【第三十六話 森下恋:柔道 & 笹塚水華:ボクシング】

 <地下闘艶場>で、二度目のタッグマッチが行われることとなった。白羽の矢が立てられた二人には、出場を断れない理由があった。

 一人目は「森下恋」。23歳。身長167cm、B90(Eカップ)・W65・H92。普段は黒ぶち眼鏡をしており、肩まで届く髪をひっつめにし、主にトレーナーにパンツルックという色気のない格好で過ごすことが多いが、眼鏡を外した素顔はモデル並みで、そのプロポーションは抜群。
 以前<地下闘艶場>でレフェリーを含めた三人掛かりで嬲られ、愛用のカメラでその姿を撮影されるという屈辱を味わった。今回のタッグマッチで勝利すればネガと写真を返すことを条件に出され、リベンジに燃える恋は一も二もなく承諾した。

 二人目は「笹塚水華(みか)」。23歳。身長158cm、B85(Dカップ)・W58・H87。今年から小学校で教鞭をとっている新人教師。肩までの長さの黒髪と優しげな眼差しを持つ楚々とした風貌ながら明るい性格で、子供たちだけでなく両親(特に父親)にも人気が高い。スーツ姿に隠された肢体は魅力的で、形の良いバストも然ることながら股下81cmという美脚の持ち主。
 隠し撮りされたセミヌード写真を材料に<地下闘艶場>に参加させられ、嬲られ尽くした上に敗北し、ネガと写真を返してもらうことはできなかった。今回も写真をネタにタッグマッチへの出場を打診され、断ることもできずに参加を受け入れた。


 二人に用意された衣装はミニのワンピースだった。恋には黒、水華にはピンクが渡される。一見すると普通のワンピースだったが、身に着けてみるとただのワンピースではなかった。生地の目が粗く、下着が透けてしまっている。
「また、こんな衣装用意して・・・!」
 恋の怒りに震える声が控え室に響く。前回はレオタードと柔道着の上だけという衣装だったが、今回の透けワンピースは更に酷い。眼鏡を外した顔に赤みが差すのが自分でも判る。
「私、今回こんなものを用意してきたんです。森下さんもどうぞ」
 水華は前回ミニスカート姿で闘わされた教訓を生かし、あるものを用意していた。
「あら、ありがとう! これで少しはマシね」
 二人は微笑み合うと、ガウンを纏って入場の合図を待った。

 花道をリングへと向かう恋と水華に、前回と同じく、否、前回以上に観客席から卑猥な言葉が飛んでくる。恋は怒りに、水華は羞恥に顔を赤らめ、リングへと上がった。

「赤コーナー、『ブリザード』、コンテ・大倉! &『ヘタレキング』、早矢仕杜丸(はやしとまる)!」
 二人の対戦相手は、恋の因縁の相手だった。前回二対一のハンディマッチで散々嬲られたその記憶が蘇り、恋の頬が紅潮する。
「青コーナー、『カメラウーマン』、森下恋! &『キューティ・ティーチャー』、笹塚水華!」
 コールと共に恋と水華がガウンを脱ぐ。二人ともワンピースだけでなく、その下に黒いスパッツを履いていた。これには場内からブーイングが起きる。
「おい、衣装の他は下着以外身に着けるなと言ってあるだろう!」
 レフェリーの言葉に恋が噛みつく。
「こんなスケスケの衣装用意しといて何言ってんのよ! これくらい別に良いでしょう!」
 恋の真っ当な抗議も、レフェリーには通じなかった。
「駄目だな。もしそのまま試合したいって言うなら、勝っても写真しか返せないぞ。それでもいいか?」
「いいわけないでしょう!?」
 尚も言い募ろうとする恋を押さえ、水華が首を振る。
「森下さん、これ以上言っても無駄です。私たちに弱みがある以上、向こうの条件を聞くしかありません」
「確かに、それはそうなんだけど・・・」
 恋はぶつぶつと言いながらも、最後は諦める。写真とネガが向こうの手にある以上、こちらの言い分が通ることはないだろう。
「わかったか? ならそいつを脱ぎな」
 恋と水華はスパッツに手をかけるが、男達の視線が気になってもぞもぞとしか脱げない。美女二人が恥らいながらスパッツを脱ぐ姿に、会場も試合前から興奮が高まる。
 二人がスパッツを脱ぎ終わるとレフェリーがそれを奪い取る。わざとらしく匂いを嗅いで見せた後、リング下の黒服に渡した。
「こんの変態レフェリー・・・」
 恋は怒りに顔を赤くし、水華は羞恥に頬を赤らめた。

 レフェリーは大倉と早矢仕にざっと簡単なボディチェックを行うと、恋と水華に向かい合う。
「もうわかってるな? ボディチェックだ」
 レフェリーが恋と水華を眺め、にやけた笑みを浮かべる。
「なにがボディチェックよ! ただのセクハラじゃないの!」
 恋の噛みつくような抗議に、レフェリーは肩を竦める。
「恐い物言いだな・・・これじゃボディチェックができないな」
「森下さん!」
 水華の呼び掛けも遅く、大倉と早矢仕が恋を両脇から捕らえる。
「また貴方達! 放しなさいよっ!」
「恋ちゃん久しぶり! 今日も頑張って感じさせてあげるからね!」
 恋の怒りをあっけらかんと聞き流し、恋の左手と左のバストを早矢仕が掴む。大倉は右手と右のバストを掴んでいる。男二人は恋を捕らえたまま、両方のバストを弄り始めた。

「笹塚先生はボディチェックをちゃんと受けてくれるよな?」
 レフェリーは水華の肢体をじろじろと見ながら、わざと疑問型で聞いてくる。水華が断ることなどできないと見越しての物言いに、水華の表情が強張る。それでも写真という弱みを握られている以上、水華に選択肢はなかった。
「はい・・・」
 項垂れるように頷いた水華のバストに、レフェリーの両手が伸びる。
「さすが笹塚先生だ、森下選手にもこんな素直さがあればなぁ」
 そのまま水華のバストを揉みながら、ちらりと恋を見る。恋はもがいているものの、男二人の力には敵わず、いいように体を弄られている。
「森下さん・・・」
「仲間の心配とは、さすが笹塚先生、お優しいことで」
 茶化すような言葉を吐きながら、レフェリーは水華のバストを揉み続ける。右手でバストを揉みながら左手を股間に伸ばし、秘部のスリットに沿って指を前後させる。
「いやっ、そこは!」
「うん? ボディチェックを拒むのか? それならこの時点で反則負け決定だなぁ」
 ついレフェリーの胸に手を置いた水華に、レフェリーの容赦ない言葉が突き刺さる。水華は唇を噛むと、手を震わせながら元の位置に降ろす。
「そうそう、ちゃんとボディチェックは受けなきゃな」
 レフェリーは厭らしい笑みを浮かべると、水華の身体の感触を楽しんだ。

 水華がレフェリーからボディチェックと言う名のセクハラを受けている間、恋は大倉と早矢仕からバストを揉まれ続けていた。
「ま、また二人掛かりで! この卑怯者!」
「だって、こうでもしないと恋ちゃん暴れるじゃない」
「この前だって、最初は散々嫌がってたくせに、最後はあんなに乱れてたじゃないか。俺らの前で取り繕うのはよせよ」
 恋がいかに罵ろうと、男二人は笑って相手にしない。屈辱に顔を赤くしながらも二人から逃げることができず、恋のバストは男達の手の中で形を変えていった。

「さーて、次は森下選手のボディチェックを行うか。笹塚先生、ボディチェックが終わるまでは大人しくしとけよ、反則負けになりたくなければな」
 散々水華の身体を弄んだレフェリーが乳首の辺りをつついた後水華から離れ、恋へと向かう。
 レフェリーの動きに合わせ、早矢仕が恋を羽交い絞めにし、大倉は恋から離れる。水華は恋を助けたいとは思ったが、反則負けになるのが怖く、胸元を隠したままその場から動けなかった。
(ごめんなさい森下さん、反則負けになったらなにもかもお終いだから・・・)
 その水華の後ろから、何者かが襲い掛かった。
「あっ、いやっ!」
「笹塚さん!」
 大倉だった。ボディチェックを終えた筈の水華に後ろから抱きつき、バストを揉む。
「この卑怯者っ! 私と笹塚さんを放しなさいよっ!」
「相変わらず強気だなぁ、森下選手。でもボディチェックを受けない限り、試合を始めることができないんだよ。素直に応じなかった自分を恨みな」
 レフェリーは早矢仕に羽交い絞めにされた恋へと近づき、Eカップのバストを掴む。
「相変わらず生意気なおっぱいだな。しかも今日はいい下着を着けてるじゃないか、少しは男の視線を意識するようになったか?」
 ワンピースから透けて見えるブラを見て、レフェリーがにやける。
「あ、あんたなんかに見せるためのものじゃないわよ!」
「そうかそうか、わかったよ」
 恋の言葉を聞き流し、レフェリーは恋のバストを揉み続ける。

 一方、水華は大倉に捕まったままだった。
「こんなエロい体した先生がいるのかよ。俺も授業を受けたいもんだ」
 大倉は左手でバストを揉みつつ、右手でヒップや太ももを撫で回す。
「いやっ、は、放してください!」
 水華は暴れるが、大倉の巧みな拘束に逃げることができない。
「おいおい、そんなに暴れていいのか? レフェリーから大人しくしてろって言われたんだろ?」
「あ、貴方はレフェリーじゃありません! 放してください!」
 もがく水華だったが、レフェリーの一言で動きが止まる。
「おやおや笹塚先生、俺は森下選手のボディチェックが終わるまで大人しくしとけって言ったのになぁ。そんなに写真を返して欲しくないのか?」
 写真のことを出されただけで、水華は逃げることを封じられた。水華が抵抗を諦めたと見て、大倉は股間を水華のヒップに擦りつけながら両手でバストを鷲掴みにする。
「んんっ・・・」
「くくっ、そうやって大人しくしとけばいいんだよ。なに、ボディチェックが終わるまでの辛抱だ。もう少しだけ我慢してな」
 大倉の科白も、水華にとってはなんの慰めにもならない。
「それに・・・試合になれば、もっと激しく責めてやるからな」
 耳元で囁かれた言葉に、水華は身を硬くする。試合前からこんなに身体を好き勝手にされているのに、試合ではもっと恥ずかしいことをされるのか・・・! 前回の試合のときの恐怖と、それと同じくらいの怒りが浮かんでくる。
(このまま嬲られるなんて嫌・・・絶対、今回は絶対に勝つんだから!)

「レ、レフェリー、そろそろ変わってくださいよ」
 恋のバストを揉み続けるレフェリーに、早矢仕は我慢できないのかもぞもぞとしだす。
「ちょっと、お尻に変なもの当てないでよ!」
 早矢仕は自分の大きくなったモノを恋のヒップに当て、上下に動かしていた。
「お願いしますよレフェリー、こんな生殺しみたいな状態、耐えられないっす」
「駄目だ、お前と変わった瞬間に森下選手に逃げられる」
「そんなぁ・・・」
 恋を羽交い絞めにしたまま、早矢仕は大きくため息をつく。
「あ、貴方達、覚えてなさいよ・・・!」
 バストを揉まれながらも、恋は闘争心を失わない。
「恐いことを言うなぁ森下選手。それじゃぁ、試合中に後悔しないように今の内に触っとくか」
 レフェリーは左手でバストを揉んだまま、右手で秘部を弄る。
「くぅっ」
「いい声で鳴くなぁ恋ちゃん。レフェリー、俺もう堪んないっすよ。早く試合始めて下さいよ!」
 唾を飛ばすような早矢仕の剣幕に、レフェリーも顔を顰める。
「ったく、早漏め。わかったよ」
 レフェリーは渋々恋から離れ、早矢仕と大倉、恋と水華にもコーナーに戻るように促し、試合開始のゴングを要請する。
(このドスケベ共・・・後で吠え面かかせてやるんだから!)
 恋は怒りに目を燃やしながら、それでも素直にコーナーへと下がった。

<カーン!>

 リングで向かい合うのは早矢仕と、意外にも水華だった。
「笹塚さん、危なくなったらすぐに交代するのよ!」
「ええ、そのときはお願いします!」
 前回の試合の後から、水華は本格的にボクシングの練習を始めた。再びこの淫猥なリングに上げられるのは目に見えていたからだ。ミット打ちや縄跳び、ロードワークといった基礎練習だけでなく、今までしたことがなかったスパーリングまでこなし、水華の実力は少しずつではあるが確実に伸びていった。
(この前の私とは違うんだから!)
 オープンフィンガーグローブを握り込み、無造作に前に出てきた早矢仕に右ストレートを放つ。
「えいっ!」
「ぶはっ!?」
 水華のストレートに、早矢仕が派手に吹っ飛んだ。この光景に一番驚いたのは水華自身だった。まさか初発が当たるとも思わず、しかもダウンまで取ってしまった。
「・・・なにやってんだお前は」
 早矢仕の倒されっぷりに、仲間である大倉も呆れてしまう。
「だってタランチュラさんが『水華先生は弱いからお前でも勝てる』、って言ってたから」
「それでただ突っ込んで行ったのか。油断するなって試合前にあれ程言っただろ! このヘタレ!」
 言い争う早矢仕と大倉に、水華も戸惑う。
(仲間割れ? 今行った方がいいのかしら)
 躊躇している間に早矢仕が立ち上がり、打たれた頬を擦る。
「あいたー・・・ひどいよ水華先生、顔は男の命なんだぜ?」
「それを言うなら『顔は女の命』ですし、ひどいのは貴方がたのほうでしょう!?」
 早矢仕の物言いに、水華も黙ってはいられなかった。
「いいよ、わかってもらえないなら実力行使だー!」
 早矢仕は軽く跳ねた後、タックルで水華に迫る。しかし水華のアッパーで迎撃され、リングを転がる。
「あぅあぅあぅ・・・」
 顎を押さえながらほうほうの態でコーナーまで戻り、大倉と交代する。
「ったく、あれくらいのパンチを食らいやがって。ドヘタレめ」
「うへぇ、面目ない」
 大倉の言葉に、早矢仕はコーナーポストにもたれて頭を掻く。
「笹塚さん、一旦交代しましょ!」
 水華が少し興奮しているように感じた恋が交代を申し出る。少し迷っていた水華だったが、素直に恋と交代する。水華と交代した恋は大倉と向かい合い、その顔を睨みつける。
「あれから少しは強くなったのか? それとも、この間のことが忘れられなくて戻ってきたのか?」
 大倉の挑発に、恋の顔が怒りに染まる。
「その減らず口も今日までよ!」
 突っ込んできた恋をエクスプロイダーで後方に投げようとした大倉だったが、なんと恋が大外刈りで切り返す。
「ぐふっ!」
 鈍い音と共に大倉の体がリングに叩きつけられる。大外刈りを決めた恋は、そのまま大倉を押さえ込んだ。しかし早矢仕がこっそり死角から忍び寄り、恋の両脚を掴んで上下に開く。
「ほーら恋ちゃん、パンツ丸見えー!」
「ちょっと、何するの!」
 突然のことに恋が早矢仕を睨むと、気が逸れた瞬間、大倉が下からスリーパーホールドで恋の首を絞める。
「ううっ・・・」
「油断したな。このまま落としてもいいが、それじゃこっちがつまらんからな」
 大倉は右手で首を絞めたまま、左手でバストを掴む。
「あ、じゃあ俺はこっちを・・・」
 早矢仕は恋の脚を抱えたまましゃがむと、恋の秘部に指を這わす。

「森下さん!」
 恋が早矢仕と大倉に嬲られる姿に思わず助けに行こうとした水華だったが、リングに入った途端レフェリーから羽交い絞めにされる。
「駄目だぞ、笹塚先生。今は森下選手が闘う権利を持ってるんだからな」
「だって、あっちは二人掛かりじゃないですか! いやっ、放してください!」
 レフェリーはただ水華を押さえるだけではなく、後ろからバストを掴んで円を描くように揉む。
「ううっ、わかりました、戻りますから手を放してください!」
 もがく水華だったが、レフェリーは右手を下ろし、秘部を撫で回す。
「ひっ・・・!」
「笹塚先生、ルールを破って乱入しようとしたんだ。少しお仕置きさせて貰うぞ」
 レフェリーの遠慮の無いセクハラに、水華の悲鳴がリングに響く。
「いやっ、放して、放してぇっ!」

 一方、恋はその間にも早矢仕と大倉に嬲られ続けていた。
「あ、貴方達、絶対に、許さないんだから・・・あぅっ!」
「怖いなぁ恋ちゃん、俺怖いから今の内に沢山触っとくよ!」
「相変わらず気が強いな。でもな、気が強い女ほど嬲り甲斐があるってもんだ」
 恋は大倉にバストを、早矢仕に秘部を弄られ、身を捩る。
(こいつらにここまで好き勝手されて・・・絶対に負けないんだから!)
 恋は首を絞められる苦しさを堪え、早矢仕の右手を捕まえ、太ももで首を締め上げる三角締めに極める。
「く、く、苦しい・・・」
 苦しさに早矢仕がバタつく。そこへようやくレフェリーから逃れた水華が走り寄り、横殴りの一撃を与える。
「ぶへっ!」
「ちっ!」
 形勢不利だと判断した大倉は恋を突き放し、素早く距離を取る。
「笹塚さん、早く戻って。またレフェリーがなにか言ってくるかも」
「はい」
 頷いた水華は一度リングから降り、場外を通ってコーナーに戻る。
「貴方達・・・なんでまともに闘おうとしないのよ!」
 よろよろとコーナーへ這っていく早矢仕を目の端で確認しながら、恋は大倉を睨みつける。
「ここの客が、まともな闘いを望んでいると思ってるのか? 客が見たいのはな、お前らが喘ぐ姿なんだよ」
「私が聞いてるのは、客のことじゃないの! 貴方達がまともに闘おうとしない理由を聞いてるのよ!」
 苛立ちも露わに問い詰める恋に、大倉は唇の端を歪めて答える。
「俺も早矢仕もレスラーだ。レスラーってのは、客を沸かせるのが仕事なんだよ。知らなかったのか? つまり、客が望んでいる闘い方をしてるんだよ!」
「もういいわ、貴方達男の理論なんて聞きたくない!」
 まともな答えが返ってくるとは思っていなかったが、それでも腹が立った。組手争いから大外刈りを狙ったが、大倉にがっちりと受け止められる。
「見え見えなんだよ! そらっ!」
 逆に大倉のブリザードに浮かされるが、右肘を大倉の後頭部に当て、リングに叩きつけられると同時に顔面をリングに打ち付けてやる。
「あぐっ!」
「ぐぉっ!」
 恋と大倉は両者共にダメージを受け、リングを転がってそれぞれのパートナーにタッチする。
「ごめんね笹塚さん、ちょっと休ませて・・・」
「まかせてください、あの人相手ならなんとかなります!」
 水華は頷き、早矢仕に向かい合う。
「くそっ・・・早矢仕、油断するなよ」
「任せてくださいよ、俺に秘策があります!」
 自信ありげな表情で大倉に親指を立てて見せると、早矢仕はリングに仰向けで寝転がる。
「えっ・・・」
 この早矢仕の取った行動に、水華が戸惑う。
「ほら、水華先生、おいでよ」
 リングに仰向けになり、自分に足を向けた体勢になった早矢仕に、水華は手が出せない。これが異種格闘技の走りである「猪木 対 アリ」戦で、ボクサーに対して有効な体勢であるのは証明されている。
「来ないなら、こっちから行くよ〜」
 早矢仕は器用にも仰向けのままシャカシャカと距離を詰め、ローキックを打つ。
「いたっ!」
 水華が痛みに顔を顰める。今度は逆の脚を蹴られ、動きが止まる。それを見た早矢仕は立ち上がり、素早く距離を詰める。
「捕まえたー!」
 早矢仕は胴タックルで水華を抱え込む。
「あ・・・こうしてるとおっぱいが当たって気持ちいい・・・」
「放してっ!」
 水華が早矢仕の後頭部を叩こうとすると、早矢仕はするりと水華のバックを取る。
「ほーら、水華先生のパンツ大公開!」
 そのまま太ももを抱え、脚を大きく開く。
「やだっ、やめてください!」
 開脚の羞恥に水華が暴れる。
「それじゃ水華先生、こんなのはどう?」
 早矢仕は立てた片膝の上に水華の股間が当たるように位置取りし、腰を持ってぐりぐりと刺激する。
「ああっ、やめて、そんなの・・・だめぇっ!」
「笹塚さん!」
 思わずコーナーから飛び出した恋を、レフェリーが止める。
「森下選手、乱入は駄目だぞ」
「あっちは何度も乱入してるでしょ!? なんであっちは反則取らないのよ!」
 レフェリーに喰って掛かる恋だったが、死角から忍び寄った大倉にアームホイップでリングに叩きつけられる。
「いったぁ・・・」
「レフェリーに八つ当たりはよくないぜ。どれ、セクハラツープラトンを試してみるか」
 大倉は恋の両足を持って引きずり、水華の傍まで移動する。
「早矢仕、わかってるな?」
「アイアイサー!」
 二人は恋と水華の両足を開き、それぞれの股間が当たるように位置取りする。
「そらよっ!」「よいしょぉ!」
 掛け声と共に恋と水華の足を掴み、引っ張る。恋と水華にとってはそれぞれ両足を持たれ、引っ張られることで互いの秘部が刺激される。
「くぅぅっ・・・」「や、やめてぇっ!」
 美女二人が喘ぐ姿に、観客席から興奮の叫びが起こる。
「どうだ、お互いの気持ちいいところを擦りつけられるのは? 俺達に触られるよりいいだろ?」
「恋ちゃんの顔、はっきり見えるよ! 赤くなってるけど、感じてるのかなぁ?」
 男達の言葉と共に秘部を責められ、恋と水華は呻きとも喘ぎとも取れる声を洩らす。
「そら、こういうのはどうだ?」
 大倉が小刻みに恋の足を引っ張ることで、振動が二人の秘部を襲う。
「あぁぁっ!」「いやっ、やだぁっ!」
 悲鳴を上げる二人に、もっと声を上げさせようと大倉と早矢仕が更に足を引っ張る。
(絶対に、ギブアップしないんだから!)
 秘部からの刺激を堪え、恋が早矢仕の足に縋りつくようにして引き倒す。
「あ・・・ひぶっ!」
 油断していた早矢仕はリングに後頭部を打ちつけ、痛みに頭を押さえて足をばたつかせる。水華も必死に大倉の足にしがみつき、自由を奪う。
「くっ、放せ!」
 水華から逃れようとした大倉だったが、立ち上がった恋に右手首を持たれ、腕がらみと大外刈りを同時に掛けるような払い巻き込み投げで、後頭部からリングに叩きつけられる。
「ぬ・・・ぐお・・・」
「これで終わったと思わないでよ!」
 恋は大倉の髪を掴んで無理やり立たせ、裏投げでリング下に投げ落とす。
「後は、こいつだけ!」
 恋は早矢仕を立たせ、後ろから腰を抱える。
「今よ笹塚さん!」
「えいっ!」
 恋が捕らえた早矢仕の顔面に、走って勢いをつけた水華の右ストレートがめり込む。恋はそのまま後方へ投げる裏投げで、早矢仕の頭をリングに突き刺す。
「いってぇ・・・酷いよ、恋ちゃん・・・」
 早矢仕が半泣きの表情で恋を見上げるが、恋の目は冷たかった。
「そう・・・じゃあ、もっと痛くしてあげる」
 恋の素早い腕ひしぎ十字固めに、早矢仕が悲鳴を上げる。
「いてててて! 恋ちゃん痛いって! 右腕折れちゃう!」
「痛くしてるんだから当然でしょ!? さ、どうすれば痛いのが終わるのかしら?」
 一瞬黙り込んだ早矢仕だったが、恋が右腕を更に引き絞ると絶叫を放つ。
「いてーーーっ! ギブギブ、ギブアップするからやめて恋ちゃん!」

<カンカンカン!>

 早矢仕のギブアップ宣言に、レフェリーが憮然とした表情になっている。
「このドヘタレ・・・折角観客が盛り上がったところでギブアップなんぞしやがって。腕の一本くらい折れてもいいだろうが」
「酷いっすよレフェリー。右腕が折れちゃったら俺どうやって飯食えばいいですか」
「左手で食え」
「俺右利きなんですけど・・・」
「知るか!」
 言い合いを続けるレフェリーと早矢仕を横目に、恋が水華に囁く。
「今のうちよ笹塚さん。さっさと控え室に戻って、写真とネガを取り返しましょ」
「そうですね。この格好も恥ずかしいですし」
 リングを降りようとした恋と水華だったが、背後から伸びた手に恋が宙に浮かされ、リングに叩きつけられる。
「森下さん!」
「水華先生、俺も観客も、嬲り足りないんだよ。もうちょっと付き合ってくれ」
 大倉だった。いつの間にかリングに戻り、ブリザードで恋を投げたのだった。
「そんな・・・」
 恋を見ると失神しており、早矢仕から圧し掛かられている。
「わ、私たち勝ったじゃないですか。なのにこんな・・・」
 言い募ろうとした水華だったが、レフェリーから羽交い絞めにされてしまう。
「ああ、そっちが勝った以上写真とネガは返すがな、最後にサービスしていってくれよ」
 そのままバストに手が伸び、乱暴に揉まれる。
「いやっ、痛いです!」
 引き離そうとした手が、大倉に掴まれる。
「レフェリーの言うとおりだぜ水華先生。恨むなら、男心を刺激する身体に生んだ親を恨みな」
「親に感謝こそすれ恨むなんて・・・いやぁぁぁっ!」
 大倉から秘部を弄られ、水華が悲鳴をあげる。男二人の責めは、これからが本番だった。

「恋ちゃん、痛いことしたんだからお返しさせて貰うね! 大丈夫、痛いお返しじゃないから!」
 早矢仕は目を閉じたままの恋のバストを掴み、捏ね回している。両手でバストを揉んでいたが、それだけでは飽き足らなくなったのか右手を下ろし、スカートを捲って下着越しに秘部を弄る。
「やっぱ恋ちゃんのおっぱい最高! あそこの感触も気持ちよくって・・・やべ、触ってるだけでイキそうだ」
 腰を引いた情けない姿で、それでも早矢仕は恋のバストと秘部を弄るのをやめない。セクハラを続ける早矢仕に、観客から「ヘ・タ・レ!」コールが巻き起こる。
「うわー、嬉しくない声援」
 バカにされながらも恋から離れようとしない早矢仕は、未だ意識を取り戻さない恋の身体を好き勝手に弄り続けた。

 一方、水華はレフェリーと大倉から責められ続けていた。
「もうやめてください・・・もう、やめて・・・」
 弱々しい呟きは、男達に黙殺された。バストは揉みくちゃにされ、秘部は手荒く弄られている。
「はっきり見ないブラもいいが、やっぱり直接見たいよな」
「え・・・いやぁぁっ!」
 大倉の手がワンピースを掴み、胸元を引きちぎる。目の粗いワンピースは簡単に破れ、今までチラチラと見えていた清楚なブラが露わになり、観客席からも歓声が起きる。
「ああ・・・ひどい・・・」
「いいねぇその表情。もっと苛めたくなるぜ」
 大倉は改めてブラの上からバストを揉み、水華から羞恥を引き出していく。
「そんなにいい表情してるのか? 俺も見たいが、後ろからじゃ見えないからなぁ」
 レフェリーは水華の秘部を撫で回しながら、勝手な独り言を洩らす。
「もういや・・・試合は終わったのに、なんでこんな目に・・・」
 男達に嬲られ、涙を目の端に溜めた水華が嘆く。しかし、まだ男達の責めは終わらなかった。
「それじゃ水華先生、おっぱい拝ませて貰おうか」
「え・・・まさか、そんな」
 次に来るであろう光景を想像し、水華が弱々しく首を振る。そんな様子を気にすることもなく、大倉は水華のブラに手を掛ける。
「ほれ、少しずつ上がっていくぞ。おっと、もう少しで乳首が見えそうだ」
 水華の羞恥を煽るように、大倉は徐々に徐々に水華のブラをずらしていく。
「い・・・いや・・・」
「お、ブラが乳首に引っ掛かったな。てことは、乳首が固くなってる証拠だな」
「そんな、違います・・・」
「ま、見ればわかることだ」
「ああ、やめてください、それだけは・・・!」
「乳首見られるのは嫌か? どうするかな・・・」
 大倉は水華の羞恥の表情を楽しむために、ブラをぎりぎりまでずらしてはまた戻すということを繰り返し、水華を嬲った。

「うわー、あっちも楽しそうだなー。そうだ、俺も恋ちゃんのブラ見ちゃおっと!」
 水華を見ていた早矢仕が恋へと視線を戻そうとしたときだった。リングに背中から叩きつけられ、右腕に激痛が走る。
「いててて! なんだなんだ!?」
 驚いた早矢仕を、恋が関節技に捕らえていた。先程早矢仕がギブアップしたときと同様の腕ひしぎ十字固め。
「い、痛いよ恋ちゃん、落ち着いて話し合おうよ、ほら、将来のこととかさ」
「堪忍袋の緒が切れた、って言葉知ってる?」
 恋の静かな口調が、早矢仕の口を封じる。
「私ね、今から貴方の腕を折ろうと思うの」
「う、嘘だよね恋ちゃん? 俺の腕を折るなんてそんなこと・・・」
 早矢仕が言い終える前に、早矢仕の右肘から異音が鳴った。
「ひぎゃぁぁぁっ!」
 早矢仕が右肘を押さえ、リングを転げまわる。
「運が良ければ外れてるだけよ」
 まったく同情していない口調で吐き捨て、恋は水華の救出に向かう。
「あのヘタレ、最後まで役に立たないな」
 早矢仕の悲鳴を聞いた大倉は水華から離れ、恋に向かい合っていた。
「一対一なら負けないわよ」
「そうかい。やってみせろよ!」
 大倉のローキックが恋の左太ももに炸裂する。
「痛いっ!」
 手加減抜きの一撃は、恋の太ももを赤く腫れさせた。
「どうした、俺に勝つんだろ!?」
 大倉はローキックを連打し、恋を近寄らせない。逆に言えば、それだけ恋の投げに脅威を感じていたからこそだった。
「そらっ! そらっ!」
 幾ら連打しているとは言っても、永遠に蹴り続けられるわけではない。僅かに空いた連打の隙間に、恋のタックルで倒される。
「しまっ・・・」
「ふっ!」
 恋は大倉の喉に右腕を乗せ、ぐいぐいと体重を掛ける。
「ぐぉぉ・・・」
 その苦しさに大倉がもがくと、恋は一瞬で腕ひしぎ十字固めに移行していた。
「せいっ!」
「ぐぁぁっ!」
 ぼぐっ、という鈍い音が大倉の右肘から聞こえると、恋は静かに立ち上がった。
「さて、後は貴方一人ね」
 水華のバストに手をやった姿勢のままで固まったレフェリーに、恋が鋭い視線を投げる。
「手を放してください」
「あ? ああ、悪い悪い、笹塚先生。森下選手も、ほら、リングから降りて写真とネガを・・・」
「私ね、堪忍袋の緒が切れたの」
 恋の冷え切った口調で、レフェリーの背に冷たいものが生まれていた。
「も、もう試合も終わったし、レフェリーに手を上げる、ってことはないよな?」
「私たちには手を出しておいて、それはずうずうしいんじゃない?」
 恋がレフェリーに近寄ったと見えたときには、レフェリーはリングに投げつけられていた。
「ぐぁぁっ! いってぇ!」
「まだ終わりじゃないわよ! ほら立って!」
 恋は大外刈りで投げ飛ばしたレフェリーを無理やり立たせ、羽交い絞めにする。
「笹塚さん、きついのを一発いれてあげて! それくらいしても罰は当たらないわ!」
「・・・はい!」
 水華の渾身の右ストレートが、レフェリーの頬を音高く抉る。
「ぐばっ!」
 そのまま恋が裏投げでリングに叩きつけると、レフェリーの意識はもう飛んでいた。
「さて、と。今度こそこれでお仕舞い。笹塚さん、行きましょ」
「はい。森下さん、ありがとうございました」
「なに言ってるの、お互い様よ」
 リング上に痛みに呻く二人と失神した一人を残し、恋と水華は胸元を隠しながら花道を退場していった。二度と参戦しないであろう美女二人に、観客席からは名残惜しげな視線が注がれていた。


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