【第二十四話 鈴代咲夜:キックボクシング】

 犠牲者の名は「鈴代咲夜」。18歳。身長173cm、B86(Cカップ)・W63・H85。有名女子高で生徒会長を務める才色兼備の美少女で、下級生から絶大な人気を誇る。髪型をシャギーの入ったショートカットにしており、背が高いことから美少年に間違われることも良くある。
 品行方正を絵に描いたような学生生活を送る咲夜だったが、学校で禁止されているバイトを密かに行っていた。止むに止まれぬ事情ではあったが、<地下闘艶場>の誘いは咲夜の弱いところを付いていた。学校にバイトの事実を伝えることをしない代わりに、<地下闘艶場>に参戦すること。胡散臭さはあったが、高額のファイトマネーも魅力だった。咲夜は淫獄のリングへと誘われたことに気付ず、二つ返事で承諾した。


「ナース服、というやつね」
 咲夜に用意された衣装は白衣にナースキャップ、白いハイソックスだった。ただし、スカート丈が驚くほど短い。
「でも、父さんのためだもの」
 咲夜の父は脳梗塞で倒れ、意識不明の重体となっていた。緊急手術で命は取り留めたものの、医師からは脳死も覚悟するように言われ、働き手を失った家庭は入院費も満足に払えなかった。一時は退学してすぐにでも働こうかと考えた咲夜だったが、母の反対もあり、卒業までは学校に通うことにした。しかし学費を払うことも難しいため、咲夜は学校には相談せずに早朝の市場での雑用を行っていた。このようなバイト先なら学校関係者に知られることもないだろうとの考えからだったが、まさかまったくの別口から指摘が来るとは思っても見なかった。
「なにか裏があるんでしょうけど・・・」
 バイトの事実を学校には伝えないこと、高額のファイトマネー、卑猥な衣装など、やり方が普通ではない。しかし、今自分たち家族に必要なのはまとまったお金だ。加えて勝利すればファイトマネーは増額となる。
 オープンフィンガーグローブと足にサポーターを付け、咲夜は静かに入場の合図を待った。

 入場した咲夜を待っていたのは、男達の歓声と欲望に満ちた視線だった。エプロンサイドからロープをくぐったときに下着が見え、指笛と卑猥な冗談が投げ付けられる。それを黙殺し、リングに立つ。
 対戦相手は、筋肉と脂肪に覆われた格闘技者の体格を持つ男だった。背は咲夜とほぼ同じ位だが、首、胸、腹、腕、脚、すべてが太い。多少の打撃では大したダメージは与えられないのではないか。男のセコンドだろうか、老け顔の小男が周囲でせわしなく動いている。
「赤コーナー、チャベス・マッコイ!」
 コールに応え、両手を天に突き上げたチャベスが咆哮する。
「青コーナー、『闘う生徒会長』、鈴代咲夜!」
 咲夜はコールに応じるでもなく、静かに闘志を高めていく。ただし、格闘技の経験は中学時代にキックボクシングのジムに通っていただけしかない。
(対戦相手は男、観客も男ばかり、そして私を見る眼つきの厭らしさ・・・そういうことね)
 高額のファイトマネーは、咲夜を嬲るための代金なのだろう。
(それでも、父さんを救うには必要だもの!)
 咲夜は、病床の父に勝利を誓った。

 チャベスのボディチェックを早々に終えたレフェリーが、咲夜の前に立つ。
「今日は黄色い下着か。似合ってるぞ」
 にやつくレフェリーの言うとおり、スポットライトの下では、クリーム色の下着が白衣に透けて見えていた。そのことを指摘され、羞恥に頬が赤らむ。
「じゃあボディチェックをさせて貰うぞ」
「どうぞ」
 レフェリーはいきなりしゃがみ込み、咲夜の下着を眺めながらハイソックスに包まれた足を触っていく。これくらいはと我慢する咲夜だったが、レフェリーの手が腰を通ってバストに触れると、さすがにレフェリーの手を振り払う。
「ど、どこを触っているんですか!」
「どこって、ボディチェックなんだから全身を調べるのは当たり前だろう」
 レフェリーは口元を歪め、咲夜を見つめる。
「それともボディチェックを受けないつもりか? そうすると没収試合ということでファイトマネーは出せないぞ」
「そ、そんな・・・」
 今の咲夜にとって、ファイトマネーは喉から手が出るほど欲しい。暫しの逡巡の後、胸元を隠していた手を下ろす。
「・・・どうぞ」
「わかってくれたか。俺も職務だからな、仕方ないんだよ」
 口とは裏腹に、レフェリーは嬉々として咲夜のバストを捏ね回す。
「ぱっと見は優男みたいなのに、見た目よりボリュームあるじゃないか。着痩せするタイプか?」
 レフェリーの言葉にも答えず、咲夜はそっぽを向く。
「おいおい、無視することはないだろ。まあいいさ、他にも調べないといけないしな」
 レフェリーは左手でバストを揉みながら、右手でヒップを撫で回す。
「こっちはきゅっと締まっていい感触だ。若いっていいよなぁ、生徒会長さんよ」
 それでも答えない咲夜に対し、レフェリーはニヤリと笑う。
「それじゃ、こっちも調べないとな」
 レフェリーの右手は咲夜の秘部へと伸び、秘裂に沿って前後する。
「そ、そこは!」
「お、やっと反応してくれたか。でもな、こここそちゃんと調べとかないと、凶器を隠す奴もいるんだよ。嫌だって言うならやめてもいいぞ?」
 まさか、ここまでされるとは思っていなかった。喉まで出掛かった拒絶の言葉を飲み込み、咲夜は体の力を抜く。
「何も言わないのか? それなら続けさせて貰おうか」
 レフェリーにバストと秘部を同時に弄られ、羞恥心と怒りで頬が上気する。
(でも、ここで反抗したら闘えない。ファイトマネーが貰えない・・・!)
 心に渦巻く感情を飲み込み、レフェリーに身を任せる。レフェリーは身動きしない咲夜の肢体を弄り、悦に入っている。

 散々玩ばれた後、漸くゴングが鳴らされた。

<カーン!>

 対戦相手のチャベスと向かい合ったとき、その肉体が発する迫力に圧倒された。先程まで抱いていた羞恥心、怒り、興奮といったものが一気に冷める。中学生のときに齧ったくらいの格闘技経験では、この男に太刀打ちできないことを瞬時に悟る。
 チャベスが一歩踏み出すと、咲夜も一歩下がる。チャベスが足を踏み出すたび、その分後ろに下がってしまう。じりじりと下がり続けていると、太ももを掴まれたことに気づく。
「え?」
 小男だった。いつの間にかリングに上がり、咲夜の後ろを取っていたのだ。レフェリーに正そうと前を向くと、目の前にはチャベスの姿があった。思わず身が竦んだ瞬間、両方のバストを掴まれる。
「あっ!」
 そのまま揉みくちゃにされる。小男は太ももを擦っていたかと思うと、咲夜の秘部を弄り出した。
「ちょっと、二人掛かりは・・・!」
 咲夜の非難は、バストと秘部への刺激で止められた。レフェリーは小男に注意するでもなく、嬲られる咲夜の姿をにやけながら眺めている。
 右手でバストを、左手で秘部を守ろうとした咲夜だったが、小男の手は払えたものの、チャベスの手はビクともしない。両手でチャベスの右手首を掴んで引き剥がそうとしても、まったく動かせない。小男は咲夜の両手がチャベスに行ったと見るや、秘部への責めを再開する。
「いい加減にして!」
 咲夜はチャベスの金的に膝を入れていた。これにはチャベスも堪らず、股間を押さえて蹲る。咲夜は小男を殴り飛ばし、チャベスから距離を取ろうとしたが、今度はレフェリーに捕まってしまう。
「金的への攻撃は反則だし、セコンドに手を上げるのも反則だ。わかってやってるのか?」
「き、金的はともかく、セコンドはリングに上がってたじゃないですか!」
 咲夜の言うことなど聞き流し、レフェリーは背後から咲夜のバストを掴む。
「ちょっと、放してください!」
「反則するような選手にはお仕置きだ。ああ、レフェリーに手を上げたら没収試合にするから、そのつもりでな」
「そんな・・・」
 没収試合、と言われた途端に咲夜の動きが止まってしまう。レフェリーはにやりと笑うと、バストを揉み回す。
「こ、こんなの卑怯です! せめてちゃんとした試合をさせてください!」
「じゃあ反則しなきゃいいじゃないか。反則するような選手には罰が与えられて当然だと思うがね、生徒会長さん?」
 耳元で囁きながらもレフェリーはバストを揉むのをやめようとはしない。漸くチャベスも股間の痛みから回復し、咲夜へと近づくと股間へと指を伸ばし、秘部を乱暴に弄る。
「痛い! そんなに強く触らないで!」
「おいチャベス、もっと優しくしてくれとさ」
 レフェリーの日本語が通じたのか、チャベスはしゃがみ込み、下着越しに秘部を舐め回す。
「いやっ、気持ち悪い!」
 身悶える咲夜。そこに小男も近づき、太ももの剥き出しの部分に舌を這わす。
「やめて、そんな・・・あぅぅっ!」
 小男は太ももを舐めながら両手で抱え込み、自分の股間を擦り付けるように腰を振る。
「きゃぁぁぁっ!」
 小男の逸物の感触に、咲夜は悲鳴を上げる。その間にもバストはレフェリーに揉まれ、秘部はチャベスに下着越しに舐め回されている。
 暫くそうやって嬲られていたが、チャベスは秘部を舐めるのに満足したのか、レフェリーと小男をどかせて咲夜を右肩に担ぎ、カナディアンバックブリーカーに極める。その手はバストに置かれ、揉みくちゃにしている。
「やめて・・・あぅっ、くぅっ!」
 背骨が軋み、痛みを訴える。それに加え、バストを弄られる嫌悪感、舐められたことで濡れた下着の不快感が咲夜を追い込む。
「ギブアップか、生徒会長さん?」
 咲夜の顔を覗きこみながら、レフェリーがギブアップの確認をしてくる。
「ううっ・・・しません、しません!」
 首を振って拒否する咲夜だったが、レフェリーはにやりと笑うとチャベスの背中側に回り、スカートから覗く下着を見つめる。
「おー、チャベスが舐め回したせいであそこが透けて見えてるぜ」
 その指摘に、咲夜は顔を赤らめる。チャベスは衣装越しにバストを揉むのがもどかしくなったのか、上着を掴み、無理やり前を開ける。
「きゃあぁぁぁっ!」
 咲夜は自分の素肌とブラを晒されたことで恐慌状態となる。振り回した手が偶然チャベスの目に当たり、怯んだチャベスが力を抜いたことでカナディアンバックブリーカーから解放され、リングへと落ちる。転がることでリングに落ちた衝撃を逃がし、チャベスから距離を取る。
 慌ててボタンを留めようとするが、チャベスの怪力で無理やり開けられたため、上から二番目までのボタンが弾け飛んでいた。
「あの、レフェリー、衣装が破れたので、交換して欲しいんですが・・・」
 胸元を押さえ、恥ずかしさを堪えてレフェリーに申し出るが、鼻で笑われる。
「どこの勝負の世界に、衣装が破れたからって試合を止めるレフェリーがいるかよ。そのまま続行だよ。なんなら俺がずっと押さえといてやろうか?」
 胸元から覗く柔肌を凝視され、思わず身を引く。試合前に感じた、自分を嬲るために組まれた試合だということを改めて認識する。打たれた目をこすっていたチャベスが咲夜を睨み、距離を詰めてくる。
「ひっ!」
 その迫力に負け、またも後ろへと下がる。しかし、背に当たる感触がコーナーへと追い詰められたことを教える。
「しまっ・・・」
 つい後ろを振り返ってしまい、その隙にチャベスにベアハッグに捕らえられる。
「あぐぅぅぅっ!」
 強烈な締め付けに、口からは絶叫が毀れる。チャベスは締め過ぎたと思ったのか、少し力を緩めると咲夜の体を上下に揺する。レスリングタイツの下の硬くなった逸物を押し当てられ、おぞましさが背を這う。
「やめて、そんなものくっつけないで!」
「生徒会長さん、キブアップするかい?」
 レフェリーは咲夜の後ろに回りこみ、ヒップを撫でながらギブアップの確認をしてくる。
「し、しないわっ! ギブアップだけは絶対・・・んんっ!」
 頑なにギブアップを拒む咲夜だったが、チャベスから顔を舐められ、怖気をふるう。顔を振って逃れようとするも、ベアハッグに捕らえられた体勢ではそれも適わない。少しでも離れようと首を後ろに傾けたとき、不意の思いつきで額を思い切り前に突き出し、チャベスの顔面に頭突きを入れる。
「がぅぁぁあっ!」
 獣のような声を上げ、チャベスは顔を押さえて蹲る。すかさず離れようとした咲夜だったが、チャベスは右手を伸ばしてナース服を掴み、引く。それによって残ったボタンも飛び、完全に前が開いてしまう。
「やっ、やっ、やぁぁぁっ!」
 目茶苦茶に両手を振り回すと、それに怯んだのかチャベスは右手を放し、今度こそ距離を取ることができた。しかし上着の前は完全に開いており、押さえておかないとブラが見えてしまう。チャベスが距離を詰めてくると思わず下がりそうになるのを堪え、リングを回るように横へ横へと動く。
(どうしよう、このまま逃げてばかりじゃどうしようもないのはわかってるけど・・・)
 策もなく、ただリングを回る咲夜の足が不意に引っ張られる。
「えっ?」
 小男だった。リング下から手を伸ばし、咲夜の足を掴んで倒したのだ。
「いやっ、放して、放してよっ!」
 半狂乱となり、咲夜は腹這いのまま小男に蹴りつけるが、小男は巧みにそれをかわす。小男に気を取られている間にチャベスが咲夜の胴に手を回し、軽々と持ち上げる。
「あ、いやっ・・・」
 そのままチャベスに俵返しでリングに投げつけられる。
「あぅっ!」
 その威力に背中を押さえ、呻く。動きの止まった咲夜にレフェリー、チャベス、小男の三人が群がり、レフェリーは咲夜の両手を足で押さえて下着越しにバストを揉み、チャベスは右脚の上に乗って秘部を弄り、小男は左脚を抱えて腰を振る。
「そんな・・・やぁっ! レ、レフェリーまでこんなことに加わるなんてあんまりです、あぅぅっ!」
「ただのマッサージじゃないか。そんなに怒ることはないだろ?」
「こんなのマッサージじゃないです! やめてぇっ!」
 身を捩り、必死に逃れようと暴れる咲夜だったが、レフェリーの手がブラに掛かると表情が変わる。
「まさか、そんな・・・そこまではしないですよね?」
「そのまさか、だよ」
 レフェリーはブラを掴み、思い切りずらす。その途端弾けるように乳房が解放され、観客から大きな歓声が起きる。
「いやぁぁぁっ!」
 衆人環視の前で乳首まで晒された咲夜は悲鳴をあげる。先程以上に暴れるが男三人に押さえつけられては逃れることもできず、乳房を揺らすだけで終わってしまう。
「綺麗な色だな。彼氏に触って貰ったりはしてないのか?」
 乳首がレフェリーに摘まれ、弄られる。唇を噛みしめ声を我慢する咲夜だったが、乳首、乳房、秘部、太ももへの刺激が強過ぎ、喘ぎ声が漏れる。
「あ、はっ、やぁぁっ!」
「いい声で鳴いてくれるなぁ、生徒会長さん。そろそろ気持ち良くなって来たんじゃないか?」
「そ、そんなことありません!」
 首を振り、必死に否定する咲夜だったが、強過ぎる責めが咲夜の快感を駆り立てていき、ついに乳首が立ち上がり、硬度を増して行く。
「綺麗な乳首は気持ち良さそうだぞ? 生徒会長ともあろう者が、嘘はいけないなぁ。罰として、乳首を何人に触られたか言うまでこうやって弄ってやる」
「そ、そんな、私、こんなことされるの初めてで・・・」
「なんだ、あっさり白状するんだな。じゃあ、彼氏はいるのか?」
「じょ、女子高で彼氏なんかできません!」
 正確に言えば、彼氏はいないが憧れの男性ならいる。しかし、そんなことは言えない。乳首と秘部への刺激にも必死に耐える。
「じゃあ好きな男くらいいるだろ? ほれ、言えよ、言えって!」
「きゃぅぅぅっ!」
 乳首が潰され、痛みが走る。
「ほ、ほんとにいないんです、いないからやめてください!」
「そうか、生徒会長さんは奥手なんだな。じゃあ・・・今日はたっぷり男に慣れて貰おうか」
 顔を覗き込んでくるレフェリーの表情に、咲夜は恐怖を感じた。女を嬲り慣れた男が、獲物を前にして本性を現したのだ。乳房、乳首、秘部、太ももが男達の手や舌で汚されていく。
「もう、いや・・・」
 涙が零れ、頬を伝って落ちていく。
「なんだ泣いてるのか。嬉し泣きか? それじゃもうちょっと頑張らなきゃならんな」
「違います、こんなこともうやめて欲しくて・・・くふぅっ!」
「くくっ、それじゃ、ギブアップするか? 父親の入院費が必要なんだろ?」
 その一言が、頭の中で爆発した。
(そうだ、ここに来たのは父さんのためじゃない・・・男に体を触られたからって、泣いてちゃだめよ。勝って、父さんの入院費を、ううん、手術代も稼いで帰るの!)
 でも、どうすればこの状況から逃げられるのだろうか。体に与えられる刺激を意識的に無視し、必死に考える。
「レ、レフェリー・・・」
「ん、なんだ? ギブアップするのか?」
「違います、脚が、痺れてきたんです・・・」
 わざと切なそうに見える表情でレフェリーに訴える。
「ああ、チャベスの奴にずっと乗っかられてたらそうなるかもなぁ。チャベス、一回退け、俺と交代だ」
 レフェリーの指示通りチャベスが咲夜から離れると、咲夜は自由になった右足で小男を蹴り飛ばし、脚をロープに絡めてレフェリーの下から無理やり手を抜く。そのまま転がって距離を取り、素早く立ち上がってブラを直す。固く立ち上がった乳首がブラに押し込められたことで不平を洩らすが、唇を噛むことでそれを耐える。
(考えるのよ、格闘技じゃ敵わなくても、なにか別の手段がある筈。ようするに一点に力を集中させればいいんだから・・・)
「ちっ、巧く逃げられたか。チャベス、もう一回捕まえろ。お前もまだ触り足りないだろ?」
 咆哮することで返事に変え、チャベスが一歩踏み込んでくる。反射的に下がろうとした体に喝を入れ、逆に前に出る。
(私にできること、それは・・・!)
 咲夜は両手を組ませ、テニスのフォアハンドのように腕を振ってチャベスの顎をカチ上げる。即座にその場でジャンプし、バレーボールのアタックのように腕を振りかぶり、腰の回転を使って手の平をチャベスの顔面へと叩きつける。
「ガブフッ!」
 顎、鼻と打たれたチャベスはさすがに怯む。
「幾ら筋肉に覆われているとはいっても、ここは弱い筈!」
 チャベスの左膝の側面に、サッカーのボレーシュートのような渾身のローキックを叩き込む。苦鳴を上げたチャベスが膝をつくが、追撃に行こうとした咲夜の足にも痛みが走る。
(痛っ・・・でも、ここで決めないと。チャンスはもう来ないかもしれない!)
 咲夜はロープに体を預けて勢いをつけ、左足で踏み切り、飛び膝蹴りをチャベスの顎へと突き刺す。この一撃にチャベスの目が裏返り、ゆっくりと後ろに崩れていく。プロレスでは押さえ込んでスリーカウントを取れば勝ちだと思い出し、咲夜は身を投げ出すようにしてフォールに入る。
「レフェリー、カウントをお願いします!」
「くそっ・・・ワン、・・・ツー、・・・」
 レフェリーはわざととしか思えないスピードの鈍さでカウントを取る。しかしチャベスが動く気配がないのを見ると、諦めたようにリングを叩く。
「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

(勝った・・・勝ったよ、父さん)
 安堵の表情を浮かべた咲夜がチャベスの上から体を退ける。まだ動かないチャベスは担架に乗せられ、リングから退場させられた。その光景を放心したように見ていた咲夜の前にレフェリーが立ち、咲夜を見下ろす。自分の格好に気づいた咲夜は慌てて前を隠す。
「初勝利おめでとう生徒会長さん。ところで、話があるんだが」
「・・・もう試合は終わりました。帰らせていただきます」
 痛めた足を庇いながら立ち上がり、リングを降りかけた咲夜をレフェリーの言葉が追いかけてくる。
「父親が入院してるんだろ? もし後一試合こなせば、ファイトマネーに加えてもっと良い病院に移れるように手配してやる。どうだ?」
 父親のことを言われると、心が揺らぐ。今の勝利で百万円を手に入れることが出来たが、何ヶ月も入院が続くとなると心許ない。それでもためらう咲夜を、レフェリーの一言が後押しする。
「対戦相手は今の小男だ。どうする?」
 先程散々咲夜を邪魔してきたあの小男ならば、片足を痛めていても勝てるのではないか。いや、勝てる筈。咲夜の心の中は、一気に連戦へと傾く。
「それなら・・・そういう条件なら、やります」
 頷く咲夜に、レフェリーは後ろを向き、邪悪な笑みを浮かべる。すぐにマイクを持ち、観客へもう一試合追加されることを説明すると、観客から大きな拍手と歓声が起こる。レフェリーはマイクをリング下の黒服に渡すと小男を呼び、何か指示を与える。
「それでは、ゴング!」

<カーン!>

 ゴングが鳴らされ、咲夜にとっては二試合目が始まる。咲夜にとって不本意だったのは、衣装が交換されなかったことだ。前を隠さないとブラが見えるし、汗のために衣装や下着が肌に張りついて気持ち悪い。加えてインターバルを置いたせいか、右足の痛みが酷くなってきた。
(長引くとまずいかも。さっさと捕まえて倒さなきゃ)
 そう考えて前に出る咲夜だったが、小男は咲夜の手が届きそうになるとさっと距離を取る。咲夜も足の痛みについて行けず、リング上はまるで咲夜と小男の鬼ごっこのような形になる。これには観客からブーイングが鳴らされる。
「んもう、逃げ回ったら勝負にならないじゃない!」
 苛立った咲夜が無造作に手を伸ばすと、その手を掻い潜った小男がミニスカートをずり上げる。
「!」
 頬を染め、咲夜は素早くスカートを元に戻す。すると後ろに回りこんだ小男からヒップを掴まれる。
「や、やめて!」
 小男の手を振り払おうとした途端左足に抱きつかれ、痛めた右足では体重を支えられずにリングに仰向けに倒れこむ。小男は咲夜のお腹に座り、ブラの上からバストを揉み回す。
「いい加減にしてっ!」
 怒った咲夜が小男を突き飛ばそうとした瞬間、両手がレフェリーの手に押さえられる。
「おっと、大丈夫かい生徒会長さん? 今背中打ったんじゃないか? ちょっと調べてやるよ」
 そう言うとレフェリーは小男に指示を出して咲夜の秘部を責めさせ、自分は咲夜の両手を太ももとふくらはぎの間に挟みなおし、咲夜のバストをゆっくりと揉む。小男は秘部をつついていたかと思うと、下着の上から秘裂に沿って指を動かす。
「背中も打ってないですし、む、胸は関係ないじゃないですか! 放してください、あ、そんなところ、だめぇっ!」
 咲夜はバストと秘部を同時に責められ、身を捩る。
「うーん、やっぱりブラ越しだと良くわからんなぁ。直に調べてみないとな」
「え・・・直に、って、きゃぁぁぁっ!」
 レフェリーはブラをずらし、直接咲夜の乳房を揉みしだく。
「やっぱり、生の感触は堪らん。お、乳首が硬くなってきたな。生徒会長さんよ、乳首が触って欲しいと言ってるが、どうする?」
 咲夜はレフェリーの指摘に顔を赤らめるが、首を強く振って拒絶する。
「そ、それはさっきから厭らしいことばかりするから・・・あぅっ、触って欲しいなんて言ってません!」
「そうかい、それなら触って欲しいと言うまで責め続けてやるよ。少しは素直になりな」
 乳房を、秘部を弄られ、咲夜は洩れそうになる声を必死で堪える。
(やっぱり、まともに試合をさせる気なんてなかったんだ・・・なんで私、やめますってはっきり言わなかったんだろう。こんな、こんな厭らしいことまたされるなんて、考えてなかった・・・父さん・・・)
 心は弄られることに嫌悪していても、体は心を裏切った。乳首が立っただけでなく、小男が弄り続ける秘部から水音がし出したのだ。
「んん? 何だかぬちゃぬちゃいう音が聞こえるな。生徒会長さんの股間から聞こえるようだが・・・なんだろうな?」
 レフェリーは乳房を揉み続けながら、にやにやと話しかけてくる。咲夜が顔を背けてもまだ話しかける。
「もしかして、お漏らしか?」
「ち、違います! そんなわけ・・・あくぅっ!」
「くくっ、それなら何の音だろうな。俺にはわからないから、教えてくれないか?」
(嘘だ!)
 その表情から、音の正体を知っていながら咲夜を嬲っているのがわかる。
「あ、汗です・・・」
「汗? 汗か。汗なら拭き取らないいけないなぁ。おい、もっと強く擦って生徒会長さんの汗を下着に吸い取らせてやれ。何、礼はいらんよ」
「やだっ、そんなこと・・・いやぁっ!」
 小男はレフェリーの指示通り、秘部への責めを強くする。秘裂全体に小さな手の平を当て、揉み込むように刺激してくる。
「あっ、くふっ、ううっ、うぁぁん!」
 咲夜はなんとかこの責めから逃れようと試みるが、体力が残り少ないことと右足の痛みで脱出できない。普段の咲夜なら小男が足に乗っていても持ち上げることが出来ただろうが、それも叶わない。
 咲夜がもがく間も乳房と秘部へ強い刺激を与えられ、乳首はますます硬く立ち上がっていくが、レフェリーはまるで触れようともしない。
「はぁ、はぁ、ち、乳首が・・・」
「んん? 乳首がどうかしたか?」
 レフェリーの指摘に、自分が無意識の内に恥ずかしいことを言いかけていたことに気づく。
「な、なんでもありません・・・あふぅっ!」
「なんでもないことはないだろうが。はっきり言えよ、『乳首を弄ってください』ってな。そうすればしっかりと気持ちよくしてやるよ」
「そんな・・・」
(言えない・・・そんな恥ずかしいこと言えるわけない!)
 しかし咲夜の思いとは裏腹に、充血した乳首は痛みすら伴って咲夜に不満を洩らす。
「くぅ、んん・・・くふぅっ!」
「どうした生徒会長さん、随分切なそうな吐息が洩れてるぜ。乳首がこんなに立ち上がってるんだ、正直になりなよ」
 レフェリーは乳房を揉みながら、乳首に息を吹きかける。たったそれだけの刺激が咲夜の快感を掘り起こす。それでも自分から淫らな要求をするよりはと、首を振って拒絶の意思を示す。
「我慢強いな・・・」
 レフェリーは呆れたように言い、指で軽く乳首を弾く。
「あくふぅぅぅっ!」
 しこりきった乳首を弾かれると、痺れるような快感が脳へと届く。その快感は秘部からもたらされる刺激ともまた違い、相乗効果で咲夜を高ぶらせる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
「くくっ、感じてもらえたみたいだな。どうだ、素直になれば何度でも乳首を弄ってやるぞ?」
 乳房を寄せて離すということを繰り返しながら、レフェリーが咲夜の顔を覗き込む。躊躇する咲夜だったが、小男が急かすように秘部を強く押さえてくる。
「うぅぅっ・・・」
 それでも、咲夜は首を振る。自分から求めるようなことは絶対にしたくない。
「ここまで我慢強いとはな。おい、生徒会長さんのあそこを舐め回してやれ。指はお気に召さないらしい」
 レフェリーの指示に頷き、小男が体重を少しずらした瞬間、咲夜は左足を跳ね上げ、小男の金的を打つ。
「ぷぎゃっ!」
 これには堪らず、小男は咲夜の上から転がり落ち、股間を押さえて蹲る。咲夜の乳房にのめり込んでいたレフェリーは何が起こったかわからず、突然のことに動揺してつい両脚の力を抜いてしまい、咲夜に逃げられる。
(今しかない、今やるしかない!)
 咲夜は立ち上がると痛みに呻く小男を無理やりコーナーに寄り掛からせる。
「・・・てぇいっ!」
 気合と共に、前蹴りを小男の腹部に叩き込む。小男は声もなくダウンし、体を痙攣させる。咲夜はそのまま小男の上に被さり、フォールする。
「レフェリー、カウントを、カウントを取ってください!」
 咲夜の必死の形相に気圧され、レフェリーはゆっくりとながらカウントを取る。
「・・・ワン、・・・ツー、・・・」
 それでも、カウントは確実に進んでいく。
「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

(勝った・・・父さん、勝ったよ! これで元気になってくれるよね)
 咲夜はリングに座り込み、人目も憚らずに涙した。自分がどんな格好をしているかも忘れたままで。


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