【守台灯:キックボクシング】  投稿者:とあるファン様  加筆:事務員

犠牲者の名は守台灯(もりだい あかり)。スタイルはキックボクシング。年は23歳、身長は160センチで、3サイズは上から90(Fカップ)、60、89。
出るとこはしっかり出ていながら、無駄な筋肉のない人魚のような締まった体を持ち、肩までの天然パーマの黒髪を首の後ろで束ねたらしている。海辺の町で生まれ育ち、泳ぐことは勿論マリンスポーツ全般が好きで、短大卒業後地元のプールでスイミングスクールのインストラクターを勤めている。
担当する小中学生クラスの生徒たちに負けないぐらいの元気さで、勢いで失敗することも多いが、逆に周囲からは明るく面倒見のいいお姉さんとして信頼されている。キックボクシングは高校時代に友人に進められて始めたものの、体全体を思い切り動かすことが楽しく周囲や本人自身もが驚くほどのめりこんでいる。
2ヶ月前、夜道で刃物を持った痴漢を撃退したことで<地下闘艶場>サイドの目に止まり、周辺事情を調べた結果、ある趣向と共に参戦させる手続きが取られた。

「な、なんじゃこりゃ・・・」
案内役の黒服の女性に渡された衣装を手にとって、灯は誰に言うでもなくつぶやいた。
(こんな衣装恥ずかしいけど、でも・・・)
受け持つクラスの男子中学生の様子がおかしいのに気付いたのは一ヶ月前だ。通い始めの小学校低学年からやんちゃすぎるぐらいに元気だったというのに、最近はやたら周囲を気にし、おどおどしている。かと思えば、ボーっとしていて話しかけても気づかないことも何度かあり、とにかく落ち着きがない。中学生になればそういう時期があるかと思ったのだが、観察してみれば彼を中心とした仲良しグループの男子たち5人がそんな様子になり、水泳ばかりか学業にも身が入らなくなっているようだ。
とうとう我慢できなくなり、グループの一人ひとりを問いただし、きっかけの生徒にも話を聞いた結果、どうやらグループ全員であるいたずらをしてしまい、それを種に誰かに脅されているらしい。力になろうにも、全員いたずらの内容だけは頑として口を割らなかったので、もどかしい思いをしていたある日、アパートの郵便受けに封筒が差し込まれていた。
『こちらの主催するリングに上がっていただければ、生徒さんのいたずらの証拠はすべてお渡しいたします。』
ルール内容が添えられた中の書類にはそう書かれており、連絡先が記されていた。
もとより灯が迷うはずはない。一見ただ一緒に遊んでいるように見えるものの、受け持った生徒に対する年長者としての自覚は強く、全員を自分の弟のように思っていた。ここは自分がどうなろうと、生徒たちの将来を守ってやらねば、と。
(この先も間違いが起きたら困るし、お姉さんがきっちり解決した上で、しっかり叱って・・・許してやりますか)
衣装を身につけ、両手でほほを叩き気合を入れなおす。
「いよっし、いざ!」
オープンフィンガーグローブをはめると、ガウンを羽織って花道へ向かった。

花道を進む灯に、観客から卑猥な野次が投げつけられる。
(うわあ、予想はしてたけどやな雰囲気・・・)
それでも弱気にならないよう表情を硬くしリングへと向かう。
リングの上で待っていたのは、黒いジャージと目だし帽を身に付けた男と、小悪党面をしたレフェリーだった。
(え、相手って男?)
ルール説明に対戦相手の情報は載っておらず、てっきり同性と戦うのかと思っていた。
灯がリングサイドについたのを見ると、レフェリーがコールを開始した。
「青コーナー、『正体不明』ブラックフェイス!」
<地下闘艶場>では初めて見る選手だが、灯より上背があり逞しい体格をしている。だがそれ以上に下手につつけば何をしでかすかわからない凶暴な雰囲気を発しており、観客はまずまずの拍手を送る。男はコールに応え右手を上げるも、鋭い視線は灯から離れていない。
「赤コーナー、『ヤングマーメイド』守台灯!」
自分の名前がコールされると、事前に説明されたとおりに灯はガウンを脱いだ。
灯の衣装は紺色の競泳用水着だった。白く細い肩紐が、肩甲骨のやや下でV字型になっているタイプで、灯の肌に吸い付くようにして見事なボディラインをあらわしている。露出過多な衣装を期待していた観客の中には不満げな声をあげる者もいたものの、不自然なほど視線を気にする灯の様子に衣装を見直して歓声を上げた。
確かに形状こそ通常だが、バストや背中にわき腹、ヒップや秘部等きわどい部分の表面に、白い掌の模様が付けられていた。指と指の隙間を流れるインクの表現もリアルな上、曲面の手形も不自然に伸びていないため、ちょうど今その箇所をたっぷり触られてきたかのように見える。独特な衣装での登場に、観客は期待の歓声を上げ、ブラックフェイスに責めのリクエストを送る者もいた。
(この衣装、やっぱりこういう目的か。この連中・・・)
欲望むき出しの熱気に呆れと憤りを感じるものの、灯は戦いに備え深呼吸を続けた。

ブラックフェイスのボディチェックを簡単に終えると、レフェリーは嫌らしい視線で灯に近づいてくる。
「守台選手、ボディチェックだ。」
「お断りよ。この衣装のどこを調べる必要があるの?」
つけこまれないように、あえて視線に体を晒すように腰に手を当て仁王立ちしてはねつける。
「悪いがルールなんでな、書類にもあったはずだぞ?しかるべき手続きを取らないなら試合は取り消しだ。」
(こいつっ・・・)
この状況からして試合の目的も予想はつく、灯に色責めを加え辱めようというのだろう。ボディチェックもその一部だ。試合が始まらない以上いたずらの証拠も帰っては来ない。灯に選択肢はなかった。
「冗談よ、ちゃんと受けますって。」
肩をすくめて両手を後ろに回す。
「何だ、素直じゃないな。まあいい、いくぞ。」
言うや否や、レフェリーは下から根元を掴んでいる右手の手形が付けられた左の乳房から触り始める。
「間近で見るとそそるよなあ、どこか実際に触らしたことはあるのか?」
少し両手で揉んだかと思うと、右手の指で手形に沿うように弄りながら左手で他に手形のついた箇所を撫で回してゆく。
灯は顔を背け、見下す視線のまま応えない。
「寂しいなあ、何とか言えよ。」
「さあね、そういうルールはないんでしょ?」
屈辱を押し殺し、鼻で笑ってやる。
「ふん、まあいいさ、じっとしてろよ。」
レフェリーはまたも両手で灯の胸を掴むと、そのまま揉み回していく。中指で乳輪の辺りを刺激しながら、残りの指でFカップのバストを揉み続ける。それでも灯は手を後ろに回したまま、じっとセクハラを耐える。それをいいことに、レフェリーはひたすら灯の胸を揉み、乳首の近辺を弄り、柔らかくも弾力のある感触を味わう。
中年男特有のしつこいセクハラが続き、灯の忍耐力を削っていく。
「よし、それじゃ次は・・・」
灯の体に視線を向けたままレフェリーは体勢を低くし、右手を秘部に、左手をヒップへと伸ばす。一瞬身を硬くした灯だが、レフェリーは灯の反応を楽しむように肝心な部分には触れず、太ももや水着のラインをなぞったり、指の腹で手形をぴしゃぴしゃと叩いている。
「ちょっと、試合はまだなの?」
重要な箇所に触られず少しは安堵したものの、かれこれ5分以上続くねちっこいセクハラに、さすがに口を尖らせる灯。
「そういうな、あと少しだ。それともこの辺に何かまずいものでも隠してるのか?」
灯の右横に立ち、左手でヒップを撫で回しながら、右手でバストを下から掬うように揉み、耳元で囁くレフェリー。
「そんなんじゃないわよ。さっさと試合を始めたいだけ。」
我慢の限界に手を出しそうなのをこらえ、横目でレフェリーを睨みつける。
「ふん、もうすぐだよ。調べ終えたらすぐ始めてやるさ。」
(試合が終わったら覚悟しなさいよこいつ!)
怒りに顔を紅潮させ、歯を食いしばって堪える灯をあざ笑うようにレフェリーは後ろに回りヒップに軽く股間をこすりつけ脇の下からバストをなで始める。怒りのあまりレフェリーから顔を背けて対角線上のポストをみると、ブラックフェイスの目もにやついた笑みを浮かべているのに気付き、灯は拳を硬く握りしめた。
(絶対許さないんだから・・・)

「よし、そろそろ始めようか。」
流石に観客席からも不満の声が上がり始めたあたりで、レフェリーはゴングを要請する。

〈カーン!〉

(ああイライラする!ねちねちと触ってきおってからに・・・)
他人の弱みにつけこみ悪どい真似をする奴は灯の一番嫌うタイプだった。
(まとめて叩きのめさせてさせてもらうわよ、こんなリングに上がった以上覚悟は出来てんでしょう?)
頭に血が上りかけてはいたがむやみな突進は避け、軽くステップをつけたフットワークでリングを回りながら距離を保ち相手の出方を見る。
しかしブラックフェイスはゴングがなってからボクシングスタイルに構えだけで、灯の動きに合わせ方向を変えるだけだった。
「どうした、ファイト!」
にらみ合いを続ける両者にじれたのかレフェリーが勝負を促す。
(ちっ!)
灯ももともと待ちのファイトスタイルというわけでもない。左右へのステップを交えながら、牽制のジャブを放つ。
「・・・」
ブラックマスクは軽く上体を振ってかわすと、こちらはジャブとは言いがたいフック気味のパンチを左右で次々打ってきた。割りとスピードはあるが、灯によけられないほどではない。
(素人ねこいつ、当たったら少し怖いけど・・・)
前に出てきたのに合わせて上体を後ろに走らせ、かわすと同時に反動を利用した左のローを右のふくらはぎに当ててやる。
やはり受け方を知らないのか、食らって動きを止めた顔面に左右のワンツーを放つ。
「っ!」
両手で顔面をガードし、よろけ気味に後ろに下がってかわしたところにすかさず灯が間合いを詰めた。
「せぇいっ!」
体全体をしならせ、開いたわき腹に右ミドルを打ち込む。相手の胴体に響く手応えと共に、ブラックフェイスが崩れたところで右足を完全に引き戻さず、前に着地させて左フックであごを打ち抜いた。
とっさに体勢をそらしたのか手ごたえは浅かったものの、ブラックフェイスはわき腹を押さえながら横に倒れる。
「おいおい、何やってんだ!」
あっさりとダウンを奪われたことであわてるレフェリー。
「何言ってんの、さっさとカウントとってよ。」
「ええい、わかったからコーナーに・・・」
そう言ってしぶしぶレフェリーが近づこうとしたとき、何事もなかったようにブラックフェイスは体を跳ね上げ勢いよく立ち上がった。それどころか、両手を高々と挙げて余裕を観客にアピールする。
「おい、大丈夫なんだろうな!」
あまりに人を喰った態度にレフェリーが確認を取るが、ブラックフェイスは自信満々にボクシングスタイルに構える。観客もあまりの堂々とした態度に安堵の歓声を送る。
(人を馬鹿にして・・・!)
わざとらしい挑発行為に灯の怒りも沸点を超えた。
「ええい、やるならさっさと本気を出せ!」
レフェリーの合図と共に灯はブラックフェイスの懐に飛び込む。
「うらあっ!」
素早いワンツーとみせて首をロックし、勢いそのまま右膝蹴りを胴体に叩き込む。
(このまま押し切ってやる!)
首に回した両腕を支点にさらに左の膝を打ち込もうとしたとき、ブラックフェイスは両腕を伸ばして灯のバストを掴んだ。
「ひゃあっ!?」
いきなりのセクハラに一瞬動きを止めてしまった灯のみぞおちに、すさまじい衝撃が来た。
「がっ!?」
隙をついて打ち込まれた体重を乗せた足裏の蹴りは、胴体を深々とえぐって灯を吹き飛ばす。灯はダウンしながらも転がって距離をとり、ロープを支えに何とか立ち上がる。
(しまった、こういうリングだったのに・・・)
激しくせきこみつつも呼吸を整える灯に、ブラックフェイスは一気に距離を縮め、大振りのパンチを放ってくる。
「なんのっ!」
距離を詰められまいと右の前蹴りを出すも、それが狙いだったと気付くのに一瞬遅れた。ブラックフェイスは待っていたように体を捻って蹴りをかわし、蹴り足の下に潜ると膝裏を右肩に担ぐようにして体を倒して灯を前方に勢いよく投げ倒す。
(やばっ・・・!)
とっさに手をつき膝から叩きつけられることは防ぐも、左半身を下にした姿勢になった灯の背中にブラックマスクはつま先の蹴りを叩き込む。
「ぐああっ!」
背骨近くに来た強烈な衝撃に体をそらせて悶絶する灯。
「おいおい、相手を壊すリングじゃないぞここは!」
危険な攻撃の連続にレフェリーが思わず警告する。
「わかってますってレフェリー。」
ここへ来てブラックフェイスが喋った。それほど野太くもない普通の青年の声だった。
「食らった分のお礼と、それに意外とできるようだったから、ちゃんと動けなくしとかないとって思いましてね。んじゃまあ」
背中を押さえている灯に近づくと両脇下から腕を差し込み無理やり立ち上がらせる。
「お詫び代わりにお先にどうぞ。」
(く、そ・・・今はまだ・・・)
ボディと背中へのけりの衝撃は内臓まで達している。ギリギリ戻すことはなかったが、回復までには時間がかかりそうで、なすがままにされるしかない。
次の動作に移る前にブラックフェイスは用心深く少し灯の体を揺らす。水着のバストがわずかに揺れるだけで、灯は動く様子はない。
「さて、それじゃ・・・」
灯の両腕を背中に回して肘の部分を右腕で一抱えにして固め、左腕は灯の左の膝裏を持ち上げ開脚を強いる。さらに右足を踏んで動きを封じると体をわずかに反らし灯に胸を突き出す格好を取らせた。
「ちょ、は、離しなさい!」
両肩への痛みはあるが、それ以上に胸を突き出した開脚姿勢への恥ずかしさと、ヒップに密着したブラックフェイスの逸物の感触に不快感が沸きあがる。
「おうおう、こりゃあいい眺めだ。どれ、そんじゃありがたく・・・」
灯に反撃する様子がないのに気を良くしたレフェリーは、再びバストと秘部へのセクハラを開始した。
「レフェリー今は試合中でしょ、何してるの、よっ!?」
「いやあ、思えばこのいやらしい手形のせいでよくチェック出来なかったからなあ、続きだよ続き。」
左手でバストを揉みつつ、右手の指を秘裂にそって上下に動かしながら灯の反応を楽しむレフェリー。
「おうおう、もう乳首が立ってきたぞ。まさか手形を見て試合前から興奮してたのかい?」
「そんなわけなっ、んんんっ?!」
両方の乳首を軽く摘まれ、灯の反論は刺激に遮られた。
「よく聞こえなかったぞ、なんて言おうとしたんだ?」
レフェリーは灯の反応を楽しむように、人差し指で乳首を弄りつつ残りの指で下から掬うように揉む。
「だからっ、あうっ、ちがうのにぃっ!」
「ちゃんと話せよ、聞こえないぞ?」
乳輪を意識させるように円形に人差し指を動かしつつも、バスト自体へ刺激を与えるのもやめはしない。
(こんな手形なんてただのプリントでしょうが!いい加減にしてよ!)
自身の体の反応を否定するように歯をかみ締める。羞恥から来る怒りが力を取り戻させた。
(ちょっと恥ずかしいけどっ!)
ブラックマスクの逸物にぶつけるように腰を後ろに動かし、上体が前に流れる勢いで両肘を跳ね上げる。
「うおっと!?」
いきなりの反撃にブラックフェイスが顔をそらしたところで、何とか左足を横へ抜いて後方へ蹴りを放つ。
「おりゃっ!」
手ごたえは薄いもそこを支点に反動をつけ、斜め前方へ転がるようにして拘束から逃れた。
「油断すんなこいつ!」
「や、すんませんどうも。」
危うく激突を免れたレフェリーが非難するも、ブラックフェイスは深くわびる様子もなく頭をかく。
(何とかなったけど、状況は芳しくないか・・・)
スタミナの消費にだいぶ呼吸を荒げつつも、二人のやり取りから目は離さずに構えを取る。
「そうそう守台さんさ。あのガキどもの証拠取り返しに来たんだよな?水泳教室で教えてる5人の。」
「え?」
急に水を向けられ戸惑う灯。ブラックフェイスは距離を縮めつつ続ける。
「いやいや大したもんだよ。あんな酷いガキどものためにここまで来るなんてさ。ほっときゃいいのに。」
「っ!それはどういう意味よ!」
子供たちを馬鹿にされたことに腹を立て思わず怒鳴り返す。
「どうもこうも先生があんなことやらかすガキどものせいでこうなるなんて・・・」
「こいつ!」
怒りのあまり思わず灯は飛び出しワンツーを打ち込む。
狙っていたかのようにブラックフェイスは体勢を低くし、胴体へ突き上げ気味のタックルを仕掛ける。
(しまった!)
衝突の勢いそのままにブラックフェイスは灯を担ぐようにしながらコーナーポストへ激突させる。
「あぐあっ!」
「可愛そうに、って意味さ。」
タックルの威力に崩れ落ちた灯に跨り、ブラックフェイスはバストを揉み始める。
「これだけ大きいおっぱいしてるんだ、ガキどもが興奮するのも仕方ないよな」
(勝手なことを言って・・・)
反撃してやりたいが、タックルの衝撃にまだ体が動かない。それをいいことに、ブラックフェイスは灯のバストを揉み続ける。
「大きいだけじゃなく、感触も最高だよな」
水着の上からバストを揺らし、撫で、揉み、ブラックフェイスが笑う。
「触ら・・・ないで、よ・・・」
苦しい息の下、ようやく言葉を絞り出す。
「男ってのは、ついおっぱいを見たり触りたくなったりする生き物なんだよ。しかもこれだけデカいとなると、ガキでも惹きつけられるのは仕方ないさ」
この言いぐさに、灯の怒りのスイッチが入った。
「あの子たちを、悪く言わないでっ!」
右手を思い切り振り抜き、ビンタをかます。
「痛いな、おい」
眼光が鋭くなったブラックフェイスが、灯の鳩尾に拳を叩き込む。
「ぐぶぅっ!」
急所へ容赦ない一撃を食らい、灯の動きが止まる。
「もう反撃できないようにしておくか」
内臓への衝撃で身動きが取れない灯をコーナーポストに寄りかからせ、四肢をロープに拘束した上で、ブラックフェイスは灯から離れる。
「なあ、守台先生。あいつらが何やったのか知ってんのかい?」
「な、何が言いたいのよ。あっ、こら!」
灯に近づくと手形を指先で突きつつブラックフェイスは続ける。
「2ヶ月前にあんたがぶっ飛ばした奴いたろ?あいつ知り合いでさ。あんたのこと聞いてから探して様子見てたんだ。そしたらちょうど1ヶ月前の夜、あんたがプールから帰った後にそれ確認したあいつらが更衣室に忍び込んでったんだ。」
しばらく外で待機し連れ立って出てきたところで声をかけ、手に持っていたものを奪い取ると、小型のデジタルカメラだった。
「中身はずばり、あんたの着替えだったよ守台先生。」
「そ、そんな・・・嘘よ!」
身動きは取れないながらも必死で否定する。
「おい、そりゃあ本当かい?」
話を聞いていたレフェリーが灯の太ももをぴちぴちとはたきつつ口を挟んでくる。
「ええ、そうですよ。まあ振動でカメラが倒れて肝心な部分は写ってなかったけど。」
「あーあー残念だ。まあガキどもだから仕方がないか。」
「そっすね、でもやったことが事実だから脅しつけてさんざ言うこと聞かせましたけど。」
(あの子達が、そんな事を・・・)
信じたくはなかったが、様子がおかしくなった時期と自分に対しあれだけいたずらの内容を明かさなかった事実を考えれば、あるいは・・・
「違うわ、あの子たちがそんな事する筈がないでしょ!どこかで絡んであなたが無理やり言うこと聞かせてたのよ!」
相手の言葉を信じ大事な生徒を疑いかけた自分を恥じ、否定するように声を張り上げる灯。
「盗撮してたのだって本当はあなたでっ!?」
まくし立てようとしたところを秘部への刺激で遮られた。
「生徒思いなのは感心だけどさ。」
さっきとは違い、乳房や秘裂を中心に敏感な部分を責めてくる。
「こんなたまんない体を無防備に中学生に見せといて、何ともないとか本気で思ってたわけ?」
「そうだよなあ、これじゃ水泳になんか身が入らないぜ先生。」
ブラックフェイスに同調しながら、レフェリーは横からヒップと内腿をなでまわす。
「こ、こらやめてっ、手を離しなさい!」
「手じゃ駄目?舐めて欲しいとか?」
「積極的だなあ先生、まあ今はこっちで我慢してくれよ。」
「誰もそんな風に言ってないわよ!」
灯の言葉に揶揄を返し、男二人はたくみに責める場所を変えつつセクハラを続行し、灯の官能を引きずり出していく。
(こんなのに屈したりしないんだから!あの子達のためにも・・・)
技術はさほどでもないがねちっこい責めを続けられ、体が昂ぶりはじめているのを感じてしまい、戦う理由を思い起こし、快感を意識しまいと努める。だが、
(あの子達があたしをそんな目で見るはずなんて、な、ないんだから!)
いったんは否定してものの、消耗した体は、精神にも疑惑を生じさせてしまう。
(授業中は水泳帽に髪全部収めてるし、これと同じような露出の少ない水着着てるんだし、手を取って教える時やお手本見せるときも先生としてやっていたんだから!)
否定すれば否定しようとするほど自分と生徒たちの関係を変に意識してしまい、深みにはまっていくことに灯は気付いていない。
(そうよ、あの子達はあたしをそんな風には、あたしだって変な気はちっとも)
「ひゃうんっ!?」
ブラックフェイスに首筋を舐められ、灯の意識は現実に引き戻された。
「だいぶ切なそうだね、守台先生?」
右手で秘裂を水着の上からゆるゆるとなぞりながら、灯のあごを左手で掴み、紅潮した顔を眺める。
「うっうるさいわね!あんたたちなんかにいっ!?」
反論の言葉はレフェリーの乳房へのセクハラで遮られる。
「乳首もしっかり立ち上がってるぜ?まさか生徒たちのこと思い出して興奮してるのか先生?」
灯の左側から乳首の先端を指でこすりつつ、内腿を指先で軽く引っかいて灯の体のかすかな反応を楽しんでいる。
(いけない、このままじゃ・・・)
自分の怒りを引き出して刺激を与え、その意思を挫くことで楽しんでいる。悔しいことにかなり快感を引き出されているのは事実だ。このまま嬲られ続ければ達してしまうかもわからない。だがダメージもだいぶ回復してきた以上反撃を狙うなら今だ。
(こんな連中ちょっとあおってやればあっさり隙を見せるはず。)
「レフェリー、ちょっと触るのやめてもらっていいですか?」
挑発しようとしたタイミングでブラックフェイスが灯から離れる。
「おいおい、これからいいところなのに。」
渋るレフェリーの肩を掴みブラックフェイスは何事かを囁く。聞いたレフェリーの顔がいやらしくゆがんだ。
「面白いな。よし、いいぜ。」
「では遠慮なく。なあ、守台先生水着についてる手形数えた?ちょうど10個なんだけど。」
灯の左乳房を、下から支える格好でついている手形を指で突きながら灯の顔の前で囁く。
「何の話よ、いちいちめんどくさい奴ね!」
「手形のサイズもさほら、ちょっと小さくないか?」
そういって灯の位置からも見えるわき腹の手形に自分の手を重ねる。確かに、大人のものより一回り小さいだろうか。
(たしかにそうだけど。あれ待って、この大きさは・・・)
そこで言葉の意味に気付いて絶句する。
「嘘でしょ・・・?」
「ほんとさ、2週間ぐらい前にあんたを調べてたここの人たちから連絡貰ってさ、ガキどものいたずらのこと伝えるときに提案したんだよ。」
御前傘下のある施設で、灯と同じサイズの水着を柔らかいマネキンに着せ集めた子供たちに特殊なインクをつけた手袋をはめさせ、一度だけ好きな場所へ両手で触るように指示した。
「まあ最初は腰が引けてたけど、マネキン相手にセクハラする真似してたら股間おっ立ててどんどんあんたの着てる水着に引っ付いてったよ。後は特殊な処理をして特製水着の出来上がりってな。」
(そんな、あの子達が、あたしのことを・・・)
精神的なショックが闘志を削いでゆく。
「なるほどね、しかしひどい先生だぜ。生徒を無自覚に誘惑して犯罪行為に走らせてたなんて。」
レフェリーの言葉が胸に突き刺さる。生徒を導くはずの自分が原因で、あの子達はこんな奴に目を付けられた。
(あたしが・・・あの子達をとんでもない方向へ?)
「それじゃあ、あいつらが先生をちゃんと気持ちよくさせられているか調べてみようかな。まずは修二君・・・」
そういうと前に立ったまま手を伸ばしてヒップをわしづかみにしている手形に両手を重ね、掌を動かしもんでゆく。
「あっ!」
修二はぽっちゃりした大食い自慢の少年で、みんなを和ませるタイプだ。身長がそんなに高くなく、この位置を触られると本人に触られているようで刺激が甘いものに感じてしまう。
「ううん、少しはずれかな?じゃあ次翔太君。」
今度は左右の乳房の根元から中ほどまでを下から掴んでいる手形の箇所を刺激する。
翔太は悪ぶっているタイプで、いつも物事を斜めから見た発言をするものだから周囲と衝突することも多い。だがそれも母親を幼いころに亡くし、仕事が忙しい父親ともめったに会えない寂しさが原因なのを灯は知っていた。
(あの子、こ、こんなに絞るみたいに胸を・・・)
思わず本人に触られている気がし、背徳的な想像におもわず背筋が震える。少年たちを間違った方向へ導いていた精神的なショックからなのか、反撃するのも忘れ与えられる刺激に集中してしまっていた。
「さて、次いこうか?」
言うや否やブラックフェイスはロープをくぐり灯の背後に回る。
「ひゃっ!」
「おおっと、こりゃ竜平君だったかな?」
竜平は中学生ながら背丈が170センチ以上あるバスケ好きの少年で、手形は翔太のそれと重ならないよう背後から乳房の上半分から乳首をしっかりカバーしていた。中指と薬指が乳首を挟むように上下に位置している。
(しまった!あ、あたしはなんて事を)
淫らな空想にふけり、刺激に順応しかけていたことに気づき顔が赤みを増す。
「照れる顔が可愛いねえ守台先生。」
「きゃあっ!」
灯の前に立ったレフェリーは恥辱をあおるためか呼び方を変え、水着に覆われていない太ももをねっとりと撫で始めた。
「な、何するのよっ、手を離しなさい!」
「いやいやガキ共がカバーできない面を引き受けようと思ってさ。」
普段ならどうということはない刺激だが、高ぶった体では切ない刺激となって体をさいなんでしまう。
「さて次は、保君。やたらここを熱心にくすぐってたけどどうかなあ?」
再び後ろから、親指が上を向き、残り4本の指がわき腹の部分を掴んでいる手形部分に狙いを定めた。
「そ、そこはあっ!?」
素っ頓狂な声をあげる灯の反応にブラックフェイスは目じりを下げてにやつく。
「おうおう、チビ眼鏡のガリ勉君のイメージそのままで、しっかり先生の弱いとこ観察してたのかあ。」
(あ、あの子こんなところまで?)
保の手形は灯がくすぐったがる箇所を的確に捉えていた。本来性感帯というほどではないが、今の状態の灯には拷問のような責めであった。太ももとわき腹の細かい刺激がぴりぴりと体を流れ、むずがゆさがたまらなくなってしまう。
「さて、それじゃ最後にリーダー格、一郎君の手形のをと・・・」
(い、今敏感なところにされたら!)
やんちゃ坊主そのままといった顔を思い浮かべ、目を閉じ歯を食いしばって刺激に備える。だが、予想されていた愛撫は加えられない。
「・・・ん〜〜〜っ!?」
目を開きかけた瞬間に秘部に指の感触がし、ヒップに顔が押し付けられた。
「たいしたガキだな、ここまで引っ付いてたのか?」
「うん、4人が離れたところでさ。」
体勢を低くしたブラックフェイスが、顔でヒップの感触を楽しみながら応える。
(い、一郎がこんな風に、ここまでするようになってたなんて・・・)
やんちゃなリーダーであった少年がここまでする欲望を秘めていたなんて、いや
(そこまでさせたのは、私・・・)
自分に対するふがいなさが胸の中に穴を開け、闘志をそいでゆく。確実に、灯の体が男たちの与える快感を受け入れ始めていた。

「うあ・・・はあ・・・」
しばらく手形をなぞる愛撫がしばらく続けられ、快感の波は高められるものの堤防を越えるまでには至らず、灯は生殺しの状態にあった。
「おいおい、ガキ共しっかりしろよ。ちゃんとできないから灯先生が切なそうだぞ。」
灯の前に移動したブラックフェイスが嘲りの声を上げる。体の甘い痺れにさいなまれ反撃する力も入らず、といって与えられる快感に身を任せるのを拒否する理性も残っている。そんな紅潮したしどけない表情は、嗜虐欲をそそるのに十分だった。
「子供たちじゃ満足できないイケナイ先生には、大人の助けがいるよなあ?」
水着のボトムのラインをじっとりと指でなぞり、灯の反応を楽しむ。
「う、うああ・・・」
敏感になった体はぴりぴりと反応するものの、あと一息が超えられない。
「もどかしいだろ先生。もっと気持ち良くしてやるよ」
そう言ったレフェリーが水着の肩紐を引っ張る。そこで生じた水着の隙間に手を差し込むと、直接乳房を掴む。
「なっ!」
「ああ、やっぱり生の感触はいいな」
レフェリーの手が乳房を揉みながら、指は乳輪をなぞる。そのまま乳首を押し込んでくる。
「乳首もこんなに硬くなってるじゃないか。気持ちいいって認めろよ」
レフェリーの科白に怒りが沸く。
「いいかげんにしなさいよ変態!」
「生意気な発言だな。これはお仕置きが必要だな」
鼻を鳴らしたレフェリーが、水着の胸元を掴む。
「ちょっと、まさか・・・」
「そのまさかだよ」
皮肉気な笑いを浮かべたレフェリーが、水着を思い切り引き摺り下ろす。その途端、灯のFカップを誇る豊かな乳房が揺れながら姿を現す。乳房を水着の縁が支える形となり、普段よりも更に深い谷間が形作られる。
(まさか、ここまでされるなんて!)
唇を噛む灯だったが、勿論これで終わるわけはなかった。
「生で見るとやっぱり大きいな」
レフェリーは乳房を鷲掴むと、そのまま捏ね回してくる。
「もう乳首もビンビンだな」
レフェリーは両乳首を抓むと、そのまま軽く引っ張る。
「こんなに乳首をおっ立てて、本当は気持ちいいんだろう?」
「気持ち良くなんかないわよ!」
「正直になれよ先生。そうしたらイカせてやるから」
逆に言えば、灯が望むまでは絶頂させない。レフェリーの言葉の裏に、灯は戦慄する。
(こいつら相手に、お願いなんてしてやらない!でも、このまま嬲られ続けたら・・・)
既に快感は全身に鬱積している。出口を与えられず、灯の中で膨れ続けている。それでも、教え子たちを守るためには耐えるしかないのだ。
「こういうのはどうだい?」
レフェリーは右手の人差し指を伸ばすと、胸の谷間にゆっくりと埋めていく。
「お、すっぽりと隠れたな」
「この・・・んっ!」
何か言い返してやろうとした瞬間、レフェリーの左手中指が乳首を弾く。右手人差し指は胸の谷間を往復し、適度な柔らかさと弾力で挟み込んでくる心地良さを味わう。
レフェリーは灯が何かを言おうとするたびに乳首を弄り、反論を封じる。それでも必要以上の刺激は与えようとせず、決して灯が達しないようにしている。
「そろそろ代わってくださいよ、レフェリー」
「仕方ないな、いいだろう」
ブラックフェイスの要求に、レフェリーが灯の前から退く。
「これだけ大きいおっぱいなんだ、泳ぐときに邪魔にならないのかい?」
ブラックフェイスが乳房を下から弾ませる。
(こいつ・・・っ!)
言い返そうとしたその瞬間、乳首を弾かれる。
「はうっ!」
「いい声が出るねえ先生。実は乳首が敏感なのかい?」
また乳房を弾ませながら、ブラックフェイスが笑う。
「・・・そんなわけ、ないでしょ」
一度息を吸い、ブラックフェイスを睨みつける。
「そうかい?なら、どこが敏感なんだろうな」
左手で乳房を揉みながら、ブラックフェイスは灯の身体に右手を這わす。時折乳首を苛め、灯の快感を貯めていく。
(イケないのが、こんなに苦しいだなんて・・・)
ブラックフェイスも灯が決して達しないように責めを加減しながら、セクハラを続けてくる。
「おいブラックフェイス、そろそろまた交代してくれ」
「なら、同時ってのはどうですか?レフェリーはおっぱいをどうぞ。俺は下を責めるから」
しゃがみ込んだブラックフェイスは少し左にずれ、レフェリーのためにスペースを空ける。
「先生、ギブアップしたくなったらいつでもギブアップしていいからな。ただし、そのときには証拠は渡せないけどな」
レフェリーは再び灯の乳房を揉みながら、にやにやと笑う。灯が絶対にギブアップなどしないとわかっての言葉だろう。
「先生はこっちのほうが感じるのかな?」
ブラックフェイスは秘裂に触れるか触れないかの微妙なラインを撫で、じりじりと快感値の目盛りを上げていく。
「くぅぅっ・・・!」
四肢を拘束された灯は、男二人からのセクハラを耐えることしかできなかった。

レフェリーとブラックフェイスの焦らし責めは、既に15分を超えていた。
「はっ、はっ、はぁっ・・・」
その間一度も達することができず、快感が溜まり過ぎた灯は喘ぐしかできなかった。
「かなり息が荒くなってきたな」
硬くしこった乳首を弄りながら、レフェリーが嘲笑う。
「本当はイキたいんだろう?」
ブラックフェイスは水着の上から秘裂を撫で、灯に確認してくる。それでも灯は首を振る。しかし、秘裂から生じた愛液は、既に水着の上からわかるほどだ。
「先生のここは正直に『イキたい』って言ってるんだけどなあ」
「ふぐぅっ!」
秘裂をつつかれ、腰が跳ねる。それでも一瞬の刺激程度では達せない。絶頂への渇望は灯本人が恐ろしいほどだ。
「どうだい先生?一言言ってくれればきちんとイかせてやるぜ?」
「だ、誰が、あんたなんかに・・・」
そう返した途端、乳首と秘部に刺激が加えられる。
「ふあっ、あっ、ああぁ・・・」
しかし「イケない」。まるで刺激が足りない。ブラックフェイスがヒップを撫でながら、灯に話し掛ける。
「がんばるねえ。でもがんばって映像取り返したって、あんたがいる限りはあいつらまた似たようなこと起こすかもだぜ?」
「っ!」
「そうだなあ、こんな先生にいられちゃ毎日エロい妄想で頭がいっぱいだ。」
乳房の下あたりを指先でこすりながらレフェリーも口を挟む。
「このリングですっきりして、あいつらの前から消えなよ。それがあいつらのためってもんだぜ。可愛くおねだりしてれくりゃ、証拠の映像を消してもらうよう頼んでやるよ。ねぇ、レフェリー。」
「そうだな、それもいいな。」

(・・・あたしがいる限り?)
確かに、彼らに自分がどう写っているのかも知らないままに、年長者ぶっていたのは滑稽だ。自分がいなくなれば、彼らの目も覚めるかもしれない。
(そうよ、そうすればきっと・・・)
身近に無防備な大人がいればこそ、妙な考えを起こしてしまったのだ。それなら自分がいない方があの子達のためではないか?
(・・・いや、違うわ。)
そこまで考えたとき、目の前にいる男の存在を思い出した。身近な大人というのなら、この男が彼らに与える影響はどうなるのか?
(あたしがいなくなったとしたって、こういう男はあの子達に絡み続ける。あの子達を脅して、自分がいる世界に引きずり込む!)
ここで自分が消えれば彼らの将来はどうなるのか、一体誰があの子達を守ってやれるのか。
自分が過ちを犯させてしまったなら、なおさら黙って消えるわけには行かない。
生徒のために、先生として、大人としての自身の矜持のために、責任を持って正しい道へ引き戻さなければならない!
(あの子達の将来を、こんな男の好きにさせない、させるかっつうの!)

燃え上がった闘志を内に秘めたまま、体の力を抜く。
「おっと、OKのサインかい先生?」
それを屈服の証と見たブラックフェイスが、再びセクハラを始めようとしたその時、灯の体が勢いよく跳ね上がる。
「おりゃあっ!」
「うおっ!?」
体の屈伸とロープの反動を使った勢いを乗せた頭突きが、ブラックフェイスの鼻先に激突し、その勢いのまま手足をロープから引き抜いて脱出する。
「もう一丁!」
怯んだ隙を逃がさず左ミドルで、右手で鼻を押さえてがら空きの右わき腹をえぐる。
「ちぃっ!」
体は捻ったものの勢いは殺せず、ブラックフェイスはダメージそのまま転がって灯から距離をとる。
「何が、あの子達のためよ・・・」
怒りの闘志を全身に漂わせ、一歩一歩距離を詰める。
「こいつっ!」
「甘いっ!」
苦し紛れのストレートをかわすとボディーブローを放ち、ブラックフェイスが体を折り曲げたところで首をフックする。
「あの子達の分、まとめて返すわよ!」
そのまま膝蹴りの連打を5発あびせたところで、ブラックフェイスが苦し紛れの腕力で灯を突き放す。
「このアマあっ!」
もはや余裕もなくなったのか、血走った目で拳を振り上げるブラックフェイスに、灯は真正面から飛び込む。
「これが、とどめよっ!」
体勢を低くして一気に距離を詰めると、その勢いを殺さぬままにマットを蹴って飛ぶ。
そのままブラックフェイスの頭部を固定し、あごに飛び膝蹴りを叩き込んだ。
「がっ・・・」
吹き飛ばされたブラックフェイスは立ち上がろうとするが、わずかなうめき声を上げて糸の切れた操り人形のように倒れた。
「この馬鹿、調子に乗るからだ・・・」
素早く距離をとっていたレフェリーが、動く気配のないブラックフェイスに近づき様子を確認すると、ゴングを要請した。

〈カンカンカン!〉

「チョイ待ち、レフェリー」
ゴングと共に素早く逃げ出そうとしたレフェリーは、襟をむんずと掴まれた。
「ど、どうした守台選手。証拠のほうは控え室で渡すから急いで戻ったほうが・・・」
「やかましいっ!」
振り向かされると同時にフックのコンビネーションをお見舞いされ、レフェリーはあっけなくリングに沈んだ。
「全く、こんなとこ二度とごめんだわっ!」
ついでに背中を踏みつけてから、灯はガウンを纏いリングを後にした。
(あの子達も、帰ったら覚悟しときなさい。きっちり根性叩きなおしてやるんだからね・・・)
淫らな野次交じりの歓声を受け、花道を行く灯の頬が赤らんでいたのがセクハラのせいだけだったのかは、本人のみぞ知る。

灯の勝利によって証拠は約束どおり手渡され、灯が自身の手でデータをすべて処分した。ブラックマスクとしてリングに上がった男はひそかにデータを隠し持っていたが、<地下闘艶場>サイドにかぎつけられ、すべて処分された。その際<地下闘艶場>サイドの持つ力の恐ろしさを身をもって知った男は、灯と少年たちの住む土地を遠く離れることにしたらしい。
灯は少年たちに、『前から自分の着替えを盗撮していた男を見つけしばき倒し、データをすべて処分してやった』という、自分の身に起きた事のみを話した。
少年たちは一時ますます青い顔になったが、男が土地を離れ自分達に何も言ってこなくなったことに安堵し、もう二度とあんなことはすまい、と互いに約束したという。
かくして一件落着し、少年たちの未来は灯によって守られた。

だがその後少年たちを教える時の守台先生には、以前にはなかった何ともいえぬ艶っぽさが漂い、生徒たちはいよいよ煩悩を膨らませたそうな。


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