【第五話 ピュアフォックス:プロレス】
犠牲者の名は「ピュアフォックス」。本名来狐遥。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。
高校でプロレス同好会を立ち上げ、他校との交流試合を中心に活動を行っている。リングに上がる時は覆面をつけ、ピュアフォックスと名乗っている。華麗な空中戦を得意とし、その試合を見た者からは絶大な人気を誇るが、男子生徒からは主にそのダイナマイトボディ目当てで支持されている。高校生の女子にプロレスをしようとする者は少なく、必然的に男子相手の試合が多くなる。胸を触られたり、股間に触れられたりと何度もセクハラ紛いのことをされたが、そういう相手は実力で叩き潰してきた。
今回は評判を聞きつけた人間が特別なリングを用意したと説明され、プロレス好きの彼女は疑うこともなく<地下闘艶場>へと誘い込まれた。
(あれ、これって・・・)
用意されたコスチュームは、遥が通う高校の制服だった。正確には似た物だが。襟付きの白いブラウスとタータンチェックのスカート、膝上まである紺色のハイソックス。ただし、ブラウスのボタンの上から3つがついていない。
(さすがにこれじゃあ、ブラもパンツも見えちゃうよ・・・)
「コスチュームはこちらで用意させて頂いています。覆面だけ御用意ください」と言われてその通りにしたものの、プロレス用の水着ではなく、制服に似せたコスチュームだとは。
暫く考え込んでいたが、頭を一つ二つ振って頬を叩く。
「それなら動きで魅せてやろうじゃないの! ピュアフォックスを嘗めるなよ!」
これしきで恥ずかしがってなんかいられない! 思考を切り替え、狐をモチーフにしたマスクを被り、大きく息を吐いてコスチュームを身に着けた。
入場口から走ってリングに向かうのはピュアフォックスだった。リングに上がるとコーナーポストに上り、右手を上げて観客へとアピールする。そのまま後方宙返りでリングへと飛び降りると、観客から拍手が湧く。スカートから覗く淡い黄色の下着に対して送られたのかもしれない。
対戦相手は男性だった。背はそれ程高くないが、首、胸、腹、腕、脚、すべてが太い。筋肉と脂肪に覆われた格闘技者の体格。太い男のセコンドだろうか、小男が一人せわしなく動いている。
「赤コーナー、チャベス・マッコイ!」
チャベスはコールに応え、両拳を胸の前で揃えて胸筋をパンプアップさせる。
「青コーナー、ピュアフォックス!」
ピュアフォックスは右手を高々と掲げ、人差し指で天を指す。ぴんと伸ばされた指先に、気合と誇りが込められていた。
レフェリーがチャベスのボディチェックを終え、ピュアフォックスに近寄る。その手がバストに伸びてくるのを見て取り、ピュアフォックスが間合いを外す。
「ボディチェックだ、ピュアフォックス選手」
「でもね、女の子が胸を触られるってのは恥ずかしいんだよ?」
「ルールだからしょうがないだろう」
「仕方ないなぁ」
そう言うとピュアフォックスはレフェリーの両手を取り、軽くバストに触れさせるとさっと離れる。
「あ、あの・・・」
「んもう、これ以上は駄目だよ? 恥ずかしいからっ」
「だけどな、下も調べなきゃ・・・」
「んもー、H! ここは乙女の大事なところなんだよっ?」
素早くレフェリーの右手を取り、スカート越しに下着をぽんぽんと触らせ、すぐに手を放す。この手の男性にはこっちがペースを握って押し切れば、意外と通りやすい。
「さっ、試合開始だねっ!」
「あ、ああ・・・」
毒気を抜かれ、レフェリーはあっさりと試合開始を告げた。
<カーン!>
ゴングを合図に、チャベスと対峙する。
チャベスが右手を伸ばしてくる。互いの両手を絡ませ、力比べをする<手四つ>への誘いだった。プロレスの攻防はこれで始まることも多い。
(この人、プロレスを知ってる!)
ニコッと笑い、ピュアフォックスは手四つに応じる。しかしパワーの差は歴然としており、押し込まれ、膝をついてしまう。更に力で押され、肩がマットにつく。それをブリッジで耐える。そのため淡い黄色の下着が丸見えになり、観客から声が上がる。
(こんなことくらいで恥ずかしがってられない!)
こっちが恥ずかしそうにすればするほど、相手はそこにつけこんでくる。気にする素振りは見せず、ブリッジのまま耐える。
チャベスがお腹に乗ろうとするのを見て、素早くブリッジを解いてチャベスの下から抜け出し、右手を取って脇固めに極める。しかし大して効いてないらしく、チャベスは右腕に押し付けられたEカップのバストの感触に嬉しそうな声を上げる。
と、チャベスは左手一本で腕立て伏せのような体勢で上体を浮かし、体を返してピュアフォックスをリングへと叩きつける。そのままバストを掴み、フォールの体勢になる。
「ワーン・・・ツー・・・」
なぜかカウントはゆっくりとしか進まない。その間、チャベスはピュアフォックスのバストを握ったり緩めたりしながら感触を楽しむ。
(くっそぉ!)
不快感を堪えてなんとかピュアフォックスが肩を上げると、そのときはカウントが止まる。するとまたチャベスがバストを握ったまま押さえ込み、ゆっくりとしたカウントが進む。
「こんのぉっ!」
右脚を跳ね上げ側頭部を蹴ってやると、叫び声を上げてチャベスが蹲る。素早く立ち上がり、コーナーポストへと走る。
コーナーの上に立ち、タイミングを計る。チャベスが立ち上がる寸前、トップロープの反動を使い、スカートを翻しながら一気に後頭部へとミサイルキックを放つ。
<スワンダイブキック>。
本職のプロレスラーでも使い手が少ない高難度の技。それを決めてみせたピュアフォックスに場内からどよめきが起こる。
(よーっし、もういっちょ!)
またもコーナーポストに登り、チャベスを鋭く見つめる。
(・・・今だ!)
トップロープに足を掛けようとしたが、そこにロープはなかった。
「あれ?」
小男がトップロープを引っ張り下げ、位置をずらしたのだ。バランスを崩し、両足がトップロープの左右に分かれて落ちていく。その結果、股間をトップロープに打ち付けてしまう。
「あっ・・・くぅぅぅっ!」
急いでロープから降りようとするが、小男が下からハイソックスに包まれた足を引っ張りそれをさせない。少しでも痛みを逃がそうと両手でロープを押さえ、左足をセカンドロープに絡ませる。そこにレフェリーが近寄ってくる。
「おいおい大丈夫かい? うん?」
そう言いながら、スカートをめくる。
「ちょっと、あうっ!」
止めさせようと反射的に左手を放した途端、股間にロープが食い込み、慌てて左手を戻す。
「おっと、これはきつそうだ、そうだろう?」
レフェリーはわざとらしく確認しながら、ぐいぐいと肩を押さえてくる。
「あうっ、やめて・・・よっ!」
股間への強い刺激に悲鳴を上げてしまう。レフェリーは肩から手を放し、左のバストとお尻を触ってくる。両手でロープを押さえているためそれを阻止できず、好きなように触られてしまう。小男はピュアフォックスの右の太ももを抱え、腰を振っている。
(・・・くっそぉぉぉぉ!)
痛みに耐え、右脚を振り上げる。そのまま小男を持ち上げ、鼻に肘を入れてやる。
「ぷぎっ」という声を上げ、小男がエプロンに落ちる。
それを見ることもなく、両足でセカンドロープを蹴り、転がるようにして脱出する。立ち上がったピュアフォックスの視界に、太い右腕が飛び込んできた。
「!」
チャベスのラリアートを食らい、背中からリングに叩きつけられる。
「あ・・・ぐ・・・」
一瞬意識が飛びそうになる。チャベスはそのままピュアフォックスの背中に乗り、逆エビ固めを掛けてくる。チャベスが怪力に物を言わせて反り返り、腰に体重を掛けられ鈍い痛みが走る。と、チャベスが片手を放し、ピュアフォックスの股間を弄ってくる。
「あうっ、そ、そこは駄目っ!」
自由になった左足をばたつかせるが、まるで役に立たない。
(そうだ、ロープ・・・!)
少しずつにじり寄り、サードロープに手を掛けようとするが、小男がサードロープを引っ張ってそれをさせない。
「そんな・・・あくっ!」
股間からの刺激に動きが止まってしまう。
「ギブアップかな? うん?」
ニヤニヤと笑いながら確認してくるレフェリーの表情に、持ち前の負けん気が甦る。匍匐前進のようにしてサードロープまで近づき、掴む。
「ロープブレイクだ、チャベス」
しかしチャベスはピュアフォックスを解放しようとせず、ひたすら股間を弄っている。
「は、反則だよっ! あうっ、レフェリーやめさせて!」
レフェリーがカウントを取るが、そのスピードはゆっくりとしたもので、なかなか進まない。その間、ピュアフォックスは唇を噛んで耐える。レフェリーのカウントがフォーまで進んだとき、小男がピュアフォックスの手をロープから外してしまう。
「え・・・!」
「ロープブレイクは認められんなぁ、ギブアップかピュアフォックス?」
レフェリーはカウントを数えるのを止め、ピュアフォックスの顔を覗き込む。チャベスは股間から手を放し、お尻を揉みだした。
「あ、はっ、うっ!」
ヒップを触られる感触に耐え、今度は両手でロープを掴む。またもゆっくりとしか進まないカウント。小男は両手を外そうとしてくるが、必死にロープを掴んでそれをさせない。
レフェリーのカウントがフォーまで進むとチャベスが技を解き、やっとのことで解放される。
(乙女のアソコを好きに弄くるなんて・・・絶対に許さないんだからっ!)
怒りを込めてチャベスを睨みつける。するとチャベスは手四つに誘ってくる。それに乗ると見せかけてチャベスのバックに回り込み、腰の捻りを使った高速のバックドロップで投げ捨てる。
「へへーん、どんなもんだい!」
鼻を親指で弾いて立ち上がったところ、小男が水のたっぷりと入ったバケツを持ってリングに上がり、背後からピュアフォックスへとぶちまけた。
「きゃっ!」
冷たい水を掛けられ可愛い悲鳴を上げるピュアフォックス。すると濡れたシャツが体にぴったりと張り付き、下着とお揃いの淡い黄色のブラを浮かび上がらせる。それを見た観客から歓声が上がる。つい胸を隠そうとしてしまうが、羞恥心を抑えて小男をリングから蹴落とす。
「セコンドへの攻撃は反則だ!」
レフェリーが後ろから抱きつき、濡れたシャツの上からバストを揉み始める。
「!」
一瞬動きが止まってしまうピュアフォックスだったが、すぐにレフェリーの両手首を掴み、バストから引き離す。
「レフェリーぃ、反則は分かったから放してもらえますかぁ?」
わざと丁寧な口調で言いながら、さっとレフェリーから離れる。そこへ後ろからチャベスにタックルを決められ、うつ伏せに倒される。チャベスはピュアフォックスの両脚をフックし、両手を捕らえ、ロメロスペシャルに極める。
「うわぁぁぁぁっ!」
チャベスの怪力でロメロスペシャルに捕らえられ、ピュアフォックスが悲鳴を上げる。レフェリーはギブアップの確認をしながら、先程の続きとばかりにバストを揉んでくる。
「可愛い下着だな、ピュアフォックス選手。いつもこういう下着をつけてるのか?」
いつの間にか小男もリングに上がり、ピュアフォックスのスカートを捲くったり下ろしたりした後で股間を弄ってくる。
「あっ、はぁっ、く、うぅっ!」
四肢に走る痛みと、バストと股間から与えられる感触が不快感をもたらす。逃げようにも手足が動かせず、好きなように嬲られる。
暫くバストと股間を責められていたが、レフェリーが股間へと、小男がヒップへと責めを変える。ロメロスペシャルに捕らえていたチャベスの両手がピュアフォックスから放れ、バストへと向かう。
「!」
両手が自由になった瞬間、両脚を支点にして前転し、小男とレフェリーの右手を弾き飛ばしながら脱出する。そのままの勢いでロープへと走って反動をつけて跳び、立ち上がったチャベスの首に両脚を掛ける。そのまま後方へと体を回し、頭から落としてフォールに入る。
<フランケンシュタイナー>。
両太ももで相手の首を挟み、後方に回転して頭から落とし、そのままフォールする高難度の技。カウントが進むが、またもゆっくりとしか進まない。するとチャベスが下着の上から股間を舐めてくる。
「ひゃっ!」
その感触に、思わずフォールを解いてしまう。距離を取り、チャベスを睨む。するとチャベスはピュアフォックスの股間を指差した後自分の顔を指し、舌を出して挑発してくる。
「むっっっかー!」
頭に血が上り、ロープの反動を利用してチャベスに走り寄り、ヒップアタックでチャベスの顔面を攻撃する。しかしチャベスはそれを難なく耐え、両腕をピュアフォックスの膝下を通し、両手も捕らえる。
「あ・・・!」
チャベスの肉体に磔にされたように捕らえられ、開脚をも強いられる。ピュアフォックスのあられもない姿に観客から大歓声が上がる。
「おー、いい眺めだなぁおい。お客さんも喜んでるぞ、さすがに客を沸かせるのが上手いな」
勝手なことを言いながら、レフェリーがバストを揉んでくる。小男もリングに上がり、ヒップを擦ってくる。
「いやっ、駄目だよっ、駄目ぇっ!」
この体勢から逃れようと暴れるものの、チャベスの怪力のため首を振るくらいしかできない。レフェリーは乳首の辺りをブラ越しに弄り、小男は秘部を割れ目に沿って擦りだす。
「あぅっ、はっ、いや・・・ん!」
恥ずかしい体勢で恥ずかしい責めを受け、頬が紅潮する。マスクで見えないのが幸いだ。チャベスも我慢できなくなったのか、ピュアフォックスの左手から手を放し、膝を抱えたままバストを揉んでくる。レフェリーは右のバストと乳首を弄りながらヒップを揉んでいる。小男は股間を舌で舐めだす。自由になった左手を動かすものの、誰の責めも止められない。
「三人掛かりなんて卑怯だぞっ! はぅっ!」
思わず叫ぶが、セクハラでの返答が待っていた。両方のバスト、乳首、秘部、ヒップとあちこちの急所を責められ、体力が削られていく。
(逃げられない・・・あうっ・・・もう駄目、かも・・・)
諦めかけたそのとき、レフェリーのにやけ面が目に入る。
「そろそろギブアップか? それともずっとこうやって気持ちよくされたいのか? 最近の女子高生は遊んでるって言うしなぁ!」
そのふざけたセリフに、ピュアフォックスの闘志に再び火が点いた。
(こんな連中に負けたら、ピュアフォックスの名が廃るよっ!)
バストと股間の刺激に耐え、左手の伸ばした指に力を込める。
(この辺・・・かっ!)
左手でチャベスの喉へ地獄突きを見舞う。喉の激痛にピュアフォックスを解放し、チャベスは四つん這いになって咳き込む。
ピュアフォックスは受身を取って立ち上がり、小男の襟首を持ってエプロンサイドへと連れて行く。その滑稽な光景に場内から笑いが起こる。
じたばたと暴れる小男をリングから出し、チャベスへと向き直る。漸く立ち上がったチャベスの顔に怒りの表情が過ぎる。
「グォォォッ!」
咆哮したチャベスが、怒りの表情のままタックルに来る。ピュアフォックスはチャベスの迫力に圧されるようにロープ際に近づいた。後ろに小男の気配を感じ、ギリギリ手が届かない間合いに身を置く。突進してくるチャベスを寸前まで引き寄せ、小男の間合いに入る。
(・・・今だっ!)
チャベスの突進を利用し、小男が手を伸ばすタイミングを計って身をかわし、同士討ちをさせる。小男はリング下に転がり落ちるが、それを確認もせずピュアフォックスはチャベスの背中に回りこみ、首と足を捕らえて渾身の力で肩に担ぎ上げる。少女がチャベスの太い体を持ち上げる姿に、観客から驚きの声が上がる。
「食らえっ、リバースデスバレーボム!」
そのまま頭から落とし、フォールに入る。
「レフェリー!」
「あ、ああ・・・」
大の字になったチャベスを見遣りながら、レフェリーは放心したようにカウントを取る。
「ワン・・・、ツー・・・、スリー・・・」
<カンカンカンカン!>
「だーっ!」
コーナーポストに駆け上がったピュアフォックスが右腕を突き上げると、それに釣られたかのように観客からも大きな歓声が上がる。リング上に横たわるチャベスと介抱する小男、呆然とするレフェリーらを残し、ピュアフォックスは観客からの熱い声援を浴びながら退場していった。