【フィアーレスワン:プロレス 其の二】 作:とあるファン様   お手伝い:事務員

犠牲者の名は覆面レスラー「フィアーレスワン(Fearless swan)」。本名は雨久(あめひさ)・正奈(まさな)・フィオーレ。
24才で身長は182cm、3サイズはB109(Hカップ)・W73・H105。

白鳥を模したマスクとコスチュームを身にまとい、大柄な体に似合わずリング上を軽やかに舞い戦うベビーフェイス。
独特の空中戦には幼い頃学んだ新体操やバレエで養ったバランス感覚が基本にあり、プロレスだけでなく、テコンドーやサバット、カポエラの蹴り技も学んでいる。

素顔の彼女は日伊のハーフで、黄金を思わせる輝く金髪のロングヘアにエメラルドグリーンの瞳を持つ。
肌は日本人に近く、ややたれ目で顔立ちも年齢より幼く見える。長身だが決してごつごつした感じではなく、西洋の大柄なモデルといった体型。
真面目で礼儀正しく、人に優しい性格。普段はおとなしく人と滅多に争わないが、リングに上がれば凛々しく闘う。
幼い頃から母に日本語を学んでいるので流暢に話せ、敬語も読み書きも問題ない。
父親は彼女が生まれて間もなく亡くなったが、蜘蛛を模した覆面をつけたプロレスラーであり、それがまた彼女がプロレスを志すきっかけでもあった。


前回参戦した際、1戦目のミステリオ・レオパルドには勝利したものの、2戦目のマスク・ド・タランチュラとは引き分けに終わった。
そしてそれだけでは終わらず、試合後もセクハラを受け続け、裸にマスクのみという状態で責められる屈辱を味あわされた。
大柄な覆面美女レスラーの淫らな姿に再参戦の希望が多く寄せられ、<地下闘艶場>サイドが彼女に要請を出したのだった。


試合前の控室で、渡された衣装を身に着けガウンを羽織った正奈は、椅子に座って精神を集中させていた。
その手には試合用のマスクが握られている。
全頭タイプでなく額から下を覆う、口元が露出するタイプのマスクだ。
(・・・やっぱり、一筋縄ではいかない相手ね)

今回の参戦要請が来た際に、彼女は対戦相手に因縁の相手、マスク・ド・タランチュラを希望した。
だが<地下闘艶場>サイドは却下し、
『<地下闘艶場>での試合に一度でも勝利した際には、その試合を組む』
という条件のもとで、代わりに今回のファイトマネーの上乗せを提示してきた。
逆に言えばスワンの意地を利用し、敗北させたうえで闘志がくじけるまで何度でもリングに上げる狙いもあるのだろう。
(それならそれで構わない・・・)
前回あそこまでされた自分の弱さもそうだが、父と同じ蜘蛛を模したマスクのレスラーが、こんなリングに立っていることは何より許せなかった。
屈辱を勝利で乗り越えることと、打倒マスク・ド・タランチュラとを誓い、フィアーレスワンは要請に応じたのだった。
「そのためにも今回の試合、必ず勝って見せる・・・!」
堂々とこのリングで勝ち、リングサイドの思惑を打ち砕く。
そうして、次こそあの男への雪辱を果たす。
マスクの口元部分を顎にかけ、左右から耳を穴へ通しつつ後頭部へまわす。
気合を入れるように紐を強く結ぶと、もうそこにいたのはプロレスラー、フィアーレスワンだった。
ちょうど入場を促す声がかかり、彼女は立ち上がった。

花道を進むフィアーレスワンに対し、あふれんばかりの熱気や歓声と共に、痴態のリクエストが飛んでくる。
その勢いに動じる様子もなくリングへと向かう姿には、前回以上の凛々しい闘志が宿っていた。
半分ほど進んだところで速度を上げ一気に駆け出すと、トップロープをつかんで一気に飛び越えリングに降り立つ。
ひときわ大きくなった歓声に、右手を突き上げて応える。
(怯んだりしないわ・・・勝つためにここに来たんだから!)

リング内にいたのは前回と同じレフェリーと、肥満という表現では足りないぐらいに、全身が脂肪に覆われた男だった。
「赤コーナー、『ミスターメタボ』グレッグ“ジャンク”カッパー!」
コールされたグレッグは緩い笑みを浮かべたまま、フィアーレスワンを眺めまわしている。
「青コーナー、『翔伊白鳥』フィアーレスワン!」
コールに応えて、フィアーレスワンはガウンを脱いだ。

今回のコスチュームは、ビキニ水着のような黒のトレーニングウェアと、肘より上までの長手袋に膝上までの靴下だった。
足は通常のレスリングシューズを履いている。
胴体部の面積はもちろん小さく、上は胸の谷間を大きく露出させている。
下も正面からはほぼX字に見えるセクシーなもので、後ろから見ればヒップもほぼ丸出しだ。
柔軟な運動用生地のコスチュームは、フィアーレスワンの体にフィットしつつも、淫らに演出していた。
(・・・正直前より恥ずかしいけど、そんなことを気にしている場合じゃないわ)
恥ずかしがるそぶりも見せずに堂々と立ち、これから始まる戦いに意識を集中させる。
衣装に対しても、彼女にそうした態度に対しても、観客席の熱気は一段と高まりさらなる歓声が飛んできていた。

グレッグのボディチェックを早々に終えたレフェリーが、にやけた顔で近づいてくる。
「久しぶりだな、フィアーレスワン選手。なんだか前より色っぽくなったんじゃないか?」
「・・・そちらが用意した衣装のせいじゃないですか?」
レフェリーの言葉に動じず、皮肉を返す。
「気に入ってくれたなら嬉しいよ。まあ、早速ボディチェックと行こうか」
ルールの側にいる立場上の余裕か、レフェリーも動じずに手指をいやらしく開閉させる。
「・・・どうぞ」
「相変わらず素直だな、助かるよ」
目を閉じて答えたのに気をよくしたのか、レフェリーは嬉しそうにフィアーレスワンの体に手を伸ばす。
「相変わらず大きいな・・・いや、前より大きくなったんじゃないか?」
からかいながら、レフェリーはわざと指の腹でバストの上半分の素肌を軽くなでる。
そこから、じっくりと5本の線を描く。
「!」
それは本名である正奈の、『正』の文字だった。
「前回はこの文字の何回分も気持ちよくなったし、まあ無理もないなあ・・・?」
前回の試合の終盤、レフェリーは5回の絶頂でマスクを剥がすと宣言。
そして4回の絶頂にフィアーレスワンを追いこんだ後、あえて焦らすことで、自ら絶頂を懇願させるように仕向けたのだった。
その時は何とか耐え、決死の反撃に出たことで引き分けに持ちこみ剥がされることはなかった。
だが、その後リング上でレフェリーとマスク・ド・タランチュラに徹底的に嬲られたのだった。
最終的に何度絶頂と気絶を繰り返したかは、自分でも覚えていない。
「噂じゃあ、あの後急にコスチュームを作り直したって聞いてるんだが、本当かい?」
「・・・さあ、どうでしょうね」

はぐらかしたが、事実だった。
前回の試合の後、色責めが原因なのかバストとヒップのみならず体全体の肉づきが良くなり、一層の色気を放つようになったのだった。
ボディラインも変わったのかコスチュームも微妙に合わなくなり、動きづらさから新しく作り直すことになってしまった。
このリングの毒牙が表舞台のリングにまで食い込んだようで、一層の屈辱だった。
無論そこから戦う体に作りなおすために猛特訓を積んだのは言うまでもない。

その反応に満足したのかしないのか、レフェリーは一層念入りにバスト全体を揉みはじめる。
「ぜひ教えてほしいなあ。大事なデータだ・・・」
今度は衣装に包まれた下半分を、重さを確かめるように持ち上げては離す。
自重で上下に揺れるバストを見て、レフェリーは満足そうににやける。
「・・・」
「だんまりか?まあいい、それじゃ次はここを・・・」
フィアーレスワンの反応がないのを気にするでもなく、左手でバストを弄びつつ、レフェリーは右手を彼女の下半身へと伸ばす。
肌を包むウェアは食いこみのせいか、今にも秘所の形が浮きだしそうだった。
さすがに思わず身を固くするものの、唇を引き結んで持ちなおす。
「ん、何だその反応は?何かありそうだな、念入りに調べるとしよう」
レフェリーは屈んで中腰になると、本格的にボトム周りを調べはじめる。
ヒップ、太ももを撫で、ボトムの裾を指でなぞり、恥丘を指先でさする。
「っ!」
指の腹で、下から恥丘を持ち上げるように刺激されると、反射的に身を固くしてしまう。
「うん、やっぱりここが怪しいな」
白々しく言うと、指の動きを大きくしたり小さくしたりしながら反応を見てくる。空いた左手でヒップも撫でまわすことも忘れない。
(試合が始まるまでは、我慢よ・・・!)
すべては受けた屈辱を晴らすため。
相手の手に乗ることになってでも、すべてを打倒して勝利をつかむ。
最大の目標だけを意識することで、フィアーレスワンは屈辱の時間を耐えていった。


「よし、もういいだろう・・・」
一通りのセクハラで満足したのか、レフェリーは離れるとすぐさまゴングを要請する。

<カーン!>

「うぇへへ、行くぞお!」
それを知っていたかのように、すぐさま勢いよくグレッグが飛びだす。
セクハラも終わり、ゴングに備えようとしていたフィアーレスワンの反応がわずかに遅れる。
「くっ!」
左右への回避も間に合わず、左のミドルで迎撃する。だが、
「うぇへへ、つかまえたぞぉ」
音高く胴体にめり込みはしたものの、グレッグは意に介した様子もなくその脚を両手で抱えこんでくる。
そしてそのまま投げる、というわけでもなく汗にまみれた手で足を撫でまわしはじめる。
感触こそオイルマッサージに似ているが、遠慮のない動きには嫌悪感しかない。
「このっ!」
グレッグに肘を当て、押しのけようと試みる。
「く、くすぐったいぞぉ」
だが肌の上を滑るか、大量の脂肪にめり込むかで、一向に効果がない。
(それなら!)
左足はそのままに跳び、右足でグレッグの腰の横あたりを押し込む。
その反動でグレッグの腕から左脚を引き抜くことに成功し、一旦距離が取れた。
「うぇへへ、待てぇ!」
グレッグも少しバランスをくずしたものの、すぐに立て直し突進してくる。
(今度は避けないと・・・!?)
かわそうとしたフィアーレスワンだったが、左足が滑りバランスを崩してしまう。
「えっ!?」
足元を見ると先ほどの接触で付着したグレッグの汗が、足元へ滴り落ちて奇妙な光沢を放っている。
いや、見渡せばすでにグレッグの流した汗は、リング全体に広がっている。
「な、なんでこんなに滑るの!?」
思わず声に出した時には、すでにグレッグが迫っていた。
「うぇへあぁ」
フィアーレスワンを捉えたグレッグは、そのまま一気に近くのポストまで突進した。
「うあっ!」 
グレッグの突撃こそ腕でガードしたものの、ポストに勢いよく激突した背中から胴体に響いた衝撃は大きく、もたれる恰好になってしまう。
「うぇへへ、どんなもんだあ」
動きが止まったのに気をよくしたのか、グレッグがフィアーレスワンのバストを揉みはじめる。
(ま、またこんなことを・・・)
Hカップのバストがグレッグの手の中で形を変え、そこから伝う汗は胴体を流れ、体全体を濡らしてゆく。
「あっ!?」
そればかりかグレッグの手とバストの間にまんべんなくゆきわたった汗が、独特の刺激を生みはじめる。
なんとか脱出しようと体をくねらせるフィアーレスワンに、グレッグの横からレフェリーが手を伸ばす。
「フィアーレスワン選手、ギブアップか?」
今なお滴り落ちているグレッグの汗を被らないところから、フィアーレスワンのヒップを撫でまわしてくる。
「し、しません!試合を続けますから、離れてっ!」
両腕を伸ばしてトップロープをつかみ、グレッグの体との間に押し込むようにして膝を上げると、腹に力を入れてさらに押しあげる。
そのまま体ごと持ち上げ、グレッグの顔面に膝を突き刺すように当てた。
「あいでえ!」
グレッグの身体前面を滑った勢いもあり、見事鼻に命中させ怯ませることに成功する。
「まだです!」
たまらず後退したグレッグに、すぐさまポストに上がってミサイルキックを繰りだす。
「せいっ!」
勢いをつけた分グレッグの胴体に両足が深々とめり込み、フィアーレスワン自身も確かな手ごたえを感じた。だが、
「うぇええっ」
「あっ!?」
勢いのついたキックを受けたグレッグはダメージもあってかバランスを崩し、ゆっくりと後ろへ倒れてゆく。
そこへめり込んだ脂肪の反動が一気に起こり、時間差で予想外の方向にキックの反動を受けたフィアーレスワンは、宙に放り出されるように落下してしまう。
「うあっ!」
なんとか受け身をとって頭からの激突は防いだが、すでにグレッグの汗はリングに充満しており、滑りで落下の衝撃を上手く逃がせずダメージを負ってしまった。
「う、うう〜い、痛えぞぉ〜・・・」
仰向けに倒れたグレッグも片手で後頭部、片手で腹部をおさえ、うめき声をあげている。
(は、早く立たなきゃ・・・)
急いで体勢を立て直そうとするが、呼吸が追い付かず床の滑りもあって上手く力が入らない。
ロープをつかめば、と考えたところでレフェリーが近づいてきた。
「フィアーレスワン選手、大丈夫か?」
白々しく心配するような口調で、四つん這い状態のフィアーレスワンの左後ろに膝をついて、右手で背中からヒップを撫でまわす。
「だ、大丈夫です、離れてください・・・!」
「そういうが、苦しそうな口調じゃないか。呼吸をしっかりしないと・・・」
抵抗が弱いと知るや、レフェリーはグレッグの汗にまみれたヒップを右手で、バストを左手で弄りはじめる。
「や、やめてくださ、ああんっ!」
何とか腕で押しのけようとしたところ、レフェリーの指が、乳首や淫核といった部分をこすり、汗のぬめりの刺激もあって思わず声が出てしまう。
「いやいや、様子がおかしいな。これはしっかり調べないと」
ぬけぬけとそういうと、レフェリーは身体を押し付けてフィアーレスワンの死角に入りつつ、反応があった部分を重点的に刺激しだす。
「んんっ!」
(は、早く脱出しないと・・・あ、相手も回復してしまうわ!)
「おいグレッグ、どうした?」
気になったのか色責めの指は止めずに、レフェリーが顔だけグレッグに向け声をかける。
「うう〜痛〜え〜」
「馬鹿、早く立て!」
グレッグはまだうめいていた。転がって痛みを逃がそうとしているようだったが、左右に大きく揺れる脂肪が邪魔をして、仰向けの体勢を変えられずにいるようだった。
逆さになってもがく亀にも似た姿に、観客席から失笑の声が聞こえてくる。
「せいっ!」
「うおっ!?」
レフェリーがグレッグの様子に気をとられている隙に、フィアーレスワンは体をねじって転がり、レフェリーを跳ね飛ばしつつ脱出した。
グレッグの様子をうかがいながらなんとかロープに近づき、つかんで立ち上がり呼吸を整える。
(一体どうしたら・・・)
自分が得意とする蹴り技は脂肪に阻まれ、飛んで勢いをつけても当て方によってはこちらも危険が大きい。
投げや関節技も相手の体が滑る以上有効とはいいがたい。
(脂肪に包まれていないところを狙えば・・・)
ダウンしている今なら、とロープを使おうとしたした時に背後から声がした。
「よう、フィアレスちゃん。元気だったかい?」
「ひゃっ!?」
いきなりヒップを撫でられ思わず力が抜けたところ、背後からロープ越しに抱きすくめられ拘束される。
「また会えてうれしいぜ・・・いや会いにきてくれて、かな?」
(この声は、まさか!?)
肩越しに見ると、そこにいたのは因縁の相手、マスク・ド・タランチュラだった。
「どうしてあなたが!」
リングロープの外側に立ち、トップロープの上から長い腕をリング内に伸ばしていた。
驚いているフィアーレスワンを尻目に、リング下の黒服がマイクを持った。
「お知らせいたします。ただ今より、先の試合でフィアーレスワン選手と対戦したマスク・ド・タランチュラ選手が、グレッグ選手のセコンドにつきます!」
前回の試合で彼女を辱めた選手の登場に、場内に歓声が上がった。
セコンドとはいっても、このリングにとってはあまり関係がない。
ここからの試合内容への期待に、早くも責めのリクエストが飛ぶ始末だった。
「レ、レフェリー!セコンドなら選手に手を出すのは反則です!」
「ん?なんのことだ?」
因縁の相手の思わぬ乱入に、フィアーレスワンは混乱しつつも抗議の声を上げる。
しかしレフェリーはフィアーレスワンに背を向け、反対側のロープをつかみようやく立ち上がろうとしているグレッグを見ながら、とぼけた声を上げる。
(こ、こんな手を打ってくるなんて!)
前回は2連戦とはいえ、あくまでシングルマッチだった。
ましてやこの次の試合に、と思っていた相手が乱入してくるのは予想外だった。
「だ、だから・・・ああっ!?」
グレッグが立ち上がり、それを確認したレフェリーがこちらのほうを向いた途端、拘束が解かれ背中から勢いよく突き飛ばされた。
とっさにバランスを取り転倒は免れたが、立ったまま前方へ滑ってしまう。
「うぇへへ、お返しだぁ!」
そこへロープを使って勢いをつけたグレッグが迫り、ラリアートを放つ。
「どうだあ!」
「ああっ!」
ガードも間に合わずまともに喉にくらい、舞い上がった体はきりもみ回転とともにマットに叩きつけられる。
喉だけでなく体への衝撃で、呼吸が止まる。そして、
「うぇへへ、もう一発だあっ!」
すかさずグレッグが、その上にボディプレスを放つ。
「がはあっ!?」
すさまじい音ともにリングは大きく揺れ、挟まれたフィアーレスワンは、内臓が飛び出すかのような衝撃に悶絶する。
(だ、だめ・・・気を失っては・・・)
声を出すこともかなわず、グレッグが離れてもリングに力なく横たわるしかなかった。
気絶こそ避けられたが、細い呼吸を保つのが精いっぱいだ。
「おお・・・おいグレッグ、ちょっと待て」
すぐにフィアーレスワンにのしかかろうとするグレッグを、少し慌てたレフェリーが制して、何事かを耳打ちした。
不満そうな顔をして聞いていたグレッグだったが、聞き終えるとにやけて笑い声をあげた。
「うぇへへ、わかったぞお」
「よし、じゃあよろしくな」
フィアーレスワンの足元に近寄ったグレッグは、仰向け状態の彼女の両足首を靴下越しにつかみ開脚させる。
「あっ・・・!?」
汗に光る内ももと、ボトムが食いこんでいそうな股間があらわになってしまう。
そのままグレッグは開いた脚の間に入ると一旦手を離す。
そして後ろを向くと右手で右足首、左手で左足首を再び靴下の上からつかむ。
「な、何を・・・!」
力が入らないなりにもがくも、しっかりとつかまれ外せない。
「おうい、これでいいかあ?」
「おおいいぞ。その靴下とグローブは特別製で、お前の汗でもなかなか滑らないようになってるからな」
「え!?」
さりげなく告げられた事実に驚く暇もなく、グレッグが歩きだす。
「うぇへへ、出発だあ」
両手を電車ごっこのように腰のあたりに置き、リングいっぱいに左回りに円を描きながら彼女を引きずっていく。
幸い滑るリングとの摩擦はほぼなく、肌に痛みはない。
だが、仰向けで開脚させられ、抵抗もできず引きずりまわされる姿を観客に見せつけられるのは屈辱だった。
「おうい、これでいいかあ?」
一歩ごとに左右に身体を大きく傾けながら、少し楽しそうにしているグレッグがレフェリーに尋ねる。
「ようし、いいぞグレッグ。しばらくそのままだ。」
答えるレフェリーはリング中央に立ち、フィアーレスワンの様子をにやにやしながら見ている。
「いい眺めだな、フィアレスちゃん。どんな気分だい?」
マスク・ド・タランチュラも自分の前を通るたびに、手を伸ばして太ももやバストをつついてはからかってくる。
(馬鹿に、して・・・・!)
おそらく、レフェリーは今のフィアーレスワンのダメージに、重量級のグレッグがのしかかるのは危険だと判断したのだろう。
グレッグ自身そういう加減をしそうにないと判断し、こういった真似を指示したに違いない。
闘うのではなく、相手選手を見世物にする意図に救われてしまったといえる。
屈辱に怒り、反撃に出ようにも今の自分の状態では、呼吸を止めず回復に努めるのが精いっぱいだった。
それに、
「んっ・・・!」
ボトムの生地はマットとこすれると少し食いこみ、秘部に刺激を受けてしまう。
ヒップを持ち上げ床から離すと、自分から開脚をしているようにも見えてしまう。
両手はかろうじて胸と股間をかばうような位置においているが、かえって見る者の興奮を誘う格好にも見える。
М字開脚に見える姿勢の美女が、なすすべなく引きまわされながら時折体をよじる様子に、観客は手拍子や野次を飛ばしてくる。
(こ、このままじゃ終われないわ・・・)
ひとまず無駄な消耗は避け、冷静に呼吸を続け回復を待つしかない。
闘志を内に燃え上がらせて、フィアーレスワンは周囲からの淫らな視線に耐えていた。



そのままグレッグがリングを何周かしたところで、マスク・ド・タランチュラから抗議の声がかかる。
「おいレフェリー、この眺めにもそろそろ飽きたぜ。お客さんに悪いだろ?」
「うん?ああ、そうかもな・・・グレッグ。もういいぞ」
フィアーレスワンの体力が回復しすぎる前に、とレフェリーがグレッグに指示を出す。
「うぇへへ、なんだあ、もういいのかあ?」
ちょうどコーナーポストを通ったあたりにいたグレッグが、少し残念そうに答える。
「ああ、お次は・・・」
(・・・今だわ!)
レフェリーが言い終わらないうちに、フィアーレスワンは右手を伸ばしてロープをつかむ。
そこを支点に体を左回転させ、その勢いで足首をグレッグの手から引き抜き左向きの横寝の体勢になる。
「おい、馬鹿!」
「ううん?」
レフェリーの指摘にグレッグが左から振り向こうとするのに合わせ、左足首の靴下部分をグレッグの左足首前にかける。
そしてロープをつかんだまま、右足裏を斜め下からグレッグの尻の左側に押し当て、左肘はリングに着けた。
手袋越しにマットに着けた肘はグレッグの汗でも滑らず、身体を固定することができた。
(確かに滑らないわ・・・これなら!)
そのまま右足に思い切り力を込め、グレッグの尻を押す。
「せえいっ!」
右足が、ボクサートランクス越しにグレッグの尻にめり込んでいく。
「あでえっ!?」
さすがに脂肪でも勢いを吸収しきれず、グレッグは両手をばたつかせると右足を大きく踏み出すと同時に左膝をついてしまう。
リングが大きく揺れるほどの衝撃だった。
(よし!)
すかさず足を戻したフィアーレスワンはロープと肘を支えに何とか立ち上がる。
「これでっ!」
ロープをつかんだまま、脂肪の薄い後頭部を狙いキックを放とうとする。だが、
「おおっとっ!」
「ひゃあっ!?」
内ももから股間にかけて撫でられる刺激が走り、一瞬身体の動きが止まってしまう。
近くへ移動してきたマスク・ド・タランチュラが長い手を伸ばし、フィアーレスワンの攻撃を妨害したのだった。
「足癖が悪いぜフィアレスちゃん!」
そのまま軸足の足首をつかむと思い切り引っ張る。
「あっ!」
リングの滑りもあり引き倒されロープを手放してしまい、もう片方の足首もつかまれ動きを封じられる。
そのままロープの近くに引っ張られ、マスク・ド・タランチュラに足を向けた仰向けの状態になった。
「へっへっ。フィアレスちゃんの長〜い脚と、俺の長〜い腕。相性がいい気しねえかい?」
「し、知りません、離して下さい!」
「そういうなって。せっかくの靴下は有効に使わねえと・・・」
マスク・ド・タランチュラの腕は、腰をリングにつけガードポジションのように膝を曲げたフィアーレスワンの足首をつかんでいる。
あがく足をいなしているその腕はまだ伸びきっておらず、力を入れればさらに引っ張り込む余裕がありそうだった。
「やったなあ、こいつう!」
「あっ!」
そこへやってきたグレッグが腹の上に馬乗りになり、フィアーレスワンのバストを勢い任せに揉みはじめる。
「うぇへへ、お返ししてやるぞお」
仰向け状態でも形の良さを失わなかった汗まみれのバストが、グレッグの手の中で柔軟に形を変えていく。
「ああっ、離してっ!?」
「すっかり回復できたようだな、フィアーレスワン選手」
ヒップを撫でまわされる感触と共に、グレッグの左側から顔を覗き込んできたレフェリーが声をかけてくる。
その右手はフィアーレスワンのヒップの下に潜り込んで撫でまわしていた。
「いやあ、おかげでこっちも安心して試合を続行できるよ」
(か、勝手なことを・・・)
「グレッグ。今度はへまするなよ、と・・・」
様子を見ていたマスク・ド・タランチュラは、グレッグの重量で抑え込まれたフィアーレスワンの脚を引っ張って膝を伸ばした状態にする。
そのまま足首あたりで交差させると、左わきに挟み左腕も巻きつけるようにしてひとまとめに拘束する。
「あっ!?」
対応が間に合わず、フィアーレスワンの脚の動きが封じられる。
そしてゆっくり右腕を伸ばすと、指先で太ももや秘部への責めを開始した。
「あ、あ、あああっ!」
身動きのままならない状態で体のあちこちを責められ、送りこまれる刺激に思わず声が出てしまう。
「うぇへへ、おっぱい、直に揉んじまうぞぉ」
「!」
するとグレッグが衣装の下から指を差しいれ、直にバストを触ってくる。
(な、何とか脱出しなきゃ!)
両腕でグレッグを押すものの、太ももの脂肪が形を変えるだけで効果がない。
「うぇへへ、くすぐったいぞお」
儚い抵抗に刺激されたようで、グレッグはバストを揉む手をより大きく強く動かしだす。
直に触れられるバストが形を変えるとともに、汗の音はよりいやらしく響く。
通常なら痛みを感じそうな強さでも、汗の効果が強烈な刺激を生みだしていた。
「ひゃああっ!」
「かわいい声だぜ、フィアレスちゃん。顔が見えないのが残念だ」
強烈な快感に思わず上げた声に、マスク・ド・タランチュラがそれほど残念でもなさそうに反応する。
「ずいぶん気持ちよさそうだな、乳首が立ち上がってきてるんじゃないか?」
グレッグが一休みしたタイミングで、レフェリーも左手の指で衣装の上から右の乳首を押しこんでくる。
「んはあっ!?」
「いい反応だな、頑張りがいがあるよ」
今度は指先でつまみ上げるようにしごきだす。指でなく汗に濡れた衣装で肌をこすられる感触は、指とは違う刺激をもたらしていた。
「ちきしょう、お前ら・・・」
その様子を見ながら口をとがらせていたマスク・ド・タランチュラが、思いついた様子で話しだす。
「・・・そうだ、グレッグちょっとだけ腰浮かしてくれ」
「うう、なんでだぁ?」
「いいからいいから・・・よし、こうだっ!」
グレッグがしぶしぶわずかに腰を浮かした瞬間、マスク・ド・タランチュラが掴んでいたフィアーレスワンの足を大きく引っ張った。
「ああっ!?」
移動した距離はわずかだったがフィアーレスワンのヒップはリングから浮いて、グレッグの腰が彼女の肋骨下部あたりに移る。
さらにマットとの摩擦で、胸を包むウェアが上にずれ、バスト全体が露出してしまう。
そしてその生乳が勢いのままにグレッグの内ももの間に押し込まれ、さらに卑猥に形が変わった。
「え、ええっ!?」
「おう、こりゃ凄い・・・」
その光景にレフェリーはおもわず生唾を飲む。
フィアーレスワンの両脇もグレッグの膝に引っかかり、両腕が封じられていた。
「うぇへへ、うぇ、うぇへへ・・・気持ちいいぞお!」
柔軟なバストが与える内ももと股間への圧迫感に気をよくしたのか、グレッグは一層強い勢いでバストを揉みくちゃにしはじめる。
「い、嫌あっ!」
指の動きだけでなく逸物の感触までもがバストに伝わり、フィアーレスワンは嫌悪感にたまらず声が出る。
「よーしよし、じゃあ俺はこっちを・・・お、かなり濡れてるな・・・」
それを見たマスク・ド・タランチュラも、両足首を自身の両脇に挟み、距離が近づいたヒップと股間、そして太ももに両手で責めを開始する。
「ああ、だ、ダメ、ダメえッ!」
身体に与えられる強烈な刺激は、とうとう快感の堤防を壊しはじめ、今まで以上に大きな声が出てしまう。
(こ、このままじゃ、私、ま、また・・・!)
絶頂への予感に、フィアーレスワンは何とか力を入れて耐えようとする。
ここで絶頂させられてしまうのは、消耗が激しくなるばかりか、敵をさらに勢いづかせるだけにしかならない。そうなればいよいよ相手の思うがままにされてしまうだろう。
(た、耐えるのよ、なにが、なんでも・・・)
歯を食いしばり、身体のあちこちに力を入れ脱出のチャンスを探る。
だが、
「あ、ああ、あああ、いや、嫌ぁああああっ!?」
それからほどなくして、ひときわ大きく体が震え、絶叫と共に快楽の頂点へ昇りつめてしまった。
「おお、こりゃまた凄い・・・グレッグ、ちょっと体を起こせ。フィアーレスワン選手の息がつまる」
「うぇへへ、わかったぞぉ」
グレッグがわずかに腰を浮かせ、体重から一旦解放されたが消耗は激しく、荒い息をつくのがやっとだった。
(た、助かった・・・でも、私・・・)
リベンジを誓ったリングで、無理やり敵の手で絶頂を迎えさせられてしまった。
悔しさで顔を横に倒したフィアーレスワンに、レフェリーが話しかけてくる。
「いやいや、見事は達しようだったな、フィアーレスワン選手。さすがにこんなに感じるとは予想外だよ」
「うっ・・・」
悔しさに歯噛みするが、消耗の激しさで言いかえせない。
「だが、今度はいくら派手に達してもいいようにするから安心してくれ・・・おいグレッグ、いいな?」
「うぇへへ、任せろお」
レフェリーの意図を察したグレッグが、腹をひと叩きしてフィアーレスワンから離れる。
その仕草に次の展開を予感したのか、観客席から歓声が上がる。
(ま、まずいわ・・・今のうち、にっ!?)
「おっと、待ちなよフィアレスちゃん」
嫌な予感にどうにか逃れようとするフィーアレスワンだが、その足首はまだマスク・ド・タランチュラがつかんでいる。
「逃げるこたあないぜ、気持ちよくなれるのに違いはないんだぜ?」
「そ、そんなの望んでませんっ!離して・・・あっ!?」
もがいているうちにグレッグに腰を抱えられ、合わせて足首の手が離れる。
グレッグは足をマスク・ド・タランチュラに向けて仰向けになり、自分の腹の上に向き合う形でフィーアレスワンをまたがらせる。
「うぇへへ、どうだあっ」
「あっ!?」
その状態でグレッグが腹を叩くと、柔らかい腹の波が密着した股間に伝わり、独特の刺激を与えてくる。
今も絶頂の余韻が残る秘部や淫核が再び燃えあがり、力が抜けそうになる。
危うく前にバランスを崩しそうになったところで、背後から両手首をつかまれた。
「フィアレスちゃん背が高いからな、支えといてやるよグレッグ」
マスク・ド・タランチュラは、フィアーレスワンの両手首を背中に回して交差させると左手でまとめてつかむ。
右手は右肩をつかんで、フィアーレスワンの上半身が倒れないよう支える形になった。
(に、逃げられない!)
長い脚はリングには着くものの滑ってしまい、下手に動くとこちらから股間を押しつけることになりかねない。
「おお、揺れてる揺れてる。いい眺めだなあ」
「あっ!?」
胸を突き出すような格好で拘束されたところに、早速レフェリーがむき出しのバストに手のひらを添える。
「こっちはちゃんと俺が支えておくからな。おいグレッグ、いいぞ」
「ようし、いくぞぉ」
にやついたレフェリーの指示に、早速グレッグが腹を叩きはじめる。
「ああっ!?」
ひと叩きごとに股間を淫らな刺激が襲い、その長身がしなやかに跳ねる。
胸もレフェリーの手に押し付けられ、更なる刺激を生んでしまう。
「だ、駄目・・・嫌・・・あっあっ、だ、だめっ、だめだめだめええっ!」
数回のうちに刺激は強力になり、早くも2度目の絶頂を迎えてしまう。
背中を大きく反らせ、1度目より大きい衝撃に体を震わせる。
「おいおい、いくら気持ちよくても早すぎやしないか?」
手のひらに強く押し付けられるバストを、押し返すように揉みしだくレフェリーがからかってくる。
「グレッグ、フィアレスちゃんがこんなに気持ちよくなってくれてるんだ。どんどん行こうぜ」
「うぇへへ、わかったぞぉ」
「ああっ、だ、ダメです!そ、そんなすぐにはぁっ!?」
わずかな休止ののち、すぐに男たちは責めを再開する。
絶え間ない快感の波に揺られるフィーアレスワンは、身をくねらせ声を上げるばかりだった。



しかし、ますます感度の上がった体を責められ続け、3度目の絶頂へとフィアーレスワンが昇りつめようとしたその時だった。
「おっと、そうだ・・・なぁレフェリー」
変わらずロープの外側から手を伸ばしフィアーレスワンを拘束していたマスク・ド・タランチュラが呟く。
「ん、どうした?」
「フィアレスちゃんをちょっとばかり預けてくれねえか?」
「・・・何い?」
鼻息荒くフィアーレスワンのバストを弄っていたレフェリーが怪訝な声を上げる。
「いやいや、ずっと独り占めしたいわけじゃねえよ?でもなあ・・・」
フィアーレスワンから手を離すことなく、マスク・ド・タランチュラは顎をしゃくって自身の後ろの観客席を示して意味ありげに笑う。
「ここまで俺のケツばっか拝ませちまったお客さんたちには、サービスしたほうがいいかと思ってな?」
「ふん・・・それもそうか、最後は戻せよ?おいグレッグ」
少し考えたレフェリーだったが、マスク・ド・タランチュラが示した観客席の不満げな顔を見て、グレッグに一旦止めるよう指示を出す。
「うぇへへ、わかったぞお」
グレッグが素直に腹叩きを止めたことで、フィアーレスワンは股間への刺激から解放された。
だが、
(は、早く、動かなくちゃいけないのに・・・)
2度の絶頂の消耗は激しく、拘束されたまま体をよじるのが精いっぱいだった。
「さてそれじゃっ、と・・・」
「あっ?!」
一旦手を離したマスク・ド・タランチュラは、すかさずフィアーレスワンの両脇から手を差しいれ、倒れかけた体を支える。
反応を探るようにバストを数回揉むと、バストは柔らかくつかんだまま腕に力を入れる。
「さあ、フィアレスちゃん。素直にこっちにおいでっと・・・」
そうしてフィアーレスワンの体を持ち上げると、自身のほうに引きよせる。
「・・・このっ!」
フィアーレスワンは気力を奮い起こし、どうにか蹴りを放とうと試みる。だが、
「そ〜れっ、と」
「あぁ!?」
それを察してか、マスク・ド・タランチュラはバストをつかんだまま指の途中で乳首を挟んで刺激する。
一瞬体に走った甘い刺激に身を硬くした時には、素早い動きでマスク・ド・タランチュラの方を向かされ、ベアハッグにとらえられていた。
「うぁああっ!?」
色責めでなく、プロレスラーとしての力に胴体を締め上げられ、フィアーレスワンは残り少ない体力を削られてゆく。
腕ごと抱え込まれた状態で締めあげられ、むき出しのバストはマスク・ド・タランチュラの顔に押しつけられていた。
観客席からはマスク・ド・タランチュラの頭上越しに、苦悶の声を上げるフィアーレスワンへと熱い視線が注がれている。
「むほ〜っ、こいつはいい・・・」
フィアーレスワンが身をよじるたび、左右から押し付けられる柔らかい感触に、マスク・ド・タランチュラは鼻息荒く喜びの声を上げる。
「おー、こいつは良いサービスだなあ」
「ひゃっ!?」
フィアーレスワンの左側に移動したレフェリーが、苦悶するフィアーレスワンの顔を眺めながら右手でヒップの左側を撫でまわしてくる。
「うぇへへ、この尻おっぱいぐらい柔らけえぞぉ」
「んんっ!?」
そして右側のグレッグはヒップの右側を、上下から両手で挟むようにしてその感触を楽しんでいる。
(に、逃げられない・・・!)
身体を動かせば動かすほど、男たちからの刺激を倍増させてしまう。
快楽だけでなく、背骨にかかる苦痛を必死に歯を食いしばって耐える姿に、観客席からは興奮の歓声が上がっていた。
「へへ・・・せっかくこんなに大きくなってくれたんだ」
「あっ!?」
フィアーレスワンの抵抗が弱まったのを見て、マスク・ド・タランチュラは拘束を少し緩めて自身の両手を動かしやすくする。
長い両手を活かして、技の態勢を維持したままバストに狙いを定め、ゆっくりと重さを確かめるように揉んでゆく。
「おおう、こりゃあ見た目以上に大きくなってるな!」
揶揄でなく、心底感心した声を上げいよいよ本格的にバストの責めに力を入れだした。
「全くたまらねえ感触だぜ・・・」
(ああ、脱出しなくちゃ・・・いけないのに・・・)
バストにヒップ、そして太ももと秘部。空中に固定され前後からの刺激に翻弄される。
地に足がつかない状態では快感への踏ん張りもきかず、体をくねらせることが刺激を強めてしまう。
痛みで遠ざかっていた快楽の火が再び燃えあがっていた。
それは責めている男たちにも感じとれるようだった。
「よし、レフェリー。そろそろ一回いこうか?」
「そうだな、いいだろう。おいグレッグ、腕をここに差しこめ・・・」
そしてレフェリーは、フィアーレスワンのボトムの両端を持ち強く上に引っ張る。
それに合わせマスク・ド・タランチュラが力を調整したことで体重がかかり、ボトムはより深く股間へと食いこんだ。
「やっ・・・!?」
切ない刺激に思わず声を上げ、体をのけぞらせ天を仰ぐように反らしてしまう。
「うぇへへ、ここに入れればいいのかあ?」
そして衣装が食いこみその形を現している秘部と内ももの間に、グレッグの腕が差しこまれ密着する。
(な、何この感触!?)
肌と肌、そして衣装に包まれた部分もグレッグの汗とあいまって独特の密着感を生じさせる。
そして、
「よし、じゃあこのまま前後運動といこうか」
「うぇへへ、こうかあ?」
「よおしフィアレスちゃん、バストは俺が気持ちよくするからな?」
襲い来る刺激に、未だリングに届いていない足をばたつかせてもグレッグの腕を内ももがこするばかり。
そこでグレッグの脂肪が波打つたび、先ほどの騎乗まではいかないが波打つような刺激が襲ってくる。
バストはマスク・ド・タランチュラに揉まれ、乳首が相手の胸板をこすたびに思わず声が漏れてしまう。
男たちに密着されての、空中での逃げ場のない刺激の連続は、すぐにフィアーレスワンを3度目の絶頂へと押しあげた。
「・・・!あっ、あっ、だ、ダメ・・・あああああっ!?」
乳首と、淫核に刺激が集中したタイミングで、マスク・ド・タランチュラの腕の中、フィアーレスワンは全身を快楽に打ち震わせた。
「うひょおぉ・・・今回も強烈だぜ・・・」
その振動を肌で感じるマスク・ド・タランチュラは、興奮を隠しきれない、というように唸る。
(こ、こんな形でなんて・・・)
消耗で荒い息を吐きながら、対戦相手の腕の中で絶頂に達してしまったことに、屈辱で身体が焼けるようだった。
「おいおいフィアレスちゃん、しっかりしてくれよ?なにしろ・・・」
マスク・ド・タランチュラは、ゆっくりとフィアーレスワンを一旦リング内へ下ろしつつ、その耳元でいやらしくささやく。
「俺のサービスはここからが本番なんだからな」
「!?」
膝をついてぐったりしていたフィアーレスワンがその言葉に反応するより早く、マスク・ド・タランチュラはフィアーレスワンの両手首をつかむ。
「おい、何する気だ?」
「黙って見てろって。さあ、フィアレスちゃんこっちだぜ・・・」
レフェリーの質問を流しつつ、マスク・ド・タランチュラはその手首を一番下と真ん中のロープの間から通してリング外へと引きだす。
そのまま膝立ちのフィアーレスワンの上半身をも引っ張り出すと、自らはその背中をまたぎ観客席へと向きあう。
最後にフィアーレスワンの両腕を彼女の背中側に回し、自身の胸の前でひとまとめにして拘束した。
(こ、この姿勢じゃ・・・)
膝立ちでリング外へ上半身を出し、さらに両腕を背中で引っ張られることで背中が反って、自身の顔と胸を観客席に突き出す格好になってしまっている。
むき出しの胸とマスクに包まれた顔に、向き合っている観客席から視線が集中しているのを感じる。
「へへへ、フィアレスちゃん。観客が喜んでるのがわかるだろう?」
そしてマスク・ド・タランチュラは掴んだ腕を動かして、フィアーレスワンのむき出しのバストを大きく揺らす。
すると107センチのバストは、その振動を柔軟に吸収し上下左右に柔らかくその形を変えていく。
改めてその存在を主張するバストの揺れ具合に、観客席が大きな歓声を上げる。
「こ、こんなのは・・・あっ!?」
「いやいや、フィアレスちゃんのバストが大人気だけど、目的はここでな・・・?」
マスク・ド・タランチュラは、フィアーレスワンの両手首を左脇に挟み、彼女の両腕に自身の左腕を巻き付けて動きを封じる。
そのまま右手をゆっくりとフィアーレスワンの顔の正面に持っていき、まず下からなぞるように顎に当てる。
「このおっぱいだけじゃなくて、マスクの下のかわいい顔にも注目してもらわないとな?」
「えっ!?」
そこから指でマスクの形状に添って、口元回り、目の周りとマスクと素肌の間を観客にアピールするようになぞっていく。
「おいおい、間違えて剥がすなよ?」
「わかってるよ、その本番のためのアピールタイムだからな・・・」
「あ、ああ・・・」
確かに剥がされそうな気配はないが、前を見れば観客たちは指が入ったマスクと素肌の間を食い入るように見つめている。
マスクを通過して、素顔に直接視線が突きささってくるようだ。
むき出しのバストへの視線とは違った恥ずかしさで、身体にまた違った熱が生じるようだった。
(な、何なの・・・こ、この感覚は・・・?)
「フィアーレスワン選手、ショックで気絶したのかな?」
「ひゃあっ!?」
思わず沈黙していたフィアーレスワンだったが、下半身への刺激に思わず声を上げる。
「ああ大丈夫そうだな。観客への見事なサービスだ、もちろんこっちも休まないからな。安心してくれ」
「うぇへへ、こんなのどうだあ?」
「いやっ、あっああっ!」
変わらずヒップに太もも、秘部への刺激も続き、声とともに体をくねらせてしまう。
それにより一層苦悶の表情を浮かべるマスク越しの顔、そして揺れるバストに、観客は一層盛りあがっていく。
(い、嫌よ・・・このままじゃこの姿勢のまま・・・)
今まで経験したことのない状況に、意識に反して、体は貪欲に新しい刺激を吸収してしまう。
未知なる状況での絶頂の予感へ恐怖しながらも、その瞬間は容赦なく迫ってくる。
「よし、そろそろいいだろう。フィアーレスワン選手の顔がよく見える角度にしてくれ」
「合点だ」
マスク・ド・タランチュラの声と共に、その指が目元の穴の上の縁にかかり顔が持ちあげられ、観客席と見つめあう角度にされる。
「グレッグ、ヒップと太ももを思い切り撫でまわしてやれ。いいな?」
「うぇへへ、がってんだぁ」
「そ、そんなっ!?」
言うが早いか、ヒップと太ももを汗まみれの手が、少しも逃さぬようにまんべんなく撫でまわしてゆく。
そして淫核に指で押しつけられ、ゆっくりとした前後運動でこすりだしたかと思うと、徐々に早くなっていった。
「こ、こんなのっ、こんなのは、あ、ああ嫌、だめ、だめなのにいぃぃ!?」
逃がすこともかなわず送り込まれる刺激に、今まで以上に大きな声を上げてしまう。
その切なげな表情に、観客席から一層熱い視線が注がれる。
そうしてまもなく、
「よし、とどめだっ!」
レフェリーの声と共に、ひときわ強く、じんわりと淫核が押しこまれた。
「あ、ああ、ひゃあああっ!?」
大きく背をのけ反らせ、フィアーレスワンは4度目の絶頂に打ち震えた。
「お、おお、今までで一番だなフィアレスちゃん・・・」
さすがに驚いたのか、支えていたマスク・ド・タランチュラが口笛交じりに言う。
(ああ、こ、こんな体勢で・・・)
リベンジどころか、覆面レスラーとしての屈辱をあおるような絶頂にまで追いこまれてしまった。
(こ、ここからどうすれば・・・)
未だ心こそ折れていないが、体力は限界に近い。
そして逆転の手を練ろうにも、男たちに彼女を休ませる気はなかった。
「さて、つらい姿勢にさせちまったな。こっからはリングの中で気持ちよくなろうぜ、フィアレスちゃん?」
「うう・・・」
マスク・ド・タランチュラはがっくりと、糸の切れた操り人形のように力が抜けたフィアーレスワンをリング内に引きもどしていく。
観客席からはマスク・ド・タランチュラのサービスへの歓声が送られていた。




そうしてそこから数分後、リング内の、マスク・ド・タランチュラのいるロープの近くには、
「はあ、ああ、あああ・・・」
先ほどのように、グレッグの腹の上にまたがるように座らされたフィアーレスワンの姿があった。
両腕はリング外から、マスク・ド・タランチュラの片手で頭上に拘束されている。
その首は座らず、荒い呼吸を繰りかえすばかりだ。
「さっきは今までにない達しようだったなあ、フィアーレスワン選手?」
今は片手でフィアーレスワンの肩を支え、もう片方で乳首を弄っているレフェリーが話しかける。
その声には隠しきれない興奮がにじんでいた。
「うう・・・」
力を振り絞ってかろうじて視線をレフェリーに向ける。
今なお目には抵抗の意思があるものの、言い返すだけの余裕はなかった。
必死にもがく脚はリングを滑るばかりで、上半身も身をよじらせるのがせいぜいだった。
「うん、まだまだ戦う意思はあるようだな。よしよし・・・」
その様子を確かめたレフェリーは、変わらずロープ外にいるマスク・ド・タランチュラに目配せをした。
それを受けて、空いた片方の手でフィアーレスワンのヒップを撫でまわしていたマスク・ド・タランチュラも、にやりと笑ってうなずいた。
「なあ、フィアレスちゃん」
「ひぅっ!?」
軽くフィーアレスワンのヒップを叩いて、マスク・ド・タランチュラが口を開く。
「さっきのでちょうど4回目だ。せっかくリベンジのために来たんだし、前回の続きなんてどうだい?」
「!?」
前回の、と聞いてフィアーレスワンは思わず身を固くする。
「わかってくれたようだな。今回も5回目の絶頂の時点で、マスクを剥がさせてもらうぞ」
フィアーレスワンの返事を待たずに手の拘束が外れ、グレッグやレフェリーも手伝ってフィアーレスワンは体の向きを前後逆にされる。
腰の部分はグレッグの両手で固定されてしまい、ほぼ身動きは取れない。
「うぇへへ、でっけえ尻だなあ」
「きゃんっ!?」
すでに本人の汗でもぐっしょり濡れたヒップをグレッグが手で叩くと、その振動はグレッグの腹に伝わり、波が返るように刺激が襲ってくる。
「さて、お手手はこっち、と」
動く暇もなく両手はまたひとまとめに頭上に拘束される。
「そういうことだ、フィアーレスワン選手。マスクが剥がされるまであと1回だぞ」
(こ、この状況から・・・!?)
乳首を指で弄りつつ、レフェリーが耳元でささやいてくる。
「もちろんその時点で敗北決定だ・・・せいぜい頑張るように」
「そん、そんなのっ・・・ああっ!」
反論の終わらぬうちに、グレッグがヒップを叩きだす。
腹の代わりに打つのを気に入ったようで、腹のときよりリズミカルに、早いテンポで打ちすえてくる。
「ほれほれぇ・・・どんどん行くぞぉ!」
「や、やめて・・・あっ、あっ、あぁん!」
そこからも前回と同じだった。
襲い来る快感に翻弄され、フィアーレスワンに限界が訪れそうになる。
すると、
「グレッグ、止めろ」
レフェリーが指示を出し、自身もバストを弄る手を止める。
そうすると快感の波は中断し、今度は寸止めの苦しみが襲ってくる。
「どうだい、フィアレスちゃん?」
頭の中は焼けつくようで、返事もおぼつかない。
「うう、ううう・・・こんな、ああっ!?」
そして何か言い返そうとしたタイミングで、すぐまた責めが開始される。
フィアーレスワンは完全に弄ばれていた。
(負けない・・・負けられない・・・!でも・・・)
抗おうにも、身体の中を突き抜けるような快感に何度も翻弄され、思考は飛び、体力は奪われてしまう。
汗まみれで拘束された肢体が、震えながら快感と消耗に耐える姿は責める者の嗜虐心を煽るばかりだった。



それからどれだけ時間が過ぎたのか。
「ああ、またっ!・・・あ、ああ・・・ううう・・・」
「おおっと・・・どうかしたか、フィアーレスワン選手?」
何度も繰り返される寸止めに、フィアーレスワンの精神もさすがに限界に近づいていた。
ここまで耐えられたのは絶頂こそさせられたが、いまだ勝敗だけはついていないという、レスラーとしてのギリギリの意地があればこそだ。
(ああ、い、一体どうしたら・・・)
今なお反撃の糸口は見えない。
できるのは呼吸を止めずに、せめて疲労で意識を失わないようにすることだけだった。
むき出しのバストを揺らして荒い息をつくその姿を見ながら、ふとマスク・ド・タランチュラが不満を漏らす。
「ああ、ちくしょう。俺も中に入って楽しみたいんだがな・・・」
それを聞いたレフェリーが返す。
「馬鹿言え、お前まで滑るぞ。野郎の汗まみれなんかお客さんが萎えるだけだろ」
「ああ、それもそうだな・・・」
(え・・・?)
何気なく交わされたその会話に、ある疑問が湧いた。
(そう、いえば・・・)
なぜ鍛えているわけでもなさそうなレフェリーは、この汗に滑らないのか?
そしてなぜマスク・ド・タランチュラはリング内に入ってこないのか?
ルールがどうとでもできるこのリングなのに?
「・・・?」
気づかれないように、レフェリーの足元を盗み見る。
特別足元に注意している様子はなく、滑る様子もない。普通に踏ん張りも効いているようだ。
(まさか、特別製の靴!?)
デザイン等は変哲もないものだったが、特別の靴下と手袋を用意できるのなら、それもありえる。
突破口になりうるヒントに闘志が湧き、わずかに戻った体力で思考を巡らせる。
(もうこれに、全部を賭ける・・・!)
確かめる余裕もないが、ぶつかってみる価値はある。
しくじればこれ以上の辱めを受けるのかもしれないが、プロレスラーとして、このままただ翻弄されて負けるわけにはいかない。
(お父さん・・・!)
目を閉じ少しだけ祈ると、フィアーレスワンは行動に出る。



ふと、快感に耐えるように強張っていたフィアーレスワンの体から、一気に力が抜けた。
「うおっと・・・」
手にかかる重さが増したマスク・ド・タランチュラが慌てて力を込める。
フィアーレスワンは首も座らず前に倒れているままだ。
「おい、どうしたフィアレスちゃん?とうとうおねんねかい?」
下からのぞき込もうとするが、いまいち表情が見えない。
「ん?どうしたフィアーレスワン選手、ギブアップか?」
フィアーレスワンの左側にいたレフェリーが、右手で背中をなぞりながら問いかける。
だが反応はなく、呼吸の音もしない。
「やれやれ、気絶したのか?よし、一つマッサージ代わりに・・・」
レフェリーが目を覚まさせようと、左手でバストをつかもうとした瞬間、
「はぁあああああ!」
「うおっ!?」
フィアーレスワンは叫びと共に左足をレフェリーの靴に当てて力を入れ、全力で右に跳ぶ。
勢いのまま身体をねじって腕も振りはらい、脱出に成功する。胴体から着地し滑る床を利用したおかげで、わずかながらも距離が稼げた。
まさかの復活に、観客席から驚きの声が上がる。
「おっと、逃がさないぜ!」
すかさずマスク・ド・タランチュラは右手でロープをつかんで体を支えつつ、左手を思い切り伸ばしてフィアーレスワンの右手首をつかむ。
「まだ動けるとは驚いたぜ。だがまあ、その分楽しませてもらうぜ、フィアレスちゃん!」
そのまま引き寄せようとするが、腕をぎりぎりまで伸ばしていることとフィアーレスワンの抵抗もあり、なかなか思う通りにいかない。
「うぉおお、待てぇ!」
そのうちグレッグが起き、フィアーレスワンに迫ってくる。
「このっ!」
ちょうどマスク・ド・タランチュラがつかんでいる手首を支点に、足裏の蹴りを放ちグレッグの顔面を強打する。
「ぐへえ!?」
ちょうど鼻先に直撃し、グレッグは食らった勢いで仰向けに倒れる。
「ええい、くそ・・・どうした、早くしろ!」
後頭部も打ったのか目を回しているグレッグを横目に、痛む足をさすりながらレフェリーが叫ぶ。
「わかってるって・・・おいおい、焦らさないでくれ、よっ!?」
マスク・ド・タランチュラが業を煮やして、右手をロープから離し両手で引っ張りこもうとしたとき、フィアーレスワンも動いた。
「せぇぃっ!」
最後の力を振り絞り、マスク・ド・タランチュラの両手首をつかんで思い切り引っ張る。
負けじと踏ん張ったマスク・ド・タランチュラだが体勢を崩し、ロープに大きく身体を預ける格好になった。
(今だわ!)
「なんのこれしき・・・おぉっ!?」
マスク・ド・タランチュラがそこからロープの戻る反動を利用し思い切り引っ張ってきた瞬間、その力を利用するようにフィアーレスワンも立ち上がった。
勢いを殺さず腕を手繰るようにしてマスク・ド・タランチュラへ迫ると、そのまま激突した。
「おぶっ!?」
下から突き上げるようなタックル、というよりほぼそのままぶつかっただけだったが、不意をつかれたマスク・ド・タランチュラはバランスを崩してしまう。
「これでっ!」
すかさずフィアーレスワンは両手でロープをつかみ、両足のキックでマスク・ド・タランチュラをリング下に蹴り落とす。
「がっ!?」
長い腕でもとっさにロープを掴めず、頭から落下したマスク・ド・タランチュラはうめき声をあげ、横になってそのまま動かない。


「あ、あの馬鹿!おい、グレッグ起きろ!」
急な流れに、レフェリーは肩を揺さぶりながらグレッグに呼びかける。
「あ、ちょ、ちょっと待てぇ!」
意識が戻ったのか、グレッグも慌てて身を起こそうとする。
そこに上から声がかかった。
「レフェリー・・・離れてくださいっ!」
振り向いたレフェリーには、トップロープの上に立っていたフィアーレスワンが宙へ舞うのが見えた。
「げっ!?」
「はあああっ!」
避けることもできずに、フィアーレスワンの全体重の乗った両足がグレッグの腹部の真ん中に命中する。
上からマットと挟む形になったため、最初のミサイルキック以上に深々とめり込む。
「ぶげええっ!?」
「まだですっ!」
たまらずうめき声をあげるグレッグの顔面に、フィアーレスワンが倒れこむように肘を落とす。
「ぶぇぎゃあああっ!?」
見事にまた鼻先に激突し、グレッグは後頭部を勢いよくリングに打ちつけ、そのまま動かなくなった。
そしてフィアーレスワンもとうとう力尽きたかのように、グレッグの上に身を預けるように倒れこんだ。
「お、おいグレッグ!」
ギリギリで離れていたレフェリーが近寄りグレッグの状態を確認するが、白目をむいて完全に気絶していた。鼻から血も流れている。
レフェリーは悔しそうにしていたが、やむなくリング下にゴングを要請した。

<カンカンカン!>

まさかの展開に観客席が大きく沸いた。
不満の野次もあったが、最後に見せた飛び技とギリギリからの逆転への称賛が、大波のようにリングへ寄せられる。
(終わった・・・なんとか勝てたわ・・・)
ゆっくりとグレッグの上から降りたフィアーレスワンは、マットに座りこんだまま拍手と歓声を受けている。
勝利の達成感はあるが今までの疲労が一気に襲ってくるようで、ずらされた衣装を直すのも一苦労だった。


「ええい、くそ・・・あ、そうだ・・・」
グレッグが運びだされるのを見たレフェリーがリング下を見ると、マスク・ド・タランチュラも担架で運ばれていくところだった。
頭から落ちたのが災いしたのか、こちらも白目をむいて気絶していた。
「駄目か・・・いや待てよ、セコンドに攻撃したんだからペナルティでもう一試合・・・リングの掃除をすぐにでも始めさせればっ!?」
いやらしく笑ったレフェリーの背中に、突然二つの柔らかいふくらみが押しつけられた。
「きゃっ、ごめんなさいレフェリー。足が滑って・・・」
耳元でささやいてくる声の主は、回復したフィアーレスワンだった。背後からレフェリーの肩に手を置き、立つ支えにしていた。
「あ、ああ、そうかそうか・・・大丈夫かな?・・・こほん」
胸の柔らかさと耳元をくすぐるようなしおらしい声に、思わずにやけたレフェリーだったが、わざとらしい咳払いをして話しだす。
「逆転勝利おめでとう。マスク・ド・タランチュラとの試合はまたになるんだが、今日はこれからもう一試合っ!?」
連戦に話を持っていこうとしたレフェリーだったが、容赦なく首筋に叩き込まれた手刀にあっけなく気絶する。
「せっかくですが、今日はこれで失礼します。それでは・・・」
ゆっくり寝かされるレフェリーの様子に観客席から失笑が起きた後、フィアーレスワンに改めて拍手が送られてくる。
フィアーレスワンは拍手と声援に手をあげて応えながらも、ロープを掴んで移動しガウンをまとい、リングを降りて退場していく。
(今日の勝利はどうにか拾ったようなもの。一層鍛えて直して強くなって・・・今度こそあの男を倒さなくちゃ)
歓声と拍手の中、堂々と退場してゆくフィアーレスワンの胸中には、早くも次の戦いへの闘志がもみなぎっていた。

〈了〉

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