【特別試合 其の三十四 未作良美咲:プロレス】  紹介者:とあるファン様

 犠牲者の名は「未作良(みさくら)美咲(みさき)」。24歳。身長172cm。B91(Fカップ)・W65・H91。
 肩より少し下まで伸ばした黒のセミロングに、大人の女性らしい柔らかさを感じさせる容貌と性格の持ち主。ルージュが映える形のよい唇で浮かべる微笑が色っぽい。だが、試合中は一転して凛々しい闘士になり、たとえ追い込まれても諦めず、鍛えた体に備わった持久力で粘り続けてチャンスを掴み、大技で逆転勝利する。
 そうしたファイトスタイルの爽快感にファンが多く、美貌とスタイルから写真集も出るほどの人気。後輩の面倒見も良く、所属選手のトップとしてカリスマを発揮し、全体を引っ張っている。口癖は「まだ勝負は決まっていないわよ?」
 この美貌のプロレスラーに、<地下闘艶場>の魔の手が伸びた。


 花道に姿を現した美咲に向けて、会場中から歓声が投げられる。否、通常のプロレス会場とは違い、投げられるのは卑猥な野次や指笛だった。その中を硬い表情の美咲が進んでいく。
 美咲が<地下闘艶場>への参戦を承諾したのは、所属団体の抱える莫大な借金が原因だった。
 団体のトップとして一線に立ち続けてきたが美咲だったが、自分の実力がピークを過ぎつつあることや組織全体のこともあり、育ってきた後進に道を譲ろうと考えていた。しかし、所属団体は本人の活躍にもかかわらず火の車だった。そこへ<地下闘艶場>が借金返済のチャンスとして特別ルールの試合を持ちかけ、美咲は後輩たちの将来のためにと承諾したのだ。
 ロープをゆっくりと潜ったガウン姿の美咲は、淫闘のリングへと足を踏み入れた。

「赤コーナー、『ハンドフット』、串縞連太郎!」
 美咲の対戦相手は串縞(くしじま)連太郎(れんたろう)だった。面長で髪は短く刈り込み、手足がしなやかに長い。裸足の指も、常人よりかなり長い。
「青コーナー、『不屈の逆転クイーン』、未作良美咲!」
 コールを受けた美咲は、いつもよりもゆったりとガウンを脱ぎ去った。
 その途端、会場が沸いた。美咲が身に着けていたのは、水着と呼ぶには面積が小さすぎる紐の集まりだった。
 横幅が3cm弱しかないワインレッドの肩紐二本が、鎖骨付近でY字に繋がり、股間から背後を通っている。体の側面はカバーしておらず、加えて正面中央部のみ縦型の楕円にくりぬかれており、胸の谷間からアンダーヘアぎりぎりまで素肌が見える。
 また乳房、ウエスト、骨盤の高さの位置で、前と後ろに左右一本ずつ、前後合わせて十二本のリボンが伸びており、それを体の側面で蝶々結びで結ぶことで水着を横に広げ、露出を抑えている。結び目は左右の側面に三つずつ、合計六つの結び目ができている。背中を見れば水着のラインはどこか漢字の「羊」に見えるが、正面からは、「羊」の字の中央の縦線に縦長の楕円の穴が開いている状態だ。
 強烈な締めつけに、美咲のFカップのバストも素材の脇からはみ出ている。さすがに観客の視線が気になるのか、美咲は自然と胸の前を隠していた。

 リング下の黒服がマイクで説明を始めた。
「今回は特殊な試合となっております。まず、試合は三連戦です」
 この発表に歓声が起こる。美女選手が三戦こなすとなれば、その分嬲られる姿を長く見ることができるということではないか。
「次に未作良美咲選手の衣装をご覧ください。水着の結び目が見えますでしょうか」
 黒服の説明は続き、この六つの結び目が美咲のファイトマネーの額に直結していること、一つの結び目が残るごとに所属団体の借金総額の四分の一が支払われることなどが発表される。
「尚、一度解けた結び目を結び直すことは禁止されています。結び目が解けたときの衣装の変化にもご注目ください」
 黒服の説明が終わると、尚一層の歓声が上がった。

 串縞のボディチェックをさっさと終えたレフェリーが、今度は美咲の前に歩いてくる。
「さて、それじゃボディチェックを受けて貰おうか」
「ボディチェック、って・・・」
 勿論美咲もプロレスラーである以上、毎試合ボディチェックを受けている。しかし、このような卑猥な衣装の着用を強要されている以上、ボディチェックはないものと無意識に考えていたのだ。
「おいおい、ボディチェックを受けなきゃ試合を始められないぞ。そうなるとファイトマネーが払えないどころか、違約金が発生するなぁ」
「・・・」
 まさかファイトマネーの支払いを脅迫材料にするとは。美咲が逆らえないとわかっているからこそのレフェリーの強気だろう。
「出場だけで借金の四分の一、全部の試合に勝てば更に四分の一が減るんだろう? それともここで帰って、更に借金を増やすつもりかい?」
 俺はそれでもいいんだがな、と付け加えたレフェリーは、美咲の全身を舐め回すように視線を這わせる。
「・・・わかったわ、ボディチェックを受ける」
 美咲に選択肢はない。それしか選べない。例えレフェリーが欲望を丸出しにしていても。
「最初からそう言えばいいんだよ」
 鼻を鳴らしたレフェリーは、いきなり半分剥き出しのバストを鷲掴みにしてくる。
「っ!」
「下手に動くと結び目が外れるぞ」
 反射的に突き飛ばそうとして、レフェリーの言葉で咄嗟に止める。
「良かったなぁ、試合前に結び目が解けるようなことがなくて」
 美咲を皮肉りながら、レフェリーは乳肉の感触を堪能する。
 暫く我慢していた美咲だったが、堪らずレフェリーに確認する。
「・・・もういいんじゃないの?」
「俺はボディチェックを念入りにするほうでな。終わるまで黙って待ってろ」
 レフェリーはまるで取り合わず、美咲のバストを揉み続ける。
「おいおい、おっぱいが全部は隠せていないぞ。俺が押し込んでやろう」
 3cm幅の素材で乳房が全て隠せる筈もない。レフェリーもわかっているだろうに、否、確実にわかっている筈なのに、素材からはみ出た乳肉を左右から寄せてくる。
「ちょっと無理なようだな」
 何度も試した後で、ようやくレフェリーがバストから手を放す。やっとボディチェックと言う名のセクハラが終わったかと気を抜きかけた美咲だったが、息を呑む。レフェリーが秘部を触ってきたからだ。
「そ、そんなところまで!?」
 まさか、秘部まで触られるとは思わなかった。
「当り前だろう? 女にしかない隠し場所だ。調べないわけにはいかないだろうが」
 美咲の驚きもあっさりと受け流し、レフェリーは美咲の秘部を撫で回した。
「そ、そんなところに何を隠すって言うのよ! 幾らなんでも・・・」
「なんなら指を突っ込んでやってもいいんだぞ? 触るだけで終わる方がいいんじゃないか?」
 レフェリーの脅迫に、美咲は唇を噛んだ。裏の催し物である以上、このようなことは充分あり得ることだ。しかし、あり得るからと言って心情的に受け入れられるわけではない。
「ああ、もし気持ち良かったらよがり声を上げてもいいからな。そのほうがお客さんも喜んでくれるぞ?」
 自分勝手に秘部を弄りながら、レフェリーがいけしゃあしゃあとのたまう。思わず美咲が睨みつけると、レフェリーは右手で秘部を弄りながら、左手で再びバストを揉み出した。
「そんなに怖い顔をしてると、美人が台無しだぞ? それとも、俺をぶっ飛ばすつもりか?」
「くっ・・・」
 そのようなことをすればどうなるか。聡明な美咲にわからない筈がない。ファイトマネーは取り消され、団体は存続できなくなるだろう。美咲にできることは、どんな淫らなボディチェックでも受け入れる。それだけだった。
 美咲が反抗できないことをいいことに、レフェリーは様々な箇所を触ってくる。バストや秘部に続き、お腹、脇、太もも、ヒップも標的にされる。
「お、よく鍛えてあるお尻だな。評判になる筈だ」
 美咲に抱きつくような格好となり、レフェリーが本当にわかっているのかどうか感想を漏らす。両手でほとんど剥き出しのヒップを揉みしだきながら、顔を美咲のFカップバストが形作る胸の谷間に埋めてくる。
「・・・」
「褒めてるんだ、少しは反応を返したらどうだ?」
 顔を上げたレフェリーがまたもバストを揉み、にやにやと笑う。
(こいつ・・・)
 悔しさも心の中に押し込める。例え胸を揉まれようと、ヒップを撫でられようと、秘部を触られようと、今は耐えるしかない。自分のためではない。愛する団体のため、自分を慕う後輩のためだ。好き勝手に身体を弄られる不快感など、いつかは終わる筈だ。
 しかし美咲の願望などまるで気にも留めず、レフェリーはバストを揉み回し、ヒップを揉みしだき、秘部を弄繰り回す。ボディチェックと言う名のセクハラは、まだまだ終わりそうになかった。

 いったい何分が経過しただろうか。執拗なボディチェックはいまだに続いていた。美咲の手は固く握られ、あまりに力が入り過ぎ白くなってしまっている。
 しかしそんな美咲を余所に、レフェリーはバストを揉み、ヒップを撫で、秘部を弄り、あらゆる場所に触れていく。
(こんな下衆なレフェリーが居るなんて!)
 美咲の怒りも、レフェリーに直接ぶつけることはできない。団体のため、後輩のため、美咲はひたすら耐え続ける。そんな美咲に観客からは卑猥な野次と厭らしい視線が飛ばされ、更に怒りを煽る。
「よし、そろそろボディチェックを終わるか」
 最後にバストを一揉みし、ようやくレフェリーが離れていく。美咲の頬は、屈辱と羞恥に赤く染まっていた。

<カーン!>

 しかし、ゴングが鳴った瞬間、その表情はプロレスラー・未作良美咲へと変わる。
「随分待たされたぜ。その分、たっぷりと楽しませて貰うぜぇ」
 軽く跳躍してリズムを取る串縞が、予備動作なしの蹴りを放つ。
「っ!」
 左から襲い掛かってきた回し蹴りを危うくガードし、一旦距離を取る。ガードした腕には衝撃からくる痺れが残っている。
(これは、油断できないわ)
 気持ちを引き締め、改めて構えを取る。しかし、水着素材の強烈な伸縮性と相まって胴体が強く締めつけられ、普段の八割ほどの動きしかできない。加えて結び目の存在が動きを制限する。
「それでも!」
 美咲には勝つしかないのだ。右のミドルキックを放ち、ガードされたところで左ローキックに繋げる。
「おっとぉ」
 串縞は右の足裏でガードしつつ、左の前蹴りを放った。その瞬間、右脇腹の結び目が串縞の蹴り足で解かれていた。腹部の締めつけが解放され、水着が作る楕円がやや縦長となる。
「あっ!?」
「まずは一つ目、頂いたぜ」
 串縞が右の人差し指を立て、結び目が一つ消えたことをアピールする。
(ふうん・・・もう勝ったつもりにでもなってるのかしら?)
 美咲も不敵な笑みを返す。それだけでは終わらず、前屈みとなり、胸の谷間を見せつける。
「あら、まだ勝負は決まっていないのよ? それとも腰が引けてここは狙えない?」
 使えるものは女の武器でも使う。それが美咲の勝利への執念だった。
「そんな挑発されたら、狙うしかないよなぁ!」
 にやりと笑った串縞が、左乳房横の結び目へと鋭い蹴りを放つ。
「っ!」
 しかし、美咲の反応が勝った。蹴りが放たれた瞬間に距離を詰め、右脚を抱え込んでドラゴンスクリューへと切って取る。しかし串縞も反応し、自ら回転を合わせてダメージを軽減する。
(逃さない、寝技へと引き込んで一気に極める!)
 そのまま上から圧し掛かろうとする。
「甘いっての」
 押さえ込もうとした串縞の体がするりと逃げ、逆に背後を取られてしまう。串縞の両脚が胴に絡みつき、上はスリーパーホールドに極められる胴締めスリーパーへと捕らえられていた。
「ぐっ、ううっ」
 容赦なく絞め上げられる苦しみが、口から苦鳴となって零れる。
「へへっ、それじゃようやくおっぱいタイムだな」
 串縞はスリーパーを極めていた右腕を外して左腕一本で首を絞めながら、バストへと手を伸ばす。
「へへ、女子レスラーなんか全身筋肉かと思ったら、おっぱいはちゃんと柔らかいぜ」
 右手でバストを揉みながら、串縞が舌舐めずりする。
「この・・・!」
 やはり試合でもセクハラを狙ってくる。プロレスを愛する美咲にとって、レスラーとしてではなく「女」として見られることは屈辱だった。
 胸を守ろうとすると、スリーパーが深く嵌り掛ける。
(まずい!)
 咄嗟に両手を防御に回し、落ちるのを防ぐ。
「そうそう、おっぱいは諦めろよ」
 水着の上から美咲のバストを揉みしだきながら、串縞が耳元で告げる。
「誰が!」
 左手で串縞のスリーパーを防ぎ、右手でセクハラを止める。
「頑張るなぁ。だが、どこまで続くかな?」
「ぐぅぅっ!」
 胴を絞める力が急激に強まる。串縞の脚の力は半端ではなかった。美咲の鍛えた腹筋も潰され、思わず腕の力が緩んでしまい、バストを揉みくちゃにされてしまう。
「・・・っ!」
 それでも息を吸って呼吸を止め、バストを揉んでくる串縞の手を引き剥がす。
「ちっ、頑張るな」
 舌打ちした串縞だったが、何を思ったか胴を絞めていた左脚を外す。そのまま左足の指でボトムの結び目をつつく。
「ここの結び目を外したらどうなるんだろうな。Tバック、いや、Iバックか?」
 右脇腹の結び目を足で解いて見せた串縞なら、ボトムの結び目も簡単に解いてしまうだろう。美咲の決断は速かった。串縞の手を押さえることをやめ、串縞の足を取って足首を極めようとする。
「ちっ!」
 狙いに気づいた串縞は即座に逃げることを選んだが、プロレスラーとして場数を踏んできた美咲の動きが上回った。
 美咲は体を半回転させ、胴締めスリーパーから脱出しながらも串縞の足を取って再度ドラゴンスクリューへと繋ごうとする。
「食らうかよっ!」
 ドラゴンスクリューを打たれる前にと反対の足で蹴りを放った串縞だったが、美咲の本命はその蹴りだった。今まで抱えていた足を放し、蹴り足をキャッチして折り畳み、ニークラッシャーを決める。
「ぐがああっ!」
 弁慶の泣きどころを正確に攻撃され、串縞がもんどりうって倒れる。美咲がその機を逃す筈もなく、先程ニークラッシャーを決めた足をフックし、STFへと繋ぐ。そのまま本気で顔面を絞め上げる。
 暫くはプロレスラーの本気の技に耐えていた串縞だったが、リングを何度も叩いてギブアップの意思表示をする。

<カンカンカン!>

 美咲の勝利を告げるゴングが鳴らされ、美咲は気を抜くことなく技を解く。暫く蹲っていた串縞だったが、悔しさを押し殺したままリングを後にした。
「・・・ふう」
 まずは初戦を勝利で飾り、美咲は知らず吐息を洩らしていた。
 結び目を一つ失ったが、大切な初戦の勝利を挙げた。大きく息を吐いた美咲だったが、花道を進んでくる新たな男性選手が目に入る。
 気合いを入れるために両頬を叩き、近づいてくる男性選手を睨みつけた。

「赤コーナー、『マッスルバレル』、チャベス・マッコイ!」
 二戦目の対戦相手はチャベス・マッコイだった。筋肉と脂肪に覆われた格闘技者の体格を持ち、中肉中背だが首、胸、腹、腕、脚、すべてが太い。その足元ではマネージャーなのか、老け顔の小男が走り回っている。
「青コーナー、『不屈の逆転クイーン』、未作良美咲!」
 あまりセクハラの見せ場もなく勝利を挙げた美咲に、観客席からはブーイングが起こる。しかし美咲は静かに膝を屈伸させ、次戦に備えた。
 美咲の様子を伺っていたレフェリーだったが、特に何をするでもなく試合開始の合図を出す。
「それでは第二戦、ゴング!」

<カーン!>

 ゴングと同時に、咆哮を上げたチャベスが突進してくる。圧し掛かってくるようなチャベスの両手に美咲も両手で応じ、リング中央で手四つの体勢となる。
「っ!?」
 一気に押し込まれ、右膝をついてしまう。
(やっぱり簡単にはいかないわね・・・)
 パワーにもそれなりの自信を持っていた美咲だったが、チャベスのパワーは油断がならなかった。しかも今は衣装に締めつけられ、全力を出せない。それでも技術でカバーし、ゆっくりと押し返していく。チャベスが更に押し込んでこようとした瞬間だった。
「ふっ!」
 そのパワーを利用し、体を躱すことでキャンパスへと放り投げる。受け身を取ったチャベスの表情が変わり、ゆっくりと立ち上がる。
「グオオオオッ!」
 横殴りのラリアットを両手で防ぎ、一本背負いの構えへと入る。しかしチャベスがロープを掴んで踏ん張ると、すかさず腕を放して離れ際にミドルキックを叩き込む。この一連の攻防に観客席が沸く。
 静かに一息入れ、次の組み立てを考えようとした瞬間だった。
「あっ!?」
 美咲が突然大きな声を上げ、観客席も先程とは別の沸き方をする。
 なんと、小男が左脇腹の結び目を解いてしまったのだ。しかもそれだけでは終わらず、ボトムの結び目にまで手を伸ばしてくる。
「セコンドのくせに、何やって・・・っ!?」
 小男に気を取られすぎた。チャベスに背後から膝裏を持たれ、M字大開脚を強いられる。しかも両手首まで掴まれ、逃れることができない。
「やめなさい、やめて、ちょっと!」
 恥ずかしい恰好で羞恥を煽られ、珍しく美咲が取り乱す。しかしチャベスはお構いなしに更に股を広げ、観客へと見せつける。しかも一方向が終わると別の観客へとM字開脚を見せつけ、美咲の羞恥を煽る。加えて、美咲の下から小男が短い指で秘部を弄ってくるのだ。
 結局チャベスは四方の観客全てに見えるように一周し、最後にはそのまま背後への投げで美咲の後頭部をリングへと叩きつける。
「あぐぅっ!」
 手首を持たれたまま投げを打たれたことで受け身を取れず、美咲は後頭部を押さえて呻く。チャベスは尚も攻め手を休めず、美咲をうつ伏せの体勢にすると背中に座る。そのまま顎を掴んで大きく引っ張るキャメルクラッチへと極める。
「あ・・・ぐうっ・・・」
 チャベスの力任せの技に、美咲は呻くしかできない。するとチャベスが美咲の腕をぐいと引っ張ると、自分の太ももの上に乗せ、バスト横の結び目を掴む。
「あっ!」
 両方の結び目を持たれてしまうと、下手な抵抗ができない。それがわかっているからこそ、チャベスもわざと結び目を解かずに精神的に嬲ってくるのだろう。それでも美咲には抗うことができない。
「どうした未作良選手、動きを止めて。気分が悪くなったか?」
 美咲のヒップを撫で回しながら、レフェリーがわざとらしく聞いてくる。
「だ、誰が・・・」
 脱出方法を探るものの、結び目を人質に取られては厳しい。すると小男がバストの下に潜り込み、自分の顔と手でその感触を堪能する。それだけでは済まさず、バストの剥き出しになっている部分を舌で舐め回す。
(き、気持ち悪い!)
 舌の感触が鳥肌を立たせる。しかもレフェリーからはヒップを揉まれ、不快感は倍増する。そんな美咲の様子など気にも留めず、小男は甲高い笑い声を上げながら、自分の手と舌で美咲のバストの感触を味わう。
 暫くそのまま嬲られる時間が経過した。
「よし、交代しろ」
 レフェリーが小男に告げると、小男は美咲のバストの下から這い出し、美咲の足側へと回る。そして剥き出しの左脚に抱きつくと、腰を密着させたまま上下運動を始める。
「な、何をやって・・・!」
 何をされているのかはわからないが、何となく想像はつく。足をばたつかせようとしても腰に乗られていてはたいして足も動かない。
「おいおい、大丈夫か? やっぱり気分が悪いんじゃないか?」
 しゃがみ込んだレフェリーが両手を伸ばし、両方のバストを掴んでくる。
「くっ・・・」
 それでもレフェリーの手を振り払うこともできない。下手に動けば結び目が外れてしまうかもしれない。そのことが美咲の動きを縛る。
「未作良選手の気分が良くなるまで、こうやってマッサージをしてやるからな」
「・・・余計なお世話よ」
 美咲の科白に、レフェリーはバストから手を放し、頬をぺたぺたと軽く叩いてくる。
「他人の親切は素直に受け入れておいたほうがいいぞ。まあいい、チャベス、俺が結び目を持ってやるから、未作良選手のおっぱいを楽しんでいいぞ」
「なっ・・・!」
 レフェリーの言葉に口を挿む間もなく、チャベスがバストを鷲掴みにする。
「あぐうううっ!」
 チャベスの遠慮のない力でバストを揉まれ、美咲の口から苦鳴が洩れる。
「おいチャベス、がっつき過ぎだ。もう少し優しく触ってやれ」
 少し唇を歪めたチャベスだったが、レフェリーの言うとおりに力を緩め、ゆっくりと揉み込んでくる。それでも美咲にとっては屈辱しか生まない。
「くぅうっ!」
 バストをチャベスに揉まれ、左脚には小男の股間を擦りつけられ、加えて小男に秘部まで弄られる。羞恥と屈辱の時間が流れていく。

「よし、そろそろ代われ」
 レフェリーに促され、チャベスが渋々バスト横の結び目を持つ。両手が自由になったレフェリーが再び美咲の前にしゃがみ込む。
「ギブアップしてもいいんだぞ?」
 美咲のバストをつつきながら、レフェリーがわざとギブアップを進めてくる。
「絶対に・・・ギブアップは、しないわ!」
「そうか、それならまだ暫く楽しませて貰うか」
 レフェリーはまたもバストを掴むと、ゆっくりと揉み込んでくる。そこに小男が甲高い声を上げ、レフェリーの注意を引く。
「ん、なんだ?」
 バストを揉みながらレフェリーが応えると、小男がボトム横の結び目を指差す。
「そうだな、先にボトムを外してしまうか」
「っ!」
 そうなれば、結び目を減らされた上、バスト横の結び目で脅迫されながら嬲られ続けることになる。美咲の決断は速かった。
 上半身を素早く回転させ、肘打ちでチャベスを怯ませ、チャベスの下から脱出する。次の瞬間、チャベスが持っていた結び目が外れた。
 両胸の結び目が外れた瞬間、Fカップを誇る乳房が大きく揺れる。今まで乳首を隠していた素材が胸の谷間に移動し、乳房が丸出しとなる。見事な脱出と乳首が見えたことで、観客席から歓声が起こる。
「まずは!」
 美咲の右脚にしがみつこうとしてきた小男の首を掴み、まるでボールのようにしてロープの下からリング下に転がし落とす。
「おい、セコンドに手を・・・」
 何か言いかけたレフェリーを視線だけで封じる。レフェリーは口を上下させただけで黙って引き下がった。それを確認もせず、今度はチャベスを睨みつける。
「この結び目二つ分、高くつくわよ!」
 怒りの突進からラリアットを叩き込む。危うくガードしたチャベスだったが、ロープまで吹っ飛ばされた。表情が驚きへと変わる。
 美咲は乳房が丸見えになった代わりに、胸部と背中の筋肉が解放された。その分本来のパワーを発揮でき、先程までとは段違いの技の威力となったのだ。
 美咲は更に裏拳、鉄槌、ボディパンチと攻め立てる。美咲の連打がチャベスを打ちのめすたび、トップ91cmFカップの乳房も大きく弾み、揺れ、撓む。
 しかし、チャベスも反撃のラリアットを放つ。否、放とうとした瞬間だった。それを読んでいたように綺麗に躱した美咲が素早くチャベスの腰をクラッチし、一気に高速ジャーマンスープレックスホールドでリングに突き刺す。
「レフェリー、カウント!」
「ちっ」
 舌打ちしたレフェリーは、鈍々とではあるが腹這いになる。わざわざ美咲の股間側にきたのは、単に嫌がらせか、自分の眼福のためだろう。
「・・・ワーン・・・ツーゥ・・・」
 普通の試合では考えられないほどゆっくりとカウントが進む。しかし美咲は焦らなかった。自分のジャーマンスープレックスが完璧であるとわかっていたからだ。
「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 ようやく三つ目のカウントが取られ、美咲の勝利のゴングが鳴らされる。
(ようやく二個目の勝利、か・・・)
 二戦目も勝利を挙げたものの、結び目はあと二つしか残っておらず、乳房は丸出しとされてしまった。しかも長時間の責めとセクハラが、スタミナを大きく削っていた。
「・・・でも、あと一つ」
 そう。あと一つ勝利を挙げれば団体を救えるのだ。そのためには残った結び目を守り抜き、勝利する必要がある。どんな卑怯な手を使われようとも、美咲には勝利が必要なのだ。
 愛する団体への恩返し。美咲の脳裏にはそれしかなかった。

「それでは、最終戦を闘う選手の入場です!」
 マイクでの放送にはっとなる。美咲の視線の先で、二人の男が花道を進んでくる。
(どっちかがセコンドだろうけど、今度は乱入させないようにしないと)
 先程の試合を反省し、素早く修正する。これもトップレスラーとしての美咲の資質だった。
 花道を過ぎた男たちは、二人ともリングに上がる。どちらとも太った中年体型だ。
「ねえ、どちらがセコンド?」
 口も利きたくないが、一応レフェリーに確認する。
「何を言っているんだ、どちらとも選手だぞ」
 その答えに唖然とする。
「まさか、二人掛かり!?」
「その通りだが、何か問題があるか?」
「大有りよ! 三連戦だとは聞いていたけど、一対二のハンディマッチだとは聞いてないわ!」
「こっちも一試合に一人が相手、とは言ってないぞ。それとも、ここで試合放棄して帰るかい?」
 レフェリーの問いかけに、美咲は唇を噛む。今ここで感情のままに帰ってしまえば、おそらく団体への援助もファイトマネーも支払われないだろう。だとすれば、美咲の選択肢は一つしかない。
「・・・闘うわ。それでいいんでしょう?」
「最初からそう言えばいいんだよ、イチャモンつけてないでな」
 レフェリーの言葉に美咲の眉が跳ね上がるが、もう美咲は何も言わず、大きく深呼吸した。

「赤コーナー、『働かない格闘家』、サンダー桝山! & 『黄玉』、山森黄一郎!」
 最終戦の対戦相手はサンダー桝山(ますやま)と山森(やまもり)黄一郎(こういちろう)だった。桝山は締まりがなく、もっさりとした不健康な太り方をし、汚らしい長髪に無精ひげをぼうぼうと生やしている。山森のほうは腹がでっぷりと突き出た中年男で、頭部は寂しく、頂上は簾模様となっている。
「青コーナー、『不屈の逆転クイーン』、未作良美咲!」
 一度解けた結び目を結び直すことは禁止されているため、美咲は胸元を隠したまま、小さく右手を上げることでコールに応えた。
「何で胸を隠しているんだ」
 それを見咎めたレフェリーが美咲に近寄ってくる。
「何で、って・・・」
 当り前のことを聞かれ、美咲は答える気も起きない。しかし、レフェリーは信じられない言葉を続けた。
「これは、ボディチェックをしないとなぁ」
「最初に散々触って、しかもさっきの試合でも触っておいて、何を言っているの?」
「どうせ今さっき、俺が目を離した隙に凶器でも隠しているんだろ? 違うと言うなら見せてみろ」
「お断りよ」
 このレフェリーはどこまで神経を逆撫でてくれば気が済むのだろう。
「そうか、ボディチェックを拒むというのか」
 そう言ったレフェリーが顎をしゃくる。すると、近寄ってきた桝山と山森が美咲に迫る。
(そういう狙い・・・)
 右手で胸元を隠し、左手で左右に分かれた二人を牽制する。そのとき、まだ正面に立っていたレフェリーに隠しきれなかった部分の乳房をつつかれた。
「なっ!」
 反射的に両手で胸を庇ってしまう。その隙に、桝山と山森が一気に距離を詰めた。美咲の両側から腕を掴むと、左右に開いていく。
「いやっ、それは・・・!」
 いくら団体トップの女子レスラーとはいえ、男二人の力には敵わなかった。じりじりと乳房が露わにされていく。
「ああっ!」
 とうとう両腕が開かれ、男たちの目に揺れる乳房が晒される。
「紛らわしい真似しやがって。お仕置きが必要だな」
 丸出しとなった乳房を鷲掴みにしたレフェリーは、Fカップの乳房を揉みくちゃにする。
「いいかげんに・・・!」
 美咲の顔が怒りと屈辱に高潮する。感情を乗せた膝を、レフェリーの股間に突き刺そうとする。
「なんだ、俺を蹴ろうっていうのか?」
 声の響きに危険なものを感じ取り、美咲は蹴り上げようとした膝を止めた。
「俺に攻撃をしたら、その瞬間に没収試合とするからそのつもりでな」
 美咲の乳房を揉み込みながら、レフェリーがにやにやと笑う。
(なんて卑怯なレフェリー! でも・・・私には、耐えることしか・・・)
「わかったら速く下ろすんだな」
 レフェリーから太ももを撫でられ、嫌悪感から足を引く。低く笑ったレフェリーは美咲の秘部に触れ、そのまま撫で回す。
「お前たちはまだ手を出すなよ」
「仕方ないですなぁ、試合でたっぷりとお相手して貰いましょうかな」
「俺は今すぐ触りたいけどな」
 山森と桝山が好き勝手なことを言って笑う。
(こいつら・・・!)
 なんとか振り払おうとするが、男たちの手は外れず、乳房を揺らすだけになる。
「なんだ、そんなにおっぱいを擦りつけて。もっと触って欲しいってことか?」
「誰が!」
 美咲の苛立ちは通じず、レフェリーは乳房を揉むだけでなく、乳首を引っ掻いてくる。
「なんだか、乳首が硬くなってきた気がするぞ」
 レフェリーの言葉に、美咲が凄まじい視線を突き刺す。プロのレスラーが本気で睨んだ迫力は、レフェリーを竦ませるのに充分だった。
「・・・ふ、ふん、そんな怖い顔をしても駄目だ。ボディチェックはやめないからな」
 口ではそう言ったものの、レフェリーの腰は引け、二三度乳房を揉んでから美咲から離れた。
「・・・いつまで触ってるのよ!」
 桝山と山森を振り払い、コーナーへと離れる。しかし二人は別に反応も見せず、にやにやと笑うだけだ。美咲は両腕で乳房を隠し、男たちをじっと睨みつけていた。
「よし、三戦目・・・ゴング!」

<カーン!>

 最終戦のゴングが鳴った。しかし、まだ始まったばかりだというのに、美咲の息は既に弾んでいた。それはそうだろう。二戦連続で男性選手と闘い、嬲られ、つい先程までセクハラを受けていたのだ。
(このまま普通に闘っても駄目だわ。もうスタミナが残り少ない)
 しかも一対二のハンディマッチ。速攻で蹴りをつけなければ、交互に休憩を取られて美咲だけが体力を削られてしまう。そのためには、最初に倒す相手を決めなければ。
(まずは・・・!)
 美咲の勘が、先に倒すのは桝山だと告げている。
 美咲は軽いステップを踏みながら、山森と桝山の中間へと徐々に距離を詰めていく。男たちの目が揺れる乳房に注がれていることを意識し、最後の距離を一瞬で詰める。
「うおっ!?」
 桝山の咽喉元にラリアットを叩き込み、後方に倒れていく頭を掴むとそのままリングへと叩きつける。これで桝山の動きが完全に止まり、大の字のまま動かない。
(よし、あと一人!)
 山森へと振り返った美咲の前に、その山森が居た。しかも素早く指をを突き出してくる。反射的にガードした瞬間、電流が奔った。
「あぅっ?」
(な、なに、今の・・・!)
 山森から攻撃らしい攻撃は受けなかった。ただつつかれただけだ。
「ふぉほほ、どうしました?」
 笑みを浮かべた山森が、更に攻撃を仕掛けてくる。払おうとした左腕に山森の指が突き刺さる。
「はあああぅ!」
 今度も電流が奔った。ただの電流ではなく、淫らな電流が。
「ふぉほほ、気持ちいいでしょう? これこそが私が修めた拳法・『対女拳』。淫経絡を押すことにより、女性を快楽に狂わすことができるのですよ」
 山森は余裕の表情で太鼓腹を叩いた。
「くっ・・・おおおっ!」
 気合で快感を吹き飛ばし、ミドルキックを放つ。しかし、山森は体型に似合わぬ素早さでぎりぎりに躱し、一歩踏み込んで太ももの淫経絡を押す。
「あああっ!」
 先程までとは快感の量が違った。両膝が崩れ、両手までリングにつく。
「どうしました、しゃがみ込んで」
 ゆっくりと近づいてきた山森が、背中の三点を連続で突く。
「あふうぅぅっ!」
 思わず顎が跳ね上がる。
「レフェリーさん、桝山さんにも手伝って欲しいのですが」
「わかった」
 頷いたレフェリーが桝山へと向かう。
「おい、大丈夫か桝山」
「・・・ああ、なんとかな」
 投げで気を失っていた桝山が息を吹き返し、美咲を睨みつける。
「桝山さん、こっちにきて片側の結び目を持ってください」
 またも淫経絡を押し、山森が桝山を呼び込む。
「わかった、任せとけ」
 四つん這いになった美咲の乳房は重力に引かれ、先程よりも大きく感じる。山森が淫経絡を突くたびに揺れる乳房を見てにやついていた桝山が、首の後ろを叩きながら美咲の背後に回る。
「簡単に外れては面白くありませんので、ご注意ください」
「そうだな、あんだけ痛い技掛けてくれたんだ。たっぷりとお返ししてやろう」
 舌舐めずりした桝山が頷く。
「まだ試合中ですぞ、立って貰いましょうかな」
 山森と桝山が股間の横の結び目を持ち、ゆっくり上へと上げていく。
「ほら、立たないと結び目が解けてしまいますよ?」
「くぅっ・・・」
 この結び目が一つでも外れてしまえば、団体には借金が残ってしまう。美咲は強く唇を噛み、震える身体を叱咤して立ち上がる。しかも男二人が持つ位置が高いため、美咲は爪先立ちにならざるを得ない。美咲は必死に男たちの左手首を押さえ、それ以上動かされないようにするが、それは男たちに反撃できないということでもあった。剥き出しの乳房が、微かに震える。
「それでは、始めましょうか」
「へへ、やっと本番か」
 それぞれ左手で結び目を持った山森と桝山が、自由に動かせる右手で美咲の身体を責め始める。
「どれ、俺も」
 いきなりレフェリーもセクハラに加わってくる。
「やめ・・・くぅっ!」
 両方の乳房、乳首、ヒップ、太もも、秘部など、男たちは欲望のままに手を這わせてくる。それでも美咲は山森と桝山の手を押さえ、責めは耐えるしかなかった。
「どうです? 気持ち良いでしょう?」
「・・・全然ね、こんなもの」
 山森の問いかけに、笑顔を見せてやる。
「こんなに乳首を立たせておいて、まだ我慢しますかな?」
「あひあああっ!」
 山森の指で乳首を転がされるだけで、あられもない嬌声を上げてしまう。
「へへへ、こっちも濡れてきたぜ」
 衣装の上から秘部を弄りながら、桝山が舌舐めずりする。
「我慢は毒だぞ、未作良選手」
 レフェリーは右乳房を揉み、乳首も弄りながら皮肉を言う。
「ほれ、こっち向きな」
 突然桝山が顎を掴み、強引に振り向かせる。
「んんんっ!?」
 いきなり唇を奪われた。しかし下手に動けば結び目が解けてしまう。美咲は微かな抵抗もできず、桝山に無理やりの接吻を強いられる。
「くぅっ!」
 それでも力を振り絞り、首の力で桝山の口づけから逃れる。
「まだ力を残していますか。では、これはどうですかな?」
 山森が乳房の谷間、その中心を突く。淫経絡の一撃は、幻視の電流を迸らせた。
(こ、こんなの・・・駄目ぇぇぇっ!)
 目の前で火花が散り、気づかぬ内に嬌声を上げていた。
「ああああああっ!」
 この日、美咲は初めて絶頂に達した。崩れ落ちそうになった体を、レスラーの意地と団体への愛情で持ちこたえる。
「素直に倒れていれば、楽になれたものを」
 山森の指が鎖骨の中心を突く。
「はぐぅ!」
 またも官能が掻き立てられ、美咲の口から呻きにも似た喘ぎ声が零れる。
「おいおい、かなり辛そうだな」
 横合いから手を伸ばしたレフェリーが、右乳首を摘んでくる。
「くぅぅっ!」
 絶頂に達したばかりの美咲には、それだけでもかなりの負担だった。
「我慢しなくてもいいんですぞ?」
 更に山森が左乳首を苛めてくる。
「本当は気持ちいいんだろ? ええ?」
 桝山によって水着の上から淫核までもが責められ、無理やり昂ぶらされる。ただでさえ敏感な部分を三点同時に責められ、一気に危険水域を超える。
(駄目、また・・・!)
「はぁあああぁあっ!」
 二度目の絶頂。それでも必死に歯を食いしばり、ダウンを拒む。
「ふぉほほ、頑張りますなぁ」
「なぁに、まだまだ感じたいから倒れたくないんだろ」
 再び桝山が背後を向かせ、圧し掛かるような口づけをしてくる。
「うっ、んぐぅっ!」
 快感で力が入らず、舌の侵入まで受ける。口蓋内を舐め回され、吐き気に襲われる。
「へへへ、柔らかい唇だぜ」
 一度口を離し、舌舐めずりした桝山が再び唇を重ねる。
(こいつ!)
 舌に噛みついてやろうかと思った瞬間、山森が淫経絡をついた。
(はぁあぁああぁっ!)
 嬌声を上げようとしてしまい、またも桝山の舌の侵入を許してしまう。山森とレフェリーに乳首を責められ、一気に快感が破裂する。
(ま、また・・・んんんんんっ!)
 三度目の絶頂で腰が跳ね、倒れそうになる。
(くううううっ!)
 それでも身体を叱咤し、ダウンを拒む。
「俺とのキスが嬉しいんだな、倒れようとしないぜ」
「・・・バカじゃないの」
 荒い息の中、桝山の冗談を切り捨てる。
「てめぇ・・・まだわかってないみたいだな!」
 桝山が秘部に当てた手を乱暴に動かす。
「あっ、ああっ、ああああああっ!」
 しかし、淫経絡で快感を高められてしまった美咲にとって、乱暴な責めも快楽だと捉えてしまっていた。一際高い声を上げ、内股となる。
「これで四回目だな」
 わざわざ数えていたのか、右乳房を揉んでいたレフェリーが絶頂の回数を指摘する。
「そろそろ負けを認めてはどうですかな?」
 美咲の左乳首をいたぶりながら、山森がギブアップを進めてくる。
「ま、まだ・・・勝負は、決まってい、いないわよ・・・」
「ふぉほほ、我慢強いですなぁ。ですが、それがあとどれだけ持ちますかな?」
 またも山森の手が踊り、美咲の快感を引き出す。美咲の膝は震え、内股になった股間からは透明な蜜が伝い落ちる。
「もう諦めて楽になっちまえよ。その後は、俺たちでたっぷりと慰めてやるからよ」
 桝山が下卑た口調で秘部を弄繰り回す。
(こんな奴らに、絶対、負けられない・・・のにっ! くあぁあぁあん!)
 乳房を揉まれると、乳首を弾かれると、ヒップを撫でられると、秘部を弄られると、そのたびに淫らな電流が全身を走り抜け、貯まった快感を更に蓄積していく。
(このままじゃ、また・・・イッ、ちゃうぅぅぅっ・・・っ!)
「やああああああん・・・っ!」
 今日五度目の絶頂に達し、とうとう美咲の腕から力が抜ける。
「おや、限界ですかね」
 まだ精神的に嬲ろうというのか、山森はわざわざ結び目を持った手を下げ、解けないようにする。
「なあ山森さんよ、折角だ。このまま寝かせて、両手でたっぷりと苛めてやろうぜ」
「それもいいですなぁ。どこまでギブアップせずに耐えられるか、試してみたくなりましたよ」
 男二人が結び目から手を放した瞬間、美咲の目が闘志に光った。無言で山森にヘッドバットを叩き込み、怯んだところで半回転し、背後の桝山をエルボーからのハイキックで沈める。
「・・・往生際が悪いわぁ!」
 痛みを怒りに変えた山森が美咲に襲い掛かった瞬間、美咲の口から咆哮が迸った。そのまま山森に飛びつき、スイング式のDDTで頭部をリングに突き刺す。
 レスラー相手でも危険な技に、山森は一発で失神していた。

<カンカンカン!>

 男性選手の安全を図るためか、ここでゴングが鳴らされた。二人の様子を見た医療班は、まずは山森を担架に乗せ、すぐにリングを下ろして花道を急ぐ。
「ちっ!」
 派手に舌打ちしたレフェリーが美咲を睨もうとし、結局は剥き出しの乳房に目を奪われ、咳払いを残してリングを後にした。
「・・・終わった」
 長い長い三連戦が終わった。普通の試合を三試合こなすのも辛いのに、卑怯な手段で責められ、嬲られ、女の快感をとことんまで引き出された。しかし、結び目を二つ残して勝利することができ、出場と勝利のボーナスと合わせて団体の借金は帳消しとなった。
 安堵が、美咲をへたり込ませようとする。しかし、美咲はプロレスラーだ。観客の前で無様な真似はできない。疲労しきった体に喝を入れ、まずは紐を結び直そうとする。しかし「紐を結び直すこと」が禁止事項だったことを思い出し、乳首だけは見えないようにと、肩紐の位置をずらすことで隠す。
 リングには野次が飛んでくるが、中には美咲の勝利を祝う声援もあった。声援に応えるのはプロレスラーの習性でもあり、義務でもある。倒れそうな体に鞭打って観客席に手を振り、礼をし、四方全てにアピールを行ってからようやくリングを降りようとしたときだった。
 いきなり背後から突き飛ばされ、コーナーポストに激突する。
「ううっ・・・」
 不意を衝かれたこと、体力が尽きかけていたこと、打ちどころが悪かったことなどが重なり、そのままずるずると膝をつく。
「畜生、ふざけやがって。いてて・・・このままじゃ帰さねぇぞ」
 奇襲をかけたのは、失神から目を覚ました桝山だった。頭部の痛みに何度か頭を振り、美咲へと近づいていく。
「へへへ・・・」
 舌舐めずりした桝山は美咲をコーナーに寄りかからせると、手足をロープに拘束していく。
「・・・も、もう、試合は終わった・・・のに・・・」
「うるせぇ、これから、セクハラの延長戦を始めてやるぜ」
 美咲の頬をぴたぴたと叩いた桝山は、残った結び目を一気に解く。
「あいっ!」
 紐が解かれたことで、水着が一気に戻り、乳房を叩いていた。全ての結び目が解放された今、羊を思わせていた衣装はY字の紐水着へと変化していた。
「何が『不屈の逆転クイーン』だ。俺が絶頂クイーンにしてやるぜ!」
 そう咆えた桝山は、いきなり美咲の乳房を揉みくちゃにする。
「い、痛い」
「俺は気持ちいいぜ? そうだ、俺に肘と蹴りを入れたんだ、少しくらいは我慢しな」
 勝手な理屈を捏ね、桝山は美咲の乳房を思うままに変形させる。それだけでは終わらず、桝山の舌が顔を舐め回す。
「んんっ!」
 べたつく感触と生臭さがとてつもなく不快だ。しかし、ロープに拘束された両手は動いてくれない。
「へへへ・・・」
 今度は唇を舐められる。
「さっきは随分キスを喜んでくれたからな、また濃厚なやつをお見舞いしてやるよ」
「だ、誰がそんなこと・・・うむぅっ!?」
 遂に唇が奪われた。生臭い舌までもが侵入し、口腔内を犯す。
「んんっ、んぅう・・・んぐぅぅっ!」
 もう舌に噛みつく力も残されていない。いいように口の中を蹂躙され、唾液を注ぎ込まれ、吐き出すこともできずに飲み込まされる。その間にも秘部は弄られ続け、快楽係数が跳ね上がる。
「お楽しみだな。俺も混ぜて貰おうか」
 そう声を掛けてきたのは、一度リングを降りた筈のレフェリーだった。
「へへ、いいけどよ、俺はここをどかねぇぜ」
「強欲な奴だ」
 舌打ちしたレフェリーは一度リングから降り、エプロンサイドに上ってからコーナーに行き、コーナーポスト越しに美咲の乳房を掴む。
「ちょっと体勢が苦しいが、まあいいだろう」
 鉄柱に抱きつくような体勢で、レフェリーは美咲の乳房を揉み回す。
「お、もう乳首がビンビンじゃないか。やっぱり気持ちいいんだろ?」
「あそこもぐっしょりだぜ。喜んで貰えてなによりだ」
「んぐぅぅぅうっ!」
 唇を奪われ、口内を犯され、乳房を揉まれ、乳首を弄られ、秘部を嬲られ、絶頂を極めた美咲は、とうとう気絶へと陥った。
「なんだ、反応が鈍くなったぞ」
「あん? なんだ、おねんかよ」
 鼻を鳴らした桝山が乳首を摘む。
「ほれ、起きろ」
「あぎぃっ!?」
 乳首を思い切り抓られ、無理やり覚醒させられる。
「起きた起きた。それじゃ続きだ」
「あっ・・・あああっ!」
 絶頂失神に陥った直後だというのに、男たちは全く容赦せずに美咲の身体を弄繰り回してくる。
「はっ、はぁうっ・・・ひあーーーっ!」
 またも高い叫び声を上げ、美咲は二度目の絶頂失神へと落とされた。
「なんだ、また寝たのかよ。堪え性がなくなってきたな」
 不機嫌に呟いた桝山は、紐水着を思い切り引っ張っていく。
「寝るなって言ったのに・・・なっ!」
 そのまま手を放した。
「ひぎぃぃっ!」
 凄まじい衝撃に、美咲は意識を取り戻した。取り戻させられた。
「寝てる場合じゃねぇぞ、ええ? もっと俺を楽しませろよ」
「あああ〜〜〜っ!」
 水着の上からとはいえ秘部と淫核を弄り回され、レフェリーからも乳房と乳首を苛められる。腰が勝手に跳ねまわり、美咲はまたも失神に陥った。
「何度言えばわかるんだよ!」
「あぎはぁっ!」
 快感に意識を失えば、紐素材を引っ張られて放され、体を叩かれる痛みに覚醒させられる。何度も繰り返される被虐と快楽に、意識が朦朧となっていく。
(いつまで・・・続く、の・・・)
 美咲はもう、男たちの責めに弱々しい反応を示すことしかできなかった。

「この体勢も飽きたな」
 美咲の秘部を弄り回していた桝山が、ぼそりと呟く。
「そうだな、ロープを外してリングに転がせ。もう反撃もないだろう」
 桝山の独り言にレフェリーが応じ、頷いた桝山が美咲の四肢を縛めていたロープを外してリング中央に転がす。
「あぁ・・・はっ、あはぁ・・・」
 リングに荒い息が響く。うつ伏せになった美咲の乳房が自重で潰れ、淫らに歪んでいる。
「へへへ・・・まだまだ可愛がってやるからな」
 舌舐めずりした桝山が、美咲に圧し掛かろうとする。
(ここしか・・・ない・・・!)
 残った体力を振り絞り、裏拳を放つ。振られた拳は、悲しいほどに鈍かった。
「おっと」
 大袈裟によけた桝山は、ボディアタックで美咲を押し潰す。
「えぐっ!」
 桝山の巨体が、体力が尽きた状態のところに浴びせられたのだ。美咲は大の字になったまま目を閉じ、横たわっている。
「よし、それじゃ・・・」
 桝山が圧し掛かろうとしたときだった。美咲が肩を上げた。レスラーの本能が、抑え込まれることを拒んだのだ。
「まだ抵抗するのかよ。こうなりゃ、徹底的にやるしかねぇな」
 桝山は何を考えたのか、紐水着の肩紐に手を掛ける。そのまま、一気に肘まで引きずり下ろした。
「んっ・・・あっ?」
 そのことが美咲の意識に触れたのか、美咲が薄っすらと目を開く。
「今から邪魔な物を剥いでやるからな。楽しみにしてな」
 唇を欲望に歪めた桝山は、肩紐を手首から抜いてしまう。
「やめ、てぇ・・・」
 指一本動かすだけでも辛い状態では、桝山の行動を阻むのは難しい。
「おいおい、お客さんへのサービスじゃないか。おとなしくしてろよ」
「ひああっ!」
 しかも抵抗しようとすると、レフェリーがセクハラを加えてくる。その隙に桝山は紐水着を剥いでいき、足首からも抜く。
「・・・よし、脱がせたぜ!」
 桝山の言葉通り、紐水着が脱がされ、美咲はリングシューズだけを残した全裸へと剥かれた。観客席からは欲望塗れの視線が突き刺さってくる。
「へ、へへへ・・・まだだ、まだこれからだぞ」
 桝山は紐水着を使い、美咲の右足首、背中に回した両手首、左足首を縛め、M字開脚を強いる。
「ああっ、いやぁ、こんなぁ・・・」
 鈍々と首を振る美咲だったが、脚を閉じるどころか、身じろぎも厳しい。隠すもののない秘部に向け、男たちの視線が集中する。
「我ながらいい出来だぜ」
 美咲の肢体をじっくりと視姦した桝山が、涎を拭ってから美咲へと圧し掛かる。自分の緩んだ胸板で美咲の乳房を押し潰しながら、顎と髪を掴んで唇を奪う。それだけでは済まさず、リングタイツの下で膨らんだモノを美咲の秘裂に擦りつけていく。
「んんっ、んんっ、んんん〜〜〜っ!」
 おぞましい行為と感触に大声を上げたい美咲だったが、唇は桝山に塞がれ、くぐもった叫びしか上げられない。
「ここがリングじゃなきゃこのまま突っ込んでやるんだがな」
 一度唇を離した桝山が、腰は動かしながら独り言を言う。
「それだけはやめとけよ。『御前』から粛清されたくなきゃな」
「わかってるよ、言ってみただけだ」
 鼻を鳴らした桝山は、美咲の乳房を揉みくちゃにし、腰を揺する。
「なぁ、そろそろ俺も混ぜろよ」
「仕方ねぇな」
 渋々美咲の上から退いた桝山は、美咲の顔横に陣取る。
「へへ、まだまだ可愛がってやるぜ」
「どれ、俺はこっちを・・・」
 桝山は美咲の顔や唇を舐めながら、乳房や乳首を苛める。レフェリーは守るものもない美咲の秘部に吸いつき、舌で舐め回しながら愛液を啜る。
「あっ・・・はぁ・・・うっ、うぅ・・・んんぅ」
 もう、美咲の口からは弱々しい喘ぎしか零れない。何度も絶頂し、失神する。そのたびに無理やり覚醒させられ、またも多量の快感に気絶させられる。
 美女レスラーが嬲られ続ける姿に、観客席の淫らな歓声も止む事が無かった。

「・・・はっ!」
 突如目覚めた。
「・・・夢、か」
 まさか、もう何年も前のことを夢に見るとは。
「あっ・・・」
 下腹部に感じる熱に、恐る恐る秘部へと手を伸ばす。指先に感じたのは、愛液でどろどろになった秘部とぐっしょりと濡れた下着だった。

 あの日、<地下闘艶場>で三試合全てを勝ち抜いた美咲は、乳房丸出しとなった恥ずかしさに気づき、そのまま一目散に退場した。先程の淫夢のように、桝山に徹底的に嬲られたような事実はない。
 しかしあれ以来、時折だが淫らな夢を見る後遺症に悩まされるようになったのは事実だ。盛大な引退試合を行い、トレーナーに転向して後進の指導に専念し、名伯楽として名を馳せ団体に貢献している現在も、だ。

 ベッドから身を起こした美咲はシャワールームへと向かった。淫夢による汗と、欲望の残滓を洗い流すために。


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