【第九十五話 笹塚水華:ボクシング & 鴉箕まほろ:テコンドー】

 犠牲者の名は「笹塚(ささづか)水華(みか)」。23歳。身長158cm、B85(Dカップ)・W58・H87。今年から小学校で教鞭をとることとなった新人教師。肩までの長さの黒髪と優しげな眼差しを持つ。楚々とした風貌ながら明るい性格で、子供たちだけでなく両親(特に父親)にも人気が高い。スーツ姿に隠された肢体は魅力的で、形の良いバストも然ることながら股下81cmという美脚の持ち主。
 嘗て二度<地下闘艶場>のリングに上がり、一度目はシングルマッチで敗北。二度目は森下恋とのタッグマッチで勝利を挙げた。もう二度と<地下闘艶場>に出場するつもりはなかったが、<地下闘艶場>の運営委員会はしつこかった。
 またも届いた招待状に一応目を通した水華は、思わず固まっていた。そこには、もし水華が出場を断れば、タッグマッチのパートナーに一人で男性二人を相手にしてもらう、と書いてあったのだ。
 自分の所為でパートナーが一人で闘わされる。そう告げられては、水華の性格では断れるわけもなかった。

 もう一人の犠牲者の名は「鴉箕(からすみ)まほろ」。22歳。身長161cm、B87(Eカップ)・W58・H92。長髪をダークブラウンに染めて結い上げ、切れ長の目と薄眉が特徴的。普段は美容師として働いており、休日は町のテコンドー道場で汗を流す。客や友人には親しげな態度で接するが、嫌いな人間や興味のない相手にはとことん冷たい態度を取るという二面性を持つ。
 以前<地下闘艶場>で闘わされた経験があり、そのときには見事な勝利を挙げた。セクハラ三昧の試合にもう二度と参戦するつもりはなかったが、それでも高額のファイトマネーを提示されると心が揺らいだ。今回はタッグマッチだと告げられ、味方が居るのならばとまほろは参戦を承諾した。


 ガウン姿の美女二人が花道に姿を現した途端、観客席から凄まじい歓声が起こった。水華は恥ずかしげに身を縮ませ、まほろは不機嫌な表情で花道を進む。
 二人は対照的な表情のままで、リングへと辿り着いた。

「赤コーナー、『地に潜む蜘蛛』、マスク・ド・タランチュラ! & 『ヘタレキング』、早矢仕杜丸!」
 二人を待ち構えていたのは、蜘蛛のマスクと長い腕が特徴のマスク・ド・タランチュラと、ヘタレキャラが定着した早矢仕杜丸だった。
「青コーナー、"魅惑の美脚"、『キューティ・ティーチャー』、笹塚水華先生! & 『ビューティ・ビューティシャン』、鴉箕まほろ!」
 二人の名前がコールされ、教えられたとおりにガウンを脱ぐ。
 二人が身に着けていたのは、まるでハワイアンダンスのダンサーのような衣装だった。上は椰子の実のプリントがされたビキニブラ、下は腰蓑がプリントされたパレオのようなスカート。スカートの右側は足元まであるものの、左側は膝上までしかなく、二人の美脚が良く見える。
 リング内外から突き刺さってくる欲望の視線に、水華は恥ずかしげに、まほろは不快感を隠そうともせずに立っていた。

 男性選手二人のボディチェックを簡単に終えたレフェリーは、にやつきながら水華とまほろに向かう。
「さぁて、これからボディチェック、を・・・」
「またあんなセクハラするつもり? もしそのつもりなら、試合前にその顔変形させてやるわよ」
 まほろの冷たい視線に、レフェリーは固唾を飲んでいた。
「そ、そんなわけないじゃないか。形だけのものだよ、形だけ」
 レフェリーは水華とまほろに軽く触るだけでボディチェックを終え、すぐにゴングを要請した。

<カーン!>

「ヘマすんなよ、ヘタレ」
「任せてくださいよタラさん!」
「誰がタラさんだ!」
 コーナーに下がったマスク・ド・タランチュラとリングに残った早矢仕が、ポスト越しに間の抜けた会話を交わす。
「試合は始まってるんだけどねっ!」
 その早矢仕の背中を、まほろが蹴り飛ばす。
「あぐべっ!」
 そのまま吹き飛んだ早矢仕は、自軍のコーナーポストに衝突する。
「あいったぁ・・・」
「だから言っただろうが、ヘマすんな、って」
「うへぇ、面目ない」
 背中を押さえたまま頭を掻く早矢仕に、マスク・ド・タランチュラが冷たく告げる。
「もういい、下がってろ」
「え? でも」
「お前じゃあのお姉ちゃんの相手は無理だ。代われ」
「・・・ういっす」
 渋々ながら早矢仕が下がり、マスク・ド・タランチュラがリングインする。
(随分と長い腕ね。私の脚より長いみたい)
 マスク・ド・タランチュラのだらりと垂らされた腕は、自分の膝までも楽に届くほどの長さだ。まほろは小刻みなステップで間合いを測り、そのたびにEカップのバストが揺れる。
(慎重になったほうがいいのはわかるけど・・・待つのは性に合わないのよねっ!)
 一気に前に出たまほろの左回し蹴りが、見事にマスク・ド・タランチュラの右脇腹を捉える。
「いってぇ! だが捕まえたぜ!」
 マスク・ド・タランチュラの長い右腕が伸ばされ、まほろの咽喉元を掴むと同時に宙に浮かせる。
「まず・・・っ!」
 意識した瞬間、既に体が動いていた。マスク・ド・タランチュラの顔面を蹴り、その反動でリングに落ちる。
「ぐうっ!」
 技をまともには食らわなかったものの、受身を取り損ねて痛みに呻く。
「まほろさん、替わります!」
「・・・ごめん、任せた」
 差し出された水華の手に触れ、自軍コーナーに戻る。
「あいててて、あの状態から蹴りを出すかよ・・・」
 鼻を擦ったマスク・ド・タランチュラだったが、リングインした水華に喜色を浮かべる。
「お、水華先生の登場か! へへへ・・・」
 マスク・ド・タランチュラの粘つくような視線が、水華の胸元、腹部、太ももなどを這いずり回る。唇を噛む水華だったが、下がろうとはしない。
「それじゃ、また鬼ごっこといきますか!」
 マスク・ド・タランチュラが長い腕を伸ばし、水華へと迫る。しかし少し様になったステップワークで、水華はマスク・ド・タランチュラの腕を掻い潜る。
「水華先生は鬼ごっこが上手くなったなぁ。なかなか捕まえられないぜ」
 それでもまるで焦る様子を見せず、マスク・ド・タランチュラは長い腕を振り回す。そのときだった。
「隙ありー!」
「えっ!?」
 なんと、いきなり早矢仕が水華へと抱きついてきたのだ。
「レフェリー、これは反則です!」
「プロレスは5カウントまでは反則にならないからな」
 押し倒されながらも反則を指摘した水華だったが、レフェリーは取り合おうとしない。
「でかした早矢仕! それじゃ、水華先生と遊ぶ時間の始まりだ!」
 嬉しげに叫んだマスク・ド・タランチュラが、水華へとその長い腕を伸ばした。
「水華!」
 水華を救うため、リングに飛び込もうとしたまほろだったが、いきなりリング下に引きずり下ろされていた。
「なにして・・・っ!?」
 驚く間もなく宙を舞う。
「げはぁっ!」
 マットが敷かれているとは言え、場外の硬い床の上に投げ落とされる。並みの衝撃ではなかった。呻くまほろの上に、男が馬乗りになる。よく早矢仕とタッグを組むコンテ・大倉だった。
「そう焦って乱入しようとするなよ。俺と遊ぼうぜ」
 まほろの頬をぴたぴたと叩いた大倉は、まほろのバストに手を伸ばす。
「・・・触ったら、半殺しにするから」
「くくっ、気の強い女だな。だが、そういう鼻っ柱の強い女を嬲るのがまた楽しくてな」
 まほろのバストを揉みながら、大倉が笑う。
「絶対許さないから!」
「そういう科白は、動ける状態で言いな」
 まほろのきつい視線も、大倉の手を止めることはできなかった。

「水華先生のおっぱいの感触も久しぶり! いやー、たまんないですねタラさん!」
「タラさんって呼ぶなって言っただろ! 記憶力ないのか!」
「このヘタレに常識を求めるな」
 水華の身体に群がった早矢仕、マスク・ド・タランチュラ、レフェリーは、思い思いに水華の身体を弄り回す。
「いやっ! 放して、どいてください!」
 必死に抗おうとする水華だったが、成人男性三人が相手では空しい抵抗だった。
「水華先生は水着姿も色っぽいなぁ。見ろよ、この長い脚!」
 水華の足首を持ち上げたマスク・ド・タランチュラは、水華の剥き出しの太ももから脹脛まで厭らしく撫でる。
「だから、こうやって広げたくなるんだよな」
 水華の両足首を持ったマスク・ド・タランチュラは、水華に開脚を強いる。
「きゃあああっ!」
 羞恥から水華が悲鳴を上げる。
「見てみろよ、この長さ。さすが水華先生だ」
「やっぱり凄いな。これだけ長くて美脚、しかもおっぱいの感触も上々ときた。教師なのが勿体ないな」
「俺は脚よりもおっぱい派っす! 水華先生のおっぱい、揉めば揉むほど気持ちいい!
 男たちがそれぞれ勝手なことを言いながら、水華の身体を堪能する。
(どうすれば・・・どうすれば逃げられるの?)
 水華は唇を噛み、男たちから与えられる刺激を耐え続けた。

「お、パートナーもおっぱい揉まれてるぜ」
 未だにまほろのバストを揉んでいる大倉が、リングの上を見てまほろに告げる。
「どいつもこいつも変態ね。まともに試合もできないの?」
「男の本能に忠実なだけだ。それに、ここの観客はまともな試合なんざ望んでないしな」
 ふざけた科白を返し、大倉は円を描くようにしてバストを揉み回す。まほろの眼光が鋭さを増した。
「・・・いいかげんにやめないと、大変よ」
「へえ、どう大変なんだ?」
 まほろのバストを揉みながら、大倉が嘲笑う。
「こうなんの、よっ!」
 一瞬膝を曲げることで空間を生み、その隙間を利用したまほろの膝が大倉の股間を捉えていた。
「うぐ・・・お・・・」
 股間を押さえて蹲る大倉に止めを刺そうか一瞬迷ったまほろだったが、水華の救出が先だとリングに上がる。それに気づいたマスク・ド・タランチュラが素早く立ち上がる。
「ヘタレ、お前はレフェリーと一緒に水華先生と遊んでろ」
「アイアイサー!」
 一度敬礼して見せた早矢仕は、すぐさま水華に圧し掛かる。その光景に、まほろが腹立たしげに言葉を投げる。
「今退けば、痛いだけで済ませてあげるわ」
「おーこわ。こんだけ気の強いお姉ちゃんも久しぶりだな」
 マスク・ド・タランチュラは唇の端を上げることで応える。
「ふしっ!」
 先に動いたのはまほろだった。予備動作もなしにハイキックを放ったのだ。
「うおっと・・・ぐはっ!?」
 頭部をガードしたマスク・ド・タランチュラだったが、まほろの蹴りはありえない軌道を描いた。一度跳ね上がった右脚が畳まれ、同時に左のミドルキックが突き刺さっていたのだ。
「くそっ!」
 まほろの左脚を抱え込もうとしたマスク・ド・タランチュラだったが、そのときには脚は引かれており、まほろの連打が始まった。右脇、鳩尾、左腹部、右太もも、右膝、左内腿など、凄まじいスピードで蹴りがめり込んでいく。
「ぬぐぐ・・・プロレスラーの耐久力を、舐めんなよっ!」
 蹴りには蹴りとばかり、マスク・ド・タランチュラがローキックを放つ。
「シッ!」
 それを軽く飛び越えながら、まほろが左横蹴りで腹筋を捉える。
「こなくそっ!」
 マスク・ド・タランチュラも長い腕を伸ばし、まほろのパレオを掴んで回転させるように引っ張る。
「このっ!」
 凄まじい柔軟性を見せ、体勢を崩しながらもまほろの右脚が跳ね上がる。しかし不自然な体勢から放たれた蹴りに、いつもの威力はなかった。
「おっと」
 危うく右足首を掴んだマスク・ド・タランチュラは、間髪入れずに長い腕を伸ばし、まほろの左足首を掴む。掴むと同時に一気に引き上げる。
「ほーら、大股開きの大サービスだ!」
「ちょ、ちょっと!」
 恥ずかしさから、さすがのまほろも股間を隠す。
「からの・・・そおら、大開脚パワーボム!」
(まずっ・・・!)
 一度引き上げられた体が、リングに向かって落ちていく。
「がはぁっ!」
 受身を取り損ね、肺の空気を全て吐き出してしまう。
「あっ・・・ぐふっ・・・」
 中々息を吸えず、まほろの動きが完全に止まる。
「それじゃ・・・いつものやつ、行くぜ!」
 マスク・ド・タランチュラの宣言に、会場が大きく沸く。
 まほろの背後で仰向けになったマスク・ド・タランチュラは、その長い左腕でまほろの両腕を上部で纏める。そして両脚をまほろの太ももの間に差し入れ、開脚を強いる。
 完成したのは、マスク・ド・タランチュラのフェイバリットホールド・<タランチュラホールド>だった。
「くっ・・・」
 もがくまほろだったが、四肢を極められた上に痛みと酸素不足で弱々しい動きにしかならない。
「さてと。お楽しみタ〜イムの開始だ!」
 マスク・ド・タランチュラは自由に動かせる右手を伸ばし、まほろのEカップのバストを掴む。
(こいつら、どいつもこいつも!)
 バストを揉まれる不快感にまほろの眉が寄る。そこに影が落ちた。
「さっきはよくもやってくたな」
 ようやく股間の痛みから立ち直った大倉だった。怒りの表情を浮かべたまま、まほろに腹部に容赦ないパンチを入れる。
「あがっ、ごほっ、ごほっ!」
 よけようもなくまともに食らったまほろが咳き込む。
「おいおい、女の子を殴るなよ。女の子はこうやって触るもんだぜ」
 まほろの右バストを揉みながら、マスク・ド・タランチュラがのほほんと話す。
「ふん」
 鼻を鳴らした大倉は、左のバストに手を伸ばす。
「まったく、気の強い女はちょっと油断すると噛みついてきやがる」
 自らを落ち着かせるように、まほろのバストをゆっくりと揉む。
「折角だ、生のおっぱい披露といくか?」
「お、いいねぇ」
 大倉の提案にマスク・ド・タランチュラが頷く。
「あんたら、何言って・・・」
「それじゃ、サービスタイムだ!」
 まほろのブラを掴んだ大倉が、引き千切るようにして剥がす。途端、Eカップを誇る乳房がまろび出る。
「水着の上からでもでかいのがわかってたけど、直に見るとまたデカいな」
 まほろの乳房を下から弾ませた大倉が、改めて揉み始める。
「この大きさだと、Eカップかな? そうだ、今日はまほろちゃんのおっぱいを揉みまくって、サイズアップに貢献しよう」
 マスク・ド・タランチュラは勝手なことを言いながら右の乳房を揉みくちゃにする。
「この変態共、やめるなら今のうちよ!」
「口が悪いな」
 乳房から手を放した大倉が、水着のボトムの上から秘部を撫で回す。
「っ!」
「おいおい、そこはまだ俺が触ってないんだぞ」
「早い者勝ちだろうが」
 マスク・ド・タランチュラの文句にも大倉は取り合わず、秘部の感触を堪能する。
「絶対に許さない・・・絶対、半殺しにしてやるから!」
「へえ。この状態でどうやって俺を半殺しにするんだ?」
 まほろの秘部を弄りながら、大倉が嘲笑う。
「そうそう、まほろちゃんはおっぱい揉まれて喜んでればいいんだよ」
 まほろの乳房を揉みながら、マスク・ド・タランチュラが耳を舐める。
(こいつら・・・絶対に許さない!)
 まほろの突き刺すような視線も、男二人の責めを止めさせることはできなかった。

「い、いいかげんに、きちんとした試合に戻してください!」
 水華の当然の要求だったが、レフェリーと早矢仕はまるで取り合わなかった。
「なーに、今はボディチェックをしているだけだ。勘違いしちゃ駄目だぞ、笹塚先生」
「俺、水華先生を押さえ込んでるだけだよ? てことは、ちゃんと試合してるってことじゃない?」
 男たちは勝手な理屈で言い訳し、水華の身体を弄り続ける。
「水華先生の乳首は・・・ここかな〜?」
 早矢仕がバストの真ん中を強く押す。あまりに強く押したため、水着のブラが少しずれる。
「やめてください、胸が・・・」
「ん? 胸がなんだ?」
 水華のか細い声に、レフェリーが耳を寄せる。
「む、胸が見えてしまいます。お願いします、それだけは・・・」
「そうなのか。そこまで言うならやめてもいいぞ」
「本当・・・ですか?」
 半信半疑ながらも問い返した水華に、レフェリーは頷く。
「これはプロレスルールだからな、観客が望まないことはしないさ」
 頷いて見せたレフェリーは、観客席へと顔を向けた。
「観客の皆さん! 笹塚先生のおっぱいを・・・見たいかーーーっ!?」
 レフェリーの問いかけに、怒号のような雄叫びが応える。その瞬間、会場が一体となった。
「な、お客さんが望んでるんだよ。諦めて・・・おっぱい披露しな!」
 レフェリーがブラに手を掛け、一気に剥ぎ取った。
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
 水華のDカップの美乳が、初めて男たちの視線に晒される。
「ふわあ・・・これが水華先生のおっぱいかぁ」
 早矢仕のまじまじと見つめる視線の先に、微かに揺れる水華の乳房がある。
「ひ、酷いです、こんな・・・」
 あまりの羞恥に、水華は涙ぐんでいた。
「おいおい笹塚先生、これくらいで参ってちゃ駄目だぞ」
 水華の乳房を見つめていたレフェリーは、右手の人差し指でつついた。
「な、何を・・・!」
「なんだ、まさか見られるだけで終わるとでも思ってたのか? 水華先生は本当に初心だな」
 舌舐めずりしたレフェリーは、水華の両乳房を鷲掴みにした。
「男が女のおっぱい見るだけで満足するわけないだろ?」
 水華の乳房を揉みながら、レフェリーが下卑た笑みを浮かべる。
「教え子の男親だって、笹塚先生の胸を服の上からじっくりねっとり見てるに決まってる。男なんてそんなもんだ」
「そ、そんなわけありません! 皆さんいい人で・・・いやっ!」
 水華の反論を乳首を弄ることでやめさせ、レフェリーがにやつく。
「笹塚先生は男と言う奴が良くわかってないようだな。今日は、男がどれだけ厭らしいのかをたっぷりと教えてやるよ」
 レフェリーの浮かべる笑みと言葉の内容に、水華は震えることしかできなかった。

「触るなって言ってるでしょ!」
 一方、まほろは未だに<タランチュラホールド>を掛けられたままマスク・ド・タランチュラと大倉に嬲られていた。
「口だけで咆えてないで、やめさせてみろよ」
 せせら笑った大倉が、ボトムの上から淫核の辺りをつつく。
「いつまでこんなこと・・・!」
「いつまでって、俺達が飽きるまでさ」
 マスク・ド・タランチュラのふざけた科白に、まほろの目からふっと表情が消えた。
「そう・・・私はもう、とっくの昔に飽きてるけどね!」
 まほろの足が、するりと抜け出ていた。抜けると同時に膝を曲げ、マスク・ド・タランチュラの股間に踵を入れる。
「んごふぉっ!?」
 男性の急所を蹴られたマスク・ド・タランチュラは<タランチュラホールド>を解いてしまった。その瞬間まほろは大倉の頭部を掴み、顔面に膝を突き刺す。素早く転がってから立ち上がると、容赦なくどてっ腹に爪先を叩き込む。
 悶絶する大倉はもう見ず、マスク・ド・タランチュラを睨みつける。
「嘘だろ・・・あれだけがっちり決まってたのに・・・」
 股間の痛みに蹲っていたマスク・ド・タランチュラは、まほろの体の柔軟性を甘く見すぎていた。テコンドーでは柔軟性を重視し、まほろも前後左右に百八十度開脚できるほどだ。
 そのまほろが、鬼でも殺せそうな視線をマスク・ド・タランチュラに突き刺してくる。
「まほろちゃん、ちょ、ちょっとタイム」
「ふざけんじゃないわよ」
 下からの蹴り上げでマスク・ド・タランチュラを上向かせ、まほろがきつい視線を突き刺す。
「言ったでしょ? 絶対に半殺しにする、って」
 宣言と同時に、凄まじい連打が始まった。マスク・ド・タランチュラの頭部が前後左右に跳ね回り、連打が止まった途端、リングへと倒れ込んだまま痙攣を起こす。

<カンカンカン!>

 その危険な状態に、堪らずゴングが鳴らされた。
「どけ変態!」
 ゴングを聞いたまほろは水華に圧し掛かっていた早矢仕を蹴り飛ばす。レフェリーはゴングが鳴る前から避難している。
「水華、立てる?」
「はい・・・あっ」
 立ち上がろうとした水華だったが、闘いと長時間受け続けたセクハラに体力を消耗し、膝に力が入らない。まほろの腕を借り、胸元を隠しながら立ち上がる。
「それじゃ、堂々と帰りましょ」
「はい・・・あっ!」
 頷きかけた水華が警告を発しようとする。しかし一瞬遅かった。飛び出した影がまほろへと低くタックルを決め、水華を弾き飛ばしてまほろをマウントポジションに捕らえていた。
「やってくれたな姉ちゃん」
 額を赤く腫らし、腹部に丸い痣ができた大倉だった。
「もう試合は終わったでしょ! どきなさいよ!」
「なに、ここからは俺らの憂さ晴らしさ」
 そう嘯いた大倉が、唇の端を歪めたままパウンドを落とす。
「えぐっ!」
 正確に鳩尾を抉った一撃に、まほろが身を捩ろうとする。しかし更に大倉が鳩尾へと拳を落とし、避けることもできずに悶絶する。
「どうだ、少しは思い知ったか?」
 大倉はまほろの乳房を鷲掴みにし、乱暴な手つきで揉み回す。
(まずい、このままじゃ・・・)
 ここからはまともな試合が行われるとは思えない。ならば。
「水華、逃げて!」
 痛みを堪え、水華に逃げるよう促す。
「逃げてもいいぜ、水華先生。その分、このお姉ちゃんとたっぷり遊ばせて貰うけどなぁ」
 まほろの乳房を揉みながら、大倉が下卑た笑みを浮かべる。
(ああ・・・)
 真面目な水華は、まほろを見捨てて逃げることなどできない。
「おお痛ぇ・・・やっと治まってきたぜ」
 頭部の痛みに頭を振り、股間の痛みに腰の後ろを叩いていたマスク・ド・タランチュラが立ち上がり、大倉の傍に寄る。
「俺も参加させろよ」
 しゃがみ込んだマスク・ド・タランチュラもまほろに手を伸ばし、セクハラに加わる。
「まほろちゃん、試合中のお返しはエロ攻撃で返すからそのつもりでいろよ」
「この変態共・・・水華! 早く逃げなさい!」
 まほろはそれでも水華に逃げろと言った。自分とは違い、男性に耐性がなく、嬲られることにどれだけ傷心を与えられるのかわからなかったからだ。
「でも・・・私・・・」
 しかし水華にとってみれば、ここで逃げることはまほろへの裏切りだ。短い間とは言え、一緒に闘った仲間を見捨てることなどできなかった。
「もしかして、先生はこのお姉ちゃんのセクハラをじっくりと見たい、ってことか?」
「なんだ、そうならそうと言ってくれればサービスするぜ」
 大倉とマスク・ド・タランチュラはまほろを立たせ、わざわざ水華に見えやすいようにしていたぶる。剥き出しの乳房を二人掛かりで揉み回し、乳首を捏ね、秘部を弄る。
「くっ、この!」
 痛みと疲労の所為で、まほろは男二人を撥ね退けることができず、いいように身体を弄られてしまう。そのとき、水華が唇を開いた。
「私が、まほろさんの代わりを引き受けます、ですから・・・ですから、まほろさんに厭らしいことをするのはやめてください」
 その凛とした言い様に、マスク・ド・タランチュラも大倉も水華へと視線を送る。
「水華! そんなことしなくてもいい! 私なら平気だから!」
 乳房を揉まれ、秘部を弄られながらも、まほろは水華に意地を張った。
「よしわかった」
 いつの間にか水華の前に立ったレフェリーが大きく頷く。
「今からレフェリーである俺が笹塚先生の覚悟を確かめるから、その間鴉箕選手には手を出すなよ」
「仕方ねぇな。大倉、我慢しようぜ」
「ちっ、レフェリーにいいとこを持っていかれたぜ」
 悪態を吐きながらも、マスク・ド・タランチュラも大倉もまほろへのセクハラを止め、動きを封じるだけにする。
「それじゃ笹塚先生、鴉箕選手の代わりを務めて貰うぞ。まずは気をつけをして貰おうか」
「・・・はい」
 胸元を隠していた水華は、震える両腕を下ろし、脇へと垂らす。頬は恥ずかしげに染められ、その風情に観客席から指笛が飛ぶ。
「それじゃ、始めるとしようか」
 そう言った途端、レフェリーは両手で水華の乳房を鷲掴みにした。
「っ!」
 一瞬ぴくりと身を震わせた水華だったが、それでも綺麗な気をつけをしたまま、乳房を揉まれ続ける。
「水華・・・」
 その光景に、まほろが強く唇を噛む。
「おいおい、折角水華先生が身体を張ってお前の身代わりをしてくれてるんだ。もうちょっと感謝したらどうだ?」
 まほろをがっちりと捕らえたまま、大倉が嘲りの言葉を投げる。しかし約束を守り、余計な手出しはしない。
(こいつら・・・でも、水華、ごめん)
 心の中で水華に詫び、まほろは俯いた。
「さすが笹塚先生、一度口に出したことは守るんだな」
 水華の乳房を揉み回してレフェリーは、感心したように呟く。しかしその手は全く止まらず、Dカップの乳房の感触を堪能する。
「どれ、こっちはどうだ?」
 右手は乳房から放れず、左手だけが下りていく。左手は水華の水着のボトムに達し、秘部の上を撫で回す。
「っ・・・!」
 それでも水華は唇を噛み、逃げようとする体を必死に留めた。
「こんなに触られても逃げようとはしないなんて、笹塚先生も随分と厭らしいことに慣れたもんだな」
「それは・・・」
 水華は反論しようしてまた口を閉じる。こういう場合、言い返せば相手が更に喜ぶのがわかったからだ。
「黙るってことは認めたのかな? まあいい、こっちは楽しませて貰うだけだ」
 レフェリーが両手を蠢かせ、水華の乳房、乳首、ヒップ、太もも、秘部などを這いずり回る。
「うっ・・・くぅっ・・・」
 男性の欲望塗れの手つきから生じる忌避感に、水華の口から時折呻き声が零れる。それでも仲間のため、まほろのためだと必死に耐える。
「中々頑張るじゃないか笹塚先生。それじゃ、本番と行こうか?」
 にやけた笑みと共にしゃがみ込んだレフェリーが、水着のボトムを掴む。
「それだけは!」
 唯一残されたボトムを庇い、水華が後ずさる。
「水華先生、約束違反だぜ。なら、こっちも約束は守れないなぁ!」
 マスク・ド・タランチュラの言葉を合図とし、まほろに男たちが襲い掛かる。
「あんたら! やめ・・・!」
 蹴りを出そうとしたまほろだったが、誰かに足を刈られ、リングへと押し倒される。そのまま乳房、乳首、太もも、ヒップ、秘部などあちこちを揉みくちゃにされる。
 いつしか、水着のボトムまでもが奪われていた。纏うものは汗とだけとなったまほろに、欲望剥き出しの男たちが圧し掛かる。
「ああ、まほろさん・・・」
「笹塚先生、こっちも楽しもうぜ?」
 レフェリーが背後から抱きつき、水華の乳房を揉みしだく。
「あっ、そんな!」
 いきなりのことに、水華はただ手を振り回し、逃れようとする。疲労と焦燥が、コツコツと積み上げたボクシング技術を忘れさせていた。
「放して、放してください!」
 身を捩る水華の視界に、近寄ってくる早矢仕の姿が目に入る。
「あっちは大倉さんとタラさんがお楽しみなんで、俺は水華先生と楽しんじゃおっと!」
「ああ・・・いやぁ・・・」
 両手を開閉させながら迫る早矢仕に、水華はただ首を振るだけだった。

「残念だったなぁまほろちゃん。水華先生が我慢できなかったから、また俺らと遊んで貰うぜ」
 まほろの乳房を揉み回しながら、マスク・ド・タランチュラがにやにやと笑う。
「最初から約束なんて守るつもりなかったくせに! だいたい・・・っ!」
 更に言い募ろうとしたまほろは、淫核への刺激で口を閉じた。
「言い掛かりをつけるなよ。ええ?」
 大倉はまほろが黙ったと見て、今度は秘部をなぞり上げる。
「くそっ、どけっ!」
 抗おうと必死に首を振った拍子に、結い上げ束ねていた髪が解けた。職業柄手入れを怠らず、艶やかに光るダークブラウンの髪がリングの上へと広がる。
「髪を下ろしたまほろちゃんもいいじゃないか。髪長いんだな」
 まほろの髪を撫でてきたマスク・ド・タランチュラに、凄まじい視線を突き刺す。
「おっかねぇなぁ、おい。まあいい、その分はこうやってお返しだ!」
 マスク・ド・タランチュラは乳首を摘み、細かく揺すって振動を送り込む。
「くぅぅっ!」
 必死に声を堪えるまほろだったが、その息は既に荒くなっている。多数の男たちと闘いを強いられただけでなく、長時間に渡ってセクハラを受け続けているのだ。体力を消耗しているのは当然だった。
「なんだかんだ言っても、まほろちゃんも感じてくれてるじゃないか。もうちょっと素直になってもいいんだぜ?」
「誰がっ!」
「まあいいさ、俺たちが飽きるまでは付き合って貰うからな」
 秘部に浅く指を埋めてくる大倉の冷たい瞳に、まほろは慄然とせざるを得なかった。

「ああ! やめて、やめてください!」
 水華は背後からレフェリーに両方の乳房を揉まれ、ボトムの上から早矢仕に秘部を弄られていた。相手を殴り飛すということも思いつかず、いいように嬲られてしまう。
「よーし、それじゃ水華先生も脱ぎ脱ぎしようね」
 早矢仕が水着のボトムに手を掛け下ろそうとする。
「駄目っ、駄目です!」
 水華は乳房と乳首への刺激を堪え、ボトムを必死に掴んで引っ張る。
「そんなこと言われても、俺だけじゃなくて皆見たいんだよ」
「いいえ、そんなことありません!」
「男は女のアソコを見たいんだよ笹塚先生。しかも綺麗どころとくれば尚更だ」
 レフェリーは乳房を揉み込みながら、水華の耳元で囁く。
「違う、違います!」
 首を振る水華に業を煮やしたのか、早矢仕が観客のほうを向く。
「みんな〜ぁ、皆も水華先生のアソコ・・・見たいよねー!?」
 早矢仕の問いかけに、今日一番の大歓声が起こる。
「ほらぁ、皆水華先生のヌードが見たいってさ!」
「観客が望むんじゃしょうがないよなぁ」
 早矢仕とレフェリーの言葉にも水華は首を振る。
「嫌です、それだけは許してください!」
「あまり我が侭言うもんじゃないぞ、笹塚先生」
 レフェリーが尖った乳首を強く摘み、痛みに力が抜ける。
「隙ありー!」
 それを見逃さず、早矢仕が水着を一気に膝下までずり下ろす。
「ああっ! 駄目です、それだけは・・・!」
「もう遅いよ。水華先生の水着・・・取ったどー!」
 水華の足首から水着のボトムを抜き、膝立ちの早矢仕が高々と掲げる。その光景に、更に観客席が沸いた。
「酷い・・・酷いですよっ!」
「あぐべっ!」
 水華が早矢仕の腹部に蹴りを入れる。油断していたところにまともにくらい、早矢仕がダウンする。
「あいたたた・・・あ、でも水華先生のアソコがもろ見え!」
「っ!」
 慌てて足を閉じた水華だったが、それでは終わらなかった。
「もっと見せてよ水華先生!」
 飛びついた早矢仕が、膝頭を掴んでぐいと開いたのだ。
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
 リングに水華の悲鳴が響き渡る。初めて秘部を異性に晒されたことは、とてつもない羞恥だった。手で隠そうとしても、レフェリーが手首を掴んでそれをさせない。
「・・・やっべぇ、水華先生のここ、すっげぇ綺麗だ」
 呆然とした様子で早矢仕が呟く。早矢仕の視線は水華の秘部に固定され、動こうとしない。
「ああ・・・酷い・・・」
 涙ぐむ水華に更なる追い討ちが掛けられる。
「折角だから、舐めちゃおーっと!」
「きゃあああああああっ!」
 早矢仕が見るだけでは終わらず、水華の秘部にむしゃぶりついたのだ。
「笹塚先生、もしかして舐められるのは初めてかい? いい経験になったじゃないか」
 レフェリーは水華の手首を放し、再び乳房への責めを再開する。しかし右手で水華の両腕ごと胴を巻いたため、水華は手を使うことができない。早矢仕を蹴り飛ばそうとしても、秘部に吸いつかれ、尚且つ太ももを抱えられているために上手く足が使えない。
「ああっ、やめて、やめくださいぃぃぃっ!」
 乳房を揉まれ、秘部を舐められ、水華は嫌悪と羞恥に首を振ることしかできなかった。

 その後も、まほろと水華はリングでひたすら責めを受け、喘ぎ声を洩らしていた。美女二人が全裸で嬲られ続ける姿に、観客も興奮の叫びを上げ続けた。


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