【A&A 其の七−】   投稿者:小師様  推敲手伝い:事務員

 先とは違う部屋に着く。ナスターシャはドアの方を向き、2回ノックをした。

 「『御前』、霧生綾乃の準備が整いました」
 「応」

 返事を聞き、ナスターシャがドアを開けて入るように促す。

 「どうぞ。中で『御前』がお待ちです」
 「・・・」

 どうぞと言われても、中で待つのは淫らな奉仕だ。自分が何をされるのか、何をしなければならないのか、想像だけで足が動かない。

 「・・・『御前』を待たせるな」

 苛立ちを含んだ小声で、ナスターシャが指示してくる。それでもなかなか動けない綾乃に業を煮やしたのか、いきなり尻を叩かれた。

 「あうっ!」
 「急げ」

 結局、覚悟を決める前に押し込まれるような形で部屋に入らされた。

 

 「さて、ここからはお前の事だ」

 椅子に座っていた「御前」が立ち上がる。それだけで部屋の空気が変わった、ような気がした。「御前」がただそこに居るだけなのに、緊張感が充満する。

 「お前が起きる前に言うたのだ。お前の義妹が、な」

 暁子が「御前」に話したことを聞かされた。

 ――綾乃には罪がない事。
 ――罰せられるべきは社長の借金を止められなかった暁子自身にあること。
 ――だからせめて綾乃への罰は暁子自身に背負わせてくれ。

 簡潔に言えばそういうことだった。

 「暁子・・・!」
 「というわけだ。真里谷も殊勝であり、霧生の家に忠実よな」

 そこで一旦言葉を区切る。何をするのかと思えば、急に「御前」に抱き寄せられ、目を覗き込まれる。

 「しかしそれはできなんだ。何故だかわかるか?」
 「・・・私が社長の実の娘だからですか・・・?」

 その答えに「御前」は満足そうに頷く。

 「そうだ。真里谷を抱いても罰にはならないかもしれぬからな。もっとも、会って分かったがそんな男ではないな」
 「ならば・・・」

 何故、と言いかけて綾乃は目を伏せて口をつぐんだ。

 「その先はわからずとも良い。さ、お楽しみの時間よ」
 「えっ、きゃっ!」

 突然抱え上げられ、そのままベッドの上に横たえられる。

 「あ、あの・・・!」
 「今更自分だけ助かるなどとは思うておるまいな?」

 心の奥底にしまっておいたはずの、ついさっき一瞬だけ顔を出した、怖い、逃げ出したい、という本心。それだけでも十分に暁子への裏切り行為と言えることを指摘され、情けなくなって目を閉じる。

 「真里谷は聡明よな。自分の立場、為すべきことを理解しておる」

 直接言われない分だけ余計に申し訳ない気分にさせられる。つい数日前に恩返しを、と気合を入れたのは何だったのか。

 「あ、あの・・・」
 「心配するでないわ。初めてなのはわかっておる」

 言うが早いか、バスローブの中に手が侵入し、胸を優しく愛撫される。

 「あっ・・・!」

 それだけでもドキッとする。明らかに暁子にしていたものとは違う。

 「ふ、男を誘う為の下着か?」
 「は、はぁうっ・・・あ、な・・・」

 動揺している間にブラジャーのホックを外され、直接乳房を揉まれる。

 「真里谷はそこそこであったが、お前の方が相当敏感だの」
 「あああっ!!!」

 乳首を指で転がされただけで、喘いでしまう。
 どれだけの経験を積んだのかは知る由もないが、どこをどうすれば感じるのかを熟知しているようだった。声を堪えようと思ったのは最初だけで、少し弄られただけでそんなことすら考えられなくなっていた。

 「面白いの、これだけ感度が高いおなごはそうは居らなんだ」

 バスローブをいつの間にか脱がされ、綾乃の身体全体に「御前」の手が躍る。

 「あっ、ああっ、あ・・・!!!」

 目の前が真っ白になる。まだ体を愛撫されただけ、しかも時間は十分経ったかどうか。それだけで体の痙攣が止まらないほどの高みへ登らされた。

 「はぁ・・・はぁ・・・」
 「これでは一回もたぬかもしれんな」

 苦笑しながら「御前」が呟く。

 「ま、よい。とりあえずは一度終わらせるとしよう」
 「え・・・?」

 リングの上で嬲られた時など比にもならない強烈な快感を与えられて、明らかに頭が動いていない。
 気が付いたときには御前もすでに服を脱いでおり、白髪には不相応の肉体が目の前にあった。

 「初めは痛かろうが・・・少々我慢しておれい」
 「あっ、あがああああああっ!!!!」

 一気に貫かれた。角材で串刺しにされたのではないかと勘違いするほどの衝撃。

 「あ、あ、あああっ!! 痛い、痛いよぉ・・・」
 「ふ、それが本物の『霧生綾乃』か」

 首を振って涙を流し、痛い痛いと泣き叫ぶ。元々高校生と言えど、そこにいるのは暁子を従えた主ではなく一人の無力な少女だった。

 「我慢せい。真里谷も耐えておったわ」
 「あうんっ・・・」

 乳房や乳首をはじめ色々なところを愛撫され、徐々に快楽が上回り衝撃と鈍痛を忘れていく。

 (あ、ああ・・・また、くる、っ・・・!)

 リングの上で受けた暴虐に似た欲望とは違い、紳士が手を取りエスコートしてくれる。それに似た優しさで、

 「今一度達しておけ。もう少し楽になるであろう」
 「あ、あはあああぁぁぁっ!!!」
 
 高みへと連れていかれる。最早自分ではコントロール不能な状態だった。

 「はぁぁ、はぁぁ・・・」

 呼吸すら甘さを含みはじめる。これからどうなってしまうのか。

 「では次の段階に進むとしようかの」

 膣内の具合を確かめると、「御前」はゆっくりと動き始めた。

 「・・・ふあんっ!!?」

 中を満たしたものが動き、襞を擦られる。それだけで飛びかけた意識が覚醒する。

 「中の具合もまだまだよな。真里谷に比べたら見た目もまだ子供よな」
 「ん、んんっ、ふあっ!」

 「御前」の呟きは綾乃には聞こえていない。綾乃は「御前」から与えられる快楽を捌ききれずに意識と無意識の狭間でフラフラしていた。
 次第に体の奥から与えらえる電流が、甘く、大きくなる。それに合わせるかのように綾乃の喘ぎも大きくなっていく。
 
 「あっ、あっ、ああっ!」

 もっと、もっと。もう少し、もう少しで。
 いつの間にか綾乃は快楽を求めていた。もう少しで登りきれるのだ。

 「もう少し、か。儂もそろそろ登りつめようぞ」
 「早く、『御前』・・・! あああっ!!」

 もう待てない。待ちきれない。無意識に体が動き、より強い快楽を求めてしまう。

 「儂を求めるか。初めてでこれとは、先が思いやられるの」

 「御前」の嘲り混じりの冗談も、今の綾乃には届かない。

 「だが、処女の締まりは格別よ。腰が自然と動くわ」

 「御前」のゆったりとした、それなのに急所を押さえた突き込みに、綾乃の官能が際限なく高められていく。

 「そろそろ、出すぞ・・・っ!」
 「ああっ、んああああああっ!!! あはあ・・・っ!!」

 凄まじい衝撃と共に体の中に注がれた。体内に熱さを感じる。これが交わりの最後なのだろうか。

 「満足か?」
 「・・・?」

 急に質問され、何が何だか分からない。

 「心地よかったか、と聞いておる」

 前髪をたくし上げられ、頭を撫でられる。そんなことをしてもらったのはいつ以来だろうか。もちろんその時は交わってなどいないが。

 「それは・・・」

 暁子に見つけられた少女漫画とは違い白馬の王子様は迎えに来そうにないが、それでもいいか、とも思い始めていた。

 今でも覚えている。暁子と初めて会った時、暁子はすでに二十代の大人だと思った。しかし暁子が同い年であることを聞いたときは頭を殴られたような衝撃だった。暁子を受け入れることができなかったのは、それも一つの要因だろう。だから、とにかく早く大人になりたい、と強く願っていたが、しかし一方でどこかに白馬の王子様がいていつか迎えに来てくれる、と思いたい子供の自分もいた。その葛藤が余計に苛立ちを呼び、暁子により強く当った。
 そして今、大人に向けて脱皮した。それを後押ししたのは漫画の世界のように思い描いていた白馬の王子様ではなく、「御前」と名乗る現実世界の巨人だった。

 「あっ」

 身体の中心を占領していたモノが引き抜かれた。またも膣壁を擦られ、声が出てしまう。

 「兎にも角にもまずは後始末をせい。ほれ」

 そう言った「御前」がティッシュを綾乃に渡す。それを受け取り、ゆっくりと血と精液と愛液の混合液をふき取っていく。

 「次はこれだ」

 終わったのを確認し、「御前」が指示を出す。

 「まだ終わりではないぞ。これを綺麗にしてもらわねばならぬからの」

 一度精を吐きだしたというのに屹立する逸物を見せる。

 「・・・はい」

 一度辺りを見回し、おしぼりが置いてあるのを確認する。

 「待て待て、それはまだ使うでない」

 おしぼりを取ろうとする綾乃を苦笑しながら制止する。

 「舐めよ」

 一瞬驚いたような表情をした綾乃だったが、躊躇いつつも顔を近づけていく。

 (要するに、そういうことをしろと・・・)

 綾乃は覚悟を決めて、そのまま咥えこんだ。

 「ほう、義妹と違い大胆だな」

 楽しそうに笑う「御前」を無視して舐め上げる。

 「全部吸い取れ。お前ならできるな?」

 特別な返事はせずにとにかく吸い上げる。途中吸い上げすぎて噎せ返るが、それでも一心不乱に続ける。
 そのうちに、「御前」の手が頭に置かれた。

 「もう良い、大儀であった。最後にそれで綺麗に拭けば良い」

 先ほどのおしぼりを指差して指示をする。綾乃も最後だからと丁寧に拭いていく。

 「うむ、よかろう。さて、服を着せよ」
 「服、ですか?」

 褌と和服、そして袴があるのは知っているが着せ方などまるで分らない。どちらかといえば着せてもらう側だった綾乃は目をしばたたかせて「御前」を見上げる。

 「ま、良い。それを持っておれ」

 手早く褌と足袋を付けると綾乃に持たせた肌襦袢を纏う。

 「次はそれだ」

 長襦袢と長着を持たせ、身にまとい、さらに帯を結ぶ。

 「次は袴よ」

 袴を持って来させると、脚を通して身に着ける。

 「最後はそれだ。覚えたな?」

 羽織を取らせ、身にまとう。すると、綾乃は抱かれていた時とは違う神々しさを感じた。

 「うむ、上出来だ」

 褒めの言葉と共に頭を撫でられる。親以外でそんなことをされたのは初めてであり、なんとなくくすぐったさを感じる。

 「さて、そろそろ時間だな。ナスターシャ」
 「お呼びでしょうか」

 銀髪の黒服を呼び込み、すぐに指示を出す。

 「霧生綾乃に服を着させい。その後、上の部屋へ連れて参れ。二人で試合を見る故な」
 「心得ました」

 それだけ伝えると、「御前」は先に部屋を出ていってしまう。

 「これを着ろ」

 そう言われ、渡されたのは高校の制服によく似た物だった。

 「着替えたら出てこい。次の部屋まで案内してやる」

 そう言い残しナスターシャは部屋の外に出ていってしまった。

 (試合、かぁ・・・)

 暁子は試合があるから、と言われて先に部屋を出て行ったが、大丈夫なのだろうか。大きな不安に苛まれつつも着替えて部屋を後にしようとする。
 一度振り返り、部屋を見渡す。自分が処女を失った場所をじっと見つめ、綾乃は静かにドアを閉じた。

 「行くぞ」
 「はい」

 短いやり取りで、ナスターシャの後を続く。「女」となったことがそうさせるのか、どこかふわふわと覚束ない足取りで。


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