【第五十話 エキドナ:不明 & ダークフォックス:プロレス】

 <地下闘艶場>での記念すべき五十試合目が開催されることになった。その白羽の矢は、過去に一度タッグマッチを行った二人の美少女に立てられた。

 一人目は「エキドナ」。本名栗原美緒。19歳。身長162cm、B87(Eカップ)・W62・H87。肩までのセミショートと切れ長の目が特徴的だ。その顔立ちは美少女と言っていいが、芸能人ではない。高校生の時にレスリングでインターハイ優勝し、天才少女と呼ばれた。レスリングの才能に加え、その凛とした美貌で一躍アイドルとなり、マスコミにも大きく取り上げられたほど。
 現在は大学生だが、一時期レスリングは引退していた。しかし<地下闘艶場>で二度も敗れてリングの上で嬲られ、三度目はマスクウーマン・エキドナとなって登場、見事仇敵マスク・ド・タランチュラを撃破した。

 二人目は「ダークフォックス」。本名来狐遥。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。高校でプロレス同好会を立ち上げ、他校との交流試合を中心に活動を行っている。リングに上がる時は狐をモチーフにした覆面をつけ、ピュアフォックスと名乗っている。華麗な空中戦を得意とし、その試合を見た者からは絶大な人気を誇るが、男子生徒からは主にそのダイナマイトボディ目当てで支持されている。
 前回のタッグマッチでは栗原美緒共々男達に嬲られ、一時期リングに上がれなくなるほどの精神的ダメージを受けた。しかし復帰戦でニューマスクを被ってダークフォックスへと変身し、マンハッタンブラザーズの二人を同時に撃破。見事に復帰を飾った。


 エキドナとダークフォックスに用意された衣装は、なんとバニーガールだった。エキドナには赤、ダークフォックスには黒。肩も太ももも露出し、首から胸元まで剥き出しで、胸の谷間も露わになっている。
「まったく・・・毎回毎回よくこんな際どいコスチューム用意するわね」
「そうね、美緒・・・じゃなくてエキドナ」
 エキドナの呟きにそう返したのは、漆黒のマスクを被ったダークフォックスだった。
「遥ちゃん・・・普段と口調が違うわよ。メイクまでしちゃってるし」
 エキドナの言葉に、濃い目のルージュを引いたダークフォックスは顔の前で指を振って見せる。
「このマスクを被ってるときの私はダークフォックス。ダークでいいわよエキドナ」
「え、ええ、わかったわ。宜しく、遥ちゃん・・・じゃなくてダーク」
 自分のよく知る少女の変貌振りに、エキドナは少なからず驚きを感じていた。
(おニューのマスクがどうこうって話は聞いてたけど、マスクが変わるだけで人格も変わるものなの?)
 疑問も浮かぶが、目の前のダークフォックスの妖艶さに暫し見とれてしまう。
「? 何か言いたいことでも?」
 ダークフォックスの言葉に慌てて首を振り、ウォーミングアップを始める。体を解しておかないとまたセクハラを受けてしまう。今度はこの少女と一緒に勝利を挙げて見せる。エキドナは心に誓った。

 エキドナとダークフォックスが花道に姿を現した途端、会場中から大歓声が上がる。正体不明の覆面美女と妖艶な覆面美少女に、期待と欲望が混然となった雄叫びが叩きつけられる。

 リング上で二人を待っていたのは、いつものレフェリーと蜘蛛のマスクをつけた両腕の長い男。そして初めて見る黒人の選手だった。髪型をアフロにした黒人選手はスーツを着込んでおり、エキドナとダークフォックスを好色な表情で見つめる。

「赤コーナー、マスク・ド・タランチュラ! & ジョルジュ・マホーニー!」
 マスク・ド・タランチュラは観客に手を振りながら、ジョルジュの耳元に何か囁いている。
「青コーナー、"ダークメイデン"、エキドナ! & ダークフォックス!」
 エキドナとダークフォックスがガウンを脱ぎ捨てると、その下からバニーガールのコスチュームが現れる。その色っぽさに会場中から指笛や歓喜の叫びが起こり、マスク・ド・タランチュラとジョルジュの表情が緩む。盛り上がった胸元とバストが作る谷間、剥き出しの太ももなどが男性の欲情を煽る。
「まったく、いつもいつも厭らしい雰囲気・・・?」
 エキドナの視線の先で、ジョルジュが突然リング中央に歩み出た。自分に注目が集まったと見て取ると、両腕を軽く交差させ、全身の筋肉に力を込める。
「Hunnn!」
 その途端スーツが音高く破れ、岩のような筋肉が姿を現す。漫画ではよくある表現だが、実際に目の前で見ると迫力が違う。筋肉量を見ると、アメリカ系の黒人だろうか。
(このガタイ・・・チャベスよりも上なんじゃないの?)
 ダークフォックスの脳裏に、ピュアフォックスとして闘ったチャベス・マッコイの姿が浮かぶ。チャベスもかなりの筋肉量を誇っていたが、ジョルジュはそれ以上ではないかと思わせるほどの体格だった。
(気をつけなくちゃね。でも、勝つのは私。私とエキドナ)
 ダークフォックスの口に、艶美な微笑が浮かんでいた。

 マスク・ド・タランチュラとジョルジュのボディチェックを済ませたレフェリーが、にやけた表情でエキドナの前に立つ。
「さて、ボディチェックのじか・・・」
 レフェリーが言い終える前にエキドナのハイキックが唸りを上げ、レフェリーのこめかみ寸前でぴたりと止められる。
「よく聞こえなかったんだけど、今何か言おうとした?」
「あ・・・ぐ・・・」
 その迫力に、レフェリーの顔色が蒼白となる。ダークフォックスはマスク・ド・タランチュラとジョルジュを睨みつけ、ボディチェックの手伝いになど来ないように視線で牽制する。レフェリーもボディチェックを諦め、舌打ちしながら試合開始の合図を出す。
「くそっ・・・ゴング!」

<カーン!>

 先発はダークフォックスとジョルジュだった。
「まずは力比べ、ってのはどうですかー?」
 ジョルジュの手四つの誘いに乗ろうとしたダークフォックスだったが、ジョルジュは手四つには行かず、ダークフォックスのバストを掴む。
「オッホホゥ! もっちもちでーす!」
 ジョルジュのごつい手が、ダークフォックスのバストを捏ね回す。
「私にこんなことして・・・お仕置きしなくちゃ、ね?」
 微笑を浮かべたダークフォックスはジョジュの手を弾き、ロープに振る。戻って来たところをフランケンシュタイナーに切って取り、そのまま掌底でジョルジュの顔面を叩き潰す。
「がふっ!」
 ジョルジュの口から苦鳴が洩れるが、レフェリーは苦々しげな表情で止めようとはしない。今回はエキドナから、ダウンした選手への打撃も認めさせられていたからだ。
「こんなものじゃ終わらないわよ? ほらっ!」
 ダークフォックスは妖しい笑みを浮かべ、何発もの掌底をジョルジュの顔面に落とす。
「・・・Hunnn!」
 そのとき、ジョルジュの大胸筋、僧帽筋が膨張した。ダークフォックスを乗せたまま腕も使わずにブリッジの体勢になり、ダークフォックスのマウントポジションから逃れる。
「・・・きっついお仕置きですねぇ。私、本気で闘っちゃいそうでーす」
「まだ本気じゃなかったの? いいのよ、本気になっても」
 軽口を叩きながらも、ジョルジュとダークフォックスの間の緊張が張り詰めていく。お互いにいいポジションを取ろうと、リングの上を円を描くように動いていく。
(こいつ、口だけじゃない・・・体移動に隙が・・・!?)
 ダークフォックスは突然、後ろに引っ張られていた。
「プロレス姉ちゃん、油断しちゃ駄目だぜぇ」
 マスク・ド・タランチュラだった。その長い両腕を伸ばし、ダークフォックスのマスクを掴んでいたのだ。
「プロレス姉ちゃん、その可愛いお顔、もう一回観客に披露しな!」
 マスク・ド・タランチュラの手が、ダークフォックスのマスクの紐に掛かる。
「マスクに手を掛けるのは反則だぞ! レフェリー、止めて!」
 驚きの余り、ダークフォックスではなく来狐遥として叫んでしまう。
「ボディチェックも受けなかったくせに、何を言っているんだ。そうだ、これからボディチェックを行うとしよう」
 レフェリーはダークフォックスに近寄ると、いきなりバストを鷲掴みにする。
「やっぱりいい感触だな。大きさといい張りといい、堪らん!」
「いやだ、触るな!」
 マスクを脱がされまいとするダークフォックスは、レフェリーのセクハラを防ぐことができなかった。そのため、いいようにバストを揉まれてしまう。
「ダーク!」
「おっと、あなたは私と遊びましょー」
 ダークフォックスを救おうとコーナーを飛び出したエキドナの前に、ジョルジュが立ち塞がる。
「邪魔っ!」
 エキドナの右脚が動いたかと見えた瞬間、ブラジリアンキックでジョルジュの左顎を抉っていた。
「おごっ!」
 下に振り抜かれるようなハイキックに、ジョルジュの腰が落ちる。ジョルジュがエキドナを止めるのを失敗したと見たレフェリーは素早くダークフォックスから離れ、マスク・ド・タランチュラも両手を上げて見せる。
「さ、今試合の権利があるのはダークフォックスだ。エキドナ、コーナーへ戻れ!」
「言われなくたって、ちゃんと試合するなら戻るわよ」
 エキドナはわざとゆっくりと自軍のコーナーへと戻り、ダークフォックスはマスク・ド・タランチュラを振り返る。
「色々としてくれたわね・・・後で、ゆっくりと・・・ね?」
 ダークフォックスが浮かべた妖艶な笑みに、挑発だとわかってはいてもマスク・ド・タランチュラはにやけてしまう。
「シッ!」
「ぐぼっ!」
 レフェリーからの死角になる位置に立ったダークフォックスは、マスク・ド・タランチュラの喉に地獄突きを入れていた。咳き込むマスク・ド・タランチュラを尻目に、ジョルジュと向かい合う。
(ず、ずりい、後でゆっくりなんて言ってたくせに、すぐに反撃かよ!)
 喉を押さえて呻くマスク・ド・タランチュラを不審な顔つきで見たレフェリーだったが、すぐにダークフォックスとジョルジュの対決に視線を戻す。
「さっき本気で闘うなんて言ってたけど、どういうことを見せてくれるの?」
 ダークフォックスの笑みを含んだ挑発に、ジョルジュが微笑む。
「そうですね・・・なら、こんなのはどうですかー!」
 ジョルジュはダークフォックスの胸元を持ち、引き下げる。
「ふぁっ!?」
 そのためEカップの乳房が零れ、可愛らしい乳首まで観客に晒される。反射的に乳房を隠したダークフォックスだったが、大きな隙を作ってしまう。
「そんでもって、こうでーす!」
 ジュルジュは首投げから、両手を頭上で組ませた形のグラビア固めに繋ぐ。
「どうですか? 恥ずかしいでしょー?」
「こ、これくらい・・・あっ!」
「いい格好だな、ダークフォックス。ギブアップか?」
 ダークフォックスが乳房丸出しの状態で動けないと見たレフェリーが素早く近寄り、剥き出しの乳房を鷲掴みにする。
「やっぱり生乳はいいなあ。乳首も手の平に当たってるぞ」
「んっ・・・レフェリー、お仕置きされたいみたいね」
 腕を極められ、乳房を揉まれながらもダークフォックスは小さく微笑んでいた。その微笑にぞくりとした瞬間、レフェリーの胴にダークフォックスの両脚が巻きつく。
「ふっ!」
 そのままお尻を軸にしてレフェリーの体を持ち上げ、ジョルジュにぶつける。
「Ouch!」
「おぐっ!」
 レフェリーの頭部がジョルジュの顔面にぶつけられ、お互いに声を上げる。ジョルジュはグラビア固めを解いてしまい、アッパー気味の掌底にダウンさせられる。
「エキドナ、お待たせ!」
「ええ、任せて!」
 ダークフォックスのタッチを受け、エキドナがリングインする。
「せいっ!」
 気合と共に、鼻を押さえていたジョルジュの顔面をキックで抉る。ジョルジュはキックを貰いながらも後ろに転がり、マスク・ド・タランチュラにタッチする。
「ちょ、ちょっと休憩でーす」
「ああ、ゆっくり休んでな。エキドナとはゆっくりと遣り合いてぇからな」
 リングインしたマスク・ド・タランチュラを、エキドナの鋭い視線が迎える。
「・・・今日もノックアウトしてあげるわ」
「いーや、今日はこの前の分も含めて徹底的に嬲ってやるぜ」
 軽口を叩きながらも、マスク・ド・タランチュラは油断なく構える。前回の手合わせで、エキドナの実力は嫌と言うほど教えられた。
(さてと、どうやって攻めるかな・・・)
 考える間もなくエキドナのキックが襲い掛かってくる。
「ちっ!」
 長い両腕を畳んでガードし、致命傷を防ぐ。
(くっそ、相変わらず鋭い蹴りだな! ガードした腕のほうが痛いってぇの・・・おおっ!?)
 蹴りに意識が行ったところに、高速タックルで足を刈られる。どうにかダウンは堪えたが、腹部へパンチの連打を食らい、更にスピンキックで側頭部を蹴り飛ばされる。
 膝から崩れたマスク・ド・タランチュラに、エキドナが素早くフォールに入る。しかしその動きが止まる。
「!」
 マスク・ド・タランチュラの手がエキドナのバストを掴んでいた。反射的にマスク・ド・タランチュラの手を弾き、フォールを解いてしまう。
「そこまでおっぱい触られるのは嫌かい?」
「い、嫌に決まってるでしょ!」
 思わず叫んでいたエキドナに、マスク・ド・タランチュラが厭らしい笑みを浮かべる。
「そうか、嫌か。俺、嫌がる女の子に嫌がることするの大好きなんだよ!」
 何を思ったか、マスク・ド・タランチュラは自分の胸の前まで手を上げ、にぎにぎと開閉する。
「へへへ、おっぱいを揉んでやろうかな〜」
 その厭らしい手つきに、エキドナは知らず後退していた。じりじりと下がっていると、いきなり後ろから抱き締められる。
「おいおいエキドナ選手、レフェリーにぶつかるんじゃない」
「貴方が人の後ろに立ってるから・・・きゃっ!」
 レフェリーに気を取られて視線を逸らせたため、マスク・ド・タランチュラからバストを揉まれてしまう。
「おー、やっぱりいい感触だ。エキドナちゃん、素顔で俺と闘ったことあるだろ? な?」
「誰が貴方に教える・・・ちょっとレフェリー、どこ触ってるのよ!」
 エキドナがマスク・ド・タランチュラの手をバストから引き剥がそうとすると、レフェリーが秘部を触ってくる。
「どこって、触られてるからわかるだろう? ボディチェックをしてないんだから、調べるのは当たり前じゃないか」
「こんなのボディチェックじゃなくてセクハラよ! 放して!」
 逃れようとしたエキドナだったが、次のマスク・ド・タランチュラの行動で動きが止まる。
「そういや、お前さんの正体をちゃんと確かめてなかったな」
「あ、なにして・・・くぅっ!」
 マスク・ド・タランチュラの手がエキドナのマスクにかかる。それをやめさせようとすると、レフェリーがバストを揉み込んで来る。
「ちょっとレフェリー、覆面に手を掛けるのは反則でしょ!?」
「うるさい、今はボディチェック中だ」
 レフェリーはエキドナの抗議に取り合わず、自分の欲望を優先させる。
(駄目、触られるのも嫌だけど、マスクを脱がされるのはもっと嫌!)
 マスクを剥がされるという行為が、こうも羞恥を煽られるものだとは思わなかった。セクハラを止めるよりも、マスクを守ることを優先してしまう。
「結構頑張るな。なら、俺もおっぱい触る!」
 マスク・ド・タランチュラは左手をマスクに掛けたまま、右手をエキドナのバストに伸ばす。
「ま、また胸を・・・!」
「なら、俺はこっちも調べるか」
 レフェリーはヒップにも手を回し、秘部を弄りながら揉み込む。
「いやっ、触らないで!」
 エキドナの悲鳴に、ダークフォックスが身を乗り出す。
「貴方達、いいかげんに・・・」
 エキドナのピンチに気を取られていたダークフォックスは、リング下に降りて回り込んだジュルジュに気づかなかった。
「油断大敵でーす!」
「!?」
 いきなりリング下に引きずり下ろされ、パワースラムで叩きつけられる。
「あぐぅ・・・!」
 マットの上だとはいえ、リング下の固い床に叩きつけられた衝撃はかなりのものだった。
「おとなしくなりましたねー。さて、お楽しみの時間でーす」
 ジョルジュはダークフォックスを軽々と抱え上げると、リングへと放り投げる。
「ぐはっ!」
 トップロープの上からリングに落とされ、ダークフォックスが痛みにのたうつ。
「では、暴れられるのも困るので・・・」
 ジョルジュはダークフォックスを無理やり立たせると、手早くロープで両手両脚を拘束していく。
「ん・・・や、やめろ・・・」
 まだダメージの残るダークフォックスにできるのは、弱々しく首を振ることくらいだった。
「んっふっふ、これでもう抵抗できませーん。それでは・・・こうでーす!」
 ジョルジュはバニースーツの胸元を持ち、一気に引き下げる。そのため、ダークフォックスの乳房どころかおへそまで見えてしまう。
「Oh! やっぱり、いい形のおっぱいでーす。でも、見てるだけはもったいないですねぇ」
 ジョルジュはダークフォックスのEカップの乳房を鷲掴みにし、ゆっくりと揉みしだく。
「おっほほぅ! やっぱり生はいいですねー! もっちもっちのむっちむちでーす!」
 悦に入るジョルジュを、ダークフォックスは冷たい視線で見つめた。

 一方、エキドナはマスク・ド・タランチュラとレフェリーに押さえ込まれ、セクハラを受け続けていた。
「い、いいかげんにしなさいよ。こんなセクハラいつまでも・・・うくっ」
「セクハラじゃなくてボディチェックだ。間違えちゃいけないぞエキドナ選手」
 レフェリーはにやけながら、エキドナの秘部を弄り回す。
「このままおっぱい揉んでるのもいいが、折角だ・・・また、生乳触らせてもらうぜ!」
 言うが早いか、マスク・ド・タランチュラがバニースーツの胸元を乱暴に引き下ろす。
「な、なんてことするのよ!」
 エキドナの文句など聞きもせず、そのまま剥き出しにされた乳房を捏ね回す。
「やっぱ生はいいなぁ。お、乳首が固くなってきたぞ? 感じやすいなぁエキドナちゃんよ」
「うるさいわよ! ただの生理現象に・・・んぁっ!」
「くくっ、生理現象だろうがなんだろうが、触られて乳首固くしてるのには変わりないだろうが」
 レフェリーにも乳首を弄られ、エキドナが声を洩らす。
(こいつら、絶対に許さない! 絶対に、倒すんだから!)
 男二人に嬲られながらも、エキドナの闘志は消えていなかった。

「Oh、あっちもおっぱい丸出しで揉まれてまーす。仲間同士、嬉しいでしょー?」
 ジョルジュはエキドナが責められているのを見ながらダークフォックスの乳房を揉む。若さのためか張りが凄く、揉んだ指が跳ね返されそうだ。
「ねぇ・・・」
 乳房を揉まれていたダークフォックスが、ジョルジュに流し目を送る。
「んんっ、お願い、足が痺れて・・・」
「駄目でーす、そう言って逃げるつもりでしょー? そんなことはさせませーん!」
 ジョルジュはダークフォックスの「お願い」など聞き流し、生乳を夢中になって揉み続ける。
「そう・・・いいわよ、それならやりようがあるから!」
 全身に力を込め、力づくで両腕を引っこ抜く。そのままモンゴリアンチョップでジョルジュの首筋を打ち、怯んだ隙に両脚を抜く。
「さぁて・・・私の体を好き勝手に触ったお仕置き、しなくちゃね?」
 こんなときだと言うのに、ジョルジュはダークフォックスの妖艶な笑みに魅了された。
「それっ!」
「あごっ!」
 ダークフォックスは容赦なくジョルジュの金的を蹴り上げ、動きを止める。
「それじゃ、いくわよ♪」
 ダークフォックスはジョルジュの頭を下げさせて両腕を背中側で抱え、タイガードライバーの体勢に入る。
「ふっ!」
 ダークフォックスの気合と共に、ジョルジュの巨体が宙に浮く。その瞬間、ダークフォックスは伸ばした両太ももでジョルジュの首を挟んでいた。
「せいりゃぁぁぁっ!」
 そのまま、ジョルジュの頭部をリングに突き刺す。ダークフォックスが太ももでジョルジュの首を固定していたため、変形タイガードライバーの威力は全て頭部と頚部に集中された。衝撃がジョルジュの脳を揺さぶり、自重が首に掛かり、ジョルジュは白目を剥いてリングに大の字になった。口からは泡を吹き、全身が細かく痙攣する。
「私に厭らしいことした罪、身体に刻んであげたわよ」
 衣装の乱れを直し、ダークフォックスはリングに横たわるジョルジュに投げキッスをしてみせる。
「エキドナ、今行くから」
 小さく呟き、ダークフォックスは静かに素早くダッシュした。

 乳房を剥き出しにされたエキドナは、マスク・ド・タランチュラとレフェリーに両方の乳房を揉まれていた。
「んっく、放しなさい!」
「おっと、まだ抵抗するのか。それじゃ、マスクを脱ぐかい?」
「それは・・・駄目っ、手を放して!」
 エキドナが抵抗しようとするたび、マスク・ド・タランチュラはエキドナのマスクを脱がそうとする。エキドナは脱がされまいとマスクを庇うため、身体をいいように責められてしまう。
「はーい、そこまで!」
 エキドナの肢体に夢中になっていたマスク・ド・タランチュラの後頭部に、ダークフォックスの低空ドロップキックが炸裂する。
「はがっ!」
 予想もしなかった視界の外からの攻撃に、マスク・ド・タランチュラが倒れ込む。それを見たレフェリーが、慌ててエキドナの乳房から手を放す。
「全く、このエロ男ども!」
 エキドナは素早く衣装を元通りにし、ダークフォックスに指示を出す。エキドナはそのままコーナーポストに駆け上った。
「いくわよダーク!」
「ええ!」
 ダークフォックスがマスク・ド・タランチュラをスプラッシュマウンテンの体勢に捕らえ、エキドナはコーナーポストから舞う。そのまま前方宙返りからフェイバリットホールドである<ローリング・エクスキューショナー>を仕掛ける。
「せいやぁぁぁっ!」
 同時にダークフォックスもマスク・ド・タランチュラをリングに叩きつけ、首を狩り取った。そう見えたほどの威力に、会場が静まり返る。
「レフェリー、カウント」
 フォールに入ったエキドナの静かな要求に、レフェリーも渋々腹這いになる。
「ワン!」
 レフェリーのカウントと共に、ダークフォックスが人差し指を突き上げてアピールする。
「ツー!」
 ダークフォックスが掲げた人差し指と中指に、観客も「ツー」のコールで応える。
「・・・スリーッ!」
 レフェリーがスリーカウントを叩いた瞬間、ダークフォックスと共に観客も総立ちで腕を突き上げていた。

<カンカンカン!>

「皆、応援ありがとう♪」
 ダークフォックスはコーナーポストへと上り、観客席へと投げキッスのサービスを行う。何度か行った後、後方宙返りでリングに降り立つ。着地と同時に大きくバストが弾み、場内が更に沸く。
「さて、と。まだすることが残ってるわね」
「な、なにが残ってるって言うんだ」
 嫌な予感を感じながら、レフェリーが逃げ腰になる。
「まだ済んでないでしょ? 貴方へのお・し・お・き♪」
 ダークフォックスが浮かべた小悪魔な微笑に、レフェリーが泣き笑いの表情になる。
「じょ、冗談だよな? お仕置きなら、この前も受けたじゃないか!」
「あら、私はしてないわよ、お仕置き」
 エキドナが指を鳴らしながらレフェリーを睨む。思わず逃げようとしたレフェリーだったが、ダークフォックスのアームホイップでリング中央に戻されてしまう。
「いてて・・・」
 背中を擦っていたレフェリーをエキドナが無理やり立たせる。
「さて、どうして欲しい?」
「ま、待て、落ち着け! いや、落ち着いてください。俺は素人だぞ、下手なことされたら死んじまう!」
「いいんじゃないの、死んでも♪」
 ダークフォックスのさらりとした科白に、レフェリーが蒼白となる。
「やめろ、殺すのだけは勘弁してくれ! まだしたいことはたくさんあるんだ!」
「そう。それじゃあ、半分だけ生かしてあげるわ!」
 エキドナのトーキックがレフェリーの鳩尾に突き刺さる。
「お・・・ぐ・・・」
「あと・・・これもねっ!」
 レフェリーの首にエキドナの右腕が巻きつき、<ローリングエクスキューショナー>で後頭部をリングに叩きつける。
「あがぁっ!」
 この一撃で脳震盪を起こし、レフェリーの体が痙攣する。
「私からも、プレゼント♪」
 ロープに走ったダークフォックスが、セカンドロープからのムーンサルトプレスでレフェリーの上に落下する。
「・・・きゅぅ」
 レフェリーはそのまま意識を失った。慌てて医療班がリングに上がるのと入れ違いに、エキドナとダークフォックスはリングを後にした。初めて挙げたタッグマッチでの勝利に、その美貌を輝かせて。


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