【特別試合 其の三十二 織部叶:ブラジリアン柔術】  紹介者:小師様

 犠牲者の名は「織部(おりべ)叶(かなえ)」。20歳。身長164cm。B86(Dカップ)・W59・H85。肩まで伸ばされた茶髪にはシャギーが入っているが、生来の性格の為か梳かれた形跡はなくボサボサ。細く鋭い目、またそれに合わせたような細く整えられた眉、小さくもスッと通った鼻梁に真一文字に結ばれた口は人を寄せ付けない。
 無愛想で表情も乏しく無口、たまに口を開けば一言で的確に相手の心を抉ることができるが、容姿は悪くないのでそっち方面の隠れファンは多いらしい。
 出席率の良くない大学生である叶が<地下闘艶場>に参戦したのは、その天性の賭博心故だった。


 花道を進む叶に、盛大な野次が飛ばされる。叶は周囲に聞こえるほどの舌打ちをしながら、それでも表情はたいして変えずにリングを進んでいく。
 リングの上に待っているのが男性選手でも、その表情は変わらなかった。

「赤コーナー、『ハウンドウルフ』、ジグ・ソリタード!」
 叶の対戦相手はジグ・ソリタードだった。狼を思わせる風貌で、長い犬歯がちらりと覗く。
「青コーナー、『天下一博徒』、織部叶!」
 自分の名前がコールされた叶は、ガウンを脱ぎ去った。叶が着ていたのは、袖なしブラウスに黒のタイトスカートという、女教師風の衣装だった。
 卑猥な野次に鼻を鳴らし、叶は首の関節を鳴らした。

 ジグのボディチェックを簡単に終えたレフェリーが、叶の方へと歩み寄る。
「よし、次は織部選手のボディチェック・・・」
「お断りだね」
 最後まで言わさず、きっぱりと拒否する。
「大事な勝負の前に他人に触られると運気が下がるんだ。絶対に嫌だね」
「それはお前の勝手だろうが! ボディチェックは試合前に必要だぞ!」
「ただてめぇが触りたいだけだろ」
 腕組みした叶はレフェリーを睨みつける。
(結構な大勝負になりそうな匂いがあったのに、こんなやらしい舞台が待ってたとはね)

 あの日、大穴までもが沈む大波乱のレース。これを叶は3連単で的中させていた。そこに見知らぬ黒服が近寄ってくると、突然切り出してきた。
「貴女の噂はかねがね聴いていますよ、織部さん。その勝負勘と喧嘩強さを発揮できる場所があります。試合、してみませんか?」
 胡散臭さを隠そうともしない申し出だった。しかし、ファイトマネーは高額だった。
 提示された金額に迷いつつも、脳裏に鳴る警鐘に一度は断った。しかし、試合に勝てばその万馬券を倍額で買い取る旨を告げられ、今度は迷わず承知したのだ。

「どうしてもボディチェックを受けない、と言うんだな」
「さっきからそう言ってるだろ? 耳が遠いのかよ」
 叶の悪態に、レフェリーの眉が跳ね上がる。
「後悔するなよ」
 捻りもない脅迫の言葉を吐き、レフェリーはゴングを要請した。

<カーン!>

 ゴングが鳴った瞬間、ジグが一気に動いていた。間一髪で躱したが、次の瞬間には反対側からまた攻撃が飛んでくる。
(速ぇ! なんだこいつの動き!)
 ジグのスピードはまるで野性の獣ようだ。叶も辛うじて躱すが、反撃に転じられない。そこに、ジグの右手が襲い掛かった。
「くっ!」
 辛うじて身を捻ったものの、一番上のボタンが斬り飛ばされていた。そこからオリエンタルブルー色のブラが覗くが、意外にも高級なものと一目でわかる凝った装飾のものだった。

 叶は余計なお金は使わない。それは守銭奴と言っても過言ではないくらいの徹底ぶりだ。
 しかし、毎日身に着ける下着にだけは惜しみなく高いものを購入した。それが滅多にない叶の贅沢だった。

「っ!」
 反射的に下着を守ろうとし、叶は思わず胸元を庇っていた。その隙を見逃さなかったジグが叶を押し倒す。
「やべっ!」
 慌ててガードポジションを取る。しかしジグは攻撃ではなく、叶のバストを掴んだ。
「んっ・・・」
 ジグがバストを揉むと、叶の眉が寄る。ジグは喉の奥を鳴らしながら、ゆっくりとバストの感触を堪能する。唇を噛み締めた叶はジグの手首を掴もうとするが、ジグはひょいと避けると、また叶のバストに触る。
 何度かそのやり取りが繰り返されたときだった。ジグの右手が一閃すると、ブラの繋ぎ目が断たれた。
「あっ、てめ!」
 高かったブラを使い物にならなくされ、叶が怒りの声を上げる。しかしそんなことにはお構いなく、露わになった胸の谷間へと向けジグが右手を伸ばす。
 その瞬間、叶の目が光った。
 ジグの右手首を捕え、内側に捩じりながら背中側に回し、自分の右腕を差し込んでアームロックに極める。一息で肩を破壊するとジグの口から絶叫が放たれる。
「そらよっ!」
 そのままジグの下から抜け出すと、左脚でアームロック同様に極めるオモプラッタで追撃する。肩を破壊されたジグは即座にタップし、ゴングが乱打される。

<カンカンカン!>

 叶の勝利を告げるゴングが鳴らされる。それなのに、何故か叶は眉を寄せていた。切られたシャツの胸元を庇う手がどこかぎこちない。
「いやぁ、見事な関節技じゃないか織部選手」
 わざとらしい拍手をしたのはレフェリーだった。叶の胡散臭いものを見るような視線は無視し、言葉を続ける。
「どうだ、もう一試合するっていうのは?」
「お断りだね」
 レフェリーの提案を速攻で蹴飛ばす。そのまま踵を返し、リングを降りようとする。
「追加試合に勝てば、その分のファイトマネーも払う」
 叶の眉がぴくりと動くが、言葉では何も返さない。しかし、歩みは止まった。
「それだけじゃないぞ。二試合目のファイトマネーは最初の試合の倍額だ。ただし、負けたときにはファイトマネーはなし。『全てかゼロか』、ってやつだ」
 レフェリーの提案は、叶の賭博心をくすぐる。ギャンブラーである叶にとって、危険な賭けほど心躍るものだった。暫く沈黙していた叶だったが、レフェリーへと向き直る。
「・・・その勝負、乗った」
 承諾した叶に、レフェリーがにやりと笑った。

 それから数分後、叶の対戦相手が姿を現す。腹がたっぷりと出、頭は簾状態。本当に闘えるのかが怪しまれる中年体型だった。
「赤コーナー、『黄玉』、山森黄一郎!」
 コールを受けた山森(やまもり)黄一郎(こういちろう)に、その実力を知っている観客からは声援が飛ぶ。
「青コーナー、『天下一博徒』、織部叶!」
 叶はコールを受けても何も返さず、胸元を隠したまま山森を値踏みする。
(なーんか隠してるな、こいつ)
 ならば、その隠しているものを出させずに勝てば良い。相手の得意な部分を使わせないことも戦術の一つだ。

<カーン!>

 ゴングと同時に一気に前に出る。襟を掴もうとした手をするりとかわされる。
「ちっ!」
 太った体型に似合わず、その動きは素早い。しかし、先程のジグほどではない。
(すぐに捕まえて、さっさと終わらせてやるよ!)
 再び襟を取ろうとすると、山森も反応して逆にこちらの手を触ろうとしてくる。何かを察知し、素早く手を引く。
「ふぅん・・・なら」
 三度襟を狙う。叶の手を触ろうとしてきた山森の右腕を掴み、すかさずスタンディング式のアームロックに捕える。
「へへっ、このまま勝利は頂くぜ」
 先程もジグの肩を破壊したアームロックに、叶は勝利を確信した。しかし山森は意外な柔軟性を持っており、完全には極まらない。しかも悪足掻きなのか、叶の腰や尻をつついてくる。
「無駄なことはすんな、おとなしく負けを認めろよ」
 その科白は山森に情けを掛けるためではなかった。身体の変調を感じ始めた叶の本能が言わせていた。
 山森はそれでも諦めず、痛みを堪えて叶の太ももを突く。
(何かがおかしい・・・でも、あと一息なんだ)
 徐々に体勢をずらし、アームロックを深く極めていく。あと数cmで完璧に極まる。その瞬間、山森の指が腰の付け根を突いた。
「はうっ!」
 信じられないことに、叶を快感が襲っていた。敏感な部分を触られたわけではない。それなのに身体が高まっている。動揺から、アームロックの極めが緩んだ。その機を見逃さず、山森が反転しながら右バストの中心を突いた。
「あはぁぁぁっ!」
 山森の攻撃は、正確に乳首を捉えていた。乳首から迸った快楽の電流が全身へと広がり、力を奪う。膝から崩れ落ちた叶を、山森が背中に手を回して上半身を支える。
「いやぁ、参りましたよ。お強いですなぁ」
 そう言いながら、バストを揉んでくる。
「て、てめぇ・・・あたしに、何をした・・・」
「なに、淫経絡を突いただけですよ」
 山森が修めたのは、「対女拳」という拳法だった。女性相手に特化した拳法であり、「淫経絡」というツボを突くことで快感を自在に操ることができる。
 しかも、叶は乳首の感度が異常に高い。日常生活に支障が出るほどではないものの、性的な意思を込めた触られ方をすると力が入らなくなってしまう。先程ジグに触られ、今また山森に責められただけで反抗ができなくったのはそれが原因だった。
「くそっ、触るな・・・あひぁっ!」
 ブラの上からでも乳首に刺激を与えられると、思わず嬌声を上げてしまう。
「さて。では、お嬢さんの裸を見せて貰いましょうかな」
「な、なんだと?」
 一瞬、山森の言ったことが理解できなかった。しかし、山森の右手がボタンへと伸び、外そうとしたことでそれが冗談でないことを理解する。
「てめぇ、ふざけん・・・あはぁぁっ!」
 正確に乳首を突かれ、抵抗も言葉も遮られる。
「まあまあ、そういきり立たずに。身体の熱さも忘れられますぞ?」
 一つ、また一つとボタンが外されていく。それが叶の羞恥を煽る。
「やめろ、くそっ・・・ひあっ!」
 阻止しようとしても、バストを触られると力が抜けてしまう。
「おやおや、あと3つしかボタンが残っていませんぞ。抵抗も弱いとなれば、やはり脱がされたいんではないですかな?」
 ゆっくりとバストを揉みながら、山森が叶を煽る。
「だ、誰が・・・あはぁっ!」
 反論もバストへの責めであっさりと封じられる。
「どれ、ではお望み通り脱がして差し上げますかな」
 山森が残りのボタンも外していく。
「くっ、くそぉ・・・んんぅっ!」
 気持ちはまだ折れていないのに、身体の自由が効かない。
「ボタンも後一つですなぁ」
 おそらくわざとボタンを残し、山森は叶の胸の谷間を人差し指でなぞる。
「くぅぅっ・・・」
 たったそれだけのことでも感じてしまう。
(おかしい・・・こんなこと、絶対におかしい・・・!)
 かつてない事態に叶の勝負勘が狂っていく。その間にも山森の手は動き続け、とうとうボタンが全て外された。シャツの前が開き、胸の谷間も完全に覗く。
「そら、万歳」
「ひあぁっ!」
 首の付け根を突かれると、思わず両手を上げてしまっていた。山森はその隙に、あっさりとシャツを脱がしてしまう。その反動で、繋ぎ目が切られたブラが真ん中からわかれ、乳首が露わとなる。乳首は既に硬くしこり、天を突くように立ち上がっている。
「ほぉほぉ、これはこれは」
 具体的には何も言わず、山森は乳首を優しく弾く。
「んくぅぅっ!」
 淫らな電流が乳首から奔る。慌てて前を隠したが、山森は乳房以外の淫経絡を突いてくる。
「はふぅうっ!」
 思わぬ箇所から快感が立ち昇り、胸のガードが緩む。その瞬間、乳首へ一撃を送り込まれた。
「あああああああっ!」
 咽喉を仰け反らし、絶叫を放つ。腰が砕けるほどの一撃だった。
「あ、ああ・・・」
「おやおや、腰まで震わせてどうしました。私が確認してあげましょう」
 山森はタイトスカートの横ファスナーを下し、ホックも外す。そのまま膝まで下すと、ブラに続きパンティも姿を現す。叶のパンティは、ブラとお揃いのオリエンタルブルー色の高級下着だった。
 山森の手は止まらず、タイトスカートも脱がされた。
「さて、これで下着姿ですな」
「・・・う、うるせぇ、ぞ・・・」
 肩で息をしながらも、叶は山森を睨みつける。
「これは失礼。ブラは役に立っていませんから、セミヌード、と言ったほうがお気に召しましたかな?」
 山森は叶の背中を支えながら、左手で叶の左の乳房を揉む。右手は淫経絡を突き、叶の快感をコントロールする。
「あっ、はふっ、くふっ」
 快感が際限なく高まっていく。どこまで行くのか、自分でもわからず恐怖する。
「では、役に立たないブラも脱ぎましょう」
「やめ、ろ・・・ああぁっ!」
 乳首を弾かれた隙に、カップの真ん中を切り裂かれた高級ブラも、叶の肩から滑り落ちた。
「さて、残りは一枚。どうされますかな?」
 山森は乳首には触れず、乳輪の上で円を描く。
「くっ、ううっ・・・」
 それだけで官能が高められてしまう。だが、叶は敗北を認めるような言葉は決して吐かなかった。
「ギブアップしないというのならば、生まれたままの姿となって頂きましょうかな」
 山森の左手がパンティへと伸びる。
(こ、こいつまで取られてたまるか!)
 阻止しようとした手は、乳首への刺激であっさりと力を失った。その隙に山森の手がパンティをあっさりとずらす。
「あ、ああ・・・」
 遅れて伸ばした手は間に合わず、とうとうパンティまで脱がされた。全裸とされた叶に、会場中から視線が飛び、突き刺さる。震える手で肢体を隠すのが精一杯だった。
「それでは、本番と行きますかな」
 レフェリーにパンティを渡した山森が、再び身体のあちこちに指を埋めてくる。
「あっ、うあっ、ああうっ!」
 そのたびに意図せぬ声が洩れる。
「随分気持ち良さそうだな織部選手」
 パンティを黒服に渡したレフェリーがしゃがみ、叶の乳房を鷲掴む。
「ひぃうっ!」
「乳首もこんなにしやがって、ええ?」
「ああっ! 駄目だ、そこはぁぁぁ!」
 叶が一番敏感なのが乳首だ。そこを左右同時に転がされると、一気に快感が高まる。
「レフェリーさん、いきなり感じさせては面白くありませんぞ」
 叶のヒップを揉み立てていた山森がやんわりと注意する。
「それもそうだな」
 頷いたレフェリーは狙いを乳房へと変え、ゆっくりと揉み始める。
「レフェリーの言うことは聞かない、ボディチェックは拒む、そのくせ下着は高級品。生意気な奴だ」
 ここまでお預けを食ったレフェリーは、ここぞとばかりに言葉でも責める。
「・・・あたしの金で、何買っても・・・っ! あぐふぅ!」
 反論しようとした瞬間、軽くではあるが乳首に振動を加えられた。
「よく聞こえなかったな」
 鼻で笑いながら、レフェリーはまた乳房を揉み回す。山森は叶のあちこちの淫経絡を突きながら、更に快感を高めていく。
(ど、どこまで感じさせられるんだ・・・!)
 果ての見えない上昇具合に、叶は恐怖を感じ始めていた。しかも恐怖は快楽を鈍らせることなく、逆に引き立て役となって叶を苛む。
 男たちは飽きることなく叶の肢体に手を這わせ、自らの欲望を充足させ、叶の快感も煽る。
「あっ、はふっ・・・うんんっ!」
 既に愛液は太ももに垂れるほど生じている。叶は抵抗もできず、ただ喘ぐだけだ。
「レフェリーさん、そろそろ楽にしてあげましょうか」
「そうだな、あまり焦らすのもかわいそうだ」
 山森の提案に、レフェリーが頷く。
「それじゃ織部選手、とっても気持ち良くしてやるからな!」
 レフェリーが両乳首を摘み、振動と捻り責めを同時に加える。山森は淫経絡を突いた後、淫核と秘裂へと振動を送り込む。敏感な箇所への同時責めは、恐ろしいほどの破壊力だった。
「あああぁああぁぁぁあっ!」
 叶の口が絶叫を放つ。それは、絶頂に達した証だった。激しすぎる快感を逃そうと、両手を無茶苦茶に振り回す。
「うおっと!」
 それをよけようとしてレフェリーがひっくり返り、リングに後頭部をぶつけて転げ回る。
「あああっ、あんっ、あああ・・・っ!!」
 絶頂の余波で、叶の腰が何度も跳ねる。
「やはり、乳首が一番の弱点ですな」
 山森の指が踊り、またも快感が襲ってくる。
「・・・え?」
 しかし、先程までの圧倒的な物量感がない。絶頂に達するための最後の堤防を越えようとしない。
「どうしました? きょとんとされているようですが」
 叶の乳房をやわやわと揉みたてながら、山森がわざとらしく問うてくる。
「・・・別に、なんでもねぇよ」
 わざとぶっきらぼうに返すが、何でもないことなどない。勝手に太ももが攀じ合わされ、擦りつけられ、無意識に快感を求めている。
「そうですか、なんでもないですか」
 とぼけた山森は叶の乳房を揉みながら、時折あちこちの淫経絡を押す。
(まだ試合は終わってない・・・こいつを倒せば、賭けにも勝てるってのに・・・)
 山森を倒したいのはやまやまだが、一度達した身体に力が入ってくれない。もしかしたら、淫経絡でコントロールされているのだろうか。
「黙りこくってどうした織部選手。ギブアップでも考えているのか?」
 ようやく立ち上がり、叶に伸ばそうとしたレフェリーの手を、山森が軽く払う。
「今は駄目ですぞレフェリーさん」
「なんだ、ケチケチするなよ」
「そうではありませんよ。狙いがあってのことですので」
「ちっ」
 舌打ちしたレフェリーだったが、渋々引き下がる。しかしその場にしゃがみ込み、目で叶の肢体を楽しむ。
「さて、と。一度達したその身体、もう一度高めてあげましょう」
 またも山森の指が躍る。
(ああ・・・また、感じちゃうのかよ・・・)
 一気に快感が高まっていく。高められていく。しかし。
「えっ・・・」
 達する寸前で、上昇が止まった。
「今度はそう簡単に達することはできませんぞ?」
 柔々と乳房を揉み立てながら、山森が意地の悪い声音で告げる。
「・・・けっ」
 普段なら怒涛のような悪態で反撃する叶なのに、短く息を吐き出すしかできなかった。
「おや、もしかして達するのがお嫌ですかな? ならば、こちらものんびりと待ちましょうか」
 山森はまるで焦りも見せず、叶の身体の上を撫で回す。微細な快感は生じるのだが、決して絶頂までには届かない。
(あぁ・・・そん、な・・・)
 先程まで与えられていた快楽がもっと欲しい、と身体が訴える。
「ふぉほほ、素直になれば、高みに昇らせてあげますよ?」
 絶頂には達しないように太ももを撫でながら、山森が耳元で囁く。
「ただし、『感じさせて欲しい』とおねだりして、ギブアップの宣言をしたら、ですがね」
「だ、誰がそんな真似・・・あふわぁっ!」
 抗弁しようとして乳首を弾かれる。乳房をゆったりと揉まれ、屈辱も煽られる。
 根っからのギャンブラーである叶にとって、敗北を認めるのは死にも等しい屈辱だった。だが、快楽への焦燥が自らを追い込む。
「お返事はじっくり考えてからで構いませんぞ。こちらはゆっくりと待ちますので」
 山森は叶の身体の感触を楽しみながら、時折淫経絡を突き、叶の快感をコントロールしてくる。
(絶対に勝利の糸口がある筈だ・・・勝負なんだ、負けたくねぇ!)
 そのときには、まだそう思えていた。

「あっ・・・あぁぁ・・・ふぁっ! ・・・っ」
 もう、かれこれ何十分が経ったのだろうか。山森の焦らし責めが始まってから、叶は絶頂へと達せられない生き地獄をただひたすら耐えていた。
 叶の乳首は痛いくらいに立ち上がり、充血している。淫核も独りでに包皮から顔を出し、その下の秘裂は解れて多量の愛液を零している。
 またも山森が淫経絡を突く。
「はああっ!」
 快感が高まる。絶頂へと近づく。
(ああ、あと一歩・・・あと一歩で・・・!)
 絶頂への縁に手が届く。
「ふぉほほ」
 しかし、山森のコントロールは完璧だった。希望を見せておきながら、決してそこには辿り着かせてくれないのだ。
「さっきから大喜びじゃないか織部選手。よっぽど気持ちいいんだろうなぁ?」
「あ、ああぁ・・・」
 レフェリーの皮肉にも、喘ぎ声しか返せない。
「そろそろ、負けを認めてもいいんじゃないか?」
「負け、を・・・?」
 普段なら、絶対に受け入れられない敗北の二文字。しかし、果てのない快感地獄は叶をとことんまで追い込んでいた。
「素直になれないなら、もう少しこのままですなぁ」
 山森の手が、ただ腹を撫でる。たったそれだけで腰が跳ねる。しかし、絶頂にはまるで足りない。
(もう・・・もう・・・!)
 徹底した焦らし責めが、叶の心を弱らせていた。
「か、感じさせてぇ!」
 遂に叶が屈服の言葉を吐く。しかし。
「おねだりの仕方が違いますな。そんな命令口調では聞けませんぞ」
「てめ、ぇ・・・!」
 掻き立てられた怒りも、快感への渇望が踏み消してしまう。
(あああ・・・感じたい、気持ち良くなりたい! ・・・イキ、たい・・・!)
「どうした織部選手、ギャンブルで逆転勝利するのが醍醐味なんだろう? 簡単に負けを認めてもいいのか?」
「くっ、うううっ・・・!」
 レフェリーの言葉に僅かに闘志を蘇らせる。
「頑張りますなぁ。では、ここはどうですかな?」
「っ!!」
 僅かだが乳首に触れられ、電流が奔る。しかし一瞬の快感は、足りない量を思い出させてしまう。
「あっ・・・ああ・・・あああ・・・っ」
 決して絶頂させて貰えない。もしかして、このまま何時間でも生殺しの状態に置かれるのではないか。山森ならそれができる。それがわかる。わからせられてしまった。
 勝利への道が見えない。勘すら働かない。勝利の方法を探ろうとしても、快感が脳を満たし、いつもの冴えが縛られているのだ。
 快感に翻弄されながらも、このままだとひたすらお預けを食らい続ける絶望はわかる。
「良く頑張りましたなぁ。もう、いいんではないですか?」
 山森が同情の言葉を掛けてくる。普段の叶ならば、こんな偽りの言葉など鼻で笑っていただろう。しかし、快感に追い詰められた叶は思わず縋っていた。
(そうだよな、あたしもここまで頑張ったじゃないか・・・ああっ、ここで諦めても・・・んっ、仕方ない・・・ふああっ!)
 長時間の焦らし責めは、確実に叶の集中力や耐久力を奪っていた。一度唇を舐めた叶は、遂に屈服の言葉を吐き出す。
「あ、あたしは、こんなものじゃ足りないのぉ! ギブアップするからぁ・・・い・・・イカせ、てぇぇぇ!」
「良く言えましたな。では・・・生涯初めてになるような、絶大な気持ち良さを味わわせてあげましょう!」
 山森の指が踊り、両脇、腰と尻の境目、首筋、耳の後ろといった箇所の淫経絡を突いていく。
(あ・・・くる、きちまう! 最高の波が・・・くる!)
 叶の子宮の奥底から、全身に快楽の波動が発せられる。
「ここが、最後の淫経絡、ですぞ」
 鼠蹊部に、親指を除いた指が全て食い込む。
「あ・・・」
 嵐の前の静けさ。訳もなく虚脱感が襲う。
「そして・・・とどめは、ここですぞ!」
 山森の左右の人差し指が、ボタンを押すかのように、しこり立った両乳首を乳房へと埋没させた。
 衝撃は、一気に押し寄せた。
「あふわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!」

<カンカンカン!>

 叶の絶頂の叫びと同時にゴングが鳴らされた。
「あ、ああ、あああーーーーっ・・・!」
 一際高い嬌声に遅れ、秘裂から勢い良く愛液が迸る。叶の人生初の潮吹きであり、ギャンブラー・織部叶自らが敗北を認めた証だった。
「やはり良いものですなぁ、強い女性が快楽に屈する瞬間は」
 満足気に頷いた山森は、叶の身体から離れた。
「あっ・・・はっ・・・はふぅ・・・くふっ」
 叶が身体を小さく痙攣させるたび、潮吹きの余韻か、透明な愛液が小さく吹き出す。
「賭けに負けてしまったなぁ、織部選手」
 レフェリーは身動きすら辛い叶の傍に片膝をつき、乳房を揉む。
「くあっ! も、もう試合は・・・終わった、だろ。触る、な・・・」
「ああそうだ、試合は終わったんだがな。最初にボディチェックを受けなかったペナルティを受けて貰うぞ」
「・・・え?」
 思わず聞き返す叶の顎を掴み、レフェリーは会場の一角に捻じ曲げる。その間にも乳房から手は放さない。
「あそこに居る面々、見覚えがないか?」
 快感に曇っていた叶の目に、記憶の底に残っていた顔がぼんやりと映る。
「・・・まさか、あいつら」
 どいつもこいつも、叶が賭場で大負けさせてやった連中だった。
「皆さん、お前にイカサマで負けたと仰ってな。お前の身体で支払って欲しいってことなんだよ」
「あ、あたしは・・・イカサマしたことなんて、一度も・・・あひぃっ!」
 抗弁しようとした叶だったが、レフェリーに乳首を弄られ遮られる。
「そんなことは俺にはどうでもいいことだ。お前は今から皆さんの玩具になればいいんだよ」
 叶の乳房を揉みながらのレフェリーの合図で、黒服が二人リングに上がる。黒服は全裸の叶の両脇を抱えて立たせると、引きずるようにしてリングを下す。
「い、いやだ・・・やめろぉ・・・」
 首を振る叶だったが、黒服の力にまるで敵わなかった。一歩一歩、敵意と欲望を剥き出しにした男たちの元へと引きずられていく。
「これより、ボディチェックを拒んだ織部選手へのペナルティを行います。ペナルティ実行に協力して頂くのは、織部選手に大損をさせられた方々です」
 マイクを持った黒服が、皮肉交じりに解説する。怒りを煽られた男たちだったが、その怒りは叶へと向けられる。
「それでは、どうぞ」
 マイクでの合図に、叶を抱えていた黒服が男たちへと突き放す。倒れ込みかけた叶を、男たちの手が受け止めた。否、自らの欲望を満たそうと叶の身体を掴んだ。
「ちくしょう・・・放せ・・・あはぁあん!」
 山森によって極限まで高められた官能は、男たちの手で容易く再燃した。普段の叶ならば腕の一本でもへし折っていただろうが、関節技を極めるどころか手を動かすのも辛い。
「なんだ、放せなんて言いながら抵抗しないじゃないか」
「本当はこうして欲しいんだろ? ええ?」
「普段の格好からだと、ここまでエロい身体を隠してたなんてわからなかったな」
 男たちは口々に勝手なことを言いながら、叶の身体を弄り回す。乳房を揉み、捏ね、乳首を摘み、弾き、ヒップを撫で、叩き、淫核を転がし、つつき、秘裂をなぞり、弄る。ありとあらゆる箇所に男たちの手が伸び、嬲り回してくる。
「あはぁっ・・・やめろってぇ・・・ああん、言ってるだろう、が・・・!」
「うるさい口だな」
 次の瞬間、唇も奪われる。しかもそれだけではなく、男の舌が口腔内に侵入し、蹂躙してくる。
「んっ、んんっ、んんん〜〜〜っ!」
 舌を絡められるのが、こんなに気持ちいいことだとは。
「んぐっ、んぐっ、んぐっ・・・」
 男が送り込んできた唾液を、無理やり飲み込まされる。男が唇を外すと、男と叶の間に唾液の橋が架かっていた。
「なんだ、初めてじゃないぞこいつ」
 秘裂を割って膣に指を埋めた男が、隣の男に告げる。
「まあいいさ、その分こうやって・・・」
「あひぃいいっ!」
「奥まで指を突っ込めるからな」
 指を二本も突っ込まれた叶が絶叫を放つ。しかしすぐに唇を別の男の口で塞がれ、途中で遮られる。
 男の口が離れたとき、唾液を零しながら弱々しく哀願する。
「も、もう・・・やめて・・・お願い・・・」
「何言ってやがる、さっきまで散々喜んでたじゃねぇか」
 男が硬さを失わない乳首を弄ると、叶の腰が小さく跳ねる。
「しかもこんなに濡れ濡れのくせによ」
 秘裂から垂れる愛液を掬った別の男が、その指を叶の口に突っ込む。
「んっ、んんうっ」
 普段の叶なら噛みついていただろう。しかし何度も絶頂へと追いやられた身体は力が入らず、指をしゃぶらされる。
「ふん、好きモノが」
 鼻を鳴らした男の一人が、秘裂に指を突き立て、激しい出し入れを繰り返す。
「あひあーーーっ!」
「おいおい、そんなにおっぱい揺らして感じてるのかよ」
「どれ、俺たちが揺れを止めてやろう」
 二人の男が乳房を掴み、左右の乳首に同時に吸いつく。
「あっ・・・あぁあぁああぁぁああぁぅああああっ!」
 一番敏感な乳首を男の唇、歯、舌で責められる。しかも左右で力加減が違い、微妙なずれが余計に官能を高める。一気に絶頂へと達した叶は、またも秘裂から潮を吹いた。
 しかし、それでも男たちは叶から離れようとはしなかった。否、それどころか更に激しく責め立ててくる。男の逸物で犯されることだけはないが、何本もの指や舌が叶の身体を蹂躙する。
(あたし・・・何時まで、こんな・・・)
 叶は全裸のまま、いつ終わるとも知れない快楽地獄の中、徹底的に嬲られ続けた。


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