【第七十一話 ビクトリア・フォレスト:マーシャルアーツ 其の三】

 犠牲者の名は「ビクトリア・フォレスト」。24歳。身長175cm、B98(Hカップ)・W65・H98。在日米軍横浜基地陸軍第42部隊所属の少尉。はちきれんばかりの肢体を誇る肉感的な美女。栗色の髪をショートカットにしていて、大きな瞳、長い睫、厚めの唇が見る者にセクシーさを感じさせる。
<地下闘艶場>で元橋堅城に徹底的に嬲られ、半裸に剥かれて絶頂失神に導かれるという屈辱を味わった。リベンジを望むビクトリアは試練として課された一対二の闘いに勝利し、元橋との対戦を実現させた。
 そして今日、待ちに待った復讐の舞台が幕を上げた。


 リング上で向かい合う男女に対し、観客席からは盛大な声援が飛ぶ。<地下闘艶場>では初めてとなる同一カードでの再戦に、ビクトリアの成長を推し量ろうとする者、元橋の実力に太鼓判を押す者など、観客の間からざわめきが消えることはない。
 マイクを握った黒服がリングに上がり、深々と一礼する。
「赤コーナー、『最強老人』、元橋堅城!」
 いつもどおり対戦相手のビクトリアに向かって一礼する元橋に、観客からは盛大な拍手が起こる。<地下闘艶場>最強とも噂される強さに加えて女性を嬲ることにも手馴れており、観客の期待を裏切らない老人だからだ。
「青コーナー、『ステイツ・ダイナマイト』、ビクトリア・フォレスト!」
 コールと同時に、ビクトリアは羽織っていたガウンを放り投げた。その下から現れたのは、野戦服を思わせる迷彩の衣装だった。但し半袖、腹部は剥き出し、下は短パンと露出度が高く、実用性は低いものだった。
 そのビクトリアに対し、前回リングで徹底的に嬲られたことを揶揄する野次が飛ぶ。しかしビクトリアの表情は揺るぎもしなかった。元橋へのリベンジに燃え、ひたと見据えている。

「さぁてビクトリア選手、今日もボディチェックを・・・」
 ビクトリアに歩み寄ろうとしたレフェリーの前に、唸りを上げた拳が襲い掛かる。
「ひっ!」
 しかし、その拳は鼻すれすれで止められた。
「・・・この前あれだけ人の身体を玩具にしてくれて、今日もボディチェック、ですって?」
 ビクトリアの目は据わっていた。
「なんなら、貴方を叩きのめしてからモトハシと闘ってもいいのよ?」
「そ、それは・・・」
 固まったまま冷や汗を流すだけしかできないレフェリーを救ったのは、元橋の一言だった。
「まあいいではないですか、ボディチェックなしでも。私は構いませんよ」
「あ、あんたがそう言うなら今回はなしでいい。良かったなビクトリア選手」
 レフェリーは額の汗を拭い、リング下に合図を送った。

<カーン!>

(やっと・・・やっと、この日が来たわ)
<地下闘艶場>のリングに上がり、元橋に手も足も出ず嬲られた記憶を忘れたことはない。あの日からひたすら身体を鍛え、リベンジを誓って格闘訓練を積んだ。
 昂ぶる気持ちを抑え、ゆっくりと呼気を吐く。改めてゆっくりと吸い、止める。
「シィィィッ!」
 鋭いステップインからのジャブ。ジャブのスピードに、僅かではあるが元橋の目が大きくなる。ビクトリアの左ジャブを払おうとした瞬間、ジャブの軌道に隠された右ストレートが一閃された。
「ぬっ!?」
 反射的に頭部を傾けた元橋の右頬をストレートが掠めていく。
「・・・やりますなぁ」
 距離を取った元橋の頬に、一条の血線が刻まれていた。ビクトリアの右ストレートが、その鋭さで元橋の皮膚を切り裂いていたのだ。
「ビクトリアさん、かなり実力をあげましたなぁ。恐い恐い」
 思えば、元橋が<地下闘艶場>で初めて闘った相手がビクトリアだった。そのときは余裕を持って相手ができたのだが、ビクトリアの実力は予想以上に上がっていた。
「これは・・・本気で相手をせねばなりませんかな」
 微笑を浮かべたまま、元橋の目が細められる。
「ええ、ぜひお願いしたいわね。本気の貴方を倒さなきゃ、私のリベンジは終わらないもの!」
 目に炎を宿したビクトリアは、軽いステップで間合いを計る。
「シィィッ!」
 マシンガンのようなジャブの連打が元橋に降り注ぐ。元橋もかわすので精一杯かと思われた次の瞬間、弾幕を掻い潜った元橋がビクトリアに近接していた。
「くっ!」
 アッパーを放ったときにはもう上着のボタンが二つも外されていた。元橋を捕らえようとしても、既にそこには居ない。
(まだ底が見えない! なんて老人なの?)
 元橋との再戦へ向け、自らに厳しい訓練を課し、体を徹底的に苛め抜いてきた。実力は数倍上がったと自信を持って言える。それなのに、また元橋に遊ばれている。
 唇を噛むビクトリアにまたも元橋が歩み寄ってくる。
「シッ!」
 薙ぎ払うようなミドルキックだったが、元橋に掠りもせずに接近を許してしまう。ジャブの連打もすり抜けられ、またもボタンが外される。
 上着のボタンが全て外され、ベージュのブラが剥き出しになる。観客席から歓声が起こるが、ビクトリアはボタンを留め直すことも隠すこともせず、ファイティングポーズを取ったままだ。
「おいおいビクトリア選手、胸の谷間がばっちり見えてるぞ。隠さなくていいのか?」
 レフェリーの揶揄にも耳を貸さず、元橋から目を逸らさない。
「いい覚悟ですな」
 元橋の微笑が大きくなる。
「しかし、服を脱がされてもその表情で居られますかな?」
 また元橋が踏み出す。それに合わせ、ビクトリアも距離を詰めていた。
「フシッ!」
 踏み込みながら放たれたロングフック。しかし、元橋は瞬時に軌道を見切っていた。
 次の瞬間、踏み込んだビクトリアの足が滑る。否、自らの意志で滑らせていた。
「ぬっ!?」
 ビクトリアの軸足がずれたことで、フックの軌道までずれた。読みの速さが仇となり、元橋はビクトリアのロングフックに自ら飛び込むような形になってしまった。
 ビクトリアのオープンフィンガーグローブを嵌めた右拳が、元橋を打ち抜く。このクリーンヒットに、会場からどよめきが起こる。
 吹っ飛んだ元橋の体がリングを転がり、ロープ際でようやく止まる。追い討ちに出ようとしたビクトリアよりも速く、ロープを掴んで立ち上がる。
「やれやれ、油断できないとわかっていた筈なんですが」
 軽く頬骨を叩きながら元橋がぼやく。直前に上半身の脱力と下半身の力で拳の軌道と反対に飛び、ダメージを最小限に抑えていたお陰だった。
(やっぱり、このパンチは破壊力が落ちるわね)
 軸足をずらせば、力もまたずれてしまう。体重の乗った一撃は放てず、一発KOとはならなかった。
(でも、確実に効いた筈。ここで決めないと、逆転される!)
 元橋ほどの実力者に回復する間を与えてはならない。ジャブのフェイントから元橋の道衣の袖を掴む。
「捕まえた!」
 腕力で引き寄せようとした瞬間、足がリングから離れていた。
「えっ・・・」
 予想した未来と違う状況に思考が付いて行けず、気づいたときには背中からリングに落とされていた。
「勝ちを焦りましたな」
 耳元に囁かれたときには既に左腕を背中側で極められ、しかも自分の咽喉前を通った右腕を元橋の左手に捕らえられていた。胴にも背後から元橋の脚が巻きついている。
(なに、この技・・・っ!)
 脱出しようと力を込めると、膨張した右腕の筋肉で咽喉元が圧迫される。
(それなら・・・えっ?)
 両足でリングを蹴ろうとしたとき、元橋の手が優しく、素早くブラをずらした。露わになった美巨乳に、観客席から拍手混じりの野次が飛ばされる。羞恥に思わず力が抜ける。
「相変わらず大きいですなぁ」
 その剥き出しとなった乳房を元橋の手が撫でる。
「はぅぅっ!」
 元橋の手が乳房を撫でるたび、稲妻のような快感が奔る。
(嘘、前回より凄い! こっちの責めも本気になったってこと!?)
 内心慄きながらも、なんとか拘束から逃れようと両足をバタつかせる。しかし乳房への刺激が動きを止め、無理やり快感を高められてしまう。
 やがて、女の官能が乳首にまで広がってきた。
「ここも硬くなってきましたよ」
 元橋の指が乳首を転がすと、まるで電流を流されたようだった。
「んぁぁっ!」
 自然と声が洩れていた。乳首と乳房だけしか弄られていないのに、性感が刺激され、屈辱を感じる間もなく喘ぎ声を洩らしてしまう。
「さて・・・」
 ビクトリアを責めていた元橋が、不意に胴の絞めを解く。するとなぜか観客席が沸いた。
(えっ、嘘!?)
 元橋が足の指だけで短パンのボタンを外し、ジッパーを下ろし、下着が見えるまで短パンを下ろしてしまったのだ。足指の器用さに驚くよりも、先程を上回る羞恥がビクトリアを襲う。
「これで諦めてくれるビクトリアさんでもありませんから、ここをこうして」
「きゃぁぁぁっ!」
 いきなりビクトリアが叫ぶ。元橋が両足でビクトリアの太ももを割ったことで、ビクトリアは大股開きで拘束されていた。ベージュのショーツが観客の目にはっきりと晒される。
「いい格好だなぁビクトリア選手。ギブアップするか?」
「しないわ!」
 反射的に叫んだビクトリアだったが、その顔は赤い。
「だとさ、元橋さん」
「そうですか、ならば仕方ありませんなぁ」
 ビクトリアの右乳房を弾ませた元橋は、乳房の下弦、普段は隠されている部位をくすぐるように撫で始めた。
「あふっ! ふあぁっ!」
 普段は日光も当たらない根元を優しく責められ、ビクトリアの口から意図せぬ吐息が洩れる。
(こ、これくらいのこと・・・あああっ!)
 いきなり乳首を扱かれ、鋭い刺激に身体が跳ねる。しかし拘束された身体では満足に動けず、快感を逃がせない。
(駄目、胸だけなのにこんなにされて・・・あふぅっ!)
 いきなり秘部が撫でられた。胸への刺激を耐えようとしていたビクトリアにとっては不意打ちだった。
「んんんっ! そ、そこ、は・・・!」
「気持ち良くはないですかな?」
 あくまでも優しく責めながら、元橋がわざとらしく確認してくる。反論しようとしても、ビクトリアの口から洩れるのは喘ぎ声だった。
「ふっく、んっ・・・んぁぁっ!」
 乳房かと思えば秘部、秘部かと思えば乳首。まるでビクトリアの意識がどこに向かっているのかがわかっているかのように、元橋の手はビクトリアを責め立ててくる。
「随分といい表情になってきてるぞ。ギブアップしたくなっただろ?」
 レフェリーの嬲るような口調に、ビクトリアは必死に首を振ろうとした。
(ま、負けない! 絶対に、負けは認めないんだからぁ・・・!)
 身中を荒れ狂う快楽の嵐に翻弄されながらも、ビクトリアは決してギブアップを言おうとはしなかった。
「頑張りますなぁ、ビクトリアさん。素直にギブアップを言えば、辱めも終わるものを」
 優しく乳首をあやしながら、元橋が囁く。
「んっ、う、るさ・・・んぁぁあっ!」
 口を開けば嬌声が洩れてしまう。
「それならば、このまま快楽で追い詰めるとしますかな」
 元橋の宣言と同時に、捕らえられていた右手が自由になる。
(チャンス・・・なの、に・・・)
 反撃の好機だというのに、身体が思うように動いてくれない。唇を食いしばり、肘打ちを放とうとした瞬間、両方の乳首を弾かれた。
「あぅぅぅんっ!」
 出鼻を強烈過ぎる一撃で挫かれ、後は元橋の為すがままだった。Hカップの乳房を揉まれ、硬く立ち上がった乳首を扱かれ、尻を撫でられ、ショーツの上からとは言え秘部を弄られ、秘裂をなぞられる。
(も、もう、いいかげんにしてよ・・・!)
 思いを言葉にすることすらできず、元橋の手が動くたび身体が跳ねる。
「今日はまた特別感じやすいですなぁ」
「ふぅぁっ!?」
 猫のように咽喉を擦られ、それだけで官能が高められてしまう。
「はっ、ふぅっ、んっ・・・いぎぃっ!」
 最早自分が抵抗しようとしているのか、快楽から逃れようとしているのかわからない。
(まずいわ・・・きちゃう・・・っ!)
 官能の大渦が巨大な波をつくり、ビクトリアの理性に襲い掛かる。
(いやっ、もう・・・駄目ぇっ!)
「あああぁぁぁ・・・っ!」
 屈服の叫びを捧げたビクトリアは、遂には潮を吹き、盛大な痙攣を起こした。すると元橋が技を解き、ビクトリアから離れる。
 元橋から無言で促されたレフェリーが、ビクトリアの目の前で何度も手を振るが、反応がない。ビクトリアが戦闘不能と見て、レフェリーがゴングを要請した。

<カンカンカン!>

 ゴングを聞いた元橋は、静かにリングを後にした。
 リベンジに失敗し、またも敗北を味わったビクトリアは、半裸のままリングに横たわり、絶頂の余韻に身を震わせ続けていた。ショーツは自らの愛液に濡れ光り、下腹部の翳りが薄っすらと透けていた。


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