【特別試合 其の四十五 笹葉沙耶:キックボクシング 其の二】  紹介者:ひみつ様

 犠牲者の名は「笹葉(ささば)沙耶(さや)」。17歳。身長160cm、B82(Dカップ)・W56・H84。黒髪の姫カットの美少女。腰と脚のラインは既に充実し、描き出す曲線美は垂涎ものの美しさ。一般庶民だが、色白で第一印象は深窓の令嬢。
 正義感が強く不良行為は見逃さないが、できるだけ話し合いで型をつける方針で暴力は最後の手段。大きく開脚する足技を得意とするのは、潜在的に露出性癖があるからと思われるが、本人は絶対に認めたくない。
 前回の出場後、写真を取り返すどころか更なる恥辱を記録に収められた沙耶は、情報の拡散を見逃してもらうかわりに金持ちのボンボンに逆らえなくなった。意外にも命令されたのは下着以外のアンダーをこれからも着用しないことだけ。しかし幅を利かせる不良を相手に人前で足を上げる機会がやけに増えるようになり、段々と自身の露出性癖を否定する気持ちが揺らいでいく中、二回目の写真を取り返す機会が与えられた。

▼△▼△▼△▼△▼△▼

 ガウン姿の沙耶が花道に姿を現すと、前回の敗北を知る観客からそのときのことを論う野次が飛ばされる。沙耶は俯き加減のまま、リングへと歩を進めた。

「赤コーナー、"男子学生連合軍"!」
 赤コーナーに立つのは一人ではなかった。何人もの同世代の男子が着崩した制服姿でにやついている。それは、沙耶が過去に成敗したことのある不良たちだった。
「青コーナー、『オープナー』、笹葉沙耶!」
 コールを受け、沙耶はガウンを撥ね退ける。その下から現れたのは、沙耶の通う学校の制服だった。
 上は白のYシャツにベージュのブレザーで、胸元には蝶ネクタイ。下はレッドチェックのプリーツスカートだ。当然スカートの丈は短い。
 それだけではなく、何故か沙耶の両手首には手枷が嵌められていた。肌に傷がつかないようにゴム製のリストバンドの上からの手枷ではあるが、両手が自由に使えないことに違いはない。
 ここで、リング下の黒服がマイクを持った。
「今回、笹葉沙耶選手の試合は変則マッチとなっております」
 この発表に、会場のざわめきが小さくなる。
「笹葉選手の勝利条件は、手枷を嵌めたまま、男子学生を相手に最後まで勝ち抜くことです」
 あまりにも不利な条件に、観客席が盛り上がる。しかし、正反対の反応を見せる者も居た。
「笹葉さん、頑張って!」
「笹葉さんなら勝てるよ!」
 リングに一番近い最前列から、沙耶に対する純粋な応援が飛ぶ。
「みんな・・・」
 それは、沙耶と仲の良い男子学生たちだった。いかにも純情そうな顔立ちで、<地下闘艶場>の雰囲気に居心地が悪そうだ。それでも沙耶に声援を送ってくれることが嬉しい。
 しかし、友人たちの隣には何故かあのボンボンも居る。それが腹立たしい。
「久しぶりだな、笹葉選手」
 声を掛けてきたのは、前回、沙耶に散々セクハラを行ったレフェリーだった。
「それじゃ、もうわかってるな? ボディチェックだ」
「っ・・・」
 前回ボディチェックと言いつつ、散々セクハラされた記憶が蘇る。
「受けないとどうなるかわかってるな? 写真は返せないぞ」
「・・・」
 沙耶は何も言わず、身を硬くするだけだ。
「それじゃ、始めるぞ」
 前回同様、レフェリーはいきなり沙耶のバストを掴んだ。そのままゆっくりと揉み込んでいく。
「この前もおっぱいを散々揉まれたよなぁ。今日も笹葉選手の艶姿、楽しみにしてるからな」
 前回の試合を持ち出され、沙耶は下を向く。そんな沙耶に野次が飛ばされるが、レフェリーにまで野次が飛ばされた。
「さ、笹葉さんに厭らしいことをするな!」
「そうだそうだ!」
 レフェリーに向け、リング下の友人たちが叫ぶ。
「うるさい連中だな」
 舌打ちしたレフェリーだが、セクハラボディチェックを止めようとはしない。バストの次は魅力的なヒップへと移り、プリーツスカートの上から撫で回す。
「そう言えば、笹葉選手は見られるのが大好きだったな」
 にやりと笑ったレフェリーがスカートの端を掴み、リング下の友人たちに見えるように捲り上げる。縦縞パンツを見てしまった友人たちは、全員顔を赤らめて顔を逸らしてしまった。
「なんだ、折角のサービスを見ないのか?」
 奥手な少年をからかったレフェリーは、プリーツスカートを捲ったままヒップを撫で、揉む。
(今日もこんな恥ずかしい真似をするなんて! でも、耐えなきゃ・・・試合をして勝たないと、写真を取り返せない)
 ボディチェックをクリアしなければ、試合すらできない。バストとヒップを這いずり回る感触を、沙耶は耐えるしかできなかった。自分が今見られている、という事実から目を背けて。

「よし、何も隠してないようだな」
 ようやくボディチェックが終わり、レフェリーが離れる。屈辱を噛み殺す沙耶の目線の先に、二人の不良がにやついていた。

<カーン!>

 試合開始のゴングが鳴らされた。沙耶の初戦はいきなり二人が相手だった。
「沙耶ちゃんよ、ボディチェックで感じちまったんじゃねぇのか?」
「まだ足りねぇだろ。俺たちがしっかりとボディチェックし直してやるからな」
 上着を脱いだ不良たちが下卑た笑みを浮かべる。その表情と科白に怒りが沸く。
「やっ!」
 得意のハイキックを放つが、振ろうとした手が手枷に阻害される。
「効かねぇな、いつもの蹴りはどうした?」
 あっさりとガードされ、慌てて蹴り足を戻す。
(まずいわ、いつもの蹴りが出せない)
 強い蹴りは、脚力だけでなく手の振りや腰の回転も必要となる。手枷があることで手の振りが充分に使えず、沙耶はいつものような蹴りが放てない。
 内心焦りを抱えていると、片方の不良が背後から腕を伸ばし、抱きつきながら沙耶のバストを掴む。
「っ!」
 沙耶の右足が跳ね上がった。鋭い軌道を描いた右足は、背後の不良の顔面に突き刺さっていた。プリーツスカートが捲り上がり、露わとなった縦縞パンツに視線が集中する。
「おおっ」
 残った不良も大胆なパンモロに目を奪われていた。その顎を前蹴りが捉え、一撃で意識を断つ。一瞬で戦闘不能とされた不良二人を手早く黒服が引き摺り下ろす。
「さすが笹葉選手だな、パンツが丸見えになったぞ」
 レフェリーの余計な一言に、スカートを押さえる。
「よし、次だ!」
 レフェリーの呼び込みに、新たに二人の不良がリングに上がる。
「相変わらず短いスカートで蹴りを出すよな」
「やっぱり見られて感じてるって噂は本当かよ」
「ち、違う、私はそんなのじゃないわ!」
 不良たちの言葉を慌てて否定する。
「それじゃ、パンツが見えないように闘ってみろよ」
 挑発だとわかってはいたが、知らずスカートを押さえてしまう。それでも写真を取り返すため、闘うしかない。
(手は使えない。それなら、腰の回転と脚力だけで蹴るしかない)
 しかも下着は見えないように、だ。
「とにかく、捕まえりゃこっちのもんだ」
「確かにな」
 不良二人は沙耶を挟み込むように位置取りし、じりじりと距離を詰めてくる。
「おっしゃ、それじゃ・・・っ!」
 飛びかかろうとした不良の機先を制し、沙耶がサイドキックを放つ。しかしぎりぎりで躱される。
「あっぶね!」
「お、パンツが見えたぞ」
「っ!」
 下着が見えたと言われれば、意識せざるを得ない。意識すれば、蹴りへの躊躇いが生まれる。沙耶の躊躇を見抜いた不良の一人が突っ込んでくる。
「!」
 得意のハイキックではなく、ミドルキックを叩き込む。
「ぐぅっ!」
 左腕でガードした不良だったが、蹴りの威力にたたらを踏む。
「もらったぜ!」
 もう一人の不良が背後から沙耶のバストを掴む。
「いやっ!」
 その手を振り払い、距離を取ろうとする。
「逃がすかよ!」
 不良がYシャツを掴み、無理やり引っ張る。
「きゃぁっ!」
 ボタンが弾け飛び、Yシャツの前が開く。逃れられたものの、沙耶のブラが露わとなった。
「パンツだけじゃなくて、ブラも見えたぜ」
「やっぱり見せたがりだな」
「そっちがシャツを破いておいて!」
 不良たちの言い草に、思わず反論する。しかし不良たちが恐れ入るわけもなく、にやつきながら沙耶の肢体を眺め回してくる。その視線を受け、鼓動が速くなる。
「おらっ!」
 不良が伸ばした手を躱すが、もう一人の不良の手がブラに掛かる。
「あっ!?」
 手枷の嵌められた両腕で不良の手を弾くが、不良がブラを強く掴んでいたためブラがずれてしまった。
(急いで戻さないと・・・っ!)
 ブラを元に戻そうとした沙耶だったが、手枷が邪魔でブラが元に戻せない。
「なんだ、見た目よりもおっぱいあるじゃねぇか」
「こいつは直に大きさ確かめないとなぁ」
 不良二人は、厭らしい手つきをしながら沙耶の乳房を凝視する。
「っ!」
 乳房への視線を感じ、鼓動が速くなる。
(違う! 絶対に違う!)
 その瞬間、意識せぬまま沙耶は飛び出していた。
「げぼっ!」
「うげあっ!」
 沙耶の乳房に見惚れる二人の腹部に鋭い前蹴りを突き刺し、一瞬で戦闘力を奪う。
「ちっ、油断し過ぎだ」
 舌打ちしたレフェリーがリング下に合図を送り、黒服が二人の不良をリングから引き摺り下ろす。
(ふう・・・)
 ブラをずらされてしまったものの、第二戦も勝ち抜くことができた。
「残りのメンバー、出番だぞ」
 レフェリーの呼びかけに、リング下に居た三人の不良がリングに上がる。全員、先程までの四人よりもガタイがいい。
(残り、三人・・・)
 沙弥はだいぶ息が上がっていた。手枷がなければ三人相手でも、否、不良全員が相手でも倒す自信がある。しかし、手枷と男たちの欲望の視線、それに数々のセクハラが沙耶の体力を奪っていた。
「笹葉さん!」
「あとひと踏ん張りだよ!」
(みんな・・・!)
 友人たちの声援が沙耶の闘志を再び掻き立てる。しかしその視線が沙耶の乳房や縦縞パンツに惹きつけられていることを、沙耶は知らない。
「さっき話した通りにいくぜ」
 三人のリーダー格らしい男が他の二人に確認する。
「わかってるって」
「ヘマすんなよ」
 不良たちは沙耶を囲むように位置取る。一撃でKOされないように、頭部をガードしながらだ。そのままじりじりと包囲網を狭めていく。
「笹葉ぁ、最初は誰にパンツを見せてくれるんだ?」
「っ!」
 気を張っていたところに投げられた言葉に、沙耶は一瞬集中を途切らせてしまった。
「今だ!」
 喧嘩慣れした不良たちはその隙を逃さなかった。一斉に沙耶に飛びかかる。
「くっ!」
 正面の不良をハイキックでリングに這わせる。しかし背後からのタックルで体勢を崩し、手をついてしまう。
「よし、押さえ込め!」
 二人の不良が沙耶に圧し掛かる。うつ伏せの沙耶の身体を押さえつけ、逆の手でヒップや太ももを撫で回す。
「このラインが厭らしいよな」
「ああ、もう何度か突っ込まれてるんじゃねぇか?」
 下品な会話を続けながらも、手は止めようとしない。
(まずい、早く逃げないと!)
 しかし男二人に押さえつけられているのだ。足をばたつかせても無駄な抵抗にしかならない。
「・・・っつうー、ガードしてても効いたぜ」
 先程ハイキックで倒された不良が、側頭部を擦りながら起き上がる。
「先に始めてるぜ」
「おっと、乗り遅れた分取り返すぜ」
 不良共は三人掛かりで沙耶を押さえつけ、魅惑的なヒップと太ももを中心に撫で回す。
「これじゃ、ケツと脚しか楽しめないな」
 しかし、一人が不満を漏らす。
「それじゃ、上向きにさせろ」
 男たちに仰向けの姿勢にされる。殴り飛ばそうとした手は枷ごと押さえつけられる。
「それじゃ、俺はおっぱいを頂くぜ」
「俺はアソコだ」
「それじゃ、俺は脚だな」
 不良の一人は沙耶の手を伸ばさせて肘の上辺りに乗り、乳房を揉み始める。
 不良の一人は沙耶の右太ももの上に乗り、下着の上から秘部を弄る。
 不良の一人は沙耶の左足の上に乗り、太ももからヒップまでを撫で回す。
「おい笹葉、おっぱいは気持ちいいか?」
「パンツ丸見えだぜ。縦縞パンツとは可愛いじゃねぇか」
「太ももが生唾もんだぜ」
 男たちの手や舌が肢体を這う。しかも観客席からは粘つく視線が飛び、沙耶の身体を這い回る。
(ああ・・・見られてる・・・それに、厭らしく触られて・・・)
 そのとき、ずくりとお腹の奥が疼いた。
「どうだ? 皆に見られて嬉しいだろ?」
「そんなこと、ないわ!」
 不良の一人に言われ、慌てて否定する。
「なんだ、濡れてきてないか?」
 秘部を弄っていた不良がにやつく。
「そ、そんなわけない!」
 必死に否定する沙耶だったが、男たちが納得する筈もない。
「絶対濡れてるぜ、これ」
「よし・・・笹葉のパンツ、下ろして確かめてやろうぜ」
 不良の一人が唇を舐める。残りの二人も顔を見合わせ、だらしなく笑う。
(そんなこと、絶対に嫌!)
 自らの秘所を他人に、しかも大勢の観客に注視されている中で晒されるわけにはいかない。しかし拒否の思いとは裏腹に、押さえ込まれた状態では逃げるどころか隠すこともできない。
「それじゃ、俺が下ろす」
 リーダー格の男が当然とばかりに割り込む。
「お前、さっき充分楽しんだだろ、俺の番だ」
「待てよ、今度は俺の番だって!」
 可愛い女の子の下着を脱がす、という男の欲望を刺激する行為に、不良たちは自分こそが脱がすと言って退かない。そして、その隙を見逃す沙耶ではなかった。
「フッ!」
 リーダー格の男の顔面に踵を入れ、倒すと同時に反動で距離を取る。
「あ、馬鹿」
「逃すか、って邪魔だ!」
 蹴られた不良に注意を取られた不良と、沙耶を追いかけようとした不良がぶつかる。その顎を、綺麗な二つの弧を描いたキックが打ち抜いた。最後に、立ち上がろうとしていたリーダー格の不良のこめかみに爪先を叩き込み、完全に沈黙させる。
(やった、全員・・・倒した・・・)
 セクハラを繰り返されたものの、不良共を全員KOすることができた。思わず座り込んでしまった沙耶の元へ、リングに上がった友人の男子生徒たちが駆け寄ってくる。
「みんな・・・!」
 感激した沙耶を男子学生たちが押し倒す。手荒い祝福に、沙耶は眉を顰めた。
「ちょっとみんな、もう少し優しく・・・」
 その言葉は途中で途切れた。友人たちが乳房や太ももに手を伸ばしていたからだ。
「えっ・・・」
 混乱する沙耶の気持ちなど斟酌せず、友人たちは更に大胆に手を動かしていく。
(みんな、目がおかしい・・・)
 友人たちの目が、先程の不良たちと同様欲望に満ちている。
「も、もう試合は終わった筈よ! もう・・・」
 沙耶の悲痛な叫びだったが、それを冷たく遮る者が居た。
「勝利条件は男子生徒を相手に最後まで勝ち抜くこと、そう言っただろう?」
 エプロンサイドまで来ていたボンボンが、友人たちから嬲られる沙耶に告げる。

 それは、沙耶が不良たちに苦戦しながらも全員を倒したときだった。
「なあお前ら、笹葉さんを好きなんだろ?」
「えっ・・・」
 いきなりのボンボンからの問いかけに、沙耶の活躍、否、艶姿に見入っていた男子学生たちは思わず動きを止めていた。体だけでなく、心の動きも。
「いいぜ、お前らも笹葉さんと遊んで来いよ。見てたらわかっただろ? 笹葉さんは、嫌がってる振りして喜んでるんだから。不良にばかり良い思いさせる必要はないぜ?」
 ボンボンの声が男子学生たちの耳に届くたび、心の障壁が薄くなっていく。
「学校じゃ無理だ。だが、ここは裏社会の闘技場。男にとっては夢の世界だ。我慢する必要なんてないんだよ」
 誰かが、ぐびりと唾を飲み込んだ。
「笹葉さんと遊べるのは、今しかない。今を逃せば、もう二度とチャンスはないんだぜ?」
 そこで、ボンボンはにこりと笑った。
「笹葉さんも絶対喜ぶよ」
 それが決定打だった。自分たちの欲望をぶつけても、沙耶は喜んでくれる。偽りの免罪符を得た男子学生たちは、誰というわけでもなく、否、我先にと立ち上がり、リングへと吸い寄せられていったのだ。

「お友達と遊ぶのも楽しいだろ? 安心しなよ、お友達を倒したら写真は全部処分するから、さ」
 ボンボンは微笑を浮かべたままだ。
(みんなを倒す、って・・・そんなこと、できない)
 心優しい沙耶は、友人と認めた男子学生たちに攻撃することができない。
「ねえみんな、落ち着いて・・・ふぁっ!?」
 説得しようと口を開いた瞬間、乳首を引っ掻かれた。
「今の声・・・」
「笹葉さん、気持ちいい声が出てたね」
「やっぱり、笹葉さんはこういうことが好きなんだ」
 三人の友人の表情がオスのものへと変貌していく。
「違う、今のは・・・ああんっ!」
 両方の乳首へ同時に吸いつかれ、甘い声が出てしまう。既に硬さを増していた乳首に吸いついた友人二人は、示し合せたかのように乳首を舐め始める。
「や、やめて・・・あっ、ああん!」
 制止の声も、自らの嬌声で途切れてしまう。
「ああ、笹葉さん・・・」
 友人の一人が沙耶の顎を掴み、顔を寄せてくる。
「っ!」
 そのまま唇を奪われた。
(そんな・・・)
 仲の良い友人とは言え、恋人関係ではない。唇まで奪われるとは想像もしなかった。
 唇を離した友人が、耳元で囁く。
「笹葉さん、皆見てるからね」
「えっ・・・」
「見られている」。そう意識した途端、沙耶の奥で何かが疼く。
(違う、そんなことない、見られても嫌なだけ!)
 必死に否定しても、疼きは更に大きくなっていく。
 一人にキスを繰り返され、一人に乳房と乳首を弄られ、一人に下着の上から秘部を撫でられる。秘部を撫でていた友人が、他の二人におずおずと言葉を掛ける。
「ね、ねえ、笹葉さんの大事なところ・・・見てみたくない?」
 友人の一人が阿るように提案する。自分一人でするには恥ずかしく、仲間の同意を得たいと言う行動だった。
「ぼ、僕は、その・・・」
「見たい、かな・・・」
 他の二人も、はっきりと言い切ることはできない。しかし、その顔を見れば何を望んでいるのかは一目瞭然だった。
「待って、そんなことはしないで!」
 沙耶の叫びに、友人たちは身を固くする。しかし、観客たちが口々に叫び始めたことで状況が変わる。
「何モタモタしてるんだ!」
「いいから脱がしちまえばいいんだよ!」
「脱がせ!」
「脱がせ!」
「ぬ・が・せ! ぬ・が・せ!」
 場内に「脱がせ」コールが巻き起こる。
「お客さんがこう言ってるんだから・・・」
「そうだよ、皆見たがってるんだ」
「脱がしちゃおうよ」
 友人たちの目が据わる。
「待って、駄目よ、脱がさないで!」
 沙耶の哀願も、最早歯止めとはならない。
「それじゃ、脱がすよ」
「いやっ、だめっ、それだけはだめぇぇっ!」
 どんなに首を振っても、どんなに叫んでも、沙耶の言葉は欲望に染まった友人たちに届かなかった。縦縞パンツを掴んだ友人は、一度生唾を飲み込んでから、一気に摺り下げた。しかし力加減もわからず、縦縞パンツを破ってしまう。
 だが、友人たちはそのことに気づきもしなかった。沙耶の、否、初めて見る生の女性の秘所に、視線が吸いつけられてしまったからだ。
「これが、笹葉さんの大事なところ・・・」
「いやぁ、見ないでぇ」
「綺麗だよ、笹葉さんのここ」
 見られ、褒められたことで、沙耶の心が嬉しく感じてしまう。
(違う違う! 私は、そんな人間じゃない・・・のにぃっ!)
 友人の一人が生唾を飲み込み、秘裂へと手を伸ばす。
「あったかい・・・」
「だめぇ、そこはだめぇ!」
 最早沙耶の言葉は友人たちには届かない。
「・・・濡れてる」
 セクハラを繰り返され、望まぬ快感を与えられ続け、秘裂は既に自ら潤んでいた。
「ぼ、僕にも触らせて」
「僕にも」
 他の二人も手を伸ばし、股間をまさぐられる。
「あううっ!」
「本当だ・・・濡れてるし、あったかい」
「女の人って、感じると濡れるって本当なんだね」
「やっぱり、笹葉さんも女の人なんだね。厭らしいことで、気持ち良くなっちゃうんだ」
 女神のような崇拝の対象だった沙耶が、普通の女性のように感じている。それは、友人たちにとっては驚きだった。そして、女神を汚す背徳的な悦びをももたらした。
「・・・さ、笹葉さん!」
 友人たちが一斉に沙耶の身体に手を伸ばす。乳房を、乳首を、秘裂を、思い思いのやり方で弄り回す。
「ああうっ、みんな、もう・・・ふわぁっ、やめてぇ・・・こんなこと、やめてよぉ・・・あはうぅっ!」
 沙耶の制止の声も自らの喘ぎに遮られ、友人たちには届かない。沙耶の身体は三人掛かりの愛撫と観客席から飛んでくる視線に、官能の階段を三段抜かしで駆け上がっていく。
「笹葉さん、そろそろイキそうなんだろ?」
 ずっと沙耶の媚態を観賞していたボンボンの言葉が、沙耶の耳に潜り込んでくる。沙耶は否定のためか、快感を紛らわすためか、のろのろと首を振る。
「我慢しなくていいんだよ、ここは普通の場所じゃないんだから、さ」
 ボンボンの視線が尚一層鋭さを増し、沙耶の心にまで突き刺さってくる。もう否定の言葉も浮かばず、沙耶の無防備な心はボンボンの言葉に汚されていく。
「イッちゃえよ、笹葉さん。俺も、そいつらも、観客も、みーんな見てるぜ?」
(見られてる・・・そんな、見られてる・・・!)
 リング内外から視線が突き刺さってくる。至近距離から、中距離から、長距離からも、欲望の視線が沙耶の肢体に張りつき、舐め回す。沙耶にとって、それは物理的な圧力に等しかった。
(ああっ、視線が・・・たくさんの視線が、突き刺さってきてる!)
 加えて友人たちは沙耶の身体を思うがままに弄り回し、物理的な快感を生じさせていく。
(このままじゃ、私・・・)
「あっ、ああっ・・・ああああーーーっ!」
 とうとう、沙耶は絶頂へと達してしまった。腰をひくつかせ、観客からの視線も忘れる。
「これって・・・」
「笹葉さん、イッちゃった・・・?」
「僕たちの手で、悦んでくれたんだ・・・」
 友人たちの目が更に欲望で輝く。欲望のまま、またも沙耶の身体を嬲っていく。
「・・・ふぁあっ! やめ、て・・・もう・・・んんうっ!」
 友人たちの稚拙な、しかし若さをぶつけるような責めに、沙耶の唇から喘ぎ声が洩れる。
 自らの欲望に負けた友人たちに裏切られ、身体中を弄られながら、それでも沙耶は嬌声を上げてしまう。淫らな姿を晒し続ける沙耶は、今自分が悲しいのか、悦んでいるのか、答えも出ぬまま身を捩るしかできなかった。


特別試合 其の四十四へ   番外編 目次へ   特別試合 其の四十六へ

TOPへ
inserted by FC2 system