「自分の体で稼ぐ。必ず一億円をお前の前に積み上げてやる!」
 「御前」を睨みつけ、宣戦布告するナスターシャ。
「そうか・・・千人も客を取れば一億稼げるかもしれんな。この美貌がそれまで持てば、の話だがな」
 「御前」はナスターシャの顎を持ち、薄く笑う。
「その決意に免じて、上客を用意してやろう。しっかり奉仕すれば、ポンと一億出す酔狂な客が捕まるかもしれんぞ」
「そのときは、私は再び貴方の前に立つぞ。今度は暗殺者として・・・」
 ナスターシャの揺るぎない視線に、「御前」も表情を改める。
「儂の命を狙う、か。くくっ、それも面白い。最近刺激が少なくてな。楽しみに待つとしよう」
 二人の視線が交わり、絡まり、弾ける。
(体を売ることなどなんでもない。私から誇りを奪った男への復讐のためなら、この心でさえも売り渡してやる!)
 この先に待っているのは男達の欲望地獄だろう。だが、それがなんだというのだ。人生で初めて強烈な目的を見つけた。それを達成するためなら腐汁すら飲んでやる。
「次に会うときは、殺し合いだ」
 ナスターシャの宣誓に、「御前」はただ微笑を返しただけだった。

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