【第二十一話 藤嶋メイ:空手 其の二】

 今回の犠牲者の名は「藤嶋メイ」。18歳。身長163cm、B84(Dカップ)・W56・H82。耳の辺りでばっさりと切った髪。ボーイッシュな童顔。スレンダーながらも出るところは出ているスタイルの良さ。その見た目とは裏腹に、インターハイの空手の部で防具つき試合にもかかわらず、KOの山を築いて優勝を飾っている。相手の攻撃を素早い動きで捌き、一撃で倒す彼女のスタイルからついた渾名が「メイ・ビー(五月の蜂)」。前回<地下闘艶場>でマスク・ド・タランチュラと対戦し、苦戦しながらもレフェリー諸共KOしている。
 そのメイにまたも<地下闘艶場>から招待状が届いた。きっぱりと断ったメイだったが、次の日にメイが通う道場の先輩が襲われ、右腕と右足を折られて入院した。その後もメイが<地下闘艶場>での闘いを拒むごとに男の先輩が襲われ、怪我人が増えていった。最後の招待状には「道場の先輩の怪我を御見舞い申し上げます。次は女性の後輩が襲われないことを御祈念しております」と、あからさまな脅迫が書かれていた。これ以上先輩や後輩たちに迷惑をかけるわけにはいかない。敵陣に乗り込む気概でメイは<地下闘艶場>への参戦を了承した。


 上下の道衣に黒いTシャツを着込み、黒帯を締めたメイが入場する。前回の対戦を知っている観客から卑猥な冗談がかけられるが、まるで歩みを変えずにリングへと向かう。リングに上がる前に一度大きく深呼吸し、一気に階段を駆け上がる。相手と向き合ったと同時にリングコールが行われる。
「赤コーナー、恵比川福男!」
 五分刈り、あんこ体型、餃子耳の明らかな柔道家だった。柔道着に黒帯を締め、名前とは裏腹の鬼瓦のような風貌をしている。メイよりも頭一つ以上も高く、まるで小さな山のようにも見えた。
「あの華麗にして激しい『メイ・ビー』が<地下闘艶場>に再び参戦! 青コーナー、藤嶋メイ!」
 貫くような視線を恵比川に浴びせ、メイは微動だにしない。
「お前か、先輩方の骨を折ったのはっ!」
 メイの弾劾に、恵比川は薄く笑うことで答えた。今回はボディチェックが行われることもなく、いきなり開始のゴングが鳴らされる。

<カーン!>

 まずは様子見と軽いローキックで牽制する。恵比川は膝を曲げてローキックを受けていく。蹴る度に分厚い肉を叩く感触がメイの脚に伝わってくる。何度かそれを繰り返し、飛び込みから顔面へ正拳突きを打つ。その一撃は的確に鼻を捕らえたが、打点が高いため体重が乗らず、恵比川は気にも留めずにメイの右袖を掴み、払い腰でリングに叩きつける。
「ぐふっ!」
 その衝撃は半端なものではなかった。リングに叩きつけられ、加えて体重を乗せられた。呻くメイを袈裟固めに捕らえ、道衣の隙間から手を差し入れた恵比川がバストを掴む。そのまま乱暴に揉みしだく。
「くっ!」
 右の掌底で目を打ち、恵比川が怯んだところで脱出する。
(この男も厭らしいことが目的か。捕まったらアウトだ、スピードで撹乱するしかない)
 凄まじい連撃を繰り出すメイだったが、スピードを出すことだけに意識が行き、体重が乗らずに威力も低い。恵比川に決定打を与えることもなく、スタミナだけを消費していく。
「・・・はっ」
 息を入れた一瞬だった。恵比川に小内刈りでリングに倒され、馬乗りになられる。苦し紛れに出した突きは軽くかわされ、両手を頭上で押さえられる。恵比川はメイの頬をべろりと舐め、右手でバストをゆっくりと揉む。
「この匂い、この感触、おなごと寝技をできる日が来ようとは思わなんだわ」
「くっ、放せ、変態!」
「・・・ほほぅ、変態か。ならば変態らしく責めてやろう!」
 恵比川はメイの顔を舐め回しながらバストを揉みくちゃにし、腰を揺する。
「ひっ!」
 柔道着越しとはいえ男の逸物を擦りつけられ、メイの顔色が変わる。それに気分を良くし、恵比川はメイの道衣の紐に手を伸ばす。そのため腰が浮き、金的に膝を入れられる。
「がぼぼっ!」
 奇声をあげ、股間を押さえて蹲る。顔を道衣で拭きながら立ち上がったメイだったが、恵比川に組み伏せられていた時間が長く、かなりのスタミナを消費してしまった。そのため、後方から羽交い絞めにしてきたレフェリーにあっさりと捕まる。
「言うまでもなく金的は反則だ! やめろ!」
 口では立派なレフェリーのようなことを言いながら、右手は道衣の隙間から侵入し、メイのバストを揉む。
「あ、あなたこそ審判でしょ!? こ、この手を放せ!」
 レフェリーに抗議するメイだったが、それで手を放すようなレフェリーではなく、左のバストを揉み回される。その間に恵比川が回復し、メイの前に立つ。
「ようも男の急所を打ってくれたの。それなりの罰を与えねば俺の気が済まんわ!」
 悪相を更に歪ませ、恵比川はメイの道衣の紐を外し、前を大きく開く。
「くっ・・・」
 唇を噛むメイに対してレフェリーは右のバストを、恵比川は左のバストに手を伸ばし、Tシャツの上から張りのある感触を味わう。
「やめろ、その手を放せ!」
「そうか、ならばここを触ってやろうか」
 恵比川は責める場所を股間に変え、道衣の上から秘部を押さえる。
「違う、私の体から手を放せと言っているんだ!」
「ふん、ならば放させてみせればどうだ? ほれ、そうせねばいつまでも触り続けるぞ」
 恵比川は両手を蠢かせ、メイの体を味わう。
「・・・ぃ」
「ん、なんだ?」
 メイがなにか呟き、それを聞き取ろうと恵比川が身を屈める。その顔に、メイの頭突きがめり込む。
「ぶぶふっ!」
「気持ち悪いと言ったんだ、変態!」
 これには恵比川も鼻を押さえ、痛みに呻く。レフェリーも驚いて力を緩め、メイはレフェリーを突き飛ばして男達から距離を取ろうとする。恵比川は反射的にメイの道衣を掴み、逃がさない。
「そんなに私の道衣が欲しいなら、やるよっ!」
 両手を道衣から抜いて頭から恵比川に被せ、後ろ回し蹴りを突き刺す。更に左右の蹴りの連打で恵比川を攻め立てる。しかし恵比川は攻められながらも、両腕で体を庇いつつチャンスを窺っていた。メイの連打が止んだ瞬間道衣を跳ね除け、目の前にいたメイのTシャツを掴み、左右に引き千切る。
「きゃぁぁぁっ!」
 Tシャツを破られ、メイが悲鳴をあげて前を隠す。そのため恵比川の双手刈りを避けきれず、テイクダウンを奪われ馬乗りになられる。恵比川は胸を隠す両手を掴み、力づくで引き剥がす。
「人を二度も変態呼ばわりとは、少しお仕置きが必要なようだのぅ」
 そう言うと口でビスチェをずらし、乳房を露出させる。
「きゃぁぁぁっ! やめろ、元に戻せ!」
 暴れるメイだったが、男の力には敵わず、乳房を揺らすだけになってしまう。
「さて、折角のご馳走だ。いただくとするか」
 恵比川は口を開け、メイの乳房を頬張る。そのまま吸い付き、舌で乳首を転がす。
「くっくっく、美味いのぅ。乳臭い小娘かと思ったが、どうしてどうして」
 メイの右の乳房を唾液塗れにし、今度は左の乳房にしゃぶりつく。交互に乳首も舐め回していくと、その刺激に乳首が少しずつ硬くなっていく。それに気付いた恵比川は乳首を軽く噛む。
「い、痛いっ!」
「同門の仇に乳首を舐められて硬くするとは、お前も好き者だな」
 嘲笑交じりの一言に、メイの表情が変わる。
「うぉぉぉっ!」
 雄叫びを上げながらブリッジで返そうとしたメイだったが、恵比川は横四方固めに移行し、口で乳首を、右手で秘部を責める。
「あ、はぅっ!」
 思わず吐息を洩らしていた。
(くっ、これしきで!)
 唇を噛んで刺激を耐え、膝蹴りを出すが、恵比川は今度は縦四方固めに移行し、自分の腹でメイの顔を、両手でメイの両脚を押さえ、乳房を舐め回す。
「へへっ、こっちが寂しそうだな」
 身動きできないメイにレフェリーが近づき、道衣の上から秘部を擦る。
(や、やめろっ! うぁっ!)
 顔を押さえられては声も出せず、メイが身悶える。何とか逃れようと恵比川の脇腹を叩く。
「暴れても無駄よ。大人しく快楽を受け入れろ」
 恵比川は意に介した様子もなく、メイの乳房と乳首を味わう。
(くそぉっ、こんな、こんな奴に・・・!)
 先輩達の仇を討つためにリングに上がったのに、またも嬲られている自分が情けない。しかし、諦める気は無かった。
(これは、どうだ!)
 恵比川の柔道着の上から、思い切り脇腹を抓る。
「ぐぁっ!」
 肉が千切られるような痛みに、恵比川が思わず力を緩めてしまう。メイはその隙に膝蹴りを恵比川の頭部に叩き込み、やっと寝技地獄から脱出した。しかし寝技で恵比川の下に敷かれて散々嬲られたため、体力が殆ど残っていない。ずれたビスチェを直し、息吹で荒い息を整えていく。
「まったく、下らん手を使う」
 抓られた脇腹を押さえ、恵比川が立ち上がる。
(行かなきゃ、あいつを倒さなきゃ、先輩の敵を取らなきゃ駄目だ!)
 気持ちは前に出ようとするが、寝技で嬲られ続けた体が前に出てくれない。
「来ないのなら、こちらが行くぞ!」
 恵比川のタックルのような双手刈りでコーナーまで持っていかれ、コーナーポストと恵比川の肩に腹部を潰される。
「げぁっ!」
 この一撃で、メイの動きが止まった。それでも、ロープに手を絡めて倒れることは拒む。恵比川はコーナーにもたれたメイの両手を押さえ、自分の腹でメイの両足を押さえる。そのまま口でビスチェをずらし、乳房を舐め回す。
「くくく、俺を仇と狙うおなごを手篭めにする、こんなにそそるものだとは考えていなかったぞ」
「く、そぉ・・・やめろぉ」
 両手両足を押さえられては、打撃しかないメイに反撃の手段はなかった。乳房を舐められ、乳首を甘噛みされても突き飛ばすことすらできない。
「ふん、レフェリーに手を上げるような奴にはお似合いの罰だな。どうだ? ギブアップするか?」
 レフェリーの皮肉気な言葉にも、首を振ることしかできない。その間にも乳房を恵比川に嬲られる。
「胸責めもそろそろ飽いてきたな。次は、こちらを楽しませて貰うか」
 道衣の下を脱がそうと、恵比川の指が紐に掛かる。
「それだけは、させるか!」
 膝で恵比川の顎をかちあげ、怯んだところをコーナーから脱出する。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
 目の光は消えていないが、メイは荒い息を吐き続ける。恵比川は顎を擦りながらも、余裕の表情を崩さない。
「くくっ、最後の悪足掻きか。観念して俺に身を任せろ、極楽に送ってやるぞ。先輩の仇を討てないと泣くのを、快楽でのよがり泣きに変えてやる。明日先輩に言うんだな、仇を討つつもりが返り討ちにされ、女にされました、とな」
「・・・私は、お前を倒すために来たんだ。お前の好きなようにされてたまるか!」
 言い返すメイだったが、腕が上がらない。
「ふん、今まで好きなようにされているくせに何を言っている。お前といい、先輩といい、道場の程度が知れるな」
「貴様・・・もう一度言ってみろ!」
 自分だけでなく、道場までも乏されたことに闘志が蘇る。怒りが、メイを突き動かした。
「こぉぉぉあっ!」
 咆哮と共に繰り出された一撃は、空手の試合では禁じられている膝前面への前蹴りだった。
「がぁぁぁっ!」
 野獣染みた叫び声を上げ、恵比川が膝を押さえる。その顔面に、メイの後ろ回し蹴りが突き刺さる。メイの踵は正確に恵比川の鼻へと当たり、鼻骨を粉砕する。それでもダウンはせず、恵比川は膝をついて荒い息を吐き、滝のような鼻血を流す。
(これでもまだ倒れないか、ならば!)
 メイの右足が高々と振り上げられる。
「せいやぁっ!」
 気合と共に踵落としを放つ。後頭部を捕らえた一撃は、恵比川の意識も刈り取った。

<カンカンカンカン!>

 危険な倒れ方をした恵比川へと駆け寄るスタッフ達を尻目に、メイは道衣を羽織り、リングを降りた。先輩達の仇を討ったその口元には、薄い微笑が浮かんでいた。


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