【第十六話 天現寺久遠:我流 其の二】

 犠牲者の名は「天現寺久遠」。17歳。身長166cm、B87(Eカップ)・W60・H90。鋭い眼差し、すらりと通った鼻梁、太い眉、肩の長さでぶつ切りにされた髪、縛られることを嫌う野性的な美貌。夜になるとストリートライブを行い、迫力ある低音の歌声に固定ファンもいる。
 以前<地下闘艶場>でサンダー・桝山と茨木美鈴を破り、二百万円を手に入れた久遠は狙っていたアコースティックギターを購入し、他にも諸々を購入して瞬く間に使い果たしてしまった。そのタイミングでバイトを解雇され、家賃も滞納してしまう。窮した久遠にまたも<地下闘艶場>からの誘いがかかった。久遠は契約書をざっと読むとすぐにサインし、二度目の参戦を決めた。


 今回も久遠は私服での入場だった。革ジャンにTシャツ、ジーパンという飾り気のないもの。
 対戦相手は顔を真っ白に塗り、目と口には黒いペイントを、鼻には黒い付け鼻をしている。服はだぼっとした黒いナイロン地のもので、頭には黒いシルクハットを被り、手には白手袋をはめている。
「やれやれ、女王様の次はピエロかよ」
 久遠の呟き通り、対戦相手の格好は道化師にしか見えなかった。

「赤コーナー、ジョーカー!」
 シルクハットを取って挨拶するジョーカーに、観客からまばらな拍手が送られる。観客にとっても実力がわからず、見た目がおどけた道化師のジョーカーに過度の期待はできなかった。
「青コーナー、『闘う歌姫』、天現寺久遠!」
 コールに応えるでもなく突っ立っていた久遠にレフェリーが近寄る。
「久しぶりだな天現寺。今日こそはボディチェックを・・・」
「相変わらずそれかよ、しなくていいって」
 久遠の拒否にあっさりと引き下がったレフェリーは、ジョーカーのボディチェックも行わず、すぐにゴングを要請する。

<カーン!>

 久遠は様子見とばかりジャブを何発か繰り出すが、ジョーカーは大きな動きながらそれらを確実に避けていく。しかし久遠の右ストレートを食らい、吹っ飛んで倒れる。そのまま転がってリング下に逃れ、頬を押さえてオーバーアクションで痛がる。観客からは冷やかしの声援と不甲斐なさに怒号が送られる。
(こいつ・・・!)
 久遠がジョーカーを睨みつける。今の右ストレートは触れたほどにしか当たっていない。それなのに大袈裟に痛がって見せるのは久遠を馬鹿にしているとしか思えない。
「さっさと上がれ!」
 久遠の苛立ちに満ちた声に肩を竦め、ジョーカーがリングに戻る。即座に放たれた久遠のワンツーを避けると同時に右手を一閃させる。と、久遠のTシャツが斜めに裂け、ピンクのブラが覗く。
「なっ!」
 反射的に前を隠す久遠。ジョーカーは親指と人差し指で丸を作り、双眼鏡を覗くように目に当てる。
「おいレフェリー! あいつ何か凶器持ってるだろ! 取り上げろ!」
 レフェリーがジョーカーを見ると、ジョーカーは心外だとばかりに両手を振る。
「ボディチェックもしてないからなぁ、本当に凶器なのか、ジョーカーの攻撃が鋭いだけなのか分からんよ。お前がボディチェックを受けるなら考えてもいいがな」
 レフェリーがまともに取り合う気がないと見た久遠は、ジョーカーへ乱打を放つ。上下左右から繰り出される不規則なコンビネーションを、ジョーカーは楽々と避けてみせる。久遠の攻撃の隙間にジョーカーの右手が一閃し、またも久遠のTシャツが切り裂かれる。前面がX字に切られ、もはや服としての機能を果たしていない。
「今回はピンクのブラか。少しは色気付いたか?」
 レフェリーの揶揄に久遠が睨みつける。その隙にジョーカーが間合いを詰めるが、久遠はカウンターのミドルキックを合わせ、ダウンを奪う。即座にパウンドを落とすが、ジョーカーは下からの強い受けでそれを凌ぐ。
 久遠の攻撃が途切れた瞬間、三度ジョーカーの手が一閃する。今度はブラの繋ぎ目が切られて久遠の胸の谷間が露わになり、この光景に観客から歓声が沸く。
「・・・っ!」
 それに気付いた久遠は顔を赤らめ、両手で胸を庇って距離を取る。ジョーカーはヘッドスプリングで跳ね起き、親指と人差し指で丸を作って目に当て、久遠の胸の辺りを凝視する。
(まずい、このまま動いたら乳首が見えちまう。さすがにそれは恥ずいな)
 素早く革ジャンのファスナーを上げて前を隠し、ジョーカーと向き合う。自然とジョーカーの手に注意が行ってしまい、かにバサミでダウンを奪われ、ジーパンからベルトを抜き取られる。
「!」
 慌てて久遠が手を伸ばすが、ジョーカーはベルトを持ったまま立ち上がり、リング下へと投げる。その隙に久遠は立ち上がるが、ヒップに合わせたサイズのジーパンのためウエストに余裕があり、そのためジーパンが少しずれてブラと揃いのピンクのショーツが顔を覗かせる。
「上下をピンクで揃えてるのか。くくっ、少女趣味だな」
 レフェリーの言葉を黙殺し、久遠はジョーカーを睨む。ふざけた外見とは裏腹にかなりの実力を持ち、凶器を自在に操るジョーカー。久遠の喧嘩殺法では中々ダメージを与えられず、少しずつ衣服が削られていっている。
(最初に痛がるふりでペースを持ってかれたのがまずかったな。あれで頭に血が昇っちまった)
 喧嘩は最初の一撃で勝負がつくことも多いのに、それを忘れていた。加えてジーパンでは蹴りが出しにくい。前回の出場でそこまでの苦戦はしなかったため、頭のどこかに今回も楽勝だという思い込みがあったのかもしれない。
 呼吸を整え、気持ちを切り替えて拳を構える。ジョーカーが前に出ようとした瞬間、左ジャブを顔面に叩き込む。ジョーカーの付け鼻が潰れ、漫画のように気をつけをしたまま後ろに倒れる。即座に近づきパウンドを落とそうとした久遠の首にジョーカーの脚が巻きつき、そのまま三角締めに捕らえられる。
「こんのっ!」
 気合と共にジョーカーを持ち上げるが、パワーボムで叩きつけようと思ったときにはジョーカーはするりと久遠の後ろに降りていた。そのままジャーマンスープレックスで逆にリングに叩きつけられる。
「ぐあっ!」
 後頭部から落とされ、一瞬意識が飛ぶ。その意識はバストへの刺激で戻ってきた。
「・・・!」
 視線を下にやると、ジョーカーがブリッジでフォールしたまま久遠のバストを揉んでいた。両手首を掴み、足でお腹を蹴ることでフォールから逃れる。立ち上がってジョーカーを睨みつけるが、メイクのために表情が読めない。
「おおおぁぁぁっ!」
 気合の咆哮と共に連打を繰り出すが悉く空を切る。焦れば焦るほど技が大振りとなり、一層当たらない。
(くそっ、こんな筈じゃ・・・一発も当たらないなんて筈がないんだっ!)
 右のアッパーを空振りした瞬間、鳩尾に掌底が叩き込まれる。
「がふっ!」
 その衝撃でロープまで飛ばされ、ロープにもたれかかることでダウンを免れる。しかし意識は混濁し、立ち上がることができない。ジョーカーは久遠に近づくと両手をロープに絡ませた上、どこからか取り出した紐で拘束し、身動きができないようにする。両足も同じように拘束した後一歩離れた場所から久遠を観賞し、満足気に頷いた。

「・・・んっ」
 久遠の意識が徐々にはっきりとしてきた。最初はそこがリングの上であることも分からなかった。
(ここは・・・あたし、なんで・・・)
 動かそうとした手足は動かず、視線をやって自分が拘束されていることに気付き、自分が<地下闘艶場>で闘いの最中だったことを思い出す。その顔を覗き込むジョーカーに、怒りの感情が吹き上がる。
「テメェか、こんなことしやがったのは! 今すぐ放せ!」
 久遠の怒号に肩を竦め、ジョーカーが首を振る。革ジャンのファスナーを持つと、ゆっくりと下ろしていく。
「やめろ! ぶっ殺すぞ!」
 久遠は凄むがジョーカーは気にもせず、ファスナーを下ろしきる。前面をX字に切られたTシャツとつなぎ目が切られたピンクのブラが露わになると、ジョーカーはTシャツを持って引き千切り、完全に前を開ける。今度は両手を伸ばして直接Eカップの乳房を掴み、ゆっくりと揉みしだく。両手からはみ出す程の巨乳を味わうように揉む。
「このっ、どこ触ってんだ! やめろぉっ!」
 久遠が叫ぶとジョーカーは素直にやめた。久遠の目の前で軽く手を振ると、その手にピンク色のものが現れた。手品のようにジョーカーの右手に現れた物、ピンク色のローターが徐々に久遠に近づけられていく。
「それってもしかして・・・やめろ、そんなもん近づけんな!」
 ジョーカーは叫ぶ久遠の顔の前にローターをかざし、二、三度久遠の顔をつつくと、スイッチを入れてピンク色の乳首に当てる。
「くふっ・・・く、ううっ・・・!」
 ローターの振動が甘い痺れを伝えてくる。必死に声を抑えるものの、堪えきれずに洩れてしまう。一度久遠からローターを外したジョーカーがローターを持ったまま手を振ると、ローターが二個に増える。
「なっ・・・くぅっ・・・はぁぁん!」
 両方の乳首をローターで責められ、久遠の口から甘い叫びが飛び出す。
「なんだ、そんな色っぽい声も出せるんだな。男みたいな口調だから不感症かと思ったぜ」
 レフェリーが後ろから久遠を覗き込み、にやつきながら言葉で嬲る。久遠は言い返そうとするが、ローターの刺激がそれをさせない。
「やめ・・・ろ・・・よっ・・・んああっ!」
 首を振って拒絶しても、ジョーカーはローターを離そうとはしない。それどころか一つをレフェリーに渡し、二人掛かりで乳首をローターで嬲り、乳房を揉む。
「どうだ、ローターで乳首責められながら胸を揉まれるのは。そういえばローターを知ってたな。さてはローターは初めてじゃないな?」
「う・る・さ・・・くぁぁぁっ!」
 ローターの刺激に声も絶え絶えになる久遠を見て、レフェリーは器用に片手で久遠の履いているジーパンのボタンを外し、ピンクの下着を露わにする。
「さて天現寺、この間は余りここを触れなかったからな、今日は嫌っていうほど弄り倒してやろう」
 レフェリーは下着越しに割れ目をなぞり、淫核の辺りにローターを当てる。
「うわぁぁぁっ!」
 悲鳴をあげ、腰を跳ねさせる。下着越しとはいえ敏感な秘豆に振動を加えられ、心ならずも快感を引き出されてしまう。その間もジョーカーに左右の乳首を順番にローターで責められ、甘い痺れが乳房から全身へと広がっていく。
 暫くそうして楽しんだ後ジョーカーはローター責めをやめ、レフェリーにもやめさせる。ジョーカーが右手を振るともう一つのローターとガムテープが現れる。三つのローターを両乳首と股間の淫核辺りに貼り付け、懐から回転式のスイッチを取り出す。ジョーカーがスイッチを捻ると、ローターが三つ同時に振動を開始する。
「う、くぅぅぅっ・・・!」
 先程よりも弱い刺激に唇を噛んで声を抑える。ジョーカーは一旦スイッチを切るとレフェリーに渡し、自分は一歩退く。スイッチを持ったレフェリーは久遠の前に進み、スイッチを見せびらかしながら質問をする。
「よく聞け天現寺、これからお前に質問を行うからきちんと答えるんだ。それじゃあ、最初の質問だ。今まで男に胸を揉まれたことはあるか?」
「お、お前らが今散々揉んだだろうが!」
「あー、聞き方が悪かったな。リング以外で揉まれたことは?」
 沈黙する久遠。その態度にレフェリーがローターのスイッチを入れると、振動が三点の急所を同時に襲う。
「ひぐぅぅっ!」
「もう一回聞くぞ、今までバストを揉まれたことはあるか?」
「ある、あるよ、言っただろ、やめろぉっ!」
 スイッチを止め、久遠を見遣るレフェリー。
「なんだ意外だな。男には興味ないように思ってたが」
「・・・電車に乗れば痴漢野郎が山ほど寄って来るんでな。全員叩きのめしてやったけど」
「お前ならやりかねんな。さて、次の質問だ。お前これがローターだってこと知ってたな。今まで使ったことは?」
「そ、それは・・・」
 言いよどむ久遠。途端にローターが牙を剥く。
「ひいいぁぁぁっ!」
「どうだ? 使ったことあるのか?」
「あぅ・・・はぁぁぁっ! あるよ! ある!」
「くくっ、やっぱりか」
 ローターを止め、久遠の顔を覗きこむレフェリー。
「お前、処女だろ?」
「そ、そんなこと教えられるか! ・・・くぁぁぁっ!」
 すかさずローターのスイッチが入れられる。
(嫌だ、絶対に教えてたまるか!)
 甘い刺激を必死に耐える久遠。だが、ローターの振動が徐々に強くなっていく。
「あ、ふぁっ、ふぅぅぅっ!」
 体を動かすことでローターから与えられる刺激を逃そうとするが、ロープに拘束されていてはそれも叶わない。その間にもローターの振動はどんどんと強くなっていく。
「言うから! 言うからやめてくれぇっ!」
「最初からそういえばいいんだ。で? どうなんだ?」
「・・・まだだよ! これでいいだろ!」
 レフェリーは軽くため息をつき、スイッチに手を伸ばす。
「口の利き方がなってないな、ちゃんと言うんだ」
 そのままローターのスイッチを強に入れる。
「あああっ! しょ、処女だよ! だからもうローター止めてくれっ!」
 久遠の告白に、レフェリーはにやつきながらローターを止める。
「そうか、やっぱり処女か。男に慣れてないわけだ。折角だ、今日はしっかり教育してやるよ」
 そう言うとレフェリーは久遠の乳首と下着につけていたローターを毟り取り、自らの手で乳首を弄りだした。
「やめろ、やめろ、やめろぉっ!」
 先程までローターでいたぶられた乳首は敏感になっており、レフェリーの責めに甘い感覚を感じてしまう。ついには乳首が硬くなり、レフェリーの指の中で立ち上がってしまう。
「口ではやめろと言っても乳首の方は触ってくれって言ってるぞ。嘘吐きな奴だ」
「それはさっきのローターのせいだ! あ、はぅぅぅっ」
 レフェリーは乳首責めが気に入ったのか、ひたすら乳首を弄る。久遠もなんとか拘束から逃れようと試みるが、ロープに絡められた上に紐で結ばれているためそれも叶わない。下手に動くとレフェリーに摘ままれた乳首が引っ張られ、痛みを感じるために首を振るくらいしかできない。
「もう諦めたか、それとも気持ちよくなってきたか?」
「そ、そんなわけが・・・ひぎぃっ!」
 乳首を強く潰され、言葉を遮られる。レフェリーはそのまま久遠の乳首を弄り続けた。

「そろそろこっちも弄ってやるか」
 レフェリーは散々嬲った乳首から手を放し、久遠の秘部をつつく。
「う、あぁ、や、めろ・・・」
 最早強い口調で話すことができない。レフェリーが久遠の股間に責めを始めようとした瞬間、ジョーカーがレフェリーの肩に手を置き、そのまま後ろに下がらせる。
「なんだよ、今からがいいところだったのに」
 レフェリーはぶつぶつ文句を言いながらも結局は引き下がる。ジョーカーはしゃがみこんで久遠と目線を合わせると、いきなり口づけする。
「・・・!」
 突然のことに、久遠は硬直してしまう。
(こんな奴に、あたしのファーストキスを奪われた・・・)
 呆然となる久遠。ジョーカーは口を放して左の乳首を口に含み、唇で優しく刺激しながら舌でつつく。左手は右の乳房を捏ねながら乳首を軽く弾き、右手は下着の上から秘部を優しく撫で回す。
「あふ、くぅっ」
 柔らかな愛撫に久遠の口から声が洩れる。ジョーカーは唇での乳首責めを交互に行いながら下着の中に指を侵入させ、直接秘部を撫でる。バストを揉まれることから始まり、ローター責め、乳首責め、そして柔らかいジョーカーの愛撫が積み重なり、秘部は潤みを湛えていた。ジョーカーの愛撫によって更に愛液が引き出されていき、淫らな水音も聞こえ出す。
「おいおい、感じてるのかよ。手足を縛られて観客に見られて、マゾっ気があるんじゃないか?」
 レフェリーの揶揄も耳に入らず、ジョーカーの愛撫に久遠の官能が高まっていく。
「あぁっ、はぁっ、くふぅっ」
 そのとき、ジョーカーの指が淫核を潰した。
「あああぁぁぁっ・・・!」
 久遠が絶叫する。それも聞こえなかったかのようにジョーカーの愛撫は止まらず、久遠から快感を引き出していく。
「だめ、だから、もう・・・やめろぉ・・・ふぁぁぁん!」
 一際大きく声を上げたあと、久遠の体から力が抜けた。ジョーカーの愛撫にも反応がなく、どうやら失神したらしい。

<カンカンカン!>

 久遠の失神を確認し、レフェリーは試合終了のゴングを要請した。ジョーカーは久遠の拘束を解くと胸に抱え、控え室へと退場していった。


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