【特別試合 其の四十 織部叶:ブラジリアン柔術 其の二】  紹介者:小師様

 犠牲者の名は「織部(おりべ)叶(かなえ)」。20歳。身長164cm。B86(Dカップ)・W58・H85。肩まで伸ばされた茶髪にはシャギーが入っているが、生来の性格の為か梳かれた形跡はなくボサボサ。細く鋭い目、またそれに合わせたような細く整えられた眉、小さくもスッと通った鼻梁に真一文字に結ばれた口は人を寄せ付けない。
 無愛想で表情も乏しく無口、たまに口を開けば一言で的確に相手の心を抉ることができるが、容姿は悪くないのでそっち方面の隠れファンは多いらしい。
 過去に<地下闘艶場>に参戦した際、敗北を喫したばかりか生贄として観客に玩ばれるという屈辱も味わわされた。苦杯を嘗めさせられた相手との再戦と法外な勝利給。この二つを求め、叶は二度目の<地下闘艶場>参戦を受け入れた。


 花道に姿を現した叶に対し、観客席からは盛大な野次が飛ばされる。
 前回参戦した際、山森(やまもり)黄一郎(こういちろう)に全裸に剥かれ、ギブアップ宣言で敗北を認めるという屈辱を味わった。しかもペナルティと称する罰ゲームで、嘗て自分が賭場で大損をさせた観客にまで全裸のまま嬲られた。
 その艶辱の姿を知っている観客からの野次が鬱陶しいのか、叶は眉を寄せ、ガウン姿のままゆっくりと進んでいく。

 リングに待っていたのは、前回山森と一緒になって自分を辱めたレフェリーだけでなく、同じ体格、同じレスリングタイツ、そして同じマスクを被った二人の男性選手だった。
 叶がリングに上がると、リング下の黒服がマイクを握る。
「今試合は特殊なルールで行われます」

 一つ、バトルロイヤルとする。
 一つ、叶の対戦相手は時間が経過するごとに増えていく。もしその時点の対戦相手を倒しても、次の選手が登場するまでの休息扱いにしかならない。
 一つ、叶の勝利条件はすべての男性選手を倒すことのみ。

 叶の圧倒的不利な条件に、観客席は拍手と歓声で応えた。周りすべてが敵の状況に、叶は眉を顰めたままだった。

「赤コーナー、マンハッタンブラザーズ!」
 黒服のコールに、覆面レスラーが二人共両手を掲げる。
(いきなり二人が相手かよ)
 相変わらずの卑怯さに、叶が内心舌打ちする。
「青コーナー、『天下一博徒』、織部叶!」
 名前がコールされ、ガウンを脱ぐ。その下にあったのは、白い無地のTシャツだった。太ももの上までの長さで、ミニのワンピースにも見える。Tシャツからは青地に花柄のビキニ水着が薄く透けている。ライトを受けたTシャツから水着が透けて見えるのが扇情的で、観客席からは無遠慮な視線が飛ばされていた。

 マンハッタンブラザーズ二人のボディチェックを終え、レフェリーが叶に近寄ってくる。
「久しぶりだな、織部選手。今日もエロい恰好で・・・」
「うるせぇ変態レフェリー」
 レフェリーの言葉をぶった切り、叶は鋭い視線を突き刺す。
「レフェリーに対して暴言を吐くな」
「あたしに前回何をしたか、忘れたってのか? 今から思い出させてやろうか」
 叶の鋭い視線を誤魔化すためか、レフェリーは空咳を二、三度行う。
「・・・さ、今回はボディチェックを受けてもらおうか」
「お断りだね」
 前回同様、ボディチェックはきっぱりと拒否する。
「大事な勝負の前に他人に触られると運気が下がるって言っただろうが。覚えとけ」
「ボディチェックは必須なんだよ! いいから受けろ!」
「へぇ・・・」
 レフェリーの命令に、叶の目が細められる。
「あんた、試合前にあたしに壊されたい、って言ってるんだね?」
「え? いや、その・・・」
 レフェリーがたじろぐ。前回、叶の関節技の鋭さは恐ろしいほどだった。自分がその関節技の餌食になると想像しただけで冷や汗が出る。
「・・・あ、あとで後悔するぞ」

<カーン!>

「ふん」
 レフェリーの型通りの脅迫など鼻で笑い、対戦相手二人に向かい合う。
(さっさと倒して、体力を温存させないとな)
 今回の試合ルールでは、まだ何人もの敵が控えているのだ。初戦から体力を削られるわけにはいかない。
 マンハッタンブラザーズの二人が、叶を挟み込むように位置取りしてくる。どちらが1号か2号かはわからない。
 いきなり右手から低空のドロップキックが襲ってくる。躱したところへ今度は胸元にドロップキックが襲いかかる。それもよけると、今度は逆側から水面蹴りが迫る。
「ちっ!」
 舌打ちしながらキャンパスに飛び込むように前転し、ゆっくりと立ち上がる。
 マンハッタンブラザーズ一人一人が相手なら、叶は苦も無く叩きのめせるだろう。しかし、二人のコンビネーションがマンハッタンブラザーズの実力を二倍にも三倍にもしている。
 しかも、前回の試合に比べて叶の動きが鈍い。
(くそっ、なんだこの水着!)
 叶が対戦相手でも観客の視線や野次でもなく、水着に不満をぶつける。

 叶は乳首が敏感だった。しかも前回の<地下闘艶場>参戦の際に徹底的に責められ、更に感度を増していた。そのためか、身動きするたびに乳首が水着の裏地で擦れ、望まぬ刺激を発生させるのだ。

(こんなとこで苦戦してる場合じゃないんだ、こいつらをぶっ倒して、大金も手に入れる! あいつにお礼もしなきゃならないしな!)
 今回の試合に勝てば、山森との再戦だけでなく、前回の試合後に裏カジノで得た金額の倍額をファイトマネーに加えて支払う、という契約を結んでいる。
 しかし意気込みとは裏腹に、マンハッタンブラザーズのコンビネーション攻撃を躱していくのが精一杯の状況にストレスが溜まる。決定打は食らわないものの、状況が好転しない。
 ここでアナウンスが流れる。
「4分経過、あと1分で新規選手が追加されます」
(もうかよ!)
 まだマンハッタンブラザーズは二人共残っている。二人に苦戦しているのに、更に一人追加されると窮地に追い込まれかねない。
 叶の焦りを余所に、フード付きガウンの選手が花道を進んでくる。そのままリング下に陣取り、自分の出番を待つ。
 追加選手の姿を実際に見たことで、更に焦りが高まる。賭け事には厳禁の焦りが。焦りと乳首から発せられる刺激に、叶は普段の動きを取り戻すことができなかった。

「5分経過しました、『ヘタレキング』、早矢仕杜丸が参戦します!」
 このコールに、早矢仕(はやし)杜丸(とまる)がフード付きガウンを脱いでリングに上がる。しかし、観客席からはあいつで大丈夫か、といった会話も聞こえてくる。<地下闘艶場>では下から一、二を争うほどの実力ならばそれも当然だろう。
「よーし、叶ちゃんを触りまくっちゃうよ〜」
 手をわきわきとさせながら、早矢仕が距離を測る。
「ほーら捕まえた・・・?」
 早矢仕の攻撃など容易く躱し、そのまま仕留めようとするが、マンハッタンブラザーズが放った時間差のダブルドロップキックに邪魔されて距離を取る。
(これで三対一か、くそっ!)
 声には出さずに吐き捨てる。
 普段の叶にはない焦りは、前回嬲られたのと同じ場所での試合であること、乳首の刺激が嬲られた事実を思い出させること、などが無関係ではないだろう。本来の調子が戻らないままでの数的不利な闘いは、更に焦りを生んでしまう。
 男性選手三人を確認できる位置取りをしようとしたとき、またもマンハッタンブラザーズのコンビネーションが襲いかかる。1号が水面蹴りを、2号が僅かにタイミングをずらしたドロップキックを放ってくる。絶妙な攻撃に、叶は後退するしかない。
 その瞬間だった。
「おっぱいターッチ!」
「っ!?」
 背後から早矢仕にバストを触られ、動きが止まる。しかしそれも一瞬で、早矢仕の左手首を即座に脱臼させる。
「うびゃぁ!」
 早矢仕の妙な呻き声など無視し、その体をマンハッタンブラザーズ1号にぶつける。それを見もせず、一気にマンハッタンブラザーズ2号へと迫る。
 タックルをかまそうとしてきた2号の更に下からカニばさみを掛け、素早く左足首を捻じって破壊する。そのままリング下に蹴落とし、立ち上がる。
(よし、まず一人)
 ようやく一人を戦闘不能にできた。一人減ったことで安堵感も生まれる。マンハッタンブラザーズ1号と早矢仕、一人ずつの実力は明らかに叶よりも下で、先程まで苦しめられたマンハッタンブラザーズのコンビネーションも今はない。
(まずは・・・こいつからだ!)
 次の狙いを決めた叶は、マンハッタンブラザーズ1号へと突っ込む。と見せかけ、早矢仕へと急速に方向転換する。
「んっ!」
 乳首が擦れた際に生まれた甘い痺れは噛み潰し、左手首を押さえていた早矢仕の右腕を取る。そのまま回転式腕ひしぎ十字固めへと極めながら、早矢仕の体をマンハッタンブラザーズ1号へとぶつける。
「痛い、痛いよ叶ちゃん! なんてことするんだよぉ!」
「やかましい!」
 極めると同時に早矢仕の右肘を脱臼させ、技を解くと同時に蹴落とす。
(よし、あと一人!)
 しかし、そこへマイク音が響く。
「10分経過しました、『ノーペイン』、尾代呑太が参戦します!」
「待ちかねたっスよ! どんどんエロいことしていくっス!」
 時間となり、ガウンを跳ね除けた尾代がリングインする。
(・・・休みそこねたか)
 時間内に倒しきれば休息が取れた。後悔と動き続けた時間が疲労となる。
「叶ちゃんは関節技が得意みたいっスね」
「ああ、油断するなよ」
 叶が動き続きるためにセクハラのチャンスもないレフェリーが、尾代に対して不機嫌に答える。
「それじゃ1号さん、行くっスよ!」
 レフェリーの言葉を聞いていたのかいないのか、尾代は警戒も見せずに叶に迫る。
(・・・こいつ、アホか?)
 敵のことながら、叶は呆れた。尾代の動きは達人のそれではない。早矢仕と似たり寄ったりの実力だろう。
「おっぱいもらったっス!」
 バスト目掛けて伸びてきた尾代の右腕を捕え、捕えると同時に立ったままのアームロックで肘を脱臼させる。そのまま尾代の体を放り出し、マンハッタンブラザーズ1号へと向かう。
 マンハッタンブラザーズ1号がラリアートを放ってくるが、軽々と躱して寝技の脇固めへと決める。
 マンハッタンブラザーズ1号の動きにはもう慣れた。しかも相棒の2号はもう居らず、脅威にはなり得ない。あっさりと右肩を脱臼させ、リング下へと蹴落とす。
「よし、あとはあいつを落とせば休める・・・っ!?」
 突然襟首を掴まれ、後ろへと引かれる。反射的に前へと体重を掛けたとき、Tシャツが音を立てて破れた。
「なっ!?」
「逃がさないっス!」
 慌てて距離を取ろうとしたが、Tシャツの残りを掴まれる。その手を振り払ったとき、Tシャツの残骸までも剥ぎ取られ、水着が露わとなった。青地に花柄のビキニ水着は、結び目が紐のタイプだった。
「さっき肘を外したのに、なんで・・・」
 Tシャツを奪ったのは、右腕が肘からぷらぷらと揺れている尾代だった。
「右手が動かないっスけど、左手は動くっスよ!」
 少し眉を顰めただけの尾代は、痛みに鈍いという特性があった。
「それよりも、ビキニ水着がエロいっス! おっぱい揉みたいっス!」
 鼻息を荒げながら、片腕しか動かない尾代が迫ってくる。
「ちっ!」
 今度は左肘を脱臼させたが、それを意にも介さない尾代の体当たりを受け、諸共に倒れ込む。
「くあっ!」
「おひょっ! おっぱいクッション最高っス!」
 やはり成人男性の体重を浴びせられては苦しかった。しかも尾代の顔がバストに埋められ、水着の布地が擦れたことで乳首から快感が奔る。
「おっぱいっス! おっぱいクッションっス! おっぱい最高っス!」
 尚も顔をバストへと埋めてくる尾代に怒りが燃える。
「さっさと退け!」
 顔を叩(はた)くことで横を向かせ、更に首を捻じりながら尾代の背後に回り込み、胴締めスリーパーで尾代の頸動脈を絞め上げる。
「お、おっぱいの感触が・・・最高、っス・・・」
 至福の言葉を残した尾代が、がくりと首を垂れる。気絶したと見て、レフェリーが叶に告げる。
「尾代を放せ、退場させる」
「・・・ふぅ」
 吐息を一つ落としてから、叶は胴締めスリーパーを解いた。
 ようやくリング内の選手を倒しきった叶だったが、休む時間は与えられなかった。
「15分経過、最後の選手、『サブミッション・スネーク』、ヴァイパーが参戦します!」
(・・・もう時間かよ!)
 複数の男性選手を相手に、15分ほぼ休息なしで闘い続けたのだ。あと一人まで漕ぎ着けたとは言え、疲労が重く圧し掛かっていた。
「カハハッ、聞いていたほどの動きではないな」
 リングへと上がったヴァイパーは、黒のボディタイツを纏い、その名の通り蛇を思わせる冷たい瞳と絞り込まれた肉体を持つ男だった。
(こいつ・・・さっきの奴らとはレベルが違う)
 脳裏で警報が鳴る。叶は自然と構えを取っていた。
「楽しませてもらおうか。闘いではなく、お前の身体でな」
 ヴァイパーがぬらりとした舌で唇を舐める。
(ふざけたこと言いやがって)
 叶の闘争心が頭をもたげる。しかし。
「なっ!」
 闘争心が噴出するよりも尚速く、ヴァイパーのタックルは低く、鋭かった。タックルを潰そうとした瞬間、甘い痺れが胸から生じた。
(くそっ!)
 乳首からの刺激が刹那の反応を鈍らせる。完全には対応できなかったことで右足を抱えられる。
「ちっ!」
 踏ん張ろうとした瞬間、秘部を触られていた。
「んあっ!」
 予想だにしない責めで踏ん張りが利かず、テイクダウンを取られる。
(まずい!)
 左足でヴァイパーを蹴り飛ばそうとしたものの、またも秘部に刺激を加えられる。思わず力が抜けてしまい、マウントポジションへと移行されてしまう。
「随分あっさりとポジショニングさせてくれたな。触ってくれ、ということか?」
「んなわけあるか!」
 ヴァイパーの動きを警戒しながらガードを固める。
「そこを守るだけでいいのか?」
 ヴァイパーは薄く笑いながら、叶の脇腹を撫でる。
「んなろっ!」
 ヴァイパーの左腕を捕えようとしたが、逆に捕まりそうになる。
「くっ」
 腕を引いた瞬間、バストを触られていた。
「んっ、触るな!」
「そういう割に、声に甘いものが含まれているぞ」
 咄嗟にバストを庇うが、ヴァイパーから揶揄される。
「さて、ではこういうのはどうだ?」
 ヴァイパーは少し後ろに位置取りし、叶の太ももの上へと移る。
(今だ!)
 叶はブリッジからマウントポジションからの脱出を狙うが、腰を浮かしたときに秘部を撫でられた。
「ふあっ!?」
 思わず力が抜け、ブリッジも失敗する。
「どうした、その程度か?」
 尚も秘部を弄りながら、ヴァイパーが笑う。
「・・・いつまで触ってやがる!」
 刺激を堪え、秘部を責める手を捕えようとする。しかし不利な体勢からではスピードもなく、逆にヴァイパーに右手首を掴まれる。そのまま背後に捩じ上げられながら、するりとバックポジションを取られる。
「ヒップも張りがあるじゃないか」
 叶を組み伏せたヴァイパーは、叶の右腕を極めたままヒップを揉む。
「触るなって・・・言ってるだろ!」
 叶は左腕のみでのプッシュアップで体を捻じり、ヴァイパーを背から落とす。否、ヴァイパーはその動きに逆らわず、叶の背後に回りながら胴締めスリーパーへと移行していた。
「ぐっ、ううっ・・・」
 先程尾代を仕留めた技を自分が掛けられる。その屈辱と技の決まり具合に苦鳴を洩らす。
「カハハ、この程度か。では、そろそろフィニッシュだ」
 叶の手足の隙間から、ヴァイパーの手足が侵入し、拘束していく。
「て、てめぇ、なんて恰好させるんだ!」
 叶は背後からのフルネルソンに加え、大きく開脚されるという引っ繰り返された亀のような恰好を取らされていた。
「やれやれ、やっとボディチェックができるな」
 座り込んだレフェリーが、いきなりバストを掴み、揉んでくる。
「触るな、くそっ・・・ひぅっ!」
「なんだ、声が甘いぞ? 気持ちいいのか?」
 レフェリーのにやついた声に唇を噛む。試合中に擦れた乳首は既に敏感になっており、ブラの上から触られただけで声が洩れてしまったのだ。
「まあ、この前の試合でも散々悦んでた織部選手だからなぁ。ボディチェックで感じるなんて、恥ずかしくないのか? ん?」
「か、感じてるわけ・・・あぅんっ!」
「その声が感じてる証拠だと思うがな」
 ブラの上から乳首の辺りに触れたレフェリーが首を傾げる。
「ん? 乳首が硬くなってないか?」
「そ、そんなわけないだろ」
 叶の否定も聞かず、レフェリーはにやりと笑う。
「それじゃあ、生のおっぱいを確認させてもらおうか」
 レフェリーがビキニのブラを掴み、乱暴に剥ぎ取る。
「なんだ、やっぱり乳首が硬くなってるじゃないか」
 叶の乳首を凝視したレフェリーが笑う。水着に刺激され続けた敏感な乳首は、既にしこり立っていた。
「そう言えば織部選手は乳首を弄られるのが大好きだったな」
「誰がだ! そんなことな・・・あああっ!」
 いきなり両乳首を抓まれ、転がされた。紛れもない快感が乳首から奔り抜け、嬌声を上げてしまう。
「なんだ、凄い声を出すな。やっぱり好きなんじゃないか」
 叶の乳首に振動を送り込みながらレフェリーが嘲笑う。
「・・・調子に乗るんじゃねぇぞ、ど変態レフェリーのくせしやがって!」
 それでもレフェリーを睨みつける。
「口が減らないな」
 鼻を鳴らしたレフェリーが、水着のボトムの左紐を外す。
「っ!」
 最後の一枚をも奪われる、という危機感が息を飲ませる。
「俺は優しいからな、ギブアップするなら全裸だけはやめてやってもいいぞ?」
 反対側の紐に手を伸ばし、レフェリーがにやつく。
「ふざけるんじゃねぇ!」
 叫んだ瞬間、反対側の紐も外された。
「最後のチャンスだ。ギブアップするなら今のうちだぞ?」
 水着の上から叶の秘部を弄りながら、レフェリーが最終確認をしてくる。
(このド変態野郎が!)
 レフェリーのにやけ面に殺意すら覚える。辱めを受けるとはわかっていても、敗北など受け入れるわけにはいかない!
「・・・誰が、負けを認めるか!」
 レフェリーを睨みつけ、吼える。しかし、その代償は羞恥だった。
「そうか、なら・・・またオールヌードを披露してもらおうか!」
 最後の一枚を剥ぎ取り、レフェリーが高々と掲げる。叶は前試合同様、何も身に着けない全裸とされてしまった。叶の裸体へと、観客席からは粘つく視線と野次や指笛が飛んでくる。
「お? もうここが濡れてきてるじゃないか」
 レフェリーが既に蜜を生んでいた秘部を見て、ゆっくりとした動きでなぞりだす。
「そら、この音が聞こえるか? うん?」
「・・・」
 反論も思いつかず、沈黙を通す。
「では、そろそろこちらも楽しむ時間とさせてもらうか」
 ヴァイパーが関節技を解き、剥き出しの乳房を掴む。
(・・・チャンス、だ!)
 叶を押さえつけていた関節技が解かれたのだ。反撃は今しかない。
「うあああっ!」
 しかし。ヴァイパーからの乳首への責めに、忽ち力が抜けた。
「カハハ、乳首だけ責めれば腰砕けか。楽な相手だ」
 ぴんぴんと叶の乳首を弾きながら、ヴァイパーが嘲笑する。
「織部選手は乳首が弱点だからな。そこを責めれば簡単に気持ち良くなってくれるぞ」
 レフェリーがヴァイパーにアドバイスとも皮肉とも取れる言葉を投げ、剥き出しの秘部や淫核を嬲る。
(ちくしょう・・・チャンスだったってのに・・・!)
 乳首、秘裂、淫核。敏感な箇所を同時に責められ、快感が溜まっていく。溜められていく。それに呼応するかのように、秘部からは愛液が沸き上がる。
「もう洪水だな。よし、俺が舐めとってやろう」
 レフェリーは叶の太ももを押さえ、秘部を舐め回してくる。
「くうっ!」
 敏感な箇所を別の方法で責められ、新たな快感が生まれてしまう。
「くそぉ、やめろ、やめっ・・・うああっ!」
 反撃を試みようとしても、快感、特に乳首への刺激で事前に封じられる。
「気持ちいいくせに、無理に隠そうとしなくてもいいんだぞ?」
「うああっ!?」
 レフェリーの舌が秘裂を割り、膣の中にまで侵入する。その間にもヴァイパーの乳房、乳首責めは続いており、官能が刻一刻と目盛りを上げていく。
(このままだとまずい!)
 前回の試合、嫌というほど味わわされた絶頂。そのときの感覚に近づいていくのがわかる。
(くそっ! またあんな姿を晒すわけには・・・いかない、のに!)
 叶の気持ちとは裏腹に、身体は快感に負け、どんどんと絶頂へと転げ落ちていく。
 そして。
「あっ・・・あああ〜〜〜っ!」
 叶はとうとう耐えきれず、絶頂へと達した。腰が跳ね、短い硬直のあとで脱力する。
「随分悦んでくれたようだな」
 叶の秘裂から顔を上げたレフェリーが口を拭う。
「どうだ、ギブアップしてもいいぞ?」
 レフェリーが淫核を嬲りながらギブアップを勧めてくる。
「あっ・・・あぁぁ・・・ギ、ギブ・・・」
 前回同様の快楽責めに、思わずギブアップの言葉を口にしかかる。そのとき、山森のにやけ面が脳裏に浮かんだ。
「ギブアップなんか・・・するか!」
 山森への復讐心が勝った。ギブアップを拒否した叶だったが、その報いは更なる快感責めだった。
「そうか、もっと気持ち良くして欲しいんだな」
 レフェリーから秘部を舐められ、淫核を弄られる。
「カハハ、好き者だな」
 ヴァイパーからは乳房の揉み込み、乳首の扱き責めを受ける。
「ふぁっ、やめろ・・・んあああああっ!」
 またも絶頂させられる。全裸で悶える叶へと、観客席からは野次と視線、指笛が飛んでくる。絶頂に身体を震わす叶に、秘裂を弄りながらレフェリーが声を掛けてくる。
「どうした? ギブアップしてもいいんだぞ?」
 レフェリーが何度目かのギブアップの確認をしてくる。
「誰が・・・するか!」
 しかし、前回のときに味わった屈辱が敗北を拒ませる。
「やっぱり好き者だな、織部選手は」
 レフェリーは焦ることなく、秘裂を丹念になぞってくる。
(くそっ、くそぉっ! こいつら程度に、こんなに・・・くあぁっ!)
 拒否すればするほど、より多くの快感を与えられる。無限に続く快楽地獄に、叶は歯を食い縛って耐えるしかできなかった。

「あ、ふぁ・・・ああ、ぁ・・・」
 叶が全裸とされてから、既に二十分が経過していた。その間休息も与えられず、叶はひたすらレフェリーとヴァイパーに玩ばれていた。
「あっ、んっ、ふぁっ・・・あああーーーっ!」
 また絶頂する。もう何度達したのかもわからない。
「いいかげんに諦めて、負けを認めたらどうだ?」
「・・・っ」
 レフェリーの誘惑の言葉にも、首を横に振る。
「やっぱり気持ちいいことが好きだから、負けを認めないんだろ? この前も気持ち良さそうだったからなぁ」
 レフェリーはにやにやと笑いながら、飽きることなく叶の秘部と淫核を責め続ける。
「ならば、今回もたっぷりと楽しんでもらわなければな」
 ヴァイパーが乳房を揉み回しながら、これ以上ないくらいに立ち上がった乳首を親指と人差し指に挟んでこりこりと解す。
「うあああっ! 駄目だ、やめっ・・・ふぁあああん!」
 またも絶頂へと叩き込まれる。叶の跳ねる腰を無理やり抑え込んだレフェリーは、伸ばした人差し指を膣に出し入れする。
「ふん、賭け事が好きだ、などと言ってるが・・・」
 快感の嵐の中、聞きたくもないレフェリーの独り言が耳に入る。
「本当は、こうして厭らしいことをされたかったんだろ」
 レフェリーの言葉を脳が理解した瞬間、怒りが沸騰した。
(あたしの賭けへの情熱を・・・こんな形で否定するのか!)
 怒りは快感すら駆逐した。敏感過ぎる乳首を責めていたヴァイパーの右人差し指を、掴むと同時にへし折る。秘部責めに夢中になっているレフェリーはそれに気づかない。
「ぎぃっ! こ、このアマぁ!」
 苦鳴を飲み込んだヴァイパーが、スリーパーを極めようとする。しかし、叶の動きが勝った。レフェリーを蹴り飛ばすと同時にヴァイパーの左手首を掴み、捻ると同時に脱臼させる。

 前回の敗戦は、叶のプライドをずたずたにした。性的に辱められたのみならず、敗北を嫌う叶が、自らギブアップという屈辱を選んでしまったのだ。
 屈辱は、無茶な稽古量へと叶を向かわせた。元々鋭い切れ味を持っていた関節技に磨きをかけ、ブラジリアン柔術道場でも屈指の実力を手に入れたのだ。

 しかも、全裸にされたことで水着の刺激から解放された。本来の動きを取り戻した叶の技はヴァイパーを上回った。
 左手首を脱臼させてから左肘を極め、これも脱臼させる。次に左肩を脱臼させたところで、ゴングが鳴った。

<カンカンカン!>

 ゴングが鳴らされても、叶はヴァイパーを破壊し続けた。黒服が飛び込み、動きを封じるまで、叶はひたすらヴァイパーの関節を壊し続けた。
 容赦なくヴァイパーを破壊する全裸の叶の姿は、鬼気迫るものがあった。その鬼気が会場を覆い、観客たちから声を奪っていた。


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