【特別試合 其の十八 藤森燈夏:修斗 & ピュアフォックス:プロレス】  原案:薊様

 犠牲者の名は「藤森燈夏」。17歳。身長163cm、B85(Dカップ)・W58・H86。10歳の頃からムエタイを始め、15歳で修斗に転向した経歴を持つ。色素の薄い髪を長く伸ばし、普段はツインテールにしている。感情を奥底に封じ込めたその瞳は、冷たくも美しかった。
 燈夏の両親は事業に失敗し、多額の負債を抱えた。そこで両親は裏の世界とも繋がる久地大樹という男に燈夏を差し出し、その代わりに多額の援助を受けて危機を乗り切った。それ以来、燈夏の瞳は暗く沈み、大樹の傍にあった。燈夏は大樹のスパーリングパートナー(というよりも遊びの相手)とされ、自然と格闘の腕を上げていった。
 一度<地下闘艶場>での艶闘を経験させられた燈夏に、またも大樹が参戦を命じてきた。しかも前回とは少し趣向が違うと言う。燈夏と同い年の少女とタッグを組み、闘うこと。
 突然のことではあったが、それでも大樹の言うことには逆らわず、燈夏は二度目の参戦を受け入れた。


「あ、君が今日のタッグパートナーだね? 私、来狐遥!」

 燈夏のパートナーは「来狐遥」だった。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。
 高校でプロレス同好会を立ち上げ、他校との交流試合を中心に活動を行っている。リングに上がる時は覆面をつけ、「ピュアフォックス」と名乗っている。華麗な空中戦を得意とし、その試合を見た者からは絶大な人気を誇るが、男子生徒からは主にそのダイナマイトボディ目当てで支持されている。
<地下闘艶場>では何度も試合を行い、知らない者はいないほどの選手だった。

 遥の自己紹介に、燈夏も言葉短かに返す。
「・・・藤森燈夏」
 二人が初めて顔を合わせたのは控え室だった。笑みを浮かべた遥に対し、燈夏はいつもどおりの無表情。
「今日は宜しくね!」
 遥が差し出した右手を、燈夏はただ見つめるだけだった。
「・・・えっと」
「・・・何?」
 遥と燈夏の言葉が重なる。
「なにって、握手。今日はパートナーして闘うんだし、挨拶代わりだよ」
「・・・そんな無駄なこと、したくない」
 そう呟いた燈夏はもう遥を見ることもなく、自分のストレッチに入った。
 遥は自分の右手に視線を下ろすと意味もなく開閉し、頭を掻いてから自分もストレッチを始めた。

 リングへと向かう花道を、遥、否、純白のマスクを被ったピュアフォックスと燈夏が進む。
 ピュアフォックスはリングへと一気に駆け上がり、トップロープに手を掛けてジャンプ、更にトップロープを足裏で蹴り、反動を使って高さのある前方宙返りを決めて見せた。ガウンが翻り、一瞬太ももまで露わになる。このド派手なリングインに、観客席が大いに沸く。
 対照的に、燈夏は普通にロープを潜ってリングインしていた。何のアピールをすることもなく、冷たい瞳で前を見ていた。

「赤コーナー、『地に潜む蜘蛛』、マスク・ド・タランチュラ! &『ザ・ニンジャ』、小四郎!」
 今日の燈夏とピュアフォックスの相手は、蜘蛛をあしらったマスクと長腕が特徴的なマスク・ド・タランチュラと、忍者装束を身に着けた小四郎だった。
「青コーナー、"クール&ホット"、藤森燈夏! &ピュアフォックス!」
 自分たちの名前がコールされ、燈夏はゆっくりとガウンを外し、ピュアフォックスは勢いよくガウンを脱ぎ捨てる。

(ぉぉぉっ・・・)

 その途端、会場をどよめきが奔る。二人の衣装は、兎を思わせるピンクのビキニ水着のようなものだった。衣装全てにファーが付き、股間を覆う部分の後ろには丸い尻尾のようなアクセサリーも付いている。リングシューズにまでもファーが付き、露出度の高さにも関わらず可愛らしさを感じさせる。
「相変わらずやらしい視線だなぁ」
 ピュアフォックスの感想に、燈夏もこくりと頷く。それでも二人とも恥ずかしがる様子は見せず、対戦相手に鋭い眼を向けた。

「それじゃ藤森選手にピュアフォックス選手、ボディチェックを・・・」
 男性選手のボディチェックを終えたレフェリーが、燈夏とピュアフォックスに近づく。
「レフェリー、紳士的なボディチェックでお願いしますね♪」
 笑顔で指を鳴らすピュアフォックスに、レフェリーの顔が一瞬強張る。
「わ、わかってる、当然じゃないか」
 内心の悔しさは押し隠し、レフェリーは軽いボディチェックを行うとゴングを要請した。

<カーン!>

「よっし! それじゃ私が・・・」
「私が、行くわ」
「私が先だってば!」
「いいえ、私」
「それじゃジャンケンで・・・」
 自軍コーナー前で言い争っていたピュアフォックスと燈夏は、人影が近寄っていたことに気づいていなかった。
「もう試合は始まってるんだぜ? 隙作り過ぎだっての!」
 マスク・ド・タランチュラは二人をワンハンドチョークスラムに捕らえて高々と掲げ、リング中央に叩きつける。マスク・ド・タランチュラの長腕を生かした高角度からの投げ技に、ピュアフォックスと燈夏の動きは一発で止まっていた。
「まずはプロレス姉ちゃんからかな。小四郎!」
 マスク・ド・タランチュラは燈夏を抱え、小四郎に放る。
「承知」
 燈夏を抱き止めた小四郎はそのままリング下に降り、横たえた燈夏に馬乗りになってバストを揉み始める。
「む、さすが17歳。張りが凄いな」
 独り頷きながら、小四郎は失神したままの燈夏のバストを揉む。
「折角だ、生を拝見」
 小四郎はブラをずらし、燈夏の乳房を剥き出しにする。
「・・・む、生で見るとまた格別。それでは」
 小四郎は両手を合わせた後、燈夏の乳房を揉み始めた。

「さて、それじゃこっちはプロレス姉ちゃんと楽しむとするか」
 マスク・ド・タランチュラは背後からピュアフォックスの胴を脚で締め、バストと秘部を弄る。
「ピュアフォックス選手には、本格的なボディチェックを受けて貰おうかな」
 わきわきと手を動かしたレフェリーが、ピュアフォックスのバストを掴む。
「相変わらずいい張りをしてるな。これはもっと調べないとな」
 そう言ったレフェリーが、ピュアフォックスのビキニブラをずらす。ピュアフォックスの乳房が揺れながら姿を現し、男達の視線を奪う。
「・・・いやいや、見てるだけじゃあれだな」
「・・・そうそう、触らなきゃ勿体ないぜ!」
 レフェリーとマスク・ド・タランチュラは同時に乳房へと手を伸ばし、生の感触を味わう。揉み、弾ませ、乳首を弄る。不快な刺激に、ピュアフォックスの眉が寄る。
 やがて、薄っすらとその目が開いた。
「んんっ・・・あっ?」
 失神から覚めたピュアフォックスは、自らの身体を弄る男達に気づく。
「なにやってるのさ! やめてよ!」
「おっ、お目覚めかいプロレス姉ちゃん」
 ピュアフォックスが抵抗を始める前に、マスク・ド・タランチュラは長い右腕でピュアフォックスの両腕を抱え込んでいた。
「んっ、このっ!」
 動かせる足を使って脱出しようとしたピュアフォックスだったが、レフェリーが膝で太ももを押さえることでそれも封じられてしまう。
「おいおいピュアフォックス選手、ボディチェックの途中だぞ。まだ逃げちゃ駄目だ」
「そうそう、俺もボディチェックのお手伝いだ」
 レフェリーはピュアフォックスの秘部を弄り、マスク・ド・タランチュラはピュアフォックスの乳房を揉む。逃れようと暴れるピュアフォックスだったが、乳房と秘部への刺激に抵抗力を奪われた。

「む、あちらの覆面少女も中々の大きさ。ぜひ触ってみたいものだ」
 リングに目をやった小四郎が、もっとよく見ようと腰を浮かした瞬間だった。
「ふごっ!」
 小四郎の股間に燈夏の膝が突き立っていた。
「う・・・うごぉ・・・」
 男にしかわからない痛みに、小四郎が蹲って呻く。乳房を丸出しにしたまま立ち上がった燈夏は、冷たい瞳のまま小四郎の顔面にローキックを叩き込んだ。ぐにゃりと崩れ落ちた小四郎をその場に残し、ブラを直した燈夏は自軍のコーナーへと戻った。
「あ、燈夏! ヘルプして! ヘルプ!」
 それを目の端で確認したピュアフォックスが燈夏を呼び込む。しかし燈夏はコーナーから動こうとしない。
「燈夏!」
 ピュアフォックスの手招きにも、燈夏は反応しようとしなかった。
「藤森選手は偉いな、反則はしないようだぞ」
「・・・それなら、自分で脱出するよっ!」
 ピュアフォックスは腹筋と背筋を使って無理やりブリッジの体勢になり、捕まえられた両手で逆にマスク・ド・タランチュラの頭部を抱え込む。
「ふっ!」
「ぶごっ!?」
 そのままブリッジを解く勢いを利用し、ダイヤモンドカッターのように自分の肩にマスク・ド・タランチュラの額をぶつけ、ようやくマスク・ド・タランチュラの拘束から逃れる。
 ピュアフォックスはブラを直しながら前転で自軍コーナーまで転がり、燈夏に手を伸ばす。燈夏も素直にタッチを受け、リングインした。そのときにはマスク・ド・タランチュラも立ち上がっていた。
「来たなクールちゃん。可愛がってやるぜばっ!?」
 言葉の遣り取りなどする気がないのか、燈夏のしなるようなハイキックがマスク・ド・タランチュラの顔面を蹴り飛ばしていた。それだけでは終わらず、前蹴りでどてっ腹を抉る。
 更に追撃に行こうとした燈夏だったが、マスク・ド・タランチュラが距離を取るのが速かった。
「ゆ、油断した、ちょっと頼む」
 長い腕を伸ばして小四郎とタッチし、コーナーに引っ込む。替わってリングインした小四郎は首を押さえたまま何度か回し、燈夏を睨む。
「場外とは言え、容赦なく息子と顔面を蹴ってくれたものだ。この恨み、晴らさせて貰うぞ」
 小四郎の唸るような科白にも反応を見せず、燈夏は静かに構えを取った。
「ぬんっ!」
 鋭い小四郎の掌底だったが、燈夏はダッキングしながらのボディブローで動きを止め、肘打ちでこめかみを打ち抜く。これでダウンした小四郎に馬乗りになろうとした瞬間だった。
「・・・掛かったな」
 下から小四郎の両脚が燈夏の胴に巻きつき、素早く上下を入れ替えていた。
「ふんっ!」
 小四郎の掌底が、容赦なく燈夏の鳩尾を抉っていた。
「げはっ!」
 厳しいトレーニングで鍛えた燈夏とはいえ、鳩尾を正確に打たれると耐えられない激痛が襲う。小四郎は呻く燈夏を無理やり立たせ、ロープ際まで連れて行った。そのまま燈夏の両腕をロープに絡め取り、素早くブラをずらす。
「っ!」
 燈夏の形の良いDカップの乳房が露出し、揺れる。反射的に前蹴りを出そうとした燈夏だったが、再び鳩尾を叩かれ、痛みに呻く。
 怒りに満ちた眼で掌底を叩き込んだ小四郎が、燈夏の乳房を鷲掴みにする。
「・・・痛いっ」
「先程の痛みのお返しよ! 我が息子の怒りを知れ!」
 燈夏の呻きなど無視し、小四郎は力を込めて燈夏の乳房を握る。燈夏の乳房は痛々しく変形し、揉みくちゃにされてしまう。
「おいおい、あまり苛めてやるなよ」
 そう言いながらも、レフェリー自身は燈夏の股間を触り、撫で回し始めた。

 男達に嬲られる燈夏を見て、ピュアフォックスがリングに飛び込む。
「燈夏・・・っ!?」
「おっと、プロレス姉ちゃんは俺と遊ぼうぜ」
 燈夏を救出しようとリングに入ったピュアフォックスだったが、マスク・ド・タランチュラのネックハンギングツリーに捕らえられる。
「あっ・・・ぐぅっ・・・」
 気道を絞められる苦しさに、ピュアフォックスがもがく。
「お〜、おっぱいが揺れてるぜ。プロレス姉ちゃん、そんなに誘うなよ」
 マスク・ド・タランチュラは、ピュアフォックスのバストを見ながらにやける。
「・・・やっぱ見てるだけだと勿体ないよな」
 そう呟いたマスク・ド・タランチュラは左手を外し、ピュアフォックスのバストを揉み始める。
(こんの・・・ドスケベッ!)
 喉からの苦しさとバストからの不快感を堪え、ピュアフォックスは膝蹴りをマスク・ド・タランチュラの顎に叩き込んだ。
「あぐべっ!」
 油断していたマスク・ド・タランチュラにクリーンヒットし、ネックハンギングツリーから逃れることに成功する。
「げほごほっ・・・燈夏!」
 咳き込んだのも束の間、一気にダッシュして小四郎の側頭部にレッグラリアートを叩き込む。レフェリーともつれながら倒れる姿を見もせずに、素早く燈夏をロープから解放する。
「・・・なぜ、私を助けたの?」
 ブラを直した燈夏の呟きに、間髪入れずにピュアフォックスが叫ぶ。
「パートナーじゃないか! なぜ、なんてないよ!」
 その言葉に、燈夏の瞳が揺らいだ。
「ピュアフォックス選手、乱入は反則・・・」
「っと!」
 後ろから捕まえようとしてきたレフェリーの手から逃れ、ピュアフォックスは素早く自軍コーナーに戻る。
「燈夏! タッチ!」
 ピュアフォックスの呼び込みに、燈夏も素直に戻ってタッチを行う。
「ちっ!」
 いつの間にか自軍コーナーに戻り、顎を擦りながらそれを見ていたマスク・ド・タランチュラがその長い腕を伸ばし、コーナーに居ながら倒れたまま動かない小四郎の体に触れていた。
「ったく、情けねぇな忍者野郎。油断してるからだ」
 自分のことは棚に上げ、マスク・ド・タランチュラはピュアフォックスに相対した。
「まあいいや、俺が一人で高校生二人を相手にできるってことだからな」
 にやけたマスク・ド・タランチュラの視界から、ピュアフォックスの姿が消えた。
「あら?・・・ぐふぅっ!」
 前転で素早く距離を詰めたピュアフォックスが、ミサイルのようなヘッドアタックでマスク・ド・タランチュラの鳩尾を抉っていた。油断していたマスク・ド・タランチュラはまともに食らい、息が詰まる。
 それを見逃すようなピュアフォックスではなかった。仮にも<地下闘艶場>での闘いを何戦もこなしてきた経験者だ。
「行くよ燈夏!」
 アイコンタクトと簡単なジェスチャーを送り、マスク・ド・タランチュラの腕を掴む。
「そぉぉ・・・れっ!」
 気合いと共にマスク・ド・タランチュラをロープに振り、跳ね返ってきたところに得意のフライングニールキックを顔面に突き刺す。
「がぶふっ!」
 思わずたたらを踏んだマスク・ド・タランチュラに、再び顔面への一撃が襲う。するりとリングインしていた燈夏の、ムエタイ仕込みのしなるようなハイキックだった。更にこかすことを目的としたローキックに、マスク・ド・タランチュラがリングに転がされる。顔面の痛みに呻くマスク・ド・タランチュラに、上空から弧を描いた華爆弾が降ってきた。
「でやぁぁぁっ!」
 素早くトップロープに上ったピュアフォックスが、満を持して放ったムーンサルトプレスだった。凄まじい衝撃音での着弾に、マスク・ド・タランチュラの動きが止まる。
「ほらレフェリー、カウントして」
「くっ・・・ワーン・・・ツーゥ・・・」
「相変わらずスローカウントだなぁ。でもほら、もういっちょ!」
「ぬぐぐ・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 レフェリーのスローなスリーカウントが取られ、試合終了のゴングが鳴らされる。
「やったーーーっ!」
 両手を突き上げたピュアフォックスは、何度か飛び跳ねた後で燈夏の元に走り寄る。
「やったね燈夏! 私たちの勝利だよ!」
 ピュアフォックスの差し出した右手を、燈夏がじっとみつめる。やがて、燈夏もおずおずと握り返した。
「・・・うん。私たちの、勝利」
 燈夏の口元に微かに浮かんだ笑みに、ピュアフォックスも満面の笑みを返した。


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