【外伝 琴音&冬香 其の二】

「冬香ちゃん、たっだいま〜♪」
「ただいまはいいけど義姉さん、何時だと思って・・・って酒くさっ!」
 琴音には珍しく、アルコール臭を帯びての帰宅だった。しかも泥酔と言ってもいいほどの酔い方だった。

 沢宮冬香にとって、潮寺琴音はかつての義姉であり、現在は同居人だった。二人は<地下闘艶場>と呼ばれる裏のリングに、琴音にとっては夫、冬香にとっては兄の陰謀によって上げられ、男達に嬲られた。
 その結果琴音は冬香の兄と離婚し、現在は冬香と同居している。

「聞いてよ冬香ちゃぁん、やっっっとスポンサーが見つかったのよぉ」
 琴音は和太鼓奏者だった。しかし所属する集団のスポンサーが撤退してしまい、最近は必死になってスポンサー探しに奔走していた。
「うん、それは何度も聞いたから」
「だめー、まだまだ聞かなきゃだめー」
 琴音が右手の人差し指を立て、冬香の頬をつついてくる。
 スポンサーが見つかったのは、実は冬香が体を張ったからだった。再び<地下闘艶場>に上がり、嬲られながらも勝利したのだ。
「わかったから、ほら、取り敢えず部屋行こ?」
「・・・人の話を聞かない子には、んふっ♪」
 悪戯な笑みを浮かべた琴音が、冬香の右手を掴み、唇を押し付ける。
「え、ちょっと、義姉さん・・・?」
 手の甲にキスされただけでうろたえる。
「あら〜、冬香ちゃんたら赤くなっちゃって・・・可愛い」
 流し目の琴音が冬香の顎を軽く摘む。
「も、もう! ほら、部屋に行くわよ!」
 苦労してその指を外し、パジャマ姿の冬香は琴音を本人の部屋まで引きずった。

「ほら、ここに寝て・・・ってうわぁ!?」
 琴音をベッドに寝かせようとして、冬香までベッドに引き倒されていた。
「んもう、冬香ちゃんったら、強引なんだから」
「こ、これは義姉さんが!」
 じたばたともがきながら立ち上がろうとする冬香だったが、琴音に頭を抱えられ、額に額を当てられる。
「熱があるみたいねぇ。ちょっと脱ぎ脱ぎしましょうか?」
 そう言われたときには琴音に体を入れ替えられ、組み敷かれるような体勢にされていた。そのまま服のボタンを外されてしまう。
「ね、義姉さん・・・」
「あら、恥ずかしいの? なら、私も脱ぐから平気よね?」
 そう言って琴音も服を脱ぎ、大人のブラに包まれた膨らみが露わになる。
「ね、義姉さん、私・・・」
「うふふ、緊張してるの? 可愛い・・・」
 普段の琴音からは想像もつかない妖艶な笑みを浮かべ、色を含んだ視線を投げてくる。
「あら、鼓動も早いわ。これは風邪かもしれないわね」
 琴音が冬香の胸を下着の上からそっと包み、優しくほぐしてくる。
「ね、義姉さん、それは・・・」
「最近思ったんだけど、冬香ちゃん、おっぱい大きくなったわよね?」
「っ!」
 琴音に図星を指され、予想以上に頬が赤らむ。
「ちょっとよく見せてみて」
 琴音の手がブラをずらし、乳房だけでなく乳首まで露わとなる。
「義姉さん!」
 恥ずかしさに思わず叫ぶと、琴音がわかっているとでも言いたげに頷く。
「私も外すから、大丈夫よ」
 何が大丈夫なのかはわからないが、琴音は胸の中心にあるホックに指を這わす。軽い硬質音と共にフロントホックが外れると、形のいい乳房が姿を見せた。
「ほら、ね?」
「義姉さん・・・きれい・・・」
 冬香は琴音の乳房から目が離せなかった。憧れの女性である琴音の女性の象徴は、想像以上に美しかった。
「冬香ちゃんも綺麗よ」
 琴音が冬香の乳房を下から持ち上げ、ゆっくりと揉んでくる。
「んぁっ! ね、義姉さん・・・」
「冬香ちゃんも、私のを触って・・・」
 琴音の手が冬香の手を導き、乳房へと触れさせる。
「柔らかい・・・」
「冬香ちゃんも、柔らかくて張りがあって・・・嫉妬しそうよ」
 お互いの乳房に触れながら、二人は濡れた視線を交し合う。
「ふぁっ!」
 突然冬香の声が跳ねる。琴音の右手が乳房を離れ、下着の上からとは言え秘裂を撫でてきたのだ。
「義姉さん、そこは!」
「ここも、ね?」
 琴音に見詰められるだけで、反論が封じられた。
 琴音の手が冬香の身体の上を動くたび、冬香の口からは喘ぎ声が洩れる。体内に生まれた熱は、快楽の炎となって身奥までを焦がす。
「も、もう・・・!」
「冬香ちゃん、限界が近いのね」
 耳元への囁きに、冬香は何度も頷いた。その頷きに応じたように、琴音の指の動きが激しくなる。
「義姉さん、私・・・!」
「ふふっ、いいのよ、イッちゃって」
 淫核への責めがとどめとなった。
「イクッ、イクッ、イッちゃうぅぅぅ・・・っ!」
 琴音の腕の中、冬香は絶頂に達した。

***

 どこからか届く雀の鳴き声に、意識が覚醒に向かう。
「ん・・・んんっ?」
 差し込む朝日に、冬香は薄っすらと目を開けた。
「私・・・」
 瞬きすると、記憶の破片が零れ落ちる。
「そうだ、昨日は!」
 いきなり記憶が溢れ出てくる。慌てて自分の体を見ると、自分のベッドの上できちんとパジャマを着ていた。
「あれって・・・夢?」
 ふと落とした視線の先に、自分の手の甲があった。そこには琴音がよく使うルージュの色でキスマークが刻まれていた。
(どこから夢で、どこまでが現実? 全部夢? 全部現実!?)
「まさか義姉さんに直接訊くわけにもいかないし・・・」
 琴音のことを思った途端、琴音の肢体が瞼に蘇る。
「きゃ〜っ♪」
 例え夢でも構わない、義姉さんの裸を見れたんだから・・・
「ちょっと冬香ちゃん、どうしたの?」
「きゃーーーっ!」
 突然声を掛けられ、思わず悲鳴を上げていた。
「んもう、朝っぱらから大声出さないの。ご近所迷惑でしょ?」
 つい先程まで夢想していた本人である琴音に優しく窘められ、こくこくと頷く。つい琴音の目を見つめてしまい、残景を思い出してしまう。琴音の顔を直視できず、視線を落とす。そこには琴音の胸の膨らみがあった。
(昨日、こんな服の上からじゃなく、直接・・・)
 琴音の乳房の形が脳裏に浮かび、慌てて首を振って追い払う。そんな冬香の様子を不思議そうに眺め、琴音はドアを閉めようとした。
「休みだからって、遅くまで寝てちゃ駄目よ」
「う、うん、わかった・・・」
 しかし琴音はドアを閉めようとした手を止め、冬香の部屋に入ってくる。
「ね、義姉さん?」
「冬香ちゃん、調子悪そうね」
 優しく頭を持った琴音は、額をそっと冬香の額に当ててくる。
「あら、やっぱりちょっと熱があるんじゃない? 今日はゆっくり休みなさい」
「う、うん、わかった・・・」
 夢か現実かわからない昨日の情景と同じことを繰り返され、冬香の顔はますます熱を持った。
「それじゃ、おやすみなさい」
「お、おやすみ、なさい」
 琴音がドアを閉めても、冬香の心臓の鼓動はなかなか治まってくれなかった。
(あぁ・・・義姉さん、いい匂いだったな・・・)
 再び熱を帯びた頬を隠すように、冬香は頭まで布団をかぶった。


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