き放題に暁子のEカップの胸を揉み回す。
「はぁぁ・・・柔らかくてたまらないですねぇ。そうだぁ、こちらは大丈夫でしょうかねぇ」
「くぅ・・・」
右手を尻に回し、こちらも好きなように捏ねる。暁子も必死に抵抗しようとするが、首を振るのが精一杯だった。
鼻息荒く胸と尻を捏ね回していたレフェリーだったが、脚を押さえる二人の刺すような視線を感じ取ったのか、暁子から離れていく。次のレフェリーの発言に、暁子は耳を疑った。
「では始めましょうかぁ」
「な・・・!?」
<カーン!>
暁子が捕らわれたままで試合が始められた。
「というわけだ。アケ、カメ、好きにしていいぞ」
「いいんですか、トラ?」
「こんな獲物を前にお預けは辛いだろ?」
虎次が許可を出した途端、鎖を外された猛獣が暁子に襲い掛かる。朱也は右脚と股間を撫でまわし、亀太郎はウエストコートとタイを乱暴に取り除き、両胸を鷲掴みにして思い切り握る。
「いっ・・・!」
両方の胸を力一杯握り潰された暁子が苦痛に呻く。それを聞いた虎次が猛獣を落ち着かせる。
「おい、もうちょっと優しくしてやれ。暁子ちゃんが痛がってるぞ」
「構わないでしょ、これくらいは。僕らも痛かったんだし、ちょっとはお返ししないと」
「まぁ、そういうなよ、亀。女の子には優しくしないとモテないぞ」
勝手なことを言いながら、男たちは暁子の肢体を堪能する。暁子を捕える虎次の下腹部に暁子の身体が当たり、徐々に虎次の体も興奮状態に入っていく。
(っ!? これって・・・!)
尻にあたる固い感触に焦り、さらに体を振って暴れようとするが、ガッチリ決まっているフルネルソンが解けない。
「おいおい、そんなにケツを擦りつけないでくれよ」
そう嘲った虎次が、自らの腰を動かして固いモノを上下させる。
暁子にとって屈辱の時間が流れていく。
レフェリーが暁子の前に立った時、嫌な予感がした。
(暁子からは三人が見えてるのかな・・・?)
忠告をしようと口を開きかけた瞬間、後ろから抱きつかれた。
「!?」
意識が戻った恵比川が、綾乃の胸を後ろから掴んでいた。
「もう試合は終わってるでしょう! いやっ、触らないで!」
「あの女、許さん。生き地獄をくれてやるわ。あやつが見ている前でお前が快楽に喘ぐ姿を、たっぷり見せつけてやろうぞ」
そう言って、綾乃をマットに引き倒す。
「きゃああぁっ!?」
「お嬢・・・!」
暁子が振り向く姿が一瞬だけ見えたが、その後のことを気にする余裕はなかった。恵比川が脚の間に入り込んで覆いかぶさり両手を頭上で押さえ、胸を揉み回す。
「んうっ! 放して!」
「放せと言われて放すやつが居るか。こんな色気のないものなんぞ脱いでしまえ」
恵比川が片手で器用にジッパーをおろし、外す。下に現れた体操着の上から柔らかい感触を再度堪能し始める。
「ふむ、この感触はやめられんな。どれ、また付き合って貰おうか」
腕を頭上で押さえられ、胸を揉み回される。前回と同じ状況に置かれ、綾乃の頭の中にあの時の記憶がよみがえる。全身汚されつくしたような、あの時の記憶が。
(いやだ・・・助けて・・・!)
綾乃は抵抗もできずに、目を瞑ってただただ震えていた。
(お嬢様が・・・! 早く、早く何とかしなければ・・・!)
尚も暁子は体を好き放題触られていた。どうやってこの場を脱出するかを考えようとするが、焦りと体を触られる不快感が思考の邪魔をする。
その時、下の方でシュッと音がした。視線を下げると、ベルトを抜き取ってスラックスのファスナーをおろし、脱がそうとする朱也の姿が映った。
(この・・・背に腹は代えられない・・・!)
暁子は覚悟を決め、スラックスから足を抜くと同時に右膝を振り上げ、朱也の顎をかちあげた。
「ぎゃっ!!」
突然の衝撃に朱也が転がる。さらに亀太郎の腹に前蹴り入れて蹴り放し、最後に脚を振り上げて虎次の顔面に爪先を突き刺す。そのため運の良い観客には、本紫のパンティがはっきりと確認できた。
「ぐぶっ!!」
「ぐあっ!」
三人の拘束を外し、一旦距離を取る。虎次は暁子が蹴落としにきた瞬間に寝技に引き込もうと考えていたが、暁子が離れて行ったのを見て立ち上がった。
ワイシャツの下からパンティが見え隠れし、観客から歓声が巻き起こる。
「チッ・・・逃げられたか。でもいい眺めだ。次はその体を晒してもらうからな」
虎次の言葉の返事代わりに、虎次を睨みつける。やがて残りの二人も立ち上がり、暁子を囲むように立つ。
「へぇ、白くて綺麗な脚ですね。是非一晩付き合っていただきたいものです」
亀太郎が暁子の肢体を舐めまわすように見ている。
「その勝気な目、僕好みに変えてあげましょう」
言うよりも早く、暁子に突っ込んでいく。
「あっ! このバカ・・・!」
「亀・・・!」
虎次と朱也はもっとじっくり攻めるつもりだったが、亀太郎は我慢が出来なかった。相手は一人なのだから、自分が抱えて一緒に落っこちてしまえば勝ちだ。
しかし暁子はただの女ではないのだ。突っ込んできた亀太郎に肉薄し、パワースラムで床に叩き付ける。そのまま亀太郎を肩に担ぎ、リング下に投げ落とす。これには観客席からもブーイングが起こる。
「ったく・・・お前はあんなことになるなよ、アケ」
「同じ言葉を返しとくぞ、虎」
(あと二人・・・)
亀太郎を落した暁子はコーナーポストを背負って、二人と対峙した。
綾乃は尚も恵比川にいいように体を弄りまわされていた。
「さて、ではもうちょっと恥ずかしい思いをしてもらおうかのう」
恵比川はジャージの下に手をかけ、一気に両脚から抜き取る。中は瑠璃紺のホットパンツだった。これも一気に脱がし、白のパンティの上から秘部を擦る。
「ひああっ!」
途端に強くなった刺激に声が出る。胸と秘部、両方を同時に責めニヤケ顔の恵比川だったが、綾乃の両手は自由になった。
「前と同じく良い感触だ。あちらの試合が終わるまで、こちらも楽しまなければ損だ。そう思わぬか、淫乱なお嬢様?」
「誰が淫ら・・・んああっ!」
否定しようと口を開けば強い刺激に身体が跳ね、喘ぎが漏れてしまう。
「否定しておるくせに、身体は反応しておるではないか。本人が忘れても身体が覚えておるようだな。これを淫乱と呼ばずになんと呼ぶ?」
「違う・・・違・・・うああっ!」
胸と秘部への刺激が綾乃を責め立て、口からは喘ぎ声しか出てこない。
「良い声で鳴くのぉ。淫乱お嬢様は鳴き声も絶品よ」
(違う・・・のにぃっ! なんで、こんなになっちゃうの・・・!)
はっきりと否定したいのに、胸を揉まれ、秘部を弄られると腰が跳ねてしまう。声を堪えて首を振ったその時、暁子を捕えていた三人組を暁子が蹴り放したのが見えた。
(こんな私を守って、暁子はあんなに手酷くやられて・・・)
今までおんぶに抱っこだった自分に腹が立つ。しかも車の中で自分の身は自分で守ると宣言したのだ。
(これじゃ前と変わらない。何のためのトレーニングだったの!?)
自分への怒りが集中力を増したのか、目に光が戻る。その綾乃が、拳を恵比川の鼻に突き刺した。
「ぐぉっ!?」
柔道しかできないお嬢様だと思い込んでいたためか、それとも綾乃の身体の感触にのめり込んでいたためか、恵比川はストレートをまともに食らう。怯んで立ち上がりかけたところに、綾乃が電光石火の大内刈りで押し倒し、そのまま腕ひしぎ十字固めを極める。
「ぐああああっ!」
否、一気に引き絞った腕から鈍い音が鳴った。綾乃が腕を放すと、恵比川の腕は普通とは違う方向に曲がっていた。
「許さない・・・」
どす黒い陽炎を纏った綾乃が恵比川の側に立つ。
「もうやめろ。これ以上は不必要だ」
腕から何かを取り出そうとしていた綾乃に、ナスターシャが声をかける。
「この男は私を・・・!」
「これ以上やるというのであれば、この場でお前を力づくで止めるしかなくなる。それでもその鉄扇で叩いて、相手を殺すか?」
殺す気はなかった。ただ、私を襲えばどうなるのか思い知らせてやりたかった。私だって強くなったんだ。
しかし最終的な結果は恐らく同じ場所に行きつく。綾乃は自分が何をしようとしていたのかに気付き、へたり込んで呆然としていた。
虎次と朱也がじわりと距離を詰める。
「あの巨体をパワースラムか。ったく、規格外もいいところだぜ」
朱也が軽口を叩いているが、虎次も暁子も一切反応しない。
「虎、先に行くぞ」
そう言いながら連打を放つ。
(思っていたよりは速い・・・でも)
放たれる連打を全て躱す。
(洋子さんには遠く及ばない。見える)
暁子の右手は素早く朱也の左手首を掴みつつ左掌底を鳩尾に当て、大外刈りの要領で倒す。そのままリングと掌底で腹を押し潰して動きを止める。
「ぐぶっ!」
虎次は朱也との身長差を利用して距離を詰めようとしていたが、朱也を眼前に叩き付けられて前進を止められていた。それでも暁子は内心舌打ちしていた。朱也の動きが止まったが、虎次の殺気が強くリング下まで落とすには至らなかったためだ。
「えぐいな。死んだんじゃないか?」
「私を襲おうなどと考えた罰です。あなたにもまだ残っていますよ?」
「こわいこわい。じゃぁ俺も本気で極めに行くか」
暁子はタイミングを計りつつ、体力の回復と場所の確保のためにリングの中心に移動する。歩を進めるたびにチラチラ見える下着に虎次がにやける。ここからどうやって暁子を淫靡な世界に堕とすかを考えていた、そのほんの一瞬意識を逸らした矢先にマシンガンの乱射が、否、暁子の連打が飛んできた。
「うおっ!?」
暁子から連打が来るとは考えていなかった。今まで受けに回ることが多かった暁子はカウンターを狙ってくる、とふんでいた。初撃を何とか躱し、掴んで関節技に移行しようとするが、連打の速度が速く見切れない。受けに回り耐えることを選択した虎次だったが、突如暁子は投げに移行した。両腕を掴んで引き込み、投げっぱなしの様な巴投げでリングに頭から落とす。
「ぐあっ!」
あとは絞め落してリング下に蹴落として終わり。早く終わらせなければ。そう思って立ち上がろうとした瞬間、条件反射よりも鋭く右手が動く。
「――!!」
朱也が立ち上がり、殴りかかって来ていた。カウンターを狙う暇もなく被弾の寸前で右手で受けるが、そのまま思いきり懐深くに踏み込まれ体勢を崩す。それでも下がる勢いを利用して相手の右腕を引き込み地面に倒そうとしたが、相手の勢いを殺し切れずにロープ際で倒されそのまま覆い被さられる。
「このアマ、調子に乗るな!」
馬乗りになった朱也が、右腕で暁子の喉を絞める。暁子も必死で暴れるが、上から体重をかけて喉を押さえられるため、朱也をどかすことができない。
「苦しいか? ええ?」
「かはっ―――」
暁子の苦しむ表情を見て、朱也が口の端を釣り上げる。
「ふん、しっかり罰を体に刻んでやるからな」
苦しむ暁子を見て少し冷静さを取り戻したのか、そういうなり朱也は右腕の絞めを外し、暁子の胸に手をかける。
「ゲホッ・・・さ、触らないで・・・変態・・・!」
暁子の罵詈雑言すら今の朱也にはスパイスなのだろうか、にやけた朱也はさらに下着の上から秘部にも触れ、振動を送り込む。
「やめ・・・くっ!」
胸の手を引き剥がそうとすると秘部に激しい振動が送られ、秘部の手を引き剥がそうとすると胸を思い切り握り潰される。
しばらくその状態で嬲られ続けていたが、突然リングの下から何かが放り込まれた。
(あれは・・・私の!?)
このような状況でも見間違える筈がない。綾乃に渡した自分の鉄扇だった。
「綾乃ちゃんはこんなものを持ってましたよ。粋ですね」
放り込んだのはリング下に落とした亀太郎だった。
「あ、あなたはもう失格になったでしょう!?」
「ええ、ですからリング下でもうちょっと楽しもうかと思って」
そう言った亀太郎が綾乃に欲望の視線を向ける。
「ふざけ・・・うあっ!!」
股間が冷たい感触に襲われた。見ると、朱也が鉄扇の先を押しつけている。
(私の・・・師範から頂いた鉄扇が・・・)
思い出が汚されていく。やめさせようともがくが、下手な動きをしたら仕込み刃が出てしまうのではないかという思うと、大きな抵抗ができない。
「動けないほど気持ちいいのかよ、これじゃどっちが変態だかわかんねえな」
「誰が・・・んんっ」
朱也を押し退けることができず、暁子は耐えるしかできなかった。
呆然としてへたり込んでいた綾乃に後ろから抱きついた者が居た。
「暁子ちゃんは強いんですね。でも僕は彼女よりも綾乃ちゃんの方が好きなんですよ。仲良くしてくださいね?」
などと言いながら胸を揉み回してくる。
「やめっ・・・んっ」
綾乃の腕の上から亀太郎が両腕を回している為、抵抗のしようがない。体を揺すっても、巨漢の亀太郎を引き剥がすことができない。
それでもなんとか亀太郎の手の甲を思い切り抓り、力が緩んだところで亀太郎を振りほどく。
「貴男なんかに好かれたくはありません!」
叫びながら鉄扇を取り出し、振り回す。
「うわっ!! あ、危ないですよ綾乃ちゃん、落ち着いてください、ね? そんなので叩かれたら僕死んじゃいますよ」
「死ねばいいんです! 女性を襲う不逞の輩は死ねばいいんです!!!」
しかし重い鉄扇を暁子ほど器用には振るえず、大振りになる。体が流れた隙を突かれ、小内刈りで押し倒される。
「まったく、お転婆ですね。でもそんなところもかわいいですよ?」
「貴男に可愛いなどと言われたくありません! 退いてください!」
尚も暴れる綾乃に呆れる亀太郎は両腕を頭の上で押さえ、鳩尾にパウンドを落す。
「えぐぅっ!!」
正確に鳩尾を抉られ、綾乃の動きが止まる。
「ちょっと待っててくださいね。聞き分けの悪い人は嫌いですよ?」
そういうと、亀太郎は立ち上がって鉄扇を拾いあげ、リングに放り込む。
「綾乃ちゃんはこんなものを持ってましたよ。粋ですね」
綾乃は腹を押さえて何とか立ち上がろうとするが、そこで亀太郎と再度目があってしまった。
「待ってろと言ったのに・・・聞き分けが悪いです、ね!」
「ぐふっ!!」
今度は思い切り腹を蹴られ、綾乃が悶絶する。
「ちょっと強めにお仕置きしましょうか」
そう言うなり亀太郎は綾乃のジャージの上を剥ぎ取り、さらに体操着も破り取る。
「や・・・やめ・・・」
「大丈夫ですよ、怖いのは最初だけですから」
などと言いながら、さらにブラのホックを外して乳房を露出させる。
「あ・・・!」
「綺麗な色ですね。あれから結構経ちましたけど」
感慨深そうに頷きながら鴇色の乳首を転がし、呟く。
「今日は二人の思い出に残る日になりそうですね」
そう言うなり右乳房にむしゃぶりつく。左乳房は右手で揉み、左手はパンティの中に侵入し淫核を転がす。
「あっ・・・あああああっ!」
綾乃の両手は亀太郎の肩を押そうとするが、あまりの刺激の強さに力を込めることができない。腰が跳ね、喘ぎ声が出る。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「どうですか? 気持ちいいですか?」
「そんな、わけ・・・ひあああっ!」
否定しようとした綾乃だったが、亀太郎の淫核への責めで嬌声を上げてしまう。
「やっぱり気持ちいいんでしょう? いいんですよ、素直になれば」
唇を歪めた亀太郎は、綾乃の乳房を揉み、乳首を捏ね、淫核に振動を送り込む。そのたびに綾乃の腰が跳ねてしまう。
「はあ・・・あふぅ・・・」
綾乃の目は快楽で潤み、息は荒く、頬は上気している。綾乃を責める手を止め、亀太郎が話しかける。
「見てください。暁子ちゃんも同じようにされていますよ。よかったですね」
「あ・・・きこ・・・?」
目を向けると、朱也に圧し掛かられ責められながらも、唇を噛んで耐える暁子の姿が見えた。その姿に綾乃の闘志が蘇る。
「では続きを」
「・・・お断りっ!」
亀太郎がキスをしようと腰を浮かせた瞬間、股間を綾乃の膝が抉った。
「――――!――――!!」
声もなく悶絶し転げ回る亀太郎に覆い被さり、逆十字絞で一気に絞めあげる。亀太郎は何とか引き剥がそうとするが、徐々に力が抜けていき、最後は白目を剥いて動かなくなる。
綾乃は亀太郎が失神したのを確認し立ち上がろうとするが、蓄積された快感のせいでもう足に力が入らなかった。立とうとすると膝が震えてしまう。仕方なく膝立ちの状態でジャージを着直し、リング下に座り込む。
(暁子・・・私、一人で脱出できたよ・・・)
そのままリングにもたれ掛り、意識を失ってしまった。
尚も暁子は、朱也から責められていた。鉄扇の先を暁子の秘裂にほんの少し埋めると、暁子の体が跳ねる。
「くうっ!」
強烈な刺激に暁子の口から声が漏れる。
「変態さんは扇子でも感じるのかな?」
「だ・・・誰がっ!」
「それ以上は突っ込むなよ?」
いつの間にか復活した虎次が朱也の後ろから声をかける。
「わかってるよ。さっきと違って今は冷静だっての」
「ほんとかよ・・・ったく。それはそうとよくこんな状態に持って行けたな」
「運も実力の内ってな。日頃の行いがいいのかもな」
「どの口が抜かしやがる。さて俺も混ざろうかな、扇子貸してくれ」
朱也が鉄扇を置いて虎次を混ぜようとして体重をずらした一瞬、暁子は朱也の胴に脚を絡め、そのまま自分の頭上へと向けて投げ飛ばす。
「うわあっ!?」
完全に油断していた朱也がロープの間を通り抜け、マットに頭から落ちる。ドスンという鈍い音がし、状態を確認した黒服が担架で退場させる。
間髪を入れずに虎次の胴に掌底を入れ、更に蹴りを入れる。虎次は痛みに転がりながら一旦距離を取る。
「くそっ、まだ動けるのかよ・・・」
吐き捨てた虎次の視線の先で、暁子がロープを掴んで立ち上がる。激しいセクハラを受けても尚、その目はまだ闘志は失っていない。
「いくらなんでもここまでとはな。でもこれ以上はできるかな?」
虎次が警戒しながらゆっくり近づいてくる。暁子はロープを掴んではいるものの、虎次を睨みつけて目を離さない。
「ほれ、いくぞ!」
距離を詰めたところで、虎次が一気にタックルにくる。速いタックルだったが、真正面からである以上は充分対応できる。筈だった。
しかし疲労が集中力を散漫にしてしまったのか、突然の変化に対応できなかった。虎次は暁子の右から回り込んで背後をとってロープ側を向かせ、暁子の背中に両膝を当てて後ろに倒れ込む、バックスタバーを放つ。
「がっ・・・!」
「ネンネにはまだ早いぞ?」
動きが止まった暁子を吊り天井固めに極める。全身を引き絞り、容赦なくダメージを与えてくる。
「ではぁ、役得を頂戴いたしますねぇ」
今まで不気味なほど静かにしてきたレフェリーが、待ってましたと言わんばかりに胸を掴み、捏ね回す。
「やめ・・・ううっ」
「少しくらい許してくださいねぇ、今までお預けを食らって辛かったんですよぉ」
本心を思いきり吐露しつつ、暁子の肢体の感触を楽しむ。
胸ばかりは飽きてきたのか、片手を太ももに置き、撫でまわす。
「うーん、若いっていいですねぇ、素晴らしい弾力ですよぉ。肌もスベスベだしぃ、癖になりそうですねぇ」
「さ、触ら・・・あああっ!!」
言葉を発すると思い切り四肢を絞り上げられ、悲鳴をあげさせられる。
(ど、どうすれば・・・)
思考を纏めようとするが、痛みと不快感が邪魔をする。
「さてぇ、ではこちらも失礼しますねぇ」
レフェリーが太ももを触っていた手を秘部へ持っていく。
「くっ・・・触らないで! ぐぅっ!」
「柔らかいですねぇ・・・この試合のレフェリーができて光栄ですぅ」
下着の上からとはいえ大事なところを撫で回し、レフェリーが悦に入る。
(このままではどうしようもない・・・ならば・・・!)
不快感は意識の外に追いやり、手さぐりで虎次の腕を探し、掴む。
「ううっ・・・うああああっ!」
一喝して気合を入れ、虎次の腕を思い切り握る。レフェリーは危険を察知したのか、さっさと遠くに逃げていた。
「ぐあっ!」
虎次は握り潰される痛みに吊り天井固めを解いてしまう。やっとのことで脱出した暁子だったが、そこまでだった。絞り上げられた時間が長く、加えて初めて味わう過度のセクハラで疲労困憊だった。
「最後の最後まで暴れやがって・・・まぁいいや、もう立てないみたいだな」
立ち上がれない暁子を抱え上げてロープ際まで運び、手足をロープに絡めて拘束する。
「さて、じゃぁもう一度聞かせてもらおうかな」
虎次が満足そうに頷き、あの日と同じように問いかける。
「綾乃ちゃんとの間を取り持ってくれないかな? お礼はするからさ」
「はぁ、はぁ・・・嫌です」
目だけを虎次に向け、考える間もなく否定する。
「そう言わずに。君も楽しませあげるからさ」
そう言いつつ、暁子の胸を揉み、脚を擦る。
「・・・煩わしい、私に触るな! くぅっ」
語調が変わった暁子に驚いた虎次だったが、それでもやめようとはしない。
「怖いなぁ。じゃぁ暁子ちゃんから天国に連れてってあげようかね」
暁子の顔を持ち、顔を近づけてくる。そしてそのまま強引に唇を奪う。
「んむうっ!」
こんなところで初キスを無残にも奪われるとは。暁子も必死に身をよじるが、手足は拘束され顔は逃げられないように固定されているのでどうにもならない。歯茎を虎次の舌に舐められ、総毛立つ。
ドクンッ!
突然体が熱くなり始める。暁子は今までに無かった感覚に戸惑っていた。
(何・・・これ・・・)
「ぷふうっ・・・」
口が離され、息苦しさから解放される。とにかく大きく息を吸い呼吸を整えようとするが、それでも体の火照りが消えない。
中学の時から遊び人として名を馳せた虎次達が今まで罪に問われなかったのは、最終的に虎次のこの魔法のキスが役立っていたからだ。どんな女性でも必ずモノにできる技術のおかげで、逃げ延びてきたのだ。
この魔法で堕ちない女はこれまでで初めてだった。
「どうだい、キスの感想は?」
「・・・最悪ね、このヘタクソ」
「そういう割には顔が赤いぜ? 暑そうだから脱がしてやるよ」
罵詈雑言を意にも介さず虎次は暁子のワイシャツに手をかけ、ボタンを外していく。わざとゆっくり上から外していくと、パンティと同じ色のブラが覗く。
「ブラも紫ねぇ・・・欲求不満なのか?」
最後までボタンを外した虎次が暁子の顔を覗き込む。
「はぁ、はぁ・・・黙れ、この・・・んうっ」
暁子の言葉を遮るように、指を秘部に当てて振動を送る。
「何を言おうとしたのか知らんが、立場がわかってないのかな?」
頬を平手で打ち、髪を掴んで持ち上げる。それでも暁子は抵抗の意思を示すように虎次を睨みつける。
「その目、気に入らないな。そんなに嫌ならここで盛大にイっちまえ」
そう言うなりブラを剥ぎ取り、パンティを破り捨てる。
「あ・・・!」
「・・・へえ」
そのとき、無毛の丘が虎次の目に飛び込んだ。年頃の少女には普通にある筈の股間の翳りが、暁子にはまったくなかったのだ。幼女のような無毛と大人びた暁子の美貌とのギャップが、虎次を一層の興奮へと駆り立てた。
「随分と可愛いアソコをしてるじゃないか」
「く・・・」
言葉と共に乱暴に乳房を揉み込み、秘裂をあやす。
「っ!」
強烈すぎる快感を逃がそうとして頭を振るが、それだけでは逃がし切れない。せめてもの抵抗に、唇を噛みしめて声を出さないようにする。
「っ!・・・っっ!」
「まだ耐えるかよ・・・しょうがねえなぁ」
再度虎次が唇を奪う。唇を吸い上げられるたびにどんどん体の火照りが強くなるのがわかる。
ドクンッ!
思いとは裏腹に徐々に珊瑚色の乳首が立ち上がってきてしまう。それに気付いたのか、唇を奪ったままの虎次が乳房を揉みながら乳首を転がし始める。
甘い痺れが乳房から全身に広がり、心地よさすら与えてくる。
「んんっ・・・ぷはっ」
暁子は戦慄していた。キスされる度にどんどん身体が昂っていく。まるで自分の物ではなくなっていく感覚だった。
「さて、こっちはどうかな?」
暁子の秘裂に人差し指を軽く埋めた。
「!!!」
脳を焼かれるような激しい快感だった。物凄く甘美で、とてつもなく深い奈落の穴。その穴の淵で必死に這い上がろうともがく。
その暁子に、また虎次がキスをする。更に身体が熱くなり、暁子の頬だけでなく体にも朱が差し始める。
「んっ・・・んんんっ」
何とか引き剥がそうと体を揺するが、どうすることもできない。
そのうちに、暁子の目から少しづつ光が失われていった。どう足掻いても逃げられない現状と、好き放題やられている自分の不甲斐なさに絶望していく。
「ぷはっ・・・」
「こっちも顔を出してきたな。そろそろ我慢も限界かい?」
ついに包皮から秘豆が顔を出す。その淫核もいじりながら、再度口づけをする。今度は暁子も拒まなかった。舌が絡み合い、唾液の交換をする。激しい快感が暁子の中を走り回る。
「ん・・・」
虎次が口を離すと、二人の間には唾液のアーチができていた。
観客の大声援で綾乃が気が付いたとき、暁子はロープに囚われていた。
(あ・・・暁子・・・!?)
綾乃は目を疑った。あれだけ強かった暁子が、あの程度の不良一人に成すがままにされている。
(何で・・・)
頬は朱に染まり、目には光が全くない。虎次に無理やりキスをされているのに、暁子は抵抗するそぶりすら見せない。
「暁子・・・?」
虎次が口を離すと、二人の間にアーチが作られる。大人びたキスでもしたのだろうか。
その時、暁子の右目から涙が零れた。外では泣いたことのない暁子が泣いている。綾乃はショックだった。どんな時でも最後の最後まで、時にはなりふり構わずやり遂げようとする暁子が、絶望してしまっている。
「暁子! しっかりしてよ!」
その声は暁子には届いていないようだった。
「暁子・・・」
暁子の絶望が綾乃に伝播してしまい、綾乃も泣き出してしまった。しかし震える声で放った最後の一言が、暁子に力を与えた。
「それでも・・・それでもこの霧生綾乃の義妹なの!? しっかりしなさいよ!! 暁子!!!」
綾乃の声が聞こえた気がした。でも、何と言っているのかまではわからなかった。
(ダメ・・・逃げられない・・・)
「さぁ宴もたけなわ、気持ちよくイカせて、俺の物にしてやろうかな」
虎次が暁子の乳房を揉み回しながら呟く。
(お嬢様・・・私は・・・もう・・・)
最早すべてをあきらめていた。この程度の男に快感で追い込まれてしまうなんて、もうどうしようもない、と思っていた。悔しくて悲しくて不甲斐なくて、感情が抑えられず涙が零れてしまう。
しかしそのとき、淫らな漆黒に塗りつぶされていく心に光が届いた。
「それでも・・・それでもこの霧生綾乃の義妹なの!? しっかりしなさいよ!! 暁子!!!」
はっきりと聞き取れた。綾乃が声をかけてくれている。
(義姉・・・さん・・・)
世界にたった一人だけの、敬愛する義姉の声が聞こえた。淫らな霧が晴れていく。
(私は誰・・・? 真里谷暁子。私のすべきことは何・・・?)
だんだんと暁子の目に光が、力が戻っていく。
(私がすべきことは・・・お嬢様をお守りする事。ここでやられていては・・・)
僅かな時間ながら、暁子の頭がフル回転する。どうやったらここから抜け出せるだろうか。
(答えは・・・下!)
答え合わせをしている時間はない。迷わず一気に体重を下にかけると、わずかながら空間ができた。そこから手足を抜き、虎次の下腹部に拳をたたき込む。
「ぐああああっ!」
油断しきっていた虎次はまともに拳を受け、飛びながら痛みを逃がしている。
(ここで・・・ここで行かなきゃもう・・・!)
蓄積された快楽の量が凄まじく、全身に力が入らない。しかし顔を二回叩いて気合を入れ直し、手早くワイシャツのボタンを止めると虎次に肉薄し、左の正拳を放つ。
「くそっ、なめんな!」
しかし体力の消費が激しく、普段では考えられないほどの遅さだった。左手を手繰られ、一本背負いで投げられる。身体の自由が利かず、肩から落ちてしまう。
「あああああっ!」
思わず暁子も肩を押さえて絶叫する。しかしそれも一瞬で、次の瞬間にはもう何事もなかったかのように立ち上がった。
「いつになったら倒れるんだよ・・・」
苛立ちとともに、前に出て掴みかかってくる。
「くっ!」
それを咄嗟にバック転で躱しながら両脚を虎次の左右の脇の下に通し、全身の力を使って相手を浮かせ、その勢いのまま頭をリングに叩き付ける。その筈だった。
「「あっ!?」」
声はほぼ同時だった。両脚を脇の下に通し、バック転で浮かせるまでは予定通りだった。しかしそこから叩き付けるまでに左肩が悲鳴を上げ、耐えられなかった。暁子の左腕の方から崩れ落ち、虎次は頭を強打し、暁子は首から落ちて意識を失ってしまった。この双方危険な落ち方に、レフェリーが思わず試合を止めていた。
<カンカンカン!>
試合終了の合図と同時に綾乃がリングに飛び込み、暁子に駆け寄る。声はかけなかった。ただただ心身共に深く傷ついた暁子を抱きしめていた。
綾乃がリングに入ったすぐあとだった。逃げるように姿を消したレフェリーと入れ替わりにもう一人の巨体がリングに上がり、綾乃の後ろに立つ。
「邪魔だよ綾乃ちゃん。ちょっと退いててね」
そう言いながら、亀太郎は綾乃を裏投げ気味のバックドロップでリングに叩き付けて動きを止めると、ロープに手足を拘束する。
「さて、トラを苛めた分を暁子ちゃんに返さなきゃね」
「いった・・・ちょっと、何する気!? 暁子に触ったら」
「綾乃ちゃん、君のせいでその暁子ちゃんがこれから傷つく羽目になるんだよ」
亀太郎はそのまま綾乃のジャージの前を開くと、乳房を揉み始める。
「なっ! やめて、離して!」
「嫌です。これは僕の股間を蹴った罰ですから」
左手で乳房と鴇色の乳首を、右手で秘部までも責めながら、亀太郎が冷たく綾乃を見下ろす。
「や、めて・・・んんぅっ!」
先程まで高められた快感の余韻が、再び綾乃の体を震わせる。
「なんだ、綾乃ちゃんも喜んでくれてるじゃないですか。嬉しいですね」
亀太郎の手が下着の中に潜り込み、直接秘裂を弄ってくる。
「ひあああっ!」
直接責められるのは快感が強すぎる。なんとか身を捩って逃げようとするが、亀太郎の興奮を煽るだけだ。
「ほら、ここはどうですか?」
「あっ、ふわぁぁっ!」
亀太郎は右手の人差し指と中指で秘裂を、親指で淫核に振動を送り込む。左手では乳房と乳首を苛め、綾乃から喘ぎ声を引き出す。
「ほらほら、声が出てる。本当は気持ちいいんでしょう?」
「違う、違・・・ううんっ!」
必死に首を振る綾乃だったが、亀太郎の手が動くたびに嬌声を上げてしまう。
「ああ、僕の手で綾乃ちゃんが喜んでくれてる。もっと、もっと・・・!」
興奮を高める亀太郎だったが、背後で暁子が無意識に洩らした呻き声に反応する。
「ずっとこうしていたいですが・・・また後で楽しみましょうね」
そう言いながらも綾乃の乳房を揉み続ける亀太郎だったが、最後に乳房を下から弾ませてから名残惜しげに離れ、気を失った虎次に活を入れて起こす。
「うん・・・?」
「トラ、気が付きましたか?」
少しボーっとしていた虎次だったが、記憶を反芻して、すべてを悟る。
「そうか・・・勝てなかったか」
「どうしましょうか?」
「迷うところじゃねえな。ギリギリまで楽しもうぜ」
「そういうと思ってました。じゃぁコーナー使わせてもらいましょう」
そういうと気を失った暁子の脚をもって引きずっていき、両脚でコーナーを挟むように配置してリング下に降りる。
準備が終わり、虎次が暁子を起こす。
「ほれ、起きろ」
「んあ・・・?」
呆けたような声をだして目覚めた暁子の両足首を亀太郎が思い切り引っ張り、股間をコーナーに打ち付ける。
「ひぎぅぅっ!!!?」
突然の衝撃に奇声を発し、一気に覚醒する。左腕にうまく力が入らず、右腕一本でコーナーを押し戻そうとするが、女性の力ではどうにもならなかった。
「さぁて・・・暁子ちゃんの全裸姿、ご開帳といくか!」
手が塞がる暁子のワイシャツを虎次が無理やり引っぺがし、オールヌードを強いる。
(ぉぉぉ・・・っ)
露わにされた暁子の肢体に、観客の視線が突き刺さる。ワイシャツを放り投げた虎次はそのまま暁子の後ろに座り、両の乳房を揉み、乳首を転がす。
「んっ・・・」
暁子の口から少しだけ吐息が漏れ、延長戦を見ていた観客が湧く。
「ほら、気持ちいいんだろ? 声出せよ、おら」
「それとも、こっちのほうがいいんですか?」
虎次は乳房を揉みながら珊瑚色の乳首をノックし、亀太郎は無毛の秘部をコーナーポストに擦りつける。
「暁子! 暁子!!」
暁子を救おうと綾乃も必死に暴れるが、乳房が揺れるだけでロープの縛めは外れてくれない。その間も暁子は二人の男に襲われている。
「ううっ・・・」
「早くいい声で鳴けよ」
「お断り・・・よ・・・!」
乳房、乳首、股間と女性の敏感な部分を責められながらも、暁子は声を上げようとはしない。
「ほら、乳首もビンビンにおっ立ってるぜ? さっさと諦めて、喘ぎ声を聞かせろよ」
「お股も気持ちいいんでしょう? 正直になりましょうよ」
虎次は両方の乳房を揉みながらしこり立った乳首を転がし、亀太郎は振動が伝わるように細かくポストに擦りつける。蓄積された快感と新たに生み出される快感が暁子を苛むが、それでも暁子は屈服の声を洩らそうとはしなかった。
(これしきのことで・・・男に与えられる快楽などに、負けはしない・・・!)
きつく唇を結び、吐息すら洩らすまいと決意する。
「やせ我慢するなよ。そら、ここはどうだ?」
虎次は乳首を弄っていた右手を伸ばし、偽りの優しさで淫核を転がす。
「っっっ!」
秘裂責めに加えての淫核責めに、咽喉元まで嬌声が込み上げる。それでも暁子は唇を結び続け、男たちの欲望に立ち向かう。
「絶対に・・・お前たちには、屈しない・・・!」
全く思い通りにならない暁子に、徐々に苛立ちはじめた虎次が亀太郎に指示を出し、脚を離させる。
「これじゃ楽しめないな、逆に生き地獄に堕とすか。綾乃ちゃんの厭らしい姿を見せつけてやろうぜ」
「その方がよさそうですね。綾乃ちゃんが感じて泣き叫ぶ様を、じっくりと・・・ね」
暁子をいたぶることを諦めて綾乃に標的を定めた亀太郎は、ニヤケ顔で綾乃に近づいていく。虎次は暁子を抱え上げてロープに拘束しようとしたが、伸ばした手を手繰られてリングに寝転がされる。
その隙に立ち上がった暁子は綾乃の前に立ち、亀太郎の股間を蹴りあげる。
「―――!」
亀太郎は声もなく悶絶し、リングから転げ落ちる。
「お嬢様に・・・近寄るな・・・!」
暁子の鬼気迫る表情に、観客席も一瞬静まる。しかし、虎次の目が冷たく据わる。
「・・・そこまで抵抗されるとよ、いいかげんキレるぜ」
もはや執念を通り越して怨念に近いような暁子の忠義に、今まで冷静さを崩さなかった虎次も我慢ができないようだった。腹部に思い切り蹴りを入れ、裏投げでリングに叩き付け、仰向けに寝かせた暁子にスパッツをおろして覆い被さった。
「ここまでしないとダメだとはな。ついでだ、衆人環視のこの場所で一生もんの思い出作ってやるぜ」
「や、やめてっ、いやあっ!」
ここから新たなショーが始まる。暁子が初めて見せた狼狽ぶりも相まって観客も異様な興奮に包まれ始めた。
「やめてぇ! 暁子! 暁子ぉ!」
「へへ・・・ゆっくり見とけよ綾乃ちゃん。君も後でこうして突っ込んでやるからな」
綾乃の必死の叫びも、逆に虎次の興奮を煽る。既に立ち上がった逸物を自分で掴み、暁子の秘部へと狙いを定める。
「どうだい、ロストバージンの瞬間をこんな大勢に見守ってもらえる感想は?」
虎次は逸物の先端を暁子の秘裂に擦りつけ、暁子の恐怖を煽る。
「やめて・・・それだけは・・・!」
体力の尽きた暁子は、最早首を弱々しく振るくらいしかできない。
「駄目だね。それじゃ、お楽しみの時間だぜ!」
虎次の宣言に、観客席がどっと沸く。
しかしそこに、氷水よりも尚冷たい空気を纏った声がかけられた。
「これで制裁の対象だな、森西虎次。かなり我慢させられたぞ」
「ああ!?」
声の主はナスターシャ・ウォレンスキーだった。
「聞こえなかったか? 制裁の対象だといった。そうでなくとも、この二人にこれ以上手を出すことは許されない」
「いくらアンタでもそれは聞けないね。第一・・・」
まだ言い募ろうとした矢先、ナスターシャの掌底が虎次を捕えた。派手に吹っ飛び、それだけで意識を飛ばす。
「やはりこの程度か、雑魚め。捕らわれていたときの大言壮語はどうした?」
担架と黒服数人がリングにあがり、意識もなく寝転がる虎次を乗せて運んでいく。
「お前らは歩けるな?」
「・・・はい」
綾乃の手足をロープから外し、ナスターシャはさっとリングを降りる。
「あの・・・」
「なんだ?」
そのナスターシャの背に、綾乃が声を掛ける。
「ありがとうございました」
「何のお礼だ? お前たちがリングにいると片付けができないからな。それだけだ」
それだけ言うとさっさと奥に引っ込んでしまった。
綾乃は裸の暁子にリング下に落ちていた衣装の上下を着させた。そして自分も服装を直し、暁子に肩を貸しながらゆっくりと花道を下がっていった。色っぽい格好をした二人には敢闘を称賛する拍手と粘っこい視線が飛ばされていた。
「暁子・・・」
あまりにも無残に嬲られた暁子を見て、養父は頭を抱えていた。
「引き分け、か。なかなか楽しませてくれたではないか、お前の養女は」
「御前」が声をかけるが、霧生元社長には届いていない。
「・・・ふむ。折角だ。別のことでも楽しませて貰うとするか」
そう呟いた「御前」は、もう霧生元社長を一顧だにせず部屋をあとにした。
「うう・・・っ・・・」
部屋に残された霧生元社長は頭を抱えたまま咽び泣いていた。実の娘に続き、養女まで辱められた姿を見せられたことで。それが自分の甘さに起因することが、一層霧生元社長を煩悶させた。