【第六話 藤嶋メイ:空手】

 今回の犠牲者の名は「藤嶋メイ」。18歳。身長163cm、B84(Dカップ)・W56・H82。耳の辺りでばっさりと切った髪。ボーイッシュな童顔。スレンダーながらも出るところは出ているスタイルの良さ。その見た目とは裏腹に、インターハイの空手の部で防具つき試合にもかかわらず、KOの山を築いて優勝を飾っている。相手の攻撃を素早い動きで捌き、一撃で倒すのが彼女のスタイルだった。ついた渾名が「メイ・ビー(五月の蜂)」。
 <地下闘艶場>の顧客の一人からの要請で、彼女は裏のリングへと上がらされることになった。


(なによ、これは・・・!)
 「道衣はこちらで用意させて頂いています」という言葉を信じて来たものの、渡された道衣は上着と帯だけだった。
 出場の話があったときには自分の道衣を着けたいと言ったのだが、不正防止のためだとの言葉に
(そんなものか)
と納得してしまった自分に腹が立つ。
 契約書には「用意されたコスチューム以外の着用を禁じる」という項目もある。さすがに下着は着けていいのだろうが、これではミニスカートを履いて闘うようなものだ。しかも超がつくほどの。深呼吸で心を落ち着け、両手と両足にバンテージを巻く。覚悟を決めて道衣の上だけを身に付け、帯を締める。剥き出しの太ももが肌寒い。
(こうなったら、一撃で試合を終わらせよう)
 秒殺。一撃必殺。さっさと帰宅して寝よう。そう心に決め、メイはリングへと向かった。

 対戦相手は男性だった。自分と同じような卑猥なコスチュームを身に付けた女性が相手だとばかり考えていたメイは、このことにも怒りを覚えた。男は身長180cm程で蜘蛛が描かれたマスクを被り、腕が異常に長い。自分の膝に届く程の長さだ。
「赤コーナー、マスク・ド・タランチュラ!」
 記念すべき<地下闘艶場>の第一戦目で栗原美緒をギブアップで破った男。それを知っている観客から下品な注文が飛び、それがメイの耳にも入り、眉が逆立つ。
「青コーナー、藤嶋メイ!」
 コールにも微動だにせず、メイは凄まじい目つきでマスク・ド・タランチュラを睨みつけていた。その迫力に、マスク・ド・タランチュラに続いてボディチェックを行おうとしたレフェリーの腰が引ける。
 レフェリーは軽く形通りのボディチェックを済ませると、試合を開始した。

<カーン!>

 メイは左手を手刀にして前方に軽く構え、右手を握ってお腹の前に置いている。その視線は鋭く眉は跳ね上がり、整ったボーイッシュな童顔が夜叉面にも見える。
 対するマスク・ド・タランチュラは両手を折り曲げ、体の近くに構えている。
(一撃で仕留めるには、どこを攻めるか・・・)
 手や肩を軽く動かすフェイントでマスク・ド・タランチュラの動きを計り、体重の乗ったハイキックで左のこめかみを狙う。しかし長い腕でブロックされ、同時に胸を触られる。
「!」
 慌てて蹴り足を戻し、マスク・ド・タランチュラから距離を取る。スカイブルーの下着を見ることができた観客からメイに向かって下品な冗談が飛ぶ。それを黙殺し、マスク・ド・タランチュラを見据える。
(なんて長い腕・・・私の脚のリーチと同じ、いやそれ以上かも)
 加えて反射神経がいい。こちらの攻撃と同時に胸を触ってくるとは。プロレスラーの格好からスピードがないものと思い込んでいたが、認識を改めねばならないだろう。
(一撃じゃ無理か、ローをこつこつと積み重ねる)
 作戦を変更し、隙を見てはローキックを出していく。何発目かのローを出した時、マスク・ド・タランチュラが脚でガードしながらメイのバストを掴む。
「!」
 即座に手刀を落とすが、もう手を放して笑っている。その時になって、自分の闘いのスタイルを思い出す。
(頭に血が昇ってた。一発のカウンターで仕留めるのが私の流儀!)
 息吹で呼吸と怒りを静め、構え直す。そこへマスク・ド・タランチュラが横殴りに腕を振ってくる。メイが身を沈めかわすと、逆の腕が反対から飛んでくる。それも見切り、身を低くしたままマスク・ド・タランチュラの懐に飛び込み、鳩尾へ正拳突きを叩き込む。
「ぐばはっ!」
 肺の空気を吐き出し、マスク・ド・タランチュラが倒れ込む。更に追撃を決めようとしたメイを制止しようと、レフェリーが後ろから押さえてくる。その右手は道衣の隙間から差し込まれ、ビスチェ越しにバストを掴んでくる。
「ダウンした選手への打撃は禁止だ!」
「・・・どこを触ってんの、よ!」
 肘を曲げたたまま拳を後ろに振り、レフェリーの顔面を打つと、堪らずメイを解放する。その時レフェリーがメイの道衣の襟を引っ張ってしまい、前の合わせ目がずれてスカイブルーのビスチェが露わになる。
「!」
 慌てて道衣を整えるメイに、ビスチェを見た観客から指笛が鳴らされる。マスク・ド・タランチュラはと見ると、転がって距離を取り、腹部を押さえて立ち上がっている。その顔ににやけた笑みはもうなく、鋭い視線でメイを見据える。
「ちょっと遊びが過ぎたな。ちょっと本気になるぜ」
 軽くステップを踏んだマスク・ド・タランチュラの右手が、真っ直ぐメイの顔面に突き出される。見切って寸前でかわしたメイだったが、それが仇になった。同時に低く振られた左腕に気づかずに足を掬われ、仰向けに倒れてしまう。
 慌てて上半身を起こしたものの、マスク・ド・タランチュラから飛び込みローリングクラッチホールドに極められる。メイの両腕はマスク・ド・タランチュラの両脚に押さえられ、両脚は手で大きく広げられスカイブルーの下着を観客にはっきりと披露されてしまう。自分の取らされた格好に気づき、頬が紅潮する。
「レフェリーの顔を殴るとは・・・反則行為だぞ? 分かってるのか?」
 レフェリーはメイに近づくと、カウントも取らずに秘部を弄る。マスク・ド・タランチュラはメイの脚を押さえたまま手を伸ばし、形のいいバストを揉む。
「あっ・・・やぁぁぁっ!」
 まさかここまで露骨に嬲ってくるとは・・・! なんとか逃れようと動くがバストと秘部の刺激がそれを許さない。下手に動けば余計な刺激を呼び込んでしまう。メイは少しでも刺激を減らそうと動きを止める。
「お嬢ちゃん、動きを止めたってことは観念したってことかい? それとももっと厭らしいことを御所望かな?」
 マスク・ド・タランチュラはニヤニヤと笑いながらメイを言葉でもいたぶる。
「そんなわけあるか! ふあっ」
「ま、どっちでもいいけどな。俺はしたいようにするだけだ」
 マスク・ド・タランチュラがバストを揉みながら乳首の辺りを刺激してくる。
「っとそうだ、折角だから・・・」
 何か呟いたマスク・ド・タランチュラは一度バストから手を放し、お尻側から道衣に手を突っ込んでビスチェのホックを外し、前の合わせ目から抜き取る。
「なにしてんのよっ! あ、だめっ!」
 焦って叫ぶメイだったが、直接乳房と乳首を弄られ、言葉が止まる。
「どうした黙り込んで、まだ刺激が足りないのか? それならもっと激しくしなきゃなぁ!」
 レフェリーは下着越しに割れ目に沿ってゆっくりと指を滑らせていたが、しゃがみこむとメイの股間に顔をつけ、下着の上から舐め始める。下着に唾液が染み込み、不快な感触がメイの股間から伝わる。
「くそっ、放せっ! やめろぉっ!」
 大の男二人に押さえ込まれ、好き勝手に体を弄られる。その屈辱にメイの顔が歪む。
 マスク・ド・タランチュラは剥き出しとなったメイの乳房を揉みながら乳首を指で軽く叩く。レフェリーはひたすら下着越しに股間を舐め続けている。唾液で下着が秘部に張り付き、うっすらと秘裂を浮かび上がらせる。するとレフェリーは割れ目に沿って舌を動かす。どんなに弄られようとも不快感しか感じられない。
(なんで、なんでこんなこと・・・! そうだ!)
 中指の真ん中の関節を握り拳から出す一本拳で、マスク・ド・タランチュラの太ももの急所を突く。素早く何度か突くとメイの両脚を広げ、バストを弄っていた手の力が緩む。
(好機!)
 両脚でマスク・ド・タランチュラの頭を挟んだままリングに打ち付け、その場に立ち上がる。
「逃がすか!」
 そうはさせじとマスク・ド・タランチュラは右手を伸ばし、帯を掴んで引っ張る。すると帯はマスク・ド・タランチュラの手の中に残り、立ち上がったメイは一瞬きょとんとなった。
 ここまでの攻防で激しく動いたため紐と帯が弛み、そこをマスク・ド・タランチュラに帯が引っ張られたために外れ、道衣を押さえるものがなくなった。その結果道衣の前が開き、下着と剥き出しのバストが観客の目に晒される。
「きゃーーーっ!」
 思わず悲鳴を上げて前を隠していた。勝気な美少女のセミヌードに観客から大歓声が起こる。なんとか紐だけでも結ぼうとするがそれをマスク・ド・タランチュラが許すわけもなく、タックルで倒された後にロメロスペシャルに極められてしまう。
「あ、くっ!」
 痛みと羞恥心で頬が赤くなる。しかも下から揺すられることで道衣が重力に逆らわずに左右に分かれ、美乳とスカイブルーの下着をはっきりと観客の視線の前に晒してしまう。
「おー・・・細い腰だなぁ。こんなウエスト見たの初めてだぜ」
 鍛えられた腹筋の上にうっすらと脂肪がのり、尚且つ極限まで絞り込まれている。腰の括れが一層美乳の存在を引き立たせている。メイの腰周りを擦るレフェリーは、一頻り触った後、形良く上を向いた乳房を掴む。
「おおー・・・やっぱり生で触ると違うぜ!」
 もはやその手を素肌から遮るビスチェもなく、乳房と乳首を直接弄られる。
「やっ、はっ、あううっ」
 嫌悪感と恥辱感で呻くメイ。その顔を見たレフェリーが強めに乳房を揉む。かと思うと強弱をつけて揉み、乳首を引っ掻くように刺激する。
「おいおい、交代だよレフェリー。俺にも生乳触らせろよ」
 そう言うとマスク・ド・タランチュラはメイの手を放し、左手でメイを抱え、右手で美乳を直接揉む。
「さっき散々触ってたじゃないか。勝手な奴だ」
 レフェリーは舌打ちをすると、ポジションを変えてメイの秘部を弄る。下着の上からでは物足りないのか、手を突っ込んで直接秘裂を責める。
「やめてーーーっ!」
 余りのことに絶叫する。しかしその声に興奮したマスク・ド・タランチュラとレフェリーは、やめるどころか益々責めに精を出す。
 マスク・ド・タランチュラは乳房を揉みくちゃにし、乳首を強く刺激する。与えられる刺激に乳首が徐々に硬さを増し、立ち上がっていく。それに気づいたマスク・ド・タランチュラが乳首を押し潰す。
 レフェリーは秘裂に浅く指を沈め、中を擦りながら他の指で入り口を擦る。解放された両手で阻止しようとするが男の力には敵わず、嬲られ続ける。
(こんな、こんなことをされるなんて・・・)
 悔しさと陵辱の恐怖に涙を浮かべる。しかしレフェリーの一言で、メイに鋭い眼が戻った。
「インターハイチャンプって言ってもこの程度かよ。ただの女だな」
(あの・・・あの闘いを乗り越えた私を、この程度と呼ぶのか!)
 防具越しとはいえ、相手からの全力の突き蹴りを受け、捌き、ときには急所を打たれながらも不屈の精神力でライバル達を倒しての優勝だったのだ。それを「この程度」呼ばわりしたレフェリーへの殺気が迸る。
 怒りの咆哮を上げ、肘打ちでマスク・ド・タランチュラの脇腹を打ち抜く。肝臓の近くを打たれ、レスラー上がりのマスク・ド・タランチュラが痛みにのたうつ。レフェリーの手を掴んだメイが、殺気を漲らせたままゆらりと立ち上がる。前を隠そうともせず、殺意のこもった眼でレフェリーを睨みつける。
「おい、待て待て、待てよ、レフェリーへの攻撃は反則・・・」
 最後まで言わせず、鳩尾への突きで動きを止める。お腹を押さえて後ろによろめいたレフェリーが視線をメイに向けたとき、目に入ったのはスカイブルーの下着だった。
「あ・・・ぐげっ!」
 レフェリーの脳天に、右の踵が叩きつけられた。この一撃にレフェリーは白目を剥き、リングに倒れていく。
 メイは落ちていたビスチェを拾って身に付け、道衣の紐をし、帯を締めなおしてリングを降りる。その鬼気迫る表情に前を塞ぐ者はなく、メイは闘気を漲らせたまま退場していった。

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