【A&A 其の八】   投稿者:小師様  推敲手伝い:事務員

 その男は困っていた。

 (この人は魅力的だ。でもこの趣味だけは合わない)

 横に妖艶な美女を連れている。見た目だけならば女性の方が若く見える。しかしながら実年齢は女性の方が若干上なのだ。

 (女性は愛すものであって苛めるものではない)

 それがその男のポリシーだった。その一方で他の疑問もあった。

 (試合の日はいつもあの女の子だ)

 同じ子がリングに上がっている。何処の誰なのかは知らないが、あの子も魅力的だ。大人びた顔立ちをしているが、その男が見た限りではまだ成人していないだろう。

 (それに、あの子とこの人は何となく似ている気がする)

 ただ似ているだけなのかもしれない。知り合いなのかもしれない。しかしいずれにしても彼女の中にあるのは強い憎悪だ。

 (あの顔は、たぶん死ぬまで忘れないだろうな)

 薄ら寒さを感じながら、楽しそうな彼女の趣味に付き合うのだった。



 その女は楽しんでいた。

 (妾の趣味に付き合うてくれる男なぞなかなか居らぬわえ。その上・・・)

 本人もなかなかのいい男であり、金持ちときている。

 (良家の跡継ぎの割には中々の秀才。しかも男としても立派よ)

 自分の理想をすべて満たす男はそうはいないだろう。

 (今日はあやつの試合と聞いたから連れて来てもらったが・・・)

 視線の先にあるのは淫獄、もとい試合用のリングだった。

 (前回は首の皮一枚繋がったようじゃ、つまらぬ。しかし此度こそ・・・)

 強い憎悪や怒りが体から発せられると、表情は反比例するように輝かんばかりの笑顔になっていく。それがこの女の悪い癖だった。

 (・・・此度こそ冥府に堕ちよ、悪魔め)

 横で男が冷や汗をぬぐっている事にも気づかずに、女はリングを見つめるのだった。





 コン、コン

 「『御前』、霧生綾乃を連れて参りました」
 「入れ」

 銀髪の黒服、ナスターシャに連れられてある部屋に連れてこられた。中からは私を抱いた男の人の声が聞こえてくる。

 「中へどうぞ」

 ナスターシャの目力に押されるように部屋に入る。

 「ここへ座れ。ここからならばよく見えるであろう」

 「御前」に呼ばれ、隣に腰を下ろす。

 「ほう・・・中々似合っているではないか」

 着ているのは高校の制服によく似たものだった。品定めされるように全身を見られ、顔が熱くなる。

 「真里谷は勝てると思うか?」
 「・・・はい」

 そうか、と一言つぶやいた「御前」は視線をリングに戻した。丁度その時、歓声が会場内に木霊した。





 犠牲者の名前は「真里谷(まりがやつ)暁子(あきこ)」。身長161cm、B90(Fカップ)、W58、H88。年齢不相応に大人びた顔立ちをした美少女。細く整えられた眉、切れ長の目、高い鼻梁から形の良い小鼻へと続き、その下には濡れたような瑞々しい唇がある。瞳の色が左右で違うが、大人びた美貌を損なうどころか一層魅力的なものへと変えている。切れ長の目がキツイ印象を与えることもあるが、普段は柔和な表情をしている。栗色の髪を肩甲骨まで伸ばし、ポニーテールに纏めている。

 前回同様、暁子はガウンを羽織らずに入場してきた。今回の衣装は黒茶のブレザーに白のブラウス、常盤緑の紐リボンにチェックのスカート、白のハイソックス、ローファーという、暁子が通う高校の制服そのものだった。そして巾着袋と、前回とは違い白樫の木製大刀を帯びていた。制服と木刀という不釣り合いな組み合わせもそそるのか、それを見た観客から歓声が湧きあがる。
 今回も特に表情も変えずにリングのトップロープを飛び越える。勢いでスカートが靡くが、誰の目にも下着は映らなかった。

 「真里谷選手、また会えて嬉しいよ」

 鼻の下を伸ばしながら話しかけるレフェリーを無視し、横を通り過ぎる。

 「今日はブレザーかい。よく似合ってるな」

 レフェリーはうんうんと頷きながら暁子の後姿を眺める。
 暁子の高校では、女子の制服は夏は半袖のセーラー服、冬はブラウスとリボンにブレザーとなっている。

 「ちっ、無反応かよ」

 吐き捨てる様なレフェリーの言葉すら聞き流す。
 そうこうしているうちに、対戦相手がレフェリーに呼ばれて入ってきた。

 「おや、見ない顔・・・」

 少し驚いたような顔をしたレフェリーが固まる。

 「なんです? 何か言いたいことでも?」
 「い、いや、怖いくらいに男前だな」
 「それはどうも」

 レフェリーの前に現れた男は190cmはあろうかという長身で、切れ長の目には自信が満ち溢れている。がっしりとした顎は男性的な魅力で、頬は引き締まっている。左頬に大きな傷があるが、それでも売出し中の俳優やモデル程度は裸足で逃げ出すくらいの男前だった。ただ背が高いだけでなく、首などの見えている部分はもちろん、立ち姿を見ても背筋が伸びており、ストイックに鍛え上げていることがわかる。

 「簡単には負けてくれるなよ。下手な試合は寿命が縮まるぞ」
 「努力はしますけどね、可愛い子は愛でる主義なんですよ」
 「ふん、どの口が言うのか知らんが、精々頑張ることだな」

 何か言いたいことを呑みこんだレフェリーが暁子の方に向き直り、近づいてくる。

 「あれが一戦目の・・・。真里谷選手、聞いているか?」

 暁子に近寄り話しかけるが、暁子は相手の方を見たまま固まっていた。

 「俺を無視とは、いけない子にはお仕置きだな」
 「えっ、あっ!! うっ、くうっ!!」

 突然レフェリーの右手が胸を揉み、左手はスカートの中へ潜り込み下着の中へ入り、指が秘裂を割って侵入する。今までに無かった無防備さを晒した暁子に観客の視線が釘付けになる。

 「や、やめて・・・!」
 「無視した罰だ、と言ったはずだぞ。おとなしく受けないなら誰か代わりに試合してもらわなきゃな」

 暁子も最初は刺激に負けず抵抗していたが、レフェリーにそう言われては抵抗できなくなってしまった。暁子が反抗すれば、間違いなく綾乃がリングに上げられる。綾乃を守るためには、耐えるしかない。両手を下し、顔を逸らして時が過ぎるのを待つ。

 「そうそう、それでいいんだ」
 「く・・・!」

 そう言う間にレフェリーは暁子のブラウスのボタンを一つ外し、ブラジャーの上から胸を揉みだす。

 「毎回罰を受けるような行動を取るとはなぁ。レフェリーを舐め過ぎじゃないか? ええ?」

 そのままブラを無理矢理ずらし、直接乳房と乳首を弄り回す。

 「それとも、こういうことをして欲しいのか?」

 勝手なことを言いながらもレフェリーの手は止まらず、乳房、乳首、秘部を思うままに嬲っていく。

 (毎度毎度この男は・・・でも、お嬢様を守るため。耐えなければ・・・っ!)

 秘裂を苛めていたものとはまた別の左手の指が淫核を押し潰す。喘ぎ声が出そうになるが、唇を噛み、右手で左の手首を掴んで耐える。

 「声は出していいからな。お客さんへのサービスにもなる」

 にやつく笑みを洩らしたレフェリーは、暁子の乳首を転がし、秘裂をなぞる。じっと耐える暁子の顔を見つめながら、指と言葉で苛めていく。観客席からは暁子に対する野次や指笛が、レフェリーには責め方の希望などが飛ばされる。
 暁子にとっては屈辱の時間が流れていった。



 「やはりあの手の男はおなごに好かれるようだな。眼福か?」

 リングに上がった超絶イケメンを眺めていた時に急に話しかけられ、綾乃ははっと我に返った。

 「えっ、い、いえ、その・・・」

 突然のことで反応できず、上手く言葉が出てこない。

 「素直でないの。仕置きせねばなるまい」
 「え、きゃっ!!」

 綾乃は暁子とは違い冬服ではあったがブレザーは着ていなかった。「御前」は首に巻かれたリボンを魔法のように一瞬で外すと、ブラウスの前を引きちぎった。

 「ご、『御前』・・・」
 「言い訳は聞かぬぞ」

 そういうと綾乃を膝の上に乗せ、真白のブラジャーをずらして綾乃の乳白色の乳房と鴇色の乳首を弄り回す。

 「あっ、ふわあっ!!」

 先程まで昂ぶらされた余韻が、忽ち快楽となって襲い掛かってくる。「御前」は更にパンティの中にも手を入れ、秘裂に指を埋めた。

 「ほれ、見よ。お前の義妹も嬲られておるわ」

 「御前」の言葉に導かれるように、視線をリングに向ける。

 (暁子・・・んんっ!) 
 
 その視線の先では、暁子がレフェリーに甚振られていた。

 「義妹と同じように責められて、膣が濡れてきたようじゃの」
 「ん・・・! そんなことは・・・!」
 「そんなことはない、か。嘘は良くない、と言うたがの?」

 そういうと秘裂の中に埋められた指を綾乃の眼前に翳す。その指はたしかに綾乃の愛液で濡れていた。



 「そろそろ罰も終わらせるか」

 ブラウスの中から右手を抜き、パンティの中から左手を抜き、最後に胸を一揉みしたレフェリーがようやく離れる。しかし、暁子は最後まで喘ぎ声一つ上げずに耐えて見せた。

 「話を戻すと、あれが一戦目の相手だ」
 「そ、そうですか」

 暁子の顔は上気しているのか真紅に染まり、心なしか声が上ずっている。

 「・・・あの顔がタイプなのか」
 「な・・・! 私は!」
 「そうかそうか」

 笑いながらレフェリーは背を向けて暁子から離れた。



 手早く下着とブラウスのボタンを直して対戦相手と対峙するが、暁子は上を向けなかった。

 (こんなことではダメだ。しっかりしないと)

 頬を二回叩いて顔をあげる。今までのような内なる恥ずかしさも今は感じなかった。
 ちょうどその時、黒服がアナウンスを始めた。

 「それでは本日の試合を始めさせていただきます。本日は二試合とも通常の武器戦となります。是非お楽しみください」

 アナウンスに反応するように徐々に観客のボルテージが上がり始めた。

 「赤コーナー、『堕ちたカリスマホスト』、剣!」

 和装に角袖外套を纏った長身の男が爽やかな笑みでコールに応え一礼すると、観客の女性たちのため息が聞こえてくる。絶世の「美女」ならぬ、「美男子」だった。

 剣は元ホストであり、店でもナンバーワンの経験もあるほどの実力者だった。口も達者で店に来た女性にお金を使わせることにかけては右に出るものが無かった。しかしある時店に来た女性が金を払えなかった事がきっかけで世界が一変する。利子分は体で払ってもらっていたのだが、その女性の親が泣きついてきた我が娘を目に入れても痛くないほど可愛がっていたせいもあって、未払い金の請求をした剣を探し出し、裏ルートの人間を使って店を破壊し、剣の顔に一生消えない傷をつけさせた。そのことが原因で店にいられなくなってしまった。

 「青コーナー、『馥郁たる武闘姫』、真里谷暁子!」

 いつものようにコールは本格的メイド風に一礼する。すると一気に観客たちが盛り上がった。

 「すぐ始めるぞ。用意はいいか?」

 暁子は左手に木刀を持って、剣は右手に青紫の房紐が付いた木製の十手を構え、頷いた。


 <カーン!>


 (鍛えているのは体だけ? あまり強そうには・・・)

 それが暁子の、相手の構えを見た時の感想だった。

 「参ります」

 宣言と共に剣が出て来る。否、出ようとした。

 「っ!?」

 それよりも早く暁子の掌底が剣の顔面に迫る。

 「ちっ!」

 左腕で掌底を受け流しながら距離を取る。顔はにこやかだが少し焦りの色が見える。

 「怖いお嬢さんですね。いやぁ、まったくまったく」

 大仰に肩を竦めて困った顔をする。相好は崩さないが、少し冷や汗が滲んでいるようだった。

 「ハッ!」

 気合と共に剣が前に出る。十手を突き、振るって暁子を攻め立てる。

 「フッ!」

 しかし、その程度では暁子の敵ではない。暁子は下からの切り上げで握っていた十手を弾くと、余勢を駆って剣の右肩を狙って突きを繰り出す。

 「!」

 剣は弾かれてずれた体を利用し、右肩が後ろになる様に腰をひねって何とか躱し、あわよくば木刀を絡め取ろうとする。暁子にはそこまで見えており、あえてそれ以上の追撃はかけなかった。

 (十手、ですか・・・)

 武器そのもののリーチは短いが、それを補う剣の長身があり、何より彼の実力は全て見切れているわけではない。迂闊に剣の手元に行くのはいささか危険というものだ。
 そういう暁子の気持ちを知ってか知らずか、剣が再度前に出る。しかし今までと違い、むやみやたらと責めるのではなく、暁子の間合いを測る様に前後左右に動き、間合いギリギリの出入りを繰り返している。

 (何処で動くかを見たいようですが)

 そういう意図は暁子にも読める。

 (趣向を変えましょうか)

 左手で持っていた木刀を中段で構え直し、剣を見据える。

 「フッ!」

 三度、剣が攻撃を仕掛ける。中々素早い連続の突きだったが、暁子は全ていなしていく。暫く剣が遮二無二攻撃を仕掛けていたが、暁子が前に出ようとしたのを見てとり、距離を空ける。それを見た暁子も追撃はせずに木刀を腰元に納めて一息つく。

 「もらった!」

 その自然な暁子の「一息」を見た剣が脚を狙って十手を振るった。

 「そうは参りません」

 暁子は首を横に振りながら十手を居合で払った。
 元々暁子が仕掛けた罠だった。武器を弾くためにあえて息をついてみせたのだ。振り上げた木刀を上段から、剣の左肩目がけて打ち込んだ。

 「ぐっ!」

 剣の左肩には確かに当てることができたが、動きを止めるまでには至らなかった。何か人の体とは違う固い感触だった。

 (固かった。まさか、帷子?)

 武器戦だからボディチェックはない。だからと言って、持ちこんだものが武器だけとは限らない。暁子は初歩の初歩を失念していた。

 (しっかりと突くべきだった)

 しかも剣は当る瞬間に体をひねって浅手で済むように逃げていた。簡単な餌に引っかかった剣を甘く見すぎていたのだ。

 「いたた。強いねぇ」

 依然としてニコニコとしているが目は笑っていない。

 「でも、まだ終わらないからね!」

 外套からまた木製の十手を取り出す。今度のものは暁子の木刀とあまり変わらない、長十手だった。

 (・・・!)

 これで武器のリーチ差は無くなってしまった。今度は暁子も気合を入れて中段で構えなおす。

 「さぁ、行くよ!」

 剣が前に出て、十手を振るう。武器の長さの為か、一撃が先程よりも重い。その分受けると次の行動が遅れてしまう。

 (ダメ、一旦外へ!)

 一撃をきっちりと受け止め後ろに下がろうとした。

 「!?」

 しかし、何故か足がもつれて転んでしまう。見ると、右足首に分胴付きの鎖が巻き付いている。その鎖の反対側は、剣の左手の中にある。

 「しまっ・・・!」
 「ダメダメ、こっちおいで!」
 「あっ!」

 鎖を引っ張られ、一気に剣の足元まで引っ張られる。

 「くっ、退けえっ!」
 「そう言われて退く人はいないよ!」

 暁子も何とか木刀を振るうが、剣の十手でもぎ取られてしまう。

 「あっ・・・」
 「さて、君はどんな女の子なのかな?」

 そう言うと木刀をリングの中央へ放り投げ、暁子の腹の上に座り胸を揉む。

 「ほう、なかなか」
 「触るなっ!」

 パァン、と乾いた音が響き渡った。暁子が剣の頬に平手打ちをかましたのだ。

 「手癖が悪い小猫ちゃんか、しょうないな」

 尚も暴れる暁子の両手首を掴み、返礼とばかりに鳩尾に掌底を落す。無防備な部分に男性の腕力をもろに食らい、悶絶する。動けなくなった暁子の足首は右足首に絡んだ鎖で縛り、両手首は十手の房紐を使ってクロスさせて一番下のロープにきつく括り付けた。

 「これでいいかな」

 改めて太ももの上に座った剣から逃げるために必死で腕を動かしてもがく暁子だったが、拘束は解けない。

 「大丈夫みたいだね。では」

 剣が両手で暁子の胸を揉んでくる。

 「くっ!」

 不快であり、不愉快だった。しかし。

 「こんなに可愛い子がこんなところにいるなんてね」
 「う・・・んっっ!」

 剣に外見を褒められた。その瞬間、確かに胸のあたりから快感を感じた。

 「フフ、おっぱいも大きくて、これだけの美少女。なのにこんなところにいる。何か理由があるのかな?」
 「んん・・・っ」

 初めて剣を見たとき、素直に恰好いいと思ってしまった。つまり暁子の細胞が、本能が、剣に惹かれているのだ。前に二度もリングに上がったが、初めからこの昂りを感じたことはなかった。

 「どうしたの? 顔が赤いよ?」

 茶化すように暁子に話しかける。その間も胸への責めは止まらない。

 「何でも・・・っ!!」

 剣の指が服の上から乳首を潰した。その瞬間、電気が暁子の中を走った。

 「そう、でも息が荒いね。暑いのかな?」

 そういうと暁子のブラウスのボタンを全部外し、前を大きく開いてしまう。

 「あっ! な、なにを!」
 「反応が可愛らしいね。木刀を握ってるときとはえらい違いだね」

 薄く笑いながら、本紫のブラジャーもずらして乳房を露出させる。途端に観客席は地鳴りのような大声援が響き渡る。

 (このままでは・・・早く、抜け出さないと・・・)

 何とか身体ごと揺すって紐を緩めようとするが、結果は乳房が揺れるだけだった。

 「そんなに揺らさなくても、大きいのはわかってるって」

 そういいながら暁子の両の乳房と乳首を弄る。

 「っっ・・・!」

 先程よりも更に強い電撃に打たれる。それでも女の意地で、声だけは出してやらない。しかし頬は上気し目も潤んでいる。

 「僕は素直な女の子の方が好きだな。感じたら声出してくれていいんだよ?」
 「っ、っ・・・!!」

 口を真一文字に結び、首を振って抵抗の意思を示す。その時だった。

 (よし、緩んだ!)

 全身を使って動いていたのが良かったのか、手首を括っていた紐が少し緩んだ。それだけの隙間が有れば暁子には十分だった。
 一瞬で手を抜き、余勢を駆って鳩尾に掌底を叩き込んだ。表面ではなく、鎖帷子を貫通して体内に衝撃が届くようにと。

 「ぐふっ!!」

 剣の体重が浮いた隙に脚を引き、鎖を解こうとする。しかし、気が急いているせいか中々解けない。そのうちに剣が立ち上がり、長十手を振り下ろそうとしていた。

 「このっ!!」
 「!!」

 気合と共に振り下ろした十手を転がって躱し、その先に転がっていた木刀を掴む。しかし鎖は未だ解けず両足首を拘束している。

 (情けなや、責められたばかりか拘束を抜ききれないとは・・・!)

 内心は表には出さない。膝立になって目を閉じ、木刀を居合の様に構える。一つ違うところは、木刀の背が下になっている事だった。頬こそ上気しているが、凛とした表情はまだ暁子が闘志を失っていない証拠だった。

 「そう言う表情は可愛くないね。でも今度こそ極楽浄土にしょっ引いてあげるからね」

 そういうと、武器と腕の長さを利用した突きを放ってきた。否、放とうとした。その途端、暁子が目を開いた。

 「ハッ!」

 突くために腕を引き、前に出そうとした瞬間、暁子の木刀の柄が右の手の甲を強か打ち、たまらず剣が十手を取り落してしまう。そのまま動きが止まってしまった剣の顎をさらに木刀の柄で打ち上げた。

 「がっ!」

 剣がたたらを踏んでいるその隙に暁子はやっと鎖を取外すと、木刀を握って構えなおす。左肘が胸元に、右手首が右耳の横にくるように。

 (この後はない。防御なんていらない。これで、終わらせる)

 「・・・フッ!」

 一気に間合いを詰め、怯んでいる剣の左肩口から袈裟切りに木刀を振るった。

 「はあああああああっ!!!」

 バシッ、と高い音が鳴り響き、剣が崩れ落ちた。

 (天神流剣術が一、『岩砕』・・・)

 意識を失った剣を蹴り落とし、ふっと一息をついて木刀を納める。自陣に戻ろうと振り向いたときだった。

 (あっ・・・!)

 指笛が飛び、観客の視線が胸元に集まっている。視線を下すと、ブラウスの前が開かれ乳房が露出していた。夢中で忘れていたが、乱れた服装を直していなかったのだ。

 「見事な技だな、真里谷選手」

 賞賛を送りながらその視線はやはり暁子の乳房に注がれていた。

 「見ないでください!」

 慌てて前を隠すが、その羞恥心からでた乙女な行動に観客から卑猥な野次が飛んだ。

 「それは失礼。ずっと出しっぱなしだから、そういう性癖なのかと思ったよ」

 レフェリーも嘲笑しながら、視線を動かそうとはしない。

 (下衆め、後で地獄に送ってくれる)

 顔には出さずにそんなことを思いながら、暁子は自陣に戻り服装の乱れを正していた。



 「一つ勝ったな」
 「はい・・・あふぁっ」

 綾乃を膝の上に座らせ、露出させた綾乃の乳房を責めながら呟く。既に綾乃の乳首は固く尖って震えており、「御前」の手を今か今かと待っているようだ。

 「次は勝てると思うか?」
 「ああっ・・・ふあ!」

 さらに秘裂への責めも続いているが、淫核には触れず、また綾乃が感じる場所も微妙に外していた。

 「答えよ。さもなくば、永遠にこのままぞ」
 「ああっ・・・」

 答えたくても口を開けば喘ぎ声が先に出てしまう。

 「どうした? 真里谷とは違い、堪え性がないな」

 その言葉に綾乃の精神が奮い立たされる。少しでも多く快楽を意識の外に追いやり、口を開く。

 「あっ、はああっ・・・あ、あき、こが・・・勝ちます・・・」
 「そうかそうか、よう言えたの」

 その言葉と共に乳首と淫核を弾かれた。

 「ああ・・・!!!」

それだけで綾乃は昇り詰めた。 
 


 服装を直した暁子は一旦コーナー下へ降り、持ってきた巾着袋から竹筒を取り出して中の水を飲む。そんなありふれていると思しき行為ですら男たちの視線を惹きつけるのか、暁子のすぐ近くの観客からは生唾を呑む音も聞こえる。

 「真里谷選手、何をしているんだ。早く戻ってこい」
 「ええ、ただ今」

 それを答えるまでにリングに入って見せる。

 「次の試合だ。対戦相手は・・・これから入ってくるだろう」
 「はあ・・・」

 急かされたはいいが、対戦相手はまだ入ってきていない。

 (大丈夫、まだ動ける)

 その間に身体の感覚を確認する。疲労感が全く無いわけではないが、闘えないというほどでもない。

 「お、来たな。あれが次の対戦相手だ」

 男が一人、リングに入ってくる。両手にはトンファーを携えていた。

 「続いての対戦相手は、亀河健史選手です!」

 リングにあがった男が暁子を見ると、剣とは違いすぐに鼻の下を伸ばし始める。

 「顔も身体も抜群だな。これで高校生とは生意気だぜ」
 「油断するな。そんなに弱い相手じゃないぞ」

 すぐにでも襲い掛かろうとする亀河にレフェリーが注意する。

 「ふん、なんとかするさ」

 小声で呟くと、暁子に向かって右手を差し出した。

 「よろしくな」
 「はぁ・・・」

 一度亀河の顔をじっと見た暁子だったが、それでも笑顔で右手を差し出した。

 「隙あり・・・あれ?」

 亀河は単純に暁子の右手を引いてリングに投げるつもりだったのだが、暁子はリングに根を生やしているのか、いくら引きこもうとしてもビクともしない。
 と、突然暁子が木刀を足元に落とした。

 「何だ?」

 と思う間もなく暁子が亀河を懐に引き込み、大外刈りの要領で叩きつけた。

 「ぐおっ!」


 <カーン!>


 ゴングがなったのはその瞬間だった。一度転がって距離を取った亀河がトンファーを構え直して前に出る。

 「シッ!」

 トンファーで突いて、振るうが暁子は難なく躱していく。

 「くっ!」

 とにかく前に出て攻めるが、暁子は攻撃を見切ってすべて躱す。

 「フッ!」

 一瞬の隙をついて、木刀を拾い上げた暁子が反撃に転ずる。肩へ、腹へ、腕へ、連段突きを放つ。それらは亀河もすべて弾いたが、逆袈裟に振り下ろした木刀を受け止めた右手のトンファーの短い突起部分に引っかけて跳ね上げた。亀河の右手のトンファーはクルクルと回転し、リングの外に落ちていった。

 「なっ!」

 トンファーを絡め取られ、亀河の顔が驚きの表情を浮かべる。
 さらに暁子が猛攻を開始し、亀河も間一髪、残ったトンファーで弾き受け流していく。

 (貰った!)

 防御が遅れていった亀河の動きの間隙をつき、暁子は木刀を上段から振り下ろそうとした。その瞬間だった。

 「真里谷選手、離れろ。ロープブレイクだ」
 「あっ!」

 突然レフェリーが後ろから抱きつく。亀河の手がロープを掴んでいる事をいいことに、暁子の胸を鷲掴みにして揉む。

 「この、離せ!」

 暁子が力でレフェリーを振りほどいている間に、亀河が距離を取って仕切り直す。

 (くっ、逃げられたか。・・・このレフェリーはそんなに死にたいのか)

 内心舌打ちしながら亀河と相対す。亀河は左手で持っていたトンファーを右手で構えなおしていた。

 「思ったより強いな」

 舌なめずりする亀河に寒気を感じた暁子が反射的に前に出る。

 「おっと、させるか!」

 それに対して亀河がトンファーを振るい、暁子の全身を止めようとする。

 「ほらほら、もっと来いよ!」

 間合いとタイミングを計る暁子を挑発しながら攻めていく。その時だった。

 「!!?」

 何かが光った。そう思った時には遅く、左手で左目を守ろうとしたが間に合わなかった。突然暁子の視界が真っ白になったのだ。

 「へへっ、見ちまったみたいだな」

 動きの固まった暁子に接近しトンファーを振るう。

 「!」

 反射的に屈んだ。すると、頭のすぐ上をトンファーが通過していった。

 「なっ!」

 トンファーを振るうが暁子に全く掠らない。その一方で暁子も尋常でないほどの汗をかいていた。神経のすべてを使って亀河の動きを感じ取っている為だ。

 「はぁ・・・はぁ・・・」

 何とか攻撃を躱しているうちに、徐々に視界が回復する。ぼやけてはいるが、段々と亀河の輪郭が見えてくる。

 「くそっ!」

 左からの動きが見えた。暁子はその腕を躱し、木刀を袈裟に振り下ろした。はずだった。

 「えっ!?」

 右手首に何かが絡みついた。突然の出来事に暁子の動きが止まってしまう。

 「どうした、試合はまだ終わってないぜ!」

 言葉と共に、亀河の振るった右腕が戻ってくる。腕と共に戻ってきたトンファーが回転し、暁子の顎に直撃する。

 「あ・・・っ」

 脳を揺さぶられ、一瞬体が浮く。

 「このメスガキが!」
 「ぐぶっ! げふっ!」

 咆哮と共に暁子の腹へ、何度も何度もトーキックが炸裂する。たまらず暁子は膝から崩れ落ちた。せり上がってくるものは何とか飲み下すが、左手で腹を押さえて震えている。

 「よくやったな、剣」

 暁子の右腕に巻きついたのは、剣の万力鎖だった。

 「く・・・あ、あなたの、試合は・・・!」
 「試合終了のゴングは鳴っていないはずですよ」

 剣は意識を飛ばしたが、確かにゴングは鳴っていなかった。そのことに気づき、愕然とする。

 「そういうわけで、ここから本番だ」

 木刀をもぎ取ってその場に捨てた亀河が暁子を担ぎ、剣の所へつれていく。剣は暁子の両腕をトップロープの上から外へ出し、両脚は膝をサードロープの下から掛けるように曲げ、両手首と両足首を青紫の房紐で拘束する。

 「あ、っ・・・! ぐうううっっ・・・」

 全身を引き絞られ、呼吸すら難しい。

 「痛いか? でもここからは痛いだけじゃないぜ」

 言うが早いか亀河が暁子の右胸を鷲掴みにする。

 「ぐうっ・・・」

 不快感も痛みも逃がすこともできず、抵抗することもできない。せめて視線だけでも、と正面にいる亀河を睨みつける。

 「いけませんね、女の子にはもっと優しくしないと」

 そういうと剣は暁子の髪を掴んで上を向かせ、キスをしながら左胸を揉む。

 「んむっ!? んんんっ・・・!」

 舌をねじ込もうとしてくるが、暁子も何とか首を動かして逃げる。

 「女子高生の制服ってのもなかなかそそるが・・・やっぱり」

 そう言いながら亀河がブレザーのボタンを外し、ブラウスを無理矢理引きちぎる。

 「んむっ!?」
 「生乳だよなぁ」

 そのまま本紫のブラジャーもずらし、直接乳房を揉む。乱暴な亀河の責めと繊細な剣の愛撫というミスマッチが逆に暁子の官能の炎を内から燃え上がらせる。

 「どうだい、感じるかい?」
 「んんっ・・・」

 感じてない、と否定したいが剣に口を塞がれていて言葉にならず、しかも乳首は徐々に固くなり始めていた。

 「段々立ち上がってきたな。これでどうだ?」
 「んぐうっ!!」

 乳首を潰され、全身が強張る。すると、拘束されている全身に痛みが走る。

 (まずい、まずい・・・! あの時と、同じ・・・)

 キスをされて、体が熱くなる。初めてこのリングに上がった時と同じだった。しかもあの時よりも浸食が早く感じる。

 (速く何とかしなければ・・・んあっ)

 少しづつ浸食されていく感覚に焦りを覚えつつ、暁子は縄抜けを試みていた。



 「まったく、勝ちを急いだか」
 「ああっ、ふああっ!!」

 溜め息をつきつつも「御前」の綾乃を責める手は止まらない。

 「闘い方が清廉すぎる。考え方が一本気過ぎる。そうは思わぬか?」
 「うんんっ、あふうっ」

 もはや答えるどころではなかった。達しそうなのに手が届かない。ギリギリのラインで綾乃は喘がされ続けていた。

 「しかしそれが、真里谷暁子の良さでもある、か。であるならば・・・」

 何かを考えながら、「御前」は綾乃の体を楽しんでいた。



 「中々しぶといですね」
 「ぷはっ・・・ぐう・・・」

 剣に乳房と乳首を愛撫され声が漏れそうになるが、何とか意地で抑え込む。

 「どれどれ、じゃ俺はこっちをもらうか」

 外から眺めていたレフェリーが暁子の前にしゃがみ込み、スカートを捲る。

 「こっちはどうだ?」
 「んんっ・・・」

 レフェリーに下着越しに秘部を擦られ、全身が震える。

 「段々湿ってきてないか、ん?」
 「ううっ・・・そんなことは・・・!」

 首を振って否定する。しかし頬は紅潮し、目は快楽に潤んでいる。

 「まどろっこしいな。こいつは邪魔だ」

 レフェリーが本紫の下着を下ろす。すると、暁子のまっさらな丘が顔を出した。

 「おいおい、こいつ、毛生えてないのか!?」
 「ああ、面白いだろ」
 「珍しいですね」

 三者三様の反応をする。亀河はそれを見た途端に目が血走りだす。

 「たまんねぇ! 何としても啼かせてやるぜ!」

 気合の入った亀河は責めていた乳房にむしゃぶりついた。

 「んんっ・・・!!」

 稲妻に打たれたが、それでも喘ぎ声は出さない。暁子も必死で耐える。

 「俺ももっと頑張るかな」

 そういうとレフェリーは舌で秘部を割り、中を責め始めた。同時に淫核を潰す。

 「あっ・・・ひあっ!!」

 ここまでされては暁子も耐えきれなかった。そして、剣はそこを狙っていた。

 「あはあ・・・んむむむっ・・・!」

 再び剣にキスをされ、今度は舌を絡められる。舌から、乳房から、乳首から、秘部から、淫核から快楽を送り込まれ、全身が強張る。するとまた身体を絞り上げられ、どんどん追い込まれていく。脳内も視界も桃色に染まっていく。

 (んあっ!! ダメ、速く・・・! もう少しで・・・)

 しかしどれだけ責められても、快楽に喘ぎ声が出ても、暁子は諦めていなかった。ただ、猶予の時間はもうほとんど残っていない。

 (ううっ・・・もう・・・あっ!)

 手足を拘束していた紐が、やっと緩んだ。

 (ふあ・・・どけぇ、下衆共め!)

 淫蕩に染まる脳内から快楽を無理矢理追い出し、暁子の舌に絡まる剣の舌に噛みついた。

 「〜〜〜〜!!!!」

 圧倒的優位に立って油断していたのか、突然の抵抗に反応できなかった。剣は口を押さえ、リングの外を転げまわる。
 紐を外した暁子はレフェリーの顔に膝を叩き込んだ。そのままレフェリーは顎を押さえてリングの外に転げ落ちる。

 「ぐあっ!」

 そして腕も外し亀河の身体に肘を叩き込む。

 「がっ!」

 何とか男三人を切り離して下着を直すが、その後すぐ攻撃に移れるほどのスタミナは残っていなかった。四つん這いになって肩で息をしている。

 「ぐっ、このっ」

 トンファーを振りかぶる亀河の下腹部目がけ、暁子はローブローを放った。

 「ぐおっ!?」

 亀河が股間を押さえて飛び回り痛みを逃がしている間に暁子もロープを掴んで立ち上がり、息を整える。

 (落ち着いて、呼吸を整える。全身に酸素を回す様に・・・)

 この期に及んで師範の教えが頭の中を駆け抜けていく。

 『息が上がっているのは胸や肩で息をしているからだ。丹田を意識せよ』

 丹田を意識して呼吸すると、上がっていた息が落ち着いていく。着衣の乱れも見えてくる。人の気配を感じられる。手早く服装を直し、こちらを向いた亀河に対峙した。

 「くそっ、この・・・!」

 亀河が武器を振るう。暁子も巧みな足さばきで躱して見せる。

 (あの武器、よく見ると・・・)

 先端にガラスのようなものが見える。光り方や形から、恐らくトンファー型のマグライトなのだろう。

 (思い込みは良くないですね)

 トンファー使いだと思い込んでいた為に至極単純な事を見逃していた。つくづく自分の甘さが苦々しく思えてしまう。

 「ちょこまかと!」
 「!!」

 呼吸を整えてもスタミナは回復しづらい。足がもつれて後ろに転びそうになってしまう。

 「貰った!!」

 隙を見つけたと思った亀河が無造作に距離を詰める。

 「はっ!」
 「うわっ!」

 バック宙で躱しつつ、突っ込んできた亀河の両脇に脚を通して掬いあげ、亀河の頭からリングに叩き付けた。亀河の意識を断ち切った事を確認すると、暁子は亀河をリングの下に蹴落とした。丁度その時だった。

 「よくもレフェリーに手を挙げたな!」
 「よふもやっへくへまひはね・・・」

 レフェリーと剣がリングの上に戻り暁子を挟むように立つ。暁子はレフェリーを後ろに背負い、十手を構えた剣と相対する。

 「今から罰を」

 言いかけたレフェリーに当身を食らわせる。レフェリーをのした暁子は当然剣を背負う形になり、剣もそれを見逃すはずもなく一気に距離をつめる。

 「まだまだ・・・」

 振り向きざまに木刀で一撃を与えようと思った暁子だったが、その間合いの内には剣はなかった。しかも剣は口内に溜まった血を霧のように暁子の顔に吹きかけた。

 「うあっ!?」

 暁子の顔や胸元に赤い斑点が付き、凄惨な絵になる。しかも左目付近には血の塊が付いており、目を開けることができない。

 (しまっ・・・! 来る!!)

 長十手を振り下ろす剣の一撃を転がって躱し、距離を取って中段に構えた。

 (すごい・・・呼吸を意識し直すだけで、相手の位置が前よりもよく見える)

 視界は皆無だったが、暁子には手に取る様に剣の位置がわかる。無論、リングに突っ伏しているレフェリーの位置も。

 「はあっ!」

 暁子が攻め込んでいく。上から切りつけ、脚を払い、肩を突く。剣も落ち着いたのか暁子の木刀を防いでいく。しばらく暁子が攻めていたが、

 「よひっ!」

 長十手が暁子の木刀を絡め取り、剣がそれを外に捨てる。その一瞬の隙を、暁子は待っていた。

 「ハッ!」

 暁子が前蹴りを放った。

 「くっ、まだまだ!」

 剣は暁子の蹴りを受けようとしたが、暁子からすれば前蹴りはフェイント。暁子は懐から鉄扇を取り出して開き、視界を塞ぐ。

 「なっ・・・!」

 剣の対応が一瞬遅れるが、暁子にはそれだけで十分だった。鉄扇を閉じつつ、左掌底で剣の腹を狙う。

 「くっ!」

 剣もそれに反応し、防御と共に暁子の腕を掴もうとする。しかしそれも暁子の罠だった。本命はもちろん鉄扇であり、肩口と胸のあたりにほぼ同時に一撃が入り、さらに暁子は鉄扇の先を剣の顎に当てて押し込み、リングの外に頭から落した。危険な落ち方をした剣に黒服が駆け寄って状態を確認すると、担架に乗せて去っていった。


 <カンカンカン!>


 それを見た別の黒服がゴングを鳴らす。

 (天神流鉄扇術、『三の舞』・・・)

 今度こそ、試合が終わった。ほっとするとともに、その場にへたり込んでしまう。

 (まだまだ、未熟・・・)

 マグライトや血飛沫など、細心の注意を払っていれば気づいたはず。できなかったのは慢心かもしれない。それでも収穫もあった。

 (今の私でも動きを感じ取れる。以前よりは強くなった)

 袖で左目を拭い、目を開ける。リングには誰も立っていない。これを見ただけでも、実感できる。
 何とか立ち上がって鉄扇を懐にしまい、巾着袋と木刀を持って花道を下がっていく。最早巾着袋すら重く感じた。




 <カンカンカン!>


 「終わったぞ、霧生の娘。あやつはよう頑張っていたな」
 「ああっ! ふううっ」

 最早綾乃の耳には「御前」の言葉は届いていない。

 「お前もよく頑張ったの。ふ、褒美をくれてやるとしよう」

 「御前」は綾乃の身体を部屋のガラスにもたれ掛らせた。

 「そら、受けとれい!」
 「あ・・・ふわああああっ!!!」

 そう言うと綾乃を後背位で貫いた。綾乃の顔は気持ちよさげに蕩けていた。
 



 突然、蜘蛛を象ったマスクを被った、腕の長い男が現れて暁子の前を塞いだ。

 「こんな可愛い子が試合してたんなら俺も呼べよ。ま、今からでも遅くないか」

 言うが早いかマスク・ド・タランチュラの腕が伸びる。身長からのイメージよりも腕が長く、簡単に手首を掴まれてしまう。

 「延長戦を楽しもうぜ、可愛い子ちゃん」

 その言葉に観客のボルテージが再び上がり始める。蜘蛛のマスクといえば、<地下闘艶場>では知らぬ人の居ないプロレスラー、「マスク・ド・タランチュラ」だ。

 「いや待てよ、終了のゴングは一回しかなってないから、ここからが第二戦になるのかな?」
 「くっ!」

 木刀の柄でマスク・ド・タランチュラの手を叩こうとするがそれよりも早く逆の手でもぎ取られてしまう。

 「あっ!?」
 「こんなもの持ってたら楽しめないだろ? ほら、行こうぜ」

 その場に木刀ともぎ取った巾着袋を捨て、暁子の両腕を後手に拘束し、小脇に抱えてリングに入る。

 「よーし、遊ぼうぜぇ可愛い子ちゃん」
 「あぐうっ!」

 リングの中心に体を放り投げられ暁子から苦悶の声が出るが、それも一瞬の事ですぐさま立ち上がり構えをとる。

 「いくぜっ!」

 マスク・ド・タランチュラが長い腕を振るって暁子に攻撃を仕掛ける。暁子もこれを何とか躱し、弾いて近づいていく。

 (もう少し、もう少しで・・・)

 鉄扇の間合いまであと少しだった。しかしそのあと少しに入れない。

 「それっ!」
 「あっ!!」

 少しの焦りが注意を逸らさせたのか、マスク・ド・タランチュラがスカートを捲ったのだ。暁子にしては珍しくスカートを押さえるという大きな隙を作ってしまった。マスク・ド・タランチュラはその隙に一気に間合いを詰めてショルダータックルを食らわせた。

 「ぐふっ」

 綺麗に鳩尾に入ったのか暁子が悶絶するが、それでも何とか根性で立ち上がろうとする。しかしその時にはすでに目の前にマスク・ド・タランチュラが立っていた。

 「少々お疲れかな。今日はこれくらいにするか」

 言うが早いか、変形のグランドコブラツイストで暁子の体を絞り上げる。マスク・ド・タランチュラの左手は暁子の右脇の下を通って肩をロックし、腕の長さを活かして暁子の両手も捕まえてしまう。更にマスク・ド・タランチュラは両足を暁子の両脚に絡め、大きく開脚させる。マスク・ド・タランチュラのフェイバリットホールド、<タランチュラホールド>だ。
 前の完全に開いたブラウスはブラが隠されておらず、胸の谷間も、引き締まった腹部も同様だ。そしてスカートが捲れ上がり、本紫の下着に包まれた股間部が丸見えとなっている。観客の視線が突き刺さり、野次と歓声が一段と上がる。

 「ぐ・・・う・・・」

 二試合こなし、三人に嬲られた疲労もあるだろうが、何よりも技が完璧に極まってしまい、脱出どころか体を揺することもできない。それをいいことにマスク・ド・タランチュラの空いた右手が暁子の胸を掴んだ。

 「大きなおっぱいだな。良い感触だ」

 暁子の乳房を独り占めにし、マスク・ド・タランチュラが一人悦に入る。

 「やめよ、触るな・・・!」

 何とか脱出しようともがくが、首を振ることしかできない。

 「きつい言葉だ、怖い怖い」

 言葉とは裏腹に楽しそうにいいながら、マスク・ド・タランチュラは暁子のブラをずらしてしまう。そのまま直接暁子の乳房と乳首を弄る。

 「弾力もあるが、まだ少し芯があるか? まぁ、揉み応えがあって俺は好きだぜ」
 「んっ、妾に・・・くぅっ」

 スタミナにも心にも余裕がなくなり、暁子の地が出始める。

 「今時そんな喋り方する子がいるのかよ。ギャップがあるな」

 笑いながらも暁子を責める手は止まらない。

 「いてて・・・くそっ」

 呻きながら覚醒したレフェリーがリングを見回す。

 「・・・お前、なにやってるんだ?」
 「何って、遊んでるんだが」

 暁子をがっちりと捕え、責めているマスク・ド・タランチュラを見て、レフェリーの顔がだんだんとどす黒い表情が浮かび始める。

 「レフェリーに何度攻撃するんだ、ええ?」

 暁子の足元に座り込んだレフェリーが本紫のパンティを破り取り、観客席に投げ込む。下着を掴んだ観客たち数人が取り合いになり、黒服たちに分けられていた。

 「ふん、いつ見ても赤ん坊のような股間だな」
 「うぐっ!!」

 嘲笑するレフェリーが暁子の秘部に指を乱暴に突っ込む。暁子の顔には痛みで苦悶の表情が浮かぶ。

 「痛いか、ええ? お前の当身はもっと痛かったけどな!」
 「あぐっ、うぐうっ!」

 下半身から痛みを、胸からは不快感と多少の快楽で、暁子の美貌が歪む。

 「おい、もっと優しくしろ。この子痛がってるぞ」
 「真里谷選手は乱暴だからな。それくらいは罰だな」

 暁子が痛みを感じていることで怒りを発散しているのか、更に乱暴に暁子を突き上げていく。

 「はぐっ・・・くそっ、放しや、下衆共めが!!!」

 屈辱と嫌悪と憤怒。それらが暁子の内から咆哮となって飛び出していくが、ただそれだけで状況が好転するはずもない。

 「口が悪いな。ったく、躾がなってないな」
 「全くだな。もしかして、お仕置きしてほしいマゾヒストか?」

 ニヤニヤと笑いながらも、暁子を責める手は止まらない。

 「お、こんなところにいいものがあるな」

 暁子のブレザーの内側にあった鉄扇を見つけたレフェリーが、それを奪って開き、眺める。

 「あっ、そ、それに触るなっ!」
 「なになに、『彼を知り己を知れば、百戦して危うからず』か。まだまだ修行がたりないんじゃないか、んん?」

 そういいながら閉じた鉄扇で秘裂を擦る。

 「んあっ!?」
 「ふん、鉄扇だと悦ぶんだな」

 鉄扇の根元を軽く埋めると、暁子の身体が少し動く。

 「ん・・・まだやってんのかい」

 そのうちに、のびていた亀河も意識を取り戻し近づいてくる。

 「メスガキの癖に、態度と身体は生意気ときた。お仕置きが必要だな」

 暁子の顔の横に近づいて、覗き込む。亀河の侮辱に、暁子は唾を吐いて応えて見せた。

 「まだ男を舐めてるのか。しかたねえな、レフェリー、ちょっとどいてくれ。いいモノみせてやるよ」

 暁子の中を指で突き上げていたレフェリーをどかし、暁子の足元に座り込む。

 「さて、このガキの中の様子は〜?」
 「なっ・・・やめよ、っ・・・!」

 暁子も亀河が何をしようとしているのか気づいたが、止める術がなかった。

 「ほ〜ら、御開帳〜!」
 「うああああっ、やめよ、見るな、見るなぁっ!!」

 亀河が閉じた秘裂を指で広げ、マグライトの光を当てる。暁子も全身を揺すって抵抗するが、拘束はびくともしない。

 「ほう、こうなってるのか・・・」
 「綺麗な色してるな、遊んでないのか」

 レフェリーと亀河は暁子の膣中に目を奪われ、凝視したまま動かない。

 (このような・・・このような辱めを受けようとは・・・!)
 「ちっ、俺も見たいのに。しょうがない、おっぱいで我慢するか」

 舌打ちしたマスク・ド・タランチュラは、暁子の内心など気にもせずに左右の乳房を交互に揉み、その感触を楽しむ。たまに乳首も苛め、更に硬くしていく。

 「・・・見てるだけじゃ勿体ないな」

 淫靡に光る秘裂に誘われるように、レフェリーが暁子の秘裂を再度舐めはじめる。亀河は空いた左の乳房と乳首を弄り、淫核を押しつぶす。

 「んんっ、あふっ」

 そろそろ限界なのか、徐々に暁子から喘ぎ声が漏れ始める。

 「お、いい声で鳴くじゃないか。もっと欲しいだろ?」
 「あっ、ふあっ・・・」

 マスク・ド・タランチュラの問いには首を振って否定するが、口からは喘ぎ声しか出てこない。

 「乳首もこんなに固くしてるのに違うっていうのかい」
 「ひあ・・・!」

 否定する暁子を嘲笑しながら、亀河は乳房に吸い付き、乳首を甘噛みする。すると暁子の体の中を電気が走り回る。

 (ふあ・・・あぁ・・・いつまで・・・)

 長く責められ、暁子の頭の中を徐々に桃色の靄が埋め尽くしていく。自分が何をしているのかもわからなくなっていく。

 「・・・ぇ・・・」
 「ん? なんだって?」

 暁子の小さな呟きに、マスク・ド・タランチュラが反応する。

 「たす、けぇ・・・あふぅ・・・若、さ・・・ふあっ」

 暁子の耳にはマスク・ド・タランチュラの声は届いていない。

 「この感じだとそろそろ限界か」

 暁子の体が小さく震え始めていた。

 (若、さま・・・妾は、また・・・え?)

 ボンヤリとした視線の先だったが、その先には確かに見覚えのある女の人がいた。こちらを見て笑っている。

 (え、まさか・・・あの人は・・・)

 精神的な衝撃に、精一杯張っていた防壁が崩れかかる。丁度その時だった。

 「よし、じゃ終わらせるぞ」

 マスク・ド・タランチュラの声に応じ、亀河は左の乳房と乳首と淫核を、レフェリーは秘裂を、そしてマスク・ド・タランチュラは右の乳房と乳首を、同時に思い切り刺激した。

 (あ、あ・・・くる・・・ダメぇ・・・)

 <地下闘艶場>のリングで、「御前」に抱かれたベッドで、短い期間に何度も味わわされた絶頂。その予兆に心と身体が震える。それでも。

 「んんん・・・っ!!!」

 そう簡単に堕落しきるわけにはいかない。例えどれだけ汚れても、お嬢様が解放されない限り自分が汚れを引き受けるしかない。

 「おいおい、我慢するなよ。体に悪いぜ?」
 「はぁ、はぁ・・・」

 目が潤み、口が開いて、身体が快楽を耐えて震えていても、闘わなくてはならないのだ。

 「もっと男の素晴らしさを身体に教えてやろう」
 「生易しいこと言うな。俺らに刃向わない様に徹底的に躾けてやるぜ!」

 耐える暁子を見て滾る二人に、冷や水を浴びせかけた者がいた。

 「ちょっと待て、次は俺の番だぞ」

 いきなりマスク・ド・タランチュラが言い出し、レフェリーと亀河が不審そうな表情で振り返る。

 「お前は何を言って・・・」
 「俺はまだ暁子ちゃんのアソコを見てないぞ。お前らははっきりと見たんだろ? なら次は俺の番だ、っての」

 マスク・ド・タランチュラの俺理論に、レフェリーと亀河が顔を合わせる。

 「まあ、お前のおかげでもあるしな」
 「仕方ねぇ旦那だぜ」

 ぶつぶつ言いながらも、二人は暁子の四肢を押さえる。

 「へへっ、ありがとよ」

 舌舐めずりしたマスク・ド・タランチュラが、暁子の股間側に座り込む。

 「それじゃ、暁子ちゃんのアソコ確認〜」

 マスク・ド・タランチュラはマグライトタイプのトンファーを拾い、スイッチを入れる。そのまま空いている手で暁子の秘裂を開き、光を当てる。

 (ま、またしてもこのような辱めを・・・!)

 身を捩ろうとしても、体力の尽きた身体は言うことを聞いてくれない。

 「ほぉぉ・・・暁子ちゃんの中、こうなってたのか」

 暫く秘毛もない秘裂の奥に目を奪われていたマスク・ド・タランチュラだったが、中指を立てる。

 「さてさて、中はどんな感じかな?」

 秘部にライトを当てたまま、腕同様かなり長い中指を秘裂に埋めていく。

 「うっ、くうぅっ!」
 「お、暖かいな」

 試合中から散々嬲られ、昂ぶらされたのだ。膣の中も潤み、暁子は男の指を受け入れてしまっていた。マスク・ド・タランチュラが指を出し入れするたび、湿った屈辱の音が鳴る。

 「なんだ、聞いてたより感じやすいじゃないか。『御前』から開発されたのかな?」

 前後運動だけでなく時折回転も交えながら、マスク・ド・タランチュラは暁子の膣を責める。

 「くっ・・・んんっ・・・!」

 膣から快感が立ち昇るが、暁子は唇を固く閉じ、喘ぎ声を耐える。

 「なに声我慢してるんだ、ええ?」
 「悦んでるんだろ? 素直になれよ」

 レフェリーと亀河が片手を伸ばし、それぞれ乳房と乳首を揉み回し、弄り回す。

 (くうぅぅっ!)

 乳房、乳首、膣中を同時に責められ、暁子はまたも高められていく。それでも、屈服の声だけは洩らすまいと歯を食いしばる。

 「そういうことされると、逆に燃えるんだよな!」

 マスク・ド・タランチュラの指が速度を増し、膣と秘裂を蹂躙する。

 (まずい、このままでは・・・!)

 絶頂への予感が暁子を襲う。それでも、声だけは洩らさない。暁子の意地だった。

 (来る・・・! ああ、来てしまう・・・っ!!)

 「んんんんんん・・・・っ」

 快感が脳を焼く。それでも声だけは出さずに耐える暁子だったが、腰が高く浮き、全身が淡い桃色に染まる。
 暫しの間を置き、弓反りになった身体が、がくりと元に戻る。

 「あっ、はっ・・・はあぅ・・・」

 声を堪えたことでプライドは保てたが、残り少ない体力を更に失ってしまった。暁子が荒い息を吐くたび、横になっても盛り上がったままの乳房が上下する。

 「いやー、暁子ちゃんも感じまくってくれたようだし、次はお客さんへのサービスかな」

 満足気に頷いたマスク・ド・タランチュラは、亀河に何事かを耳打ちする。

 「・・・あんたもかなりえぐいこと考えるな」
 「勘違いするなよ、お客さんへのサービスだからな」

 そう言いながら、マスク・ド・タランチュラと亀河は暁子の腕を持ち、脇の下に頭を入れるようにして、無理やり立たせる。否、立たせるだけでは終わらなかった。

 「それじゃいいな、亀河」
 「あいよ」

 暁子の腕と太ももを抱えた二人は、そのまま背中合わせになりながら自分の肩に担ぎ上げた。男二人の肩に担がれた暁子は、大股開きの恥ずかしい体勢で高々と抱え上げられ、観客に秘部を晒されていた。この光景に、観客席から大歓声が上がる。

 「や・・・やめ、よ・・・」

 暁子の弱々しい拒絶も、歓声の中に埋もれてしまう。

 「折角だ、サービスを追加してやろう」

 レフェリーが暁子の秘裂を広げ、ライトの光を当てる。実際に観客の目にまで見えるわけではない。しかし、暁子が屈辱の姿勢と行為をされている、ということが観客の興奮を更に煽るのだ。
 マスク・ド・タランチュラと亀河がゆっくりと回り、一周したしたところで肩の上の暁子をリングに下す。暁子はのろのろと手を動かし、乳房と秘部を隠す。

 「おいおい、隠しちゃ駄目じゃないか暁子ちゃん」
 「まだまだ終われるわけがないだろうが」

 マスク・ド・タランチュラとレフェリーが暁子の手を簡単に外し、そのまま乳房を弄り出す。自分も加わろうとした亀河だったが、何を思ったかトンファーを拾う。

 「へへへ、いいことを思いついたぜ。お二人さん、手伝ってくれよ」
 「あん? 折角おっぱいを楽しんでるってのに・・・」
 「いいからいいから、絶対後悔はさせないからよ」

 亀河はマスク・ド・タランチュラとレフェリーに暁子の四肢を押さえさせ、自分はトンファーを持ったまま暁子の腹の上に座る。そのままトンファーを暁子の胸の谷間に置き、両手で暁子の乳房を寄せる。
 それは、トンファーを男根に見立てた疑似パイズリだった。

 「そら、俺のトンファーにご奉仕しな」

 にやにやと下卑た笑みを浮かべたまま、亀河は暁子の乳房を揉みくちゃにする。暁子の豊かな乳房はトンファーを包み込み、男の手とトンファーで変形させられる。

 「この・・・下衆め・・・ひぅっ!」

 亀河を睨んだ暁子だったが、乳首を弄られたことで喘ぎ声を洩らす。

 「何を言ってやがる。こんなに乳首硬くしといて、どっちが下衆だよ」

 亀河は下卑た笑みを浮かべたまま、暁子の乳首を苛め、疑似パイズリを続ける。

 「ああくそ、見てるだけで興奮してくるぜ」

 舌舐めずりしたマスク・ド・タランチュラは、暁子の豊かな乳房とその谷間に挟まるトンファーから目を離せない。レフェリーも無言で見入っている。

 「そらそら、また乳首が硬くなってきたぜ。お前も嬉しいんだろ?」
 「・・・誰が・・・そのようなことを・・・!」

 幾ら否定しようとも、試合前からセクハラされ、試合中も男たちに嬲られ、試合が終わった今もまだ男たちから責められ続けているのだ。暁子の意思とは裏腹に、身体は刺激に反応してしまっていた。

 「けっ、違うってのなら逃げてみろよ。そして俺たちを叩きのめしてから否定するんだな」

 亀河が更に乱暴な手つきで乳房を揉みくちゃにする。弾力のある暁子の乳房は、乱暴に扱われながらも元の形に戻ろうとする。

 「・・・もう我慢できねぇ! 亀河、どけ!」

 乱暴に亀河を押し退け、マスク・ド・タランチュラは暁子の乳房を両手で鷲掴みにし、欲望のままに捏ね回す。

 「それじゃ、俺はこっちを・・・」

 唇を舐めたレフェリーは、暁子の秘部に吸いつき、秘裂を舌で割って膣中へと侵入させる。

 「あたた・・・ったく、一声かけろよ旦那」

 ぶつくさと言いながら起き上がった亀河は、乳房も秘部も埋まっているのを見て、仕方なく太ももを撫で回す。否、そのまま手を下し、横側の尻肉を揉みしだく。

 「なんだ、こっちもおっぱいに負けず劣らずのいい感触じゃねぇか」

 右手で尻肉を揉み、左手で太ももを撫でながら、亀河は悦に入る。

 「お、お豆が丸見えじゃないか」

 暁子の膣中を責めていたレフェリーは、淫核に狙いを定める。

 「下の毛がないから丸見えだぜ」

 既に顔を出しているそこに舌を這わせ、念入りに舐め回す。

 「ひぅんっ・・・んんっ!」

 上げかげた嬌声をなんとか飲み込む。それでも、舌と咽喉は刺激に素直に反応しようとする。

 「あっ、くぅっ、はぁ、ううっ・・・」

 あれだけ喘ぎ声を堪えていた暁子だったが、体力の低下は最後の意地ですら奪いつつあった。それでも唇をぎっと噛み締めてから、自分に圧し掛かる男たちを睨みつける。

 「この・・・下衆どもめ・・・! これ以上・・・妾に、触れるな・・・ぁっ!」

 まだ続けようとした暁子の言葉は、乳首を弄られることで止められた。

 「まだ元気だなぁ暁子ちゃん」

 暁子の乳房を揉みながら、マスク・ド・タランチュラがにやりと笑う。

 「だが・・・暴言は良くないぜ?」

 乳房から手を放したマスク・ド・タランチュラは、完全に前が開いているブレザーに手を掛ける。

 「んおっ、ちょいと硬いが・・・よいせっ!」

 そのまま、無理やり生地を引き裂く。

 「折角だ、お客さんにオールヌードも見て貰おうな」
 「アソコの奥まで見せたんだ、全裸くらいなんでもないだろ?」
 「案外喜ぶかもしれないぜ、このガキはよ」
 (なっ、また全裸姿にするつもりか!)

 男たちが三人掛かりで衣服を引き裂いていく。その音が、暁子の屈辱感を更に煽り立てていく。ブレザーが破かれ、ローファーが放り投げられ、ハイソックスが裂け目が入るほど乱暴に脱がされ、ブラウスがぼろ布と化し、ホックを外されたスカートが勢いよく外された。

 「よーし、暁子ちゃんのオールヌード完成だ!」

 最後にブラを脱がされ、暁子は過去の試合同様、またも一糸纏わぬ姿とされた。観客の粘つく視線が暁子の肢体を這い回り、隅々まで犯していく。

 「それじゃ改めて・・・暁子ちゃんの身体、楽しませて貰うぜ」

 男たちが暁子の裸体に圧し掛かり、好き勝手に触り、つつき、弄り、揉み、転がし、弾ませ、抜き差しし、嬲り尽くしていく。

 (ああ・・・いつまで、妾は・・・このような責めを・・・)

 「あぅっ、ううぁ・・・んああああ〜〜〜〜〜っ!」

 もう喘ぎ声を堪える体力すら残っておらず、暁子は男たちの手によって嬌声を上げた。上げ続けさせられた。その様を観客の視線に晒されたままで。
 その視線の中に、暁子の心までも貫こうとする鋭いものがあった。最早それに気づくこともなく、暁子は淫虐の地獄で喘ぎ続けた。


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