【第百話 ピュアフォックス:プロレス & 嵯暁スミレ:アクション】

 犠牲者の名は「ピュアフォックス」。本名来狐(らいこ)遥(はるか)。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。
 高校でプロレス同好会を立ち上げ、他校との交流試合を中心に活動を行っている。リングに上がる時は狐をモチーフにした覆面をつけ、ピュアフォックスと名乗っている。華麗な空中戦を得意とし、その試合を見た者からは絶大な人気を誇るが、男子生徒からは主にそのダイナマイトボディ目当てで支持されている。
<地下闘艶場>には数多く参戦し、人気選手の一人となるまでに至った。今度は親友とのタッグマッチだと訊かされ、遥は大喜びで承諾した。

 もう一人の犠牲者の名は「嵯暁(さぎょう)スミレ」。17歳。身長160cm、B87(Eカップ)・W59・H86。嵯暁三姉妹の末っ子。黒髪を肩で切り揃え、その容貌は輝くような生命力に溢れている。明るい性格だが、末っ子特有の甘え上手。アクション女優を目指してヒーローショーのバイトをしているが、本物の戦隊ヒロイン以上のプロポーションが災いし、大きなお友達からの粘っこい視線を独り占めにしている。
<地下闘艶場>には一度だけ参戦し、苦戦しながらも見事な勝利を挙げている。今度は親友とのタッグマッチだと訊かされ、スミレは勇んで参戦を決めた。


「スミレ! 今日は頑張ろうね!」
「勿論! 私たちが無敵のヒロインだって、観客に教えてあげるんだから!」
 遥とスミレは握った右拳を軽く当てる。
「でも・・・このエッチぃ衣装だけはなんとかならないかな〜」
「そうだよね。これだけは勘弁して欲しい」
 準備された衣装を見て、二人は仲良くため息を吐いた。
「・・・しょうがないか。勝てば恥ずかしさなんか忘れるしね」
「だね。よっし、私も気合入れて、試合の準備!」
 遥は純白のマスクを被り、ピュアフォックスへと変身する。
 衣装へと着替え、ガウンを纏ったスミレが大きく頷く。
「それじゃ遥、じゃない、ピュアフォックス、行こう!」
「うん!」
 スミレがドアを開け、ピュアフォックスが続いた。

 ガウン姿の二人が花道に姿を見せた途端、観客がどっと沸いた。美少女女子高生であり、スタイルも抜群の二人は<地下闘艶場>の人気選手だった。しかも同時に試合に出るとなると、普段の倍、否、それ以上の歓声が二人へと飛ぶ。とはいえ、ほとんどが淫らな声援であり、二人は眉を顰めながらも花道を急いだ。

「やっぱり男が相手だね」
「まあ、わかってたことだし」
 リングに待つ二人の男性選手に、スミレとピュアフォックスが言葉を交わす。そのまま階段を駆け上がり、同時にトップロープを飛び越える。ガウンの裾が翻り、一瞬だけスポットライトに照らされた白い太ももが観客の視線を奪った。

「赤コーナー、『ノーペイン』、尾代呑太! &『破戒僧』、護覚!」
 二人を待ち受けていたのは、尾代(おしろ)呑太(どんた)と護覚(ごかく)だった。尾代はジャージ姿で、護覚は頭を剃り上げ、あちこち破れた袈裟を纏った僧形だった。頭は綺麗に剃っているものの、顔には無精髭が伸びている。
「青コーナー、"ハイスクールヒロイン"、ピュアフォックス! & 嵯暁スミレ!」
 自分たちの名前がコールされ、ピュアフォックスとスミレはガウンを脱いだ。その下から現れたのは、どこか戦隊モノに登場する闘うヒロインを思わせる衣装だった。
 ピュアフォックスは白い襟付きブラウスに黒いエナメル生地のダウンを重ね、ダウンと同じ生地のタイトなミニスカート、足元も黒いリングシューズだ。
 スミレはピンクの襟付きブラウスに紫がかった菫色のダウン、下も菫色のフレアスカート。リングシューズも菫色だった。
 二人の胸元をバストが押し上げ、ボタンの隙間から素肌やブラが僅かだが覗いている。その胸元や眩しい太もも、下着が見えそうなヒップなどに粘ついた視線が飛び、野次や歓声も途切れることなく飛び続けていた。

 男性選手のボディチェックを終えたレフェリーが、美少女二人に向かって歩いてくる。
「よし、それじゃボディチェックを・・・」
「あ、レフェリー、わかってると思うけど、ボディチェックは軽めでいいよね?」
 レフェリーを遮り、ピュアフォックスが笑顔で聞く。
「何を言っているんだ、普通通りに・・・」
「軽めでい・い・よ・ね?」
「・・・ああ」
 いつも試合が終わってから「お仕置き」されたことを思い出し、レフェリーはピュアフォックスとスミレに軽く触れただけでボディチェックを終えた。これを見た観客席からブーイングが起こる。
「・・・すごいね、遥。この程度で済ませるなんて」
「油断しちゃ駄目だよ、スミレ。絶対試合中に触ってこようとするから。あと遥って呼ぶな」
「ごめんごめん、ピュアフォックス」
「わかれば宜しい」
 小声で会話を交わす間も、相手の男性選手からは目を離さない。
「それじゃ、大事なこと決めとこうか」
「そうだね」
 ピュアフォックスとスミレが鋭い視線を交わす。いきなり緊張感が高まり、会場のざわめきも小さくなる。握り拳を作った二人は、いきなり拳を振り上げた。
「「じゃんけんぽん! あいこでしょ!」」
「勝ったー! 私が先攻!」
「くっそー、負けたー!」
「・・・何をしているんだ、一体」
 呆れたようにレフェリーが問う。いきなりじゃんけんを始めれば当然だろう。
「あ、大丈夫、もう決まったから。始めよっ!」
「・・・ゴング!」
 釈然としないレフェリーだったが、ゴングを要請した。

<カーン!>

 じゃんけんに勝ったスミレがリングに残る。男性チームの先鋒は尾代だった。
「いやー、今回も可愛い子が相手で嬉しいっス!」
「あっそ!」
 尾代の軽口には取り合わず、スミレがミドルキックを叩き込む。フレアスカートが翻り、ピンク色の下着が覗く。
(よっし、決まった!)
 しかし平気な顔をした尾代はスミレの脚を抱え込もうとする。
「っとぉ」
 しかしスミレは素早く足を引き、一旦距離を取る。
(綺麗に入ったと思ったのになぁ。見た目よりも打たれ強いのかな?)
 キックの際にピンク色の下着が見えたことで観客席が沸くが、スミレは羞恥も見せずに尾代を睨む。
「隙ありっス!」
「そんなものないよっ!」
 両手を広げて突っ込んできた尾代を軽く躱し、今度はローキックを放つ。太ももの急所に入った筈だが、尾代は動きを止めることなくスミレへと向き直る。
(あーもー、めんどくさい!)
 当たったときの感触から、確実にクリーンヒットしている。しかし尾代は一向に堪えた様子も見せずに迫ってくるのだ。とは言え尾代もスミレのスピードについていけず、膠着状態となる。
「くっそ〜、捕まえきれないっス!」
 何度も被弾しながら前に出る尾代だったが、苛立ちに声を上げる。
「よし、拙僧が代わろう」
「仕方ない、お願いするっス」
 護覚の申し出に、尾代も素直に交代する。僧形の護覚がリングへと入った途端、空気が怪しく変わった。
(この人の方が強そうだね。注意しないと)
 それでもスミレは気合いを入れ直し、護覚との距離を測る。
「むんっ!」
 大きく踏み込んだ護覚が拳を振るう。
「っ!」
 危険なスピードだったが、スミレもバックステップで躱す。と同時に背後のロープを蹴り、ジャンプキックへと繋げる。
「ぬっ!?」
 護覚の胸部を捉えた一撃だったが、護覚もまた蹴りの勢いを後方に飛ぶことで逃がす。
「ううむ、確かに素早い」
 護覚が顎を撫でながら一人ごちる。
(この人も防御が固いなぁ。そろそろ遥と交代すべきかな?)
 スミレがピュアフォックスの待つコーナーに戻るべきか、と考え始めたその瞬間だった。
「『喝ッ!』」
 護覚の口から凄まじい気合いが放たれ、異変が起こった。
(なにこれ!? 体が動かない!)
 足が動かない。否、足だけではなく、手も、顔も、声すら出ない。
「スミレ? スミレ! どうしたの!?」
 その場に固まってしまったスミレに声を掛けるピュアフォックスだったが、スミレは目だけしか動かせず、口も微かにしか動かない。

 これは護覚が妖しげな修練の果てに会得した「呪縛」だった。凄まじい肺活量から吐き出される大量の呼気に「呪」を乗せ、相手の心を「縛る」ことで動きを止めるのだ。

「ようやく動きが止まったか。では・・・」
 護覚はスミレの脇の下から手を入れ、膨らんだ胸元を撫で回す。
「うむうむ、やはり若いおなごの胸は弾力が違うの。善哉善哉」
「どれ、俺も確認」
 レフェリーも動けないスミレに近寄り、反対側のバストを揉む。
「もう少し拙僧だけで楽しみたかったがのう」
「まあそう言わず、ボディチェックも軽くしかできなかったからな」
 軽口を交わしながらも、護覚とレフェリーは膨らんだバストを服の上から揉んでいく。
「うむ、大きさも申し分なし。善哉善哉」
「確かに、スミレ選手も大きいおっぱいだな。姉妹三人とも巨乳というおっぱい姉妹だぞ」
 護覚とレフェリーは勝手なことを言いながらも、手を止めずにスミレのバストの感触を味わう。
「スミレ、今行くから!」
 パートナーを救おうと、ピュアフォックスがロープを潜る。
「『喝ッ!』」
 その瞬間、護覚の呪縛を伴う気合いが飛んだ。
(えっ!)
 突進しようとしたピュアフォックスが、その体勢のまま固まる。
「乱入しちゃ駄目っスよピュアフォックスちゃん」
 コーナーから出た尾代がにやつきながらピュアフォックスに近づき、両手でバストを掴む。
「女子高生レスラーのおっぱい、気持ちいいっス」
(ああもう、こんなことされてる場合じゃないのに! 私の身体、どうなっちゃったの?)
 親友でもあるパートナーを救うどころか、自らも動きを止められ、セクハラをされている。
「気持ちいいっスけど、服の上からはまだるっこしいっス!」
 尾代はピュアフォックスの胸元に手を掛けると、一気に左右に開く。ブラウスのボタンが飛び、純白のブラに包まれたEカップのバストが姿を現す。
「んー、これも色っぽいっスけど、一気に生おっぱいにしちゃうっス!」
 更にブラをずらすと、Eカップの乳房がぶるりと姿を現す。そのまま尾代は両手で鷲掴みにした。
「女子高生のおっぱいは張りがあるっス! 最高っス!」
 鼻息まで荒げ、尾代はピュアフォックスの乳房を揉み回す。その間もスミレは護覚とレフェリーにセクハラを受けていた。
「どれ、ブラも確認しておこうか」
 レフェリーがスミレの胸元に手をやり、上から一つずつゆっくりと外していく。止めようとしたスミレの手も動かず、ボタンが一つ、また一つと外されていく。
 やがて、ピンク色のブラに包まれたEカップバストが姿を現す。それでもレフェリーは手を止めず、ボタンを全て外してしまう。
「これでブラ丸出しだ」
「服の上から愛でるのも興があるが、下着の上だとまた良い」
 中年男二人は、改めてブラの上からバストを揉み始める。
(あーもー、気持ち悪いってのに! 身体が動かないーっ!)
 好きでもない異性から触られても不快感だけが募る。それでも何故か身体は動かず、男たちのなすがままだ。
「どれ、ここもチェックしとかないとな」
 にやにやと笑いを浮かべながら、レフェリーはスミレのフレアスカートの裾を持ち、そのまま上へと持ち上げる。露わとなったピンクの下着に、観客席から指笛が飛ぶ。
「どうせ見せパンとやらだろうが、ボディチェックには関係ないからな」
 下着の上からスミレの秘部を撫で回しながら、レフェリーがスミレの顔を覗き込む。
「見せパンのぉ。若いおなごの発想は良くわからぬて」
 スミレの背後から両手を使ってバストを揉み込みながら、護覚が独りごちる。
「あー、あっちも楽しそうっス。スミレちゃんのおっぱいも揉んでみたいっスけど、今は女子高生レスラーのおっぱいっス!」
 スミレが嬲られる様を見ていた尾代だったが、ピュアフォックスに向き直り、再び両乳房を揉みしだく。
「そうか、スミレちゃんを見ながら揉めばいいんスよ!」
 大きく頷いた尾代はピュアフォックスの背後に回り、改めて乳房を揉み回す。
「あー、可愛いスミレちゃんが護覚さんとレフェリーにおっぱい揉まれてるっス。それを見ながらピュアフォックスちゃんのおっぱい揉むのは最高っス!」
 鼻息を荒げた尾代は、ピュアフォックスの乳房を変形するほどに揉んでいく。
 二人の美少女高校生が嬲られる姿に、観客席からは卑猥な野次や指笛が鳴らされる。
(こんな奴に、いつまでも胸触られたくない!)
 怒りが込み上げ、ピュアフォックスの胸中を満たす。
(私の体、う・ご・けーーーっ!)
 強く念じたそのとき、右腕が動いた。
「っ!」
「うわわっス!」
 そのまま尾代の服を掴み、スミレのバストを揉み回しているレフェリーへとぶん投げる。
「うごっ!」
「むっ!?」
 レフェリーは尾代と重なりながら倒れ、護覚の注意もそちらに向く。
「・・・いつまでも触るなっ!」
 しかしそれでもバストを掴んでいた護覚の右手を振り払ったスミレは、ミドルキックを叩き込む。
「スミレ! ひとまずリングアウト!」
「オッケー! 作戦会議だね!」
 ピュアフォックスとスミレは素早くリングを転がり下り、リング外で体勢を整える。ピュアフォックスはブラを元に戻し、スミレはシャツのボタンを留める。
「まったく、動けないからってブラまで見られちゃった」
「こっちは無理やり破られて、前が止まらないよ」
 ピュアフォックスは仕方なくブラウスの下を結び、僅かでも隠そうとする。しかしブラの大半は見えており、逆に色っぽさが増していることには気づかない。
「なんだか、あのお坊さんの正面に立っちゃ駄目みたいだね」
「でも、闘うときにそれは難しいよ」
「だからさ、こういう風に・・・」
 ピュアフォックスの耳打ちに、スミレが一旦眉を寄せる。
「・・・よし、それでいこっか」
 それでも最後には頷く。
「いてて、畜生・・・」
 ようやく立ち上がったレフェリーが、リングアウトのカウントを取り始める。
「ワン、ツー、スリー・・・」
 しかもスリーカウントを取るときとは正反対にどんどんとカウントを進めていく。
「信じてるからね、遥」
「信じていいよ。あと、遥って呼ぶな」
「冗談だよ、ピュアフォックス」
 握り拳同士を軽く触れさせると、スミレがリングインし、ピュアフォックスは自軍コーナーで待機する。
「何やら策を練っておったようだが、無駄だと思うがのぉ」
「無駄かどうか、やってみなきゃわからないよ?」
 スミレは視線を落とし、護覚の足元を見る。そのまま軽いステップでタイミングを計る。ステップのたびにシャツの下でバストが揺れ、観客の視線を釘付けにする。
「拙僧の目を見ねば良いと考えたか。浅薄なことよ」
 護覚が大きく息を吸う。スミレがバックステップで距離を取ったが、意にも解さない。
「『喝ッ!』」
 護覚が呪を放った瞬間だった。スミレの後ろからダイビングしてきたピュアフォックスの姿を捉えた。
「ぬっ!?」
 呪を放った直後は大きな隙ができてしまう。それに気づいたピュアフォックスの作戦だった。コーナーから手の届く範囲で「呪」を打たせ、交代しながら攻撃を行う、という。
 トップロープをジャンプ台にした、ピュアフォックスのスワンダイブ式ダイビングボディプレスが護覚へと着弾する。しかしピュアフォックスはそのままリングへと倒れ込むことを良しとせず、護覚の首を抱え込みながら回転したのだ。そのため護覚は後頭部をキャンパスに強打され、一撃で動きを止めた。
「よし、フォールッ!」
「させないっスよ!」
 ピュアフォックスの足を引っ張ってフォールを邪魔しようとした尾代だったが、スミレのローリングソバットでリング下まで転げ落ちる。護覚が意識を失ったことでスミレは体の自由を取り戻し、カットに成功していた。
「あの馬鹿、もうちょっとで・・・」
「レフェリー、カウント!」
 尾代のほうを睨んで歯軋りするレフェリーだったが、ピュアフォックスの催促にカウントを進める。
「ワーン・・・ツーゥ・・・」
「相変わらずスローテンポだなぁ。でもほら、あと一つ!」
 レフェリーは護覚を見遣るが、ぴくりとも動かない。諦めたレフェリーは諦めて最後のカウントを取った。
「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 見事なスリーカウント勝利に、観客席から歓声が巻き起こる。
「よっし、勝利!」
「やったねはる・・・じゃない、ピュアフォックス!」
 美少女二人はハイタッチを交わし、勝利を喜ぶ。そこにリング上からも拍手が届いた。
「いや〜、おめでとーおめでとー。プロレス姉ちゃん、久しぶり」
「あっ、エロ蜘蛛マスク!」
 何時の間にリングに上がったのか、蜘蛛の意匠が入ったマスクを被り、常人より遥かに長い両腕を持つマスク・ド・タランチュラが拍手をしていた。
 その後ろでスミレへと敵意のこもった視線を飛ばすのは、烏帽子を被り、顔を白く塗り、両頬に赤い丸を塗った男だった。
「あんた、この前の」
 それは、以前にスミレと闘った猿冠者だった。スミレのすぐ上の姉である嵯暁(さぎょう)紫苑(しおん)と<地下闘艶場>で闘い、性的な嬲りで敗北させている。その仇討を望んだスミレと闘い、スミレには手痛い敗北を喫している。
「折角だ、もう一試合して貰おうか」
 二人の援護を得たレフェリーが、ピュアフォックスとスミレに嫌な視線を向ける。
「・・・どうする遥。このまま逃げ出す?」
「ちょっとそれは厳しそう、かな。あと遥って呼ぶな」
 リング上でのやり取りで、観客も追加試合が始まると気づく。その途端、凄まじい歓声が巻き起こった。<地下闘艶場>でも人気の美少女選手二人なのだ、嬲られる姿が多ければ多いほど楽しめる。
「・・・覚悟、決めようか」
「うん。逃げるのは性に合わないしね」
 スミレとピュアフォックスが頷いたことで、追加試合が決定する。
「よし、それじゃボディチェック、を・・・」
「・・・」
 性懲りもなくボディチェックを行おうとしたレフェリーだったが、ピュアフォックスとスミレに睨まれ、結局そのまま引き下がる。
「それでは、ゴング!」

<カーン!>

「よっし、今度も私から!」
「ずるいよスミレ!」
「さっき最後に決めたのは遥でしょ? だから私が先発」
「遥って呼ぶな。でもしょうがないか・・・貸しだからね」
「はいはい」
 先程の試合と同様、スミレが先発する。
「初めましてだな可愛い子ちゃん。美人姉妹の末っ子だって?」
 対するはマスク・ド・タランチュラだった。スミレを上から下まで眺め、何故か頷く。
「否定はしないけど、エロい視線がムカつく」
 軽く眉を顰めたスミレは、軽いジャンプでリズムを取り始める。
「お、服の上からでもおっぱいが揺れてるのがわかるな」
 スミレのEカップバストが弾み、マスク・ド・タランチュラの視線がスミレの胸部に集中する。
「エロい視線がムカつくって言ったでしょ!」
 スミレのインステップキックがマスク・ド・タランチュラの腹部を捕える。
「いてっ!」
 言うほど痛そうには聞こえない声を上げ、マスク・ド・タランチュラがスミレを抱え込もうとする。しかしスミレはするりと躱し、ローキックで膝を打つ。
「ちっ!」
 舌打ちしたマスク・ド・タランチュラが左腕を振るが、既にそこにはスミレは居ない。
「逃がすか!」
 マスク・ド・タランチュラが長いリーチを誇る右腕で、スミレの脚を刈るような横殴りの一撃を放つ。
「そんなの当たらないっての!」
 垂直ジャンプで躱したスミレだったが、驚きの表情となる。突然、マスク・ド・タランチュラの背後から猿冠者が現れたのだ。
「しまっ・・・!」
 マスク・ド・タランチュラの背中を蹴った猿冠者が、空中で身動きの取れないスミレへと飛び蹴りを叩き込む。モロに食らってしまったスミレはニュートラルコーナーまで吹き飛び、そのまま崩れ落ちる。
「スミレぇっ!」
「今は入っちゃ駄目だぞ、ピュアフォックス選手」
 思わず飛び込もうとしたピュアフォックスを、レフェリーが押し戻す。しかもわざとEカップの膨らみのある胸の高さで。
(ああもう、エロレフェリー!)
 しかし言葉には出さず、渋々自軍コーナーへと戻る。一連のやり取りを見ていたマスク・ド・タランチュラが、倒れているスミレを見下ろす。
「さて、それじゃ・・・」
 スミレに手を伸ばそうとしたマスク・ド・タランチュラを制し、猿冠者が自軍のコーナーを指差す。
「なんだよ、今は俺が・・・」
「・・・」
 猿冠者は尚も無言で自軍コーナーを差したままだ。
「ちっ、わかったよ。後で借りは返せよ」
 一度コーナーに戻ったマスク・ド・タランチュラは猿冠者にタッチし、リングから下がる。猿冠者はゆらりとスミレへと向かい、呻くスミレをコーナーへと寄り掛からせ、両手をロープに絡めていく。両手が終わると両足も同様にし、四肢をロープで磔にする。
 スミレの四肢を完全に縛めた猿冠者は、スミレの胸元を掴み、一気に開いた。ボタンが弾け飛び、ピンクのブラに包まれたEカップバストが姿を現す。猿冠者は両方のバストを鷲掴みにし、思い切り揉みしだく。
「いっ・・・たいよ・・・!」
 スミレの上げる苦悶の声も気にせず、否、更なる苦悶を引き出そうとでもいうのか、猿冠者は尚も力を込めてバストを握る。
「あっ・・・くぅっ・・・!」
 いたぶられるスミレの姿に、コーナーのピュアフォックスも唇を噛む。
(どうにかしてスミレを助け出さないと・・・っ!?)
 いきなり足が滑った。否、リング下へと引き摺り降ろされた。そのまま背中から落とされ、硬い床の衝撃をまともに受ける。
「あっ・・・かはっ・・・」
 中々肺に空気が入ってこない。息が苦しい。
「おっと、まともに入り過ぎちまったか?」
 一度頭を掻いたのは、いつの間にか忍び寄っていたマスク・ド・タランチュラだった。
「まあいいや、それじゃ近くのお客さんにだけ、大サービスだ!」
 マスク・ド・タランチュラのアピールに、<地下闘艶場>の観客が大いに沸く。
 マスク・ド・タランチュラはピュアフォックスの背中側に回ると自分に寄りかからせ、両腕を上げさせて左腕一本で戒める。次に自分の両足でピュアフォックスの太ももをこじ開け、開脚を強いる。
 マスク・ド・タランチュラのフェイバリット・ホールドの一つ、<タランチュラ・ホールド>が完成していた。
「それじゃ久しぶりに、プロレス姉ちゃんのおっぱい揉み揉みといくか」
 マスク・ド・タランチュラは自由に動かせる右手でピュアフォックスの右バストを掴み、ゆっくりと揉んでいく。
「うん、相変わらず張りがあっていい感触だ」
 以前対戦したときの感触を思い出しながら、マスク・ド・タランチュラはピュアフォックスのバストを味わう。
「しかもブラ丸出しが可愛いなぁプロレス姉ちゃん」
「・・・うっさいエロマスク!」
 ブラの上からバストを揉まれながらも、呼吸を整えたピュアフォックスはマスク・ド・タランチュラをエロマスク呼ばわりする。
「そんなこと言っていいのかな〜。ほーら、こんなとこまで触っちゃうぞ?」
 マスク・ド・タランチュラが長い腕を伸ばし、下着の上から秘部をつつく。
「あっ、そんなとこ触っちゃ駄目だよ!」
「駄目だと言われて、男が止められるわけないだろ?」
 当然つつくだけでは終わらず、マスク・ド・タランチュラは秘部を撫で回し、振動を送り込む。覆面美少女が大切な部分を責められる光景に、観客からの野次が一層激しくなった。

 リングでは、コーナーポストで磔にされたスミレが猿冠者に嬲られていた。
「あああっ! 痛い、痛いから!」
 猿冠者が容赦なくバストを潰し、そのたびにスミレの口から悲痛な叫びが零れる。その様を冷たく見下ろしていた猿冠者は、スミレのブラを掴むとそのままずらす。露わとなったスミレの乳房は、猿冠者が散々力任せに責めたため、指の形に赤くなっていた。
 しかし猿冠者は更に手形をつけようとでも言うのか、剥き出しの乳房を掴み、しかも思い切り引っ張る。
「あぐう! 胸、胸がぁぁぁ!」
 根元から千切られるような痛みに、またもスミレが苦鳴を放つ。
「・・・」
 スミレの乳房から手を放した猿冠者は、今度はパンティに手を突っ込み、直接秘部を弄る。
「いぎっ!」
 秘豆を潰され、スミレが苦悶の声を漏らす。美少女が痛みにもがく様が、観客の興奮を更に煽っていった。

「うんうん、パンツの上からでもいい感触だな。気持ちいいだろ、プロレス姉ちゃん」
「誰が・・・っ!」
 否定しようとして、ピュアフォックスは自分へと注がれる無数の視線に気づいた。
(あ、ああ・・・)
 栗原(くりはら)美緒(みお)と組んで闘ったあの試合。無残に敗北を喫しただけでなく、観客に差し出され、数え切れぬほどの無数の手によって嬲り抜かれた。あのときの屈辱と恐怖が、じわりと這い上がる。
 蘇りそうな恐怖に負けまいと、必死に口を動かす。
「やめろって言ってるだろ! このエロマスク! 変態マスク! えっと・・・変蜘蛛マスク!」
 どの発言にかちんときたのか、マスク・ド・タランチュラの目が細められる。
「そこまで言っちゃうか・・・しょうがない、お仕置きだ!」
「っ!」
 マスク・ド・タランチュラの指がパンティの中に潜り込み、直接秘裂を弄りだす。
 リング内で、リング外で、美少女二人が秘部を直接弄られる。その姿に、観客席から野次や指笛が飛ばされる。
「い、一体どこを・・・触ってるんだっ!」
 乙女の羞恥心が爆発的な力を生んだ。マスク・ド・タランチュラの左腕でのフックを弾き、頭部をヘッドロックに捕える。そのまま後方に倒れ込み、後頭部を床にぶつけてやる。
「んのおおお! ど頭が、ど頭が割れる!」
「エロいことしか考えられないような頭は、割れちゃってもいいよっ!」
 後頭部を抱えて悶絶するマスク・ド・タランチュラに、ピュアフォックスはギロチンドロップで追い討ちをかける。しかも首ではなく、顔面へと。
「ぬおお! 鼻が、鼻がぁ!」
 鍛えようがない部分を潰され、マスク・ド・タランチュラが鼻と後頭部を押さえて喚く。その間にピュアフォックスがエプロンサイドへと昇る。
「そーれ、もう一丁!」
 エプロンサイドからのフットスタンプは、マスク・ド・タランチュラの腹筋を貫いた。
「ぐおお・・・」
 さすがにもどしはしないものの、マスク・ド・タランチュラは腹部を押さえて呻くしかできない。
「それじゃ、これで仕上げ!」
 背後に回ったピュアフォックスは、スリーパーホールドで頸動脈を絞めあげる。
「・・・」
 痛みに力の入らないマスク・ド・タランチュラはたいした抵抗もできず、脳への酸素の供給を断たれて失神した。
「スミレは!?」
 ピュフォックスがリングを見上げる。その先には・・・

「あああっ! 痛い、痛いぃぃっ!」
 スミレが絶叫する。今まで何物にも侵入されたことのない部分を乱暴に扱われ、激痛に襲われる。
「おい、やり過ぎだ猿冠者。処女奪うまでやったら大変だぞ!」
 レフェリーの警告に、猿冠者が血走った視線を突き刺す。スミレの下着から手を抜き、レフェリーのほうへと向ける。
「いや、俺は、その、お前のためを思ってだな・・・」
 急にレフェリーが弱気になり、言い訳めいたことを呟く。
 そのとき、スミレの目に力が戻った。もがいたことでかなり緩んだロープの戒めから腕を抜く。両手で体を支えて足首も抜き、乳房も隠さずポスト最上段へと立つ。
「ふっ!」
 ポストを蹴り、フレアスカートを翻しながら、ヒーローショーで何度となく放ったジャンプキックを放つ。
「っ!?」
 振り向きかけた猿冠者の側頭部を蹴り抜き、着地も決める。着地に一瞬遅れ、スカートがふわりと元に戻った。
「いいようにやってくれたよね。倍返しじゃ済まないから!」
 素早くブラを直したスミレが、蹴りの連打を猿冠者に叩き込む。バイトで戦隊物の仮面を被り、一日何ステージもこなすのだ。スミレの体力も並みではなかった。頭部への衝撃で朦朧となった猿冠者は全ての蹴りをまともに食らい、最後はローリングソバットでコーナーポストまで弾き飛ばされた。

<カンカンカン!>

 顔面から倒れ込んだ猿冠者を見て、レフェリーが慌てて試合を止める。
「なんだ、助けようと思ったら自分で解決しちゃったよ」
「もう少し早く助けに入ってくれたら、もっと良かったんだけどね」
 リングに戻ってきたピュアフォックスに、スミレがさすがに疲れた表情で返す。
「さて、対戦相手は倒した、と」
「でも、もう一人許せない相手が居るよね」
 美少女二人の視線が、猿冠者の様子を確認していたレフェリーへと向く。
「んっ?」
 その視線に気づいたのか、振り返ったレフェリーが硬い笑みを浮かべる。
「そ、それじゃ、試合も終わったことだし、俺もそろそろ・・・」
 ぎくしゃくと立ち上がったレフェリーだったが、ピュアフォックスとスミレの表情に動きを止めてしまう。その視界の中で、ピュアフォックスとスミレが頷く。
「「・・・せーのっ!」」
 見事なステップインキックが同時にレフェリーの腹部を捉え、吹き飛ばす。その意識は一瞬で飛ばされていた。
「天誅完了!」
 腰に手を当ててふんぞり返ったピュアフォックスに、観客席から野次や歓声、指笛が飛ばされる。
「・・・遥」
「何度言ったらわかるかなぁ、遥って呼ぶな!」
「そんなことよりさ・・・」
「そんなことって! 私にとっては大事なことなの!」
 スミレを睨みつけるピュアフォックスだったが、スミレがため息を吐きながら告げた言葉に真っ赤になる。
「それじゃピュアフォックス、パンツ丸見え」
「? ・・・うわわっ!?」
 タイトなミニスカートが先程のキックにより、腰骨の辺りまでずり上がっていたのだ。そのため純白のパンティが露わとなり、観客の視線に晒されている。
「な、なんで早く教えてくれないの!」
 慌ててスカートを直したピュアフォックスに、スミレが肩を竦める。
「遥が細かいことに拘るからでしょ?」
「だから遥って呼ぶな!」
「あーはいはい、続きはあとで聞くから。取り敢えず、さっさと行こ。また試合追加されたら堪んないし」
「むー、納得いかないけど納得いった」
「なにそれ」
「いいから脱出!」
「あいあいさー!」
 言い合いをしながらも素早くリングを降り、花道を駆け出す。連戦を勝利で終えた二人の美少女高校生に、観客席からは野次と指笛、そして健闘を称える拍手も飛んでいた。ただ、多くの視線が、剥き出しとされたままのブラへと注がれていた。


第九十九話へ   目次へ   【座談会 其の二十】へ   第百一話へ

TOPへ
inserted by FC2 system