【外伝 クリスティーナ・ローゼンメイヤー 其の二】

 部屋が近づくにつれ、二人の間から会話がなくなっていった。クリスは霧人の腕に自らの腕を絡め、少しでも寄り添おうとする。霧人はクリスの腰に手を回し、少しでも自らに近づけようとする。隣に居るのにまだもの足りないものを抱え、二人は自宅を目指した。

 玄関を開けると、もう遠慮はいらなかった。扉を閉めるのももどかしく、相手の唇を自らの唇で塞ぐ。より一層の密着を求め、舌を絡めて唾液を交換する。
 目を潤ませていたクリスだったが、霧人をそっと押しやる。
「待ってキート、シャワー・・・浴びさせて」
 汗の匂いが気になったし、他の男達から触られた感触も洗い流したかった。
「・・・わかった」
 名残惜しげにクリスの唇を撫でた霧人だったが、一歩退く。クリスは霧人の目を見ることができず、視線を落としたまま浴室へと入っていった。

 霧人が貸してくれたスーツを脱ぎ、下着も外す。
(あ・・・)
 ホテルに全ての荷物を置いてきたことを思い出し、替えの下着がないことに気づく。
(仕方ない、か)
 今はそれどころではない。霧人のためにも、捧げるべき身体を綺麗に磨き上げなければ。

 頭から熱い湯を浴び、金色の髪を梳く。1メートル近いサイズの乳房からも汗を洗い流すため、谷間や下部にもシャワーを当てる。
 汗を洗い流しながら、シャワーのヘッドを下ろしていく。
(ここに、キートのモノが・・・)
 こちらも金色の下腹部の叢へ向かい、シャワーを当てる。
「ふあっ!?」
 秘部に湯が当たると、緋色の電流が奔った。慌ててシャワーを止め、下腹部を見つめる。秘裂を撫でると、既に熱く濡れ、中から愛液が零れてきていた。
「うそ・・・」
 信じられない思いから、人差し指を埋める。
「んっ・・・」
 秘裂は何の抵抗もなく指を呑み込み、奥へといざなう。
「あっ・・・ふぁっ!」
 これまで感じたことがない快感に、声を抑えることも忘れる。
(こ、こんなに気持ちいいの、初めて・・・)
 浴室の壁に寄りかかり、より快感を求めて指を動かす。そのため、扉の開閉音に気づくのが遅れた。
「キート・・・!」
 愛する男が、一糸纏わぬ姿でそこに居た。その惚れ惚れするような肉体美に見入ってしまう。
「・・・あっ!」
 自分も裸であることに気づき、込み上げた羞恥に体を隠す。
「隠すな」
「えっ・・・」
 霧人の目には獣欲が光っていた。その光に気圧され、おずおずと手を下ろす。霧人の視線が身体中を視姦してくる。唾を飲む音が、妙に生々しく耳に届いた。
「壁を向いて手をつけ」
 愛する男から受ける命令に、倒錯感を含んだ喜びが背中を走る。霧人の言う通りにクリスがすると、いきなり秘裂をなぞられる。
「もう、濡れてるな」
「っ! それは・・・違うの、キート、違うのぉ!」
 恥ずかしさが募り、何度も首を振る。霧人の指摘通りだとわかっているのに、頷くことができなかった。
「俺ももう我慢できない。入れるぞ」
「えっ・・・」
(キートも、私と一つになりたいんだ)
 その認識が、更にクリスを昂ぶらせた。秘裂から新たな蜜が生まれ、太ももを伝い落ちる。
「あっ・・・」
 秘裂に、硬いモノが当てられた。
「入るぞ」
 その硬いモノが、ゆっくりと秘裂を割り、膣へと潜り込んでくる。
「あっ・・・!」
 それだけで軽く達していた。充分に濡れた膣は霧人の物を優しく包みながらも、奥へ奥へと引き込んでいく。
「ふぅんっ・・・」
 一番奥まで貫かれた。子宮口を叩いた亀頭が、膣壁を掻きながら下がっていく。
 いきなり勢いをつけた一撃が叩き込まれた。
「ふぁぁぅっ!」
 堪えようと思う間もなく声を上げさせられる。
(あつ・・・い・・・)
 火傷しそうな熱さと硬さは、クリスが初めて味わうものだった。最奥まで貫かれるたび、腰が砕けそうな衝撃がクリスを襲う。快楽で占められた脳に、ふと哀しみが沸く。
「ごめんね、キート」
「なぜ謝る」
「私、初めてじゃないし、その・・・胸、大き過ぎるから」
 霧人の腰が止まっていた。
(やっぱり、怒ってるのかな・・・)
 胸に広がる暗い感情が、頭を撫でられることで消えた。
「どんな過去だろうと、全部ひっくるめてお前じゃないか。初めてじゃなくても、胸が大きくても、お前はお前だ。俺は、そんなクリスティーナ・ローゼンメイヤーに惚れたんだ」
 思わず振り返ると、微笑む霧人の顔があった。
「キート・・・っ!」
 乳房を揉まれ、息を呑む。貫かれるのと同時に乳房を弄られると、快楽の量は二倍ではなく二乗となった。
「ま、待ってキート、それ・・・ひぃぅぅぅぅっ!」
 更に乳首まで弄られ、クリスは一気に昇り詰めた。
「クリス」
 名を呼ばれ、寄せられた唇に夢中で吸い付く。長い口づけを終えると、二人の唇の間に唾液の橋が掛かる。
「キート・・・んああっ!」
 突然横抱えにされ、何度も貫かれ、突き込まれる。
「駄目! そんな乱暴にされたら私、イッちゃう!」
「ああ! イッていいぞ! 何度でも!」
 霧人の突き込みは優しくなるどころか、速度を上げて襲い掛かる。
(そんなにされたら、もう・・・!)
「イ・・・ク・・・ぅぅぅっ!」
 目の前で幻視の火花が弾ける。火花が治まっても、膣の中の逸物は依然として存在を誇示していた。
「あっ、まだ、硬い・・・」
「言っただろ、今夜は覚悟しておけ、って」
 再びクリスを突き上げながら、霧人が悪戯な笑みを浮かべる。
(こんな風にも笑うんだ)
 一瞬見惚れた隙に、抱え上げられていた。
「あううんっ!」
 貫かれたままの状態で抱えられたため、より一層深く貫かれる。
「ベッドに行くぞ」
 耳元に囁かれ、その吐息だけで甘い声が洩れてしまう。
「う、うん、キート・・・ひぅあっ!」
 霧人が歩くたび、その衝撃が直接膣まで届く。寝室まで運ばれるまで、クリスは声を上げ続けた。
「こんなにされたら・・・あああっ!」
 濡れた体のままベッドに寝かされ、正常位で抉られる。
「キート、キート・・・」
 愛する男の名を呼びながら、意識せぬまま涙を零していた。
「どうした?」
「・・・嬉しくって」
 何度このベッドで抱かれることを夢見ただろう。叶わぬ夢なのかと諦めかけただろう。
「やめてくれ」
 信じられない霧人の言葉に、思わず口を覆う。霧人は嬉しくないのだろうか? こうして抱いてくれているのは、ただの欲望の噴出に過ぎないのだろうか?
 一瞬でそこまで考えてしまったクリスだったが。
「そんなこと言われたら、もう止まらないじゃないか!」
 霧人の突き込みが速度と激しさを増す。
「あっ、あっ、あっ、あっ!」
 一瞬とは言え誤解したことが、反動で快感を高めていた。先程に倍して官能の炎が体内に生じる。生じた炎はクリスの体内に満ち、快楽を焼きつけていく。女の本能なのか、喰いつくように膣で逸物を締める。
「も、もう、限界だ!」
 額と言わず首と言わず、霧人の全身が汗に塗れていた。その汗を受けながら、クリスは叫んでいた。
「キート、中で、中で出して!」
 本能的に脚を霧人の胴に絡め、僅かでも密着度を上げようと力を込める。
「私、貴方の子供が欲しい!」
「俺もだ! 俺もお前の子供が欲しい!」
 クリスの中を激しく往復しながら霧人も叫ぶ。霧人の全身から汗が迸り、クリスの身体に滴り落ちる。
「おおおおおおっ!」「イクぅぅぅぅぅっ!」
 達したのは同時だった。絶頂の反動で膣を締め上げ、霧人の逸物を食い縛る。逸物が精を吐き出し、子宮の奥の奥にまで子種が注がれる。
 二人とも暫く動けなかった。荒い息だけを吐き、体を重ねたままの体勢で。霧人の重みを全身に感じながらも、クリスは幸福感で一杯だった。
「・・・悪い、重いだろ」
 霧人が体を起こすと、逸物もクリスの膣中から抜ける。途端に精液も零れる。
「いいのに・・・」
 霧人の重みすら愛しいのに。
「・・・なあ、クリス」
 暫く続いた沈黙を破り、霧人が名を呼んでくれる。
「すぐ結婚の準備をしよう」
 霧人の言葉は耳に届いたが、心の中にまで届くのにかなりの時間がかかった。
「キート、今、なんて・・・」
「すぐ結婚の準備をしよう。いいだろ?」
 律儀にもう一度言い直した霧人の優しい目の光に、クリスは涙ぐんで頷いた。
「キート、もう離れなくていいんだよね? 私、キートのそばに居ていいんだよね?」
「言っただろ。もう絶対にお前を手放さない、と」
 霧人に力強く抱き締められると、もう涙が止められなかった。
 一度は別れを決意した。しかし、男達に汚されそうになった瞬間に浮かんだのは霧人の顔だった。そして、霧人は駆けつけてくれた。クリスを「俺の女」と呼んでくれた。
「キート・・・私のキート」
「そう呼ぶのは、世界中でお前だけだよ」
 霧人の口づけがクリスの涙を吸い取っていく。霧人の唇はクリスの唇を奪い、舌を絡めてくる。クリスがそれに応えると、下腹部に硬いものが押し当てられる。
「キート?」
「まだ夜は長いんだ」
 再び固さを取り戻した霧人の分身が、優しくクリスへと分け入ってくる。
「あっ・・・はぁん」
 その優しさに声が洩れる。
「クリス、そんな声で喘がないでくれ。腰が止まらなくなる」
「そ、そんなこと言われても・・・っ!」
 霧人の突然の突き込みに腰が跳ねる。
「キ、キート、凄いけど・・・凄過ぎるからぁ!」
「お前が悪いんだ、お前が魅力的過ぎるのが!」
 霧人が逸物を往復させるたび、先程までクリスの中にあった精液と愛液が膣から零れる。
「あくぅっ、キート、激しっ・・・くあああんっ!」
 膣壁を抉られるたび、快楽の稲妻が全身を貫く。愛しい男から与えられる刺激は、激しければ激しいほどクリスを高めてしまう。
「あっ、あああっ! ま、また・・・イクぅぅぅぅっ!」
 シーツに爪を立て、腰を跳ねさせ、霧人の逸物を膣で食い縛りながら、クリスは再び絶頂を迎えた。
「・・・一人で果てないでくれ」
 共に達することができなかった霧人は不満顔となるが、ふと何かを考える。
「クリス、頼みがある」
「・・・えっ?」
 荒い息を吐きながらも、クリスは霧人を見上げた。
「今度は、クリスが上になってくれ」
「上って、何を・・・キャッ!」
 繋がったままクリスの身体を抱えた霧人は、自らはベッドに倒れ込み、クリスを逸物の上に跨らせた体勢となる。
「先に果てた罰だ。そのまま俺を気持ち良くしてくれ」
「そんな・・・そんなの、恥ずかしい・・・」
 戸惑うクリスだったが、霧人は軽い腰の突き上げで催促してくる。
「あ、ちょっと・・・んもう、わかったから、悪戯はやめて」
 気を抜くと前に倒れそうになるが、霧人の引き締まった腹筋に両手を置き、ゆっくりとではあるが腰を上下させ始める。
「あっ、くふっ・・・んんぅ・・・」
 熱い吐息を洩らしながら、クリスは愛しい男の逸物を自らの膣を使って扱き上げる。
「どう? キート、気持ちいい?」
「あ、ああ・・・気持ちいい、よ」
 クリスが腰を動かすたび、霧人が眉を寄せ、必死に何かを耐える表情となる。
(キート・・・可愛い・・・!)
 霧人を見下ろしながらの腰振り奉仕。倒錯した悦びがクリスの官能を掻き立てる。
「ひぁんっ!」
 突然クリスが高い声を上げる。霧人がいきなり両乳首を摘んだためだ。
「駄目、キート・・・」
「今、厭らしい顔をしてたからな」
「ああっ、キートの意地悪・・・うぅんっ!」
 乳首を弄られながらも腰が止まらない。止められない。遂には体を支えることもできず、ぶつかるように倒れかかる。
「おっと」
 それを霧人が乳房を鷲掴むようにして止める。
「大丈夫か?」
「大丈夫、だけど・・・キート、手が厭らしい」
 霧人はクリスを支えるだけではなく、乳房を揉みしだいていたのだ。
「仕方がないだろ、気持ちいいんだから」
 悪びれた様子もなく霧人は乳房を揉み続ける。
「んもう・・・ひあっ!」
 尖りきった乳首を折られ、嬌声を上げてしまう。
「そんなに可愛い声を出されてしまうとな・・・」
 一度言葉を切った霧人は、猛烈に下からの突き上げを開始した。
「本気で行くぞ!」
「はひぃぃぃっ!」
 乳房、乳首を愛撫され、膣を逸物で激しく抉られる。
「だっ、めぇ・・・キート・・・をふあっ!」
 既に何度も絶頂に達している身体は、愛しい男の責めに簡単に反応した。一気に燃え上がり、尚も官能を高めていく。
「クリスッ!」
「きゃっ!?」
 いきなり押し倒され、騎乗位から正常位へと移行させられる。
「ちょっとキート、いきなりすぎ・・・んむっ!?」
 唇を塞がれ、そのまま膣壁をこそぎ落とすような突き込みを受ける。
「んっ、んぶっ、あむっ」
 霧人の舌を噛んでしまわないように、自らの舌を霧人のそれへとより深く絡める。
(ああ・・・キスまで、気持ちいい・・・!)
 上の口も下の口も、霧人に塞がれてしまっている。感触だけでなく、そうされていると考えるだけで昇りつめてしまう。
 その瞬間、霧人の唇が離れた。
「クリス・・・クリスッ!」
「来て、キート! 来てぇっ!」
 互いの名を呼び合い、深く深く繋がる。
「おおおおおおおっ!」「あああああああっ!」
 期せずして声が重なった。霧人は亀頭を子宮口へと押し当て、子宮の奥にまで灼熱の白濁液を注ぎ込む。クリスは両脚を霧人の腰に巻き、一層密着を深めようとする。
 不意に両者の身体が弛緩する。クリスの上に崩れ落ちた霧人だったが、最後の力を振り絞り、クリスの上から転がり降りる。汗みずくとなった逞しい胸板がふいごのように上下する。それに同調するかのように、クリスの豊かな乳房も荒い息のたびに震える。
(私・・・)
 疲労は極限だったが、幸福感がクリスを包んでいた。
(こんなに、愛して貰えるなんて・・・)
 魂の奥底まで往復するような睦み合いだった。
「キー、ト・・・」
 最後の力を振り絞ってキスを重ね、クリスは目を閉じた。数え切れないほど交わった疲労へと自らを心地良く委ねながら、愛する男の胸で眠りについた。


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