【特別試合 其の五十四 亜留川沙織:護身術 其の二】 紹介者:ひみつ様
犠牲者の名は「亜留川(あるかわ)沙織(さおり)」。16歳。身長156cm、B85(Eカップ)・W56・H83。
栗色の髪で、笑顔の明るい活発な女の子。よく通る声と激しいダンスもこなせる高い運動神経の持ち主。護身術を最低限習っただけで本格的な格闘技の経験はないが、運動神経が非常に高く、無理やり押し倒そうとした同級生数人を撃退したことがある。
かつて借金の肩代わりを条件に<地下闘艶場>に出場した沙織は、一年の時を経て身体は女性らしい丸みを備え、ショートカットだった髪もセミロングまで伸ばし、大人の魅力も備わり始めている。
従来の活発で明るいイメージに色気が加わった彼女は多くのファンを魅了し大きなブレイクを迎えた。しかし、沙織は未だに資産家との契約に縛られていた。
資産家は再び、沙織に<地下闘艶場>へ出場することを命じた。
眩い照明に照らされた<地下闘艶場>のリングの上に二人の女性の姿がある。どちらも現役のアイドルであり、普段から数多の視線やイベントで磨かれたその魅力に、目の肥えた筈の観客たちも思わず目を奪われてしまっている。しかも双方ともプロポーション抜群なのだ。
「赤コーナー、『黒天使』、楚野崎ミラ!」
「楚野崎(そのざき)ミラ」。17歳。身長162cm、B90(Fカップ)・W59・H86。
艶やかな黒髪を長く伸ばし、整った目元、高い鼻梁、ふっくらとした唇を更に魅力的にしている。衣装の上からでもメリハリのあるシルエットが見てとれ、特に胸元とヒップに視線が集中する。
沙織とは別のプロダクションに所属するアイドルで、沙織より一つ年上。アイドルとしては同期に当たる。
気が強く、お嬢様然とした立ち振る舞いで人気を集め、トップアイドルに最も近いアイドルとして活躍している。しかし影では実家の財力・権力を使ってライバルを合法、非合法問わず蹴落としてきた。
人気を上げてきた沙織も容赦なく潰そうとしたが、沙織のスポンサーが暗躍して阻止。その結果、<地下闘艶場>で沙織対ミラの試合が組まれ、敗者は勝った方のプロダクションに無条件で移籍させるという約束が締結されている。
ステージ衣装である白のシャツ、赤と黒を基調としたジャケット、黒のニーソックス、プリーツのミニスカートを着たミラは、沙織へと静かに強い視線を送っている。
「青コーナー、『栗色の髪の乙女』、亜留川沙織!」
沙織は白のシャツ、青と白を基調としたジャケット、白のニーソックス、パニエ付きのフレアミニスカートだ。前回の参戦のときより雰囲気だけでなくプロポーションも大人っぽくなり、観客の視線が粘っこく全身を這い回る。
「今回は特殊試合となっております」
マイクを通じ、黒服が説明を始める。
「勝利条件は、相手を全裸にすること。つまり、相手の衣装を全て剥ぎ取った選手の勝利となります」
衣装を脱がすのは当然試合中でも良いし、KOしてから脱がしても良い。片方が全裸になるまでは試合は終了しない。
今回はレフェリーが脱がすのは禁止であり、脱がすのを手伝うのも禁止。レフェリーの仕事はバラエティ番組のような試合内容の実況と、脱衣した衣装を回収することだけだ。
アイドル同士のキャットファイト、しかもストリップ対決。最終的にはどちらかが全裸となるまで終わらないのだ。アイドルのオールヌードを想像し、観客席は早くも盛り上がりを見せていた。
黒服の説明が続く。
「特別ルールを説明致します」
今回、特別ルールとして「タイム宣言」がある。選手は「タイム」を宣言することで直ちに試合を中断できる。ただし代償として、宣言した選手は着用中の衣装を一枚、自ら脱がなければならない。
脱衣する衣装は対戦相手が指定するものとし、指定から三十秒以内に脱衣を完了しなければならない。三十秒を超えた場合、自動的に再度「タイム」を宣言したことになる。
無理やりな脱衣とストリップ。現役アイドル二人による淫らなルールでのキャットファイトに、観客席からは卑猥な野次と指笛が鳴らされ続けていた。
ルールとしてボディチェックは行われず、すぐに試合開始と決められている。ボディチェックが省略されたことで不満顔のレフェリーが、試合開始の合図を出した。
<カーン!>
「・・・」
<地下闘艶場>参戦経験があるとはいえ、前回は男性選手との試合だった。女性、しかも同業者との試合は初めてで、沙織は慎重にミラの出方を伺う。
「沙織ちゃん、今日は宜しくね?」
笑顔を浮かべたミラが、沙織に左手を差し出してくる。
「あ、はい、宜しくお願いします」
意表を衝かれた沙織も左手を差し出し、握手しようとする。その手ではなく、手首が掴まれた。
「えっ?」
驚く間もなく、腹部に痛みが弾けた。
「えうっ!」
膝をついた沙織の背後に、膝蹴りの一撃を入れたミラが立つ。
「これだから甘ちゃんは楽なのよねぇ。さ、まずは上着を頂くわ」
ミラは沙織の上着を掴むと、するりと脱がしていく。
「あっ、待って・・・!」
勿論ミラが待つ筈もなく、沙織はミラの手により上着を奪われてしまった。
「まず一枚。次は何を頂こうかしら?」
レフェリーに上着を渡したミラが唇を舐める。
(・・・大丈夫。まだ、上着を取られただけなんだから)
そう自分に言い聞かせ、腹部の痛みを堪えた沙織は構えを取る。
「そうねぇ。何から脱ぎたいか、希望があれば聴きますわよ?」
ミラの挑発だとわかっているが、その言い方にカッとなる。
(今度はこっちが脱がす番なんだから!)
ミラに突っ込もうとした瞬間、目の前で音と空気が弾けた。
「えっ・・・!」
思わず棒立ちになってしまった沙織に、猫だましで出足を挫いたミラがタックルに入る。
「ふふっ、案外単細胞ですのね、亜留川沙織ちゃん?」
そのまま素早く背後を取ったミラは、なんとバックドロップで投げつける。
「あうっ!」
リングに後頭部をぶつけられ、沙織は痛みに呻く。ミラは沙織をフルネルソンに捕らえると、何故かレフェリーに声を掛ける。
「ほら、今のうちですわよ」
ミラの唆しに、レフェリーは首をひねる。
「今回は脱がすのを手伝えないぞ?」
「私は押さえつけているだけ、脱がそうとはしてないですわ。だから、レフェリーが触ってもルール違反にはならない筈ですわよね?」
ミラの言いたいことを理解したレフェリーが下卑た笑みを漏らす。
「なるほど、そういうことか」
レフェリーは沙織の胸を鷲掴みにし、遠慮なしに揉み始める。
「タ、タイム! タイムします!」
いきなりのセクハラに、沙織は思わずタイム宣言をしてしまう。沙織のタイム宣言に、レフェリーは不満の表情でセクハラを止め、沙織とミラを分けさせる。
「いきなりのタイムですわね。では、最初はアンスコを脱いでもらおうかしら」
ミラの選択に、沙織は素直にパニエを脱ぐ。パニエが無くなったことでフレアミニスカートが垂れ、普通のミニスカートとなる。
「それでは、パンツが見えないように頑張ってね」
「っ・・・」
そう言われると、下着が見えてしまうかもしれないという恐れが生じる。
「アイドルですもの、パンチラには気をつけないとね」
わざとらしい笑顔を浮かべ、ミラがじりりと間合いを詰めてくる。
「・・・」
沙織はミラの言葉の追撃で、更に構えが小さくなる。
「ほらっ!」
「あっ!」
すっと間合いを詰めたミラは、なんといきなり沙織のスカートを捲った。沙織はスカートを押さえ、距離を取ろうとする。
「逃がすわけないでしょう!」
ミラの突進は素早かった。
「ほら、捕まえたわ!」
(しまった!)
ミラに腕を掴まれたと同時に足を刈られ、リングに押さえつけられる。
「これだけじゃ面白くないわね」
立ち上がったミラは沙織の両手首を掴み、うつ伏せにした沙織の頭部側へと移動する。そして沙織の両手を引っ張り上げ、痛みで無理やり膝立ちにさせる。更に沙織の頭を自分の太ももで挟み、両手首を引っ張ることで両肩を極める。
「い、痛いっ!」
「痛いだけじゃないわよ? 可愛いパンツが丸見えになっているんだから」
「いやっ、見ないで!」
「見ないでと言っても、お客様はしっかりと見ていますわよ?」
沙織が足をバタつかせても、逆にスカートが捲れるだけだ。
「うん、確かに良い光景だな」
しっかりと沙織のお尻側に居たレフェリーが、今度は沙織のヒップへと手を伸ばす。
「まだお尻は発展途上だな」
「あっ、いやっ! 触らないでください!」
沙織が拒んでも、レフェリーは構わず沙織のヒップを揉み、撫で回す。その厭らしい触り方に、沙織は思わず叫んでしまう。
「タイムです! タイムを!」
沙織の二度目のタイム宣言に、レフェリーは不満の表情を隠そうともせず二人を分ける。
「それじゃあ楚野崎選手、次はどの衣装にするんだ?」
「そうですわね、次は・・・ブラを脱いで頂戴」
「え? ブラ、って・・・」
沙織にはまだシャツが残っている。意表を衝かれた沙織は動きを止めてしまう。
「さっさと脱がないと、時間がなくなるぞ? そら、もう五秒経過だ」
レフェリーの言葉に、慌ててシャツのボタンを外し始める。しかし焦りから上手くボタンを外すことができない。前のボタンを全部外したところでシャツを脱ごうとするが、袖口のボタンを外していなかったため腕が抜けない。
(しまった、急がないと・・・!)
袖のボタンも外し、シャツを脱ぎ捨てようとする。しかし、レフェリーの声が早かった。
「三十秒経過したな。ブラを外してないので、再度のタイム宣言と見做す」
「そんな・・・」
間に合わなかった。シャツを脱ごうとしたところで時間がきてしまった。唇を噛んでも時間は戻らない。
「さ、まずはブラをもらおうか」
レフェリーの指示に、沙織はまず脱ぎ掛けのシャツを脱ぐ。上半身がブラのみとなったことで、観客席が沸く。
「・・・」
観客席からの視線が痛い。思わず手が止まってしまう。
「おいおい、どうした亜留川選手? 脱げないなら手伝ってやるぞ」
「い、いえ、けっこうです」
レフェリーの冷やかしに心を決める。手を背中に回してブラのホックを外し、前を押さえる。肩紐を肩から滑らせ、腕から抜く。
「・・・っ」
恥ずかしさを堪え、左手で隠しながらブラを外す。
「よし、ブラをもらおう」
レフェリーが出した右手にブラを乗せる。
「お、まだ温かいな」
レフェリーの揶揄に頬を染める。レフェリーの視線が乳房に注がれていることに気づくと、慌てて両手で乳房を隠す。
「さて、楚野崎選手。ペナルティの分の衣装はどれを選択する?」
レフェリーの問いに、ミラはわざとらしく言う。
「それでは、次はシャツを脱いでもらいましょう。あら、もう脱いでいるのね。手際が良くて結構よ」
ミラの揶揄に、沙織の負けん気が頭をもたげる。
(負けられない・・・こんな性格が悪い人に、負けたくない!)
怒りを押し殺し、シャツをレフェリーに渡す。
「アイドルの生おっぱいか、眼福だな」
「あっ!」
思わず隠すことを忘れていた沙織は、慌てて両手で乳房を庇う。
(・・・ううん、このままじゃ駄目。私、勝つって決めたもの!)
沙織の表情が凛となる。
「馬鹿な子ね、隠しながら闘えると思っているの!」
ミラは勝利を確信したのか、先程までとは違う荒い動きで突っ込んでくる。
「っ!」
しかし、沙織はまだ諦めていなかった。
「なっ!?」
ミラとすれ違うようにして、背後を取っていたのだ。ブラまで奪われたことで、逆に沙織の動きが良くなっていた。このままでは負けてしまうという危機感が沙織を動かす。
ミラの背後に回った沙織は、ミラの襟を掴んで上着を引き下ろす。そのままミラの両腕を背後へと引っ張り、上着を一気に腕から抜く。その間、観客には乳首は見せていない。
「・・・ちょっと油断してしまったようですわね。やるじゃありませんの」
上着を奪われたミラは硬い笑みを浮かべる。
ミラにしてみれば、まさか沙織が乳房も隠さず反撃してくるとは思っていなかった。その驚きの隙を突かれ、衣装を奪われてしまった。
しかし、ミラはまだ余裕だった。自分は上着を一枚取られただけであり、対する沙織は既に半裸となっている。
「亜留川選手、楚野崎選手の上着をもらおうか」
「・・・はい」
レフェリーの催促に躊躇した沙織だったが、それでもレフェリーに上着を渡す。
(やっぱり、脱がし合いはしたくない・・・)
一度は気持ちを切り替えた筈なのに、沙織の優しさがまた顔を覗かせる。
「上着一枚くらい、最初からどうでもいいですわ」
ミラが軽口を叩きながらも気合いを入れ直し、じりっと詰め寄ってくる。沙織は乳首が見えないように、しかし闘えるように、脇をしっかりと締めて胸のすぐ前で構えを取る。
「さあ、どう攻めていこうかしら?」
ミラは沙織の周囲をゆっくりと回り、隙を探ってくる。沙織も自分からは攻めようとせず、ミラの動きに合わせて身体の向きを変える。
変化のない状況に、観客席から容赦ないブーイングが投げられる。
「あら、スカートの後ろが捲れていますわよ?」
「えっ!」
構えこそ崩さなかったものの、意識が背後に行ってしまった。その隙に左手首を持たれた。
「ほらっ、おっぱいを見せなさいな!」
「っ!」
ミラが左手を引っ張り、沙織の乳房を丸出しにしようとする。
(そういうつもりなら!)
引っ張られる勢いを利用し、一気にミラの懐に飛び込む。
「えっ!」
沙織の動きに意表を衝かれたミラの動きが一瞬止まる。
(多少乱暴になっても!)
シャツの胸元を掴み、容赦なく引っ張る。ボタンが飛び、ミラのブラが露出する。
「きゃああっ!」
「あっ・・・」
ミラの悲鳴に、思わず手を放してしまう。その隙にミラは距離を取り、胸元を隠して顔を背ける。その唇が笑みの形を作っていたことに、沙織が気づく筈もなかった。
「あの、ミラさん・・・」
勝負の最中だというのに、沙織はミラにおずおずと声を掛けようとする。
「やっぱり甘いのね!」
ミラは沙織の両足を抱えながら持ち上げ、倒しながらニーソックスに手を掛ける。
「ああっ!」
躊躇した隙を衝かれ、ニーソックスを奪われてしまう。しかし沙織はニーソックスを奪われながらも、ミラの右足を掴む。
「な、なにして・・・痛いっ!」
ミラの右足を引っ張って体勢を崩させた沙織は、そのままアキレス腱固めを掛けていた。
「タ、タイムよ!」
痛みにミラがタイムを宣言し、レフェリーが一旦沙織に技を解かせる。
「亜留川選手、どの衣装を指定するんだ?」
レフェリーの問いに、沙織はブラを指差そうとする。
「それじゃあ、ブラを・・・」
「ひっ・・・!」
しかしミラの怯えた表情に、思わず指をニーソックスへと向けてしまう。
「・・・ニーソにします」
「なんだ、ブラかと思ったがな」
残念そうに呟いたレフェリーだったが、ミラにニーソックスを脱ぐよう命じる。
「わかりましたわ」
ミラは右のニーソックスに手を掛けると、右脚をピンと伸ばし、ゆっくりと下ろしていく。それは勿論、観客の目を引きつけるためだ。社会的地位の高い観客に恩を売っておいて損はない、というミラの計算からの行動だ。
観客を煽るようにして、三十秒ぎりぎりまで掛けて両方のニーソックスを脱いだミラには、歓声や野次が飛ばされた。
ミラからニーソックスを受け取ったレフェリーはリング下の黒服に渡し、大きく両手を広げる。
「よし、ファイト!」
レフェリーの合図に、試合が再開される。
「・・・先程は少し痛かったですわよ」
ミラの顔には不機嫌が漂っている。しかし、まだ余裕は消えていない。沙織は静かに深呼吸し、集中力を高める。
(落ち着いて、無理はしないで、チャンスは逃がさない)
自分に暗示を掛けるように心の中で呟きながら、沙織はゆっくりとした動きでミラの周囲を回る。
「蠅みたいに、人の周りをうろうろと・・・目障りですわよ!」
ミラの鋭いタックルが沙織に襲い掛かる。
(私なら、できる!)
しかし反応していた沙織は、右に躱しながらミラの左腕を捕まえ、回転式の腕十字固めへと移行していた。
(決まった!)
練習でも決めたことがない大技に、内心拳を握る。
「あっ、ぐっ・・・た、タイム!」
肘関節を伸ばされる痛みに、堪らずミラがタイムを取る。
「良し、タイムを認める」
レフェリーの声に、沙織は急いで腕十字固めを解く。ぼやぼやしているとセクハラされかねない。
「さて亜留川選手、次はどの衣装にするんだ?」
レフェリーの催促に、沙織はミラを見る。思わずミラの哀願の表情が目に入り、ブラと言いかけた口を閉じてしまう。
「・・・アンスコ、にします」
「ああ、アンダースコートだな。楚野崎選手、脱いでもらおうか」
レフェリーの指示に、ミラはほっとしたような、悔しいような複雑な表情でアンダースコートを脱いでいく。勿論、観客の興奮を煽るような脱ぎ方で、だ。
レフェリーにアンダースコートを渡したミラの顔が、沙織へと向けられる。先程とは違うその視線の鋭さに、沙織は内心怯むものを覚えていた。
「・・・本気にならないと、駄目かしら?」
ミラの目には怒りがある。圧倒的有利な状況に、油断していたのは確かだろう。しかし立て続けにタイム宣言をさせられ、屈辱が胸の内を炙っているのか。
「ほら、おっぱいをお客様に見せなさい!」
ミラが怒りを湛えたまま、また沙織の左手を取りに来る。
(それならまた!)
左手を引かれる勢いのまま、ミラへと肉薄する。先程の成功が、沙織に同じ行動を取らせていた。
「何度も同じ手にかかる、とでも?」
しかし、ミラは沙織の飛び込みに合わせて体を躱していた。
「えっ」
沙織はミラに背後へと回られ、羽交い絞めにされてしまう。
「ああっ!」
Dカップの美乳が観客の目に晒され、粘つく視線が乳房へと集中する。
「もう逃げられないわよ? ほらほら、おっぱいをお客様に見てもらいなさい」
ミラは沙織の身体を揺すり、沙織の乳房を揺らす。
(恥ずかしい・・・でも、あと2枚しか残ってない・・・)
複数のタイム宣言により、沙織に残されたのはスカートとパンティのみだ。これ以上追い込まれるのは避けたい。
「随分とおっぱいが揺れてるぞ、亜留川選手。どれ、俺が止めてやろう」
沙織の揺れる乳房を眺めていたレフェリーが、いきなり鷲掴みにしてくる。
「あっ! タ・・・」
反射的にタイムと言いかけ、沙織は続きを飲み込んだ。今の現状だと、セクハラを耐えて脱出し、衣装を温存したほうが良い。そうは思うものの、直接乳房を揉まれる屈辱と羞恥に挫けそうになる。
「ふふっ、おっぱいを揉まれているのにタイムをしないのね。本当は気持ち良いんじゃないの?」
ミラの嘲りも唇を噛んで堪える。
「この前の試合から、随分とおっぱいが育ったじゃないか」
レフェリーの指摘に、沙織は顔を赤らめる。
「そ、そんなこと・・・」
「嘘はいけないなぁ亜留川選手」
「んんんっ!」
レフェリーに乳首を弄られ、沙織は洩れそうになった喘ぎ声を堪える。
「おっぱいは大きくなっただろう? 正直に言ったらどうだ?」
「・・・っ」
答えたくないと態度で示し、必死に口を噤む。それでもレフェリーは関係ないとばかりに沙織の両乳房を揉み回し、両乳首を転がす。
「ふふっ、貴女、前もこの試合に出たことがあるんでしょう? もっと恥ずかしい目に遭ったんでしょう? 今はどうなのかしら? もしかして、気持ち良くなってきているのじゃなくて?」
沙織を羽交い絞めにしているミラが、耳元で囁く。挑発だとわかってはいても、恥ずかしさが募る。
「なあ亜留川選手、正直に言ったらどうだ? おっぱいは大きくなっただろう?」
レフェリーは沙織の右乳房を揉み、左乳首を押し込む。まるで回答ボタンだとでも言うように、乳首を何度も押し込みながら、沙織に恥ずかしい返答を強いる。
「ふふっ、育ったとは言っても、私よりは小さいですけれどね?」
ミラは沙織の背中に自慢の胸を押しつけるようにしながら、より深くフルネルソンを極める。
(痛い! それに、気持ち悪くて・・・)
フルネルソンの痛みと、セクハラの嫌悪感。
「おかしいなぁ、前回の試合よりも大きくなっている筈なんだが」
レフェリーはひたすら沙織の乳房を揉みながら、大きくなったことを認めさせようとする。
「亜留川選手、はっきりと認めたらどうだ?」
レフェリーは両手で沙織の乳房を持ち上げ、大きさを確かめる。沙織は顔を背け、唇を閉じる。
「強情だな、亜留川選手」
レフェリーがようやく乳房から手を放す。これでセクハラが終わったと思った沙織だったが、そんな甘いレフェリーではない。なんと、沙織の秘部に触れてきたのだ。
「そんな・・・!」
「正直に言わない亜留川選手には、罰を与えないとな」
勿論触れるだけではなく、ねっとりとした手つきで秘部を撫で回す。下着の上からではあるが、嫌悪感は変わらない。
「こっちでも気持ち良くなれるようになったか?」
レフェリーの右手が、パンティの上からとはいえ秘部を這いずり回る。
「それとも、おっぱいのほうが良いのか?」
レフェリーは右手で秘部を弄りつつ、左手で再び乳房と乳首を玩具にしてくる。
(恥ずかしい・・・! でも、ここで我慢しないと、チャンスを待たないと!)
羞恥を堪え、必死にセクハラを耐える。観客の視線も、野次も、ミラの嘲笑も感じないようにする。
「ふふっ、これだけされてもタイムをしないだなんて、とんだ淫乱アイドルね」
ミラはフルネルソンの状態のまま、沙織を言葉でいたぶる。
(違う、私は勝ちたいだけなのに!)
それでも口を開けば喘ぎ声を発してしまいそうで、口を閉じてじっと耐える。
「どうしたんだ、黙りこくって。気持ち良くて声も出ないか?」
レフェリーは沙織の身体の感触を堪能しながら、尚もあちらこちらを弄り回す。乳首を転がし、乳房を揉み、腹部を撫で、尻を掴み、太ももに触れ、秘部を擽る。
(うっ、ううっ・・・)
それでも、沙織はひたすらに屈辱を耐える。それも勝利を諦めない不屈さ故だ。
しかし、それも次の瞬間までだった。
「パンツの上からだけ、ってのもな」
レフェリーの手が遂にパンティの中にまで潜り込み、直接秘裂を弄り出す。
「タ、タイムです! だからもうやめてください!」
さすがにこれには耐えられなかった。沙織のタイム宣言に、レフェリーは渋々沙織から離れ、ミラも羽交い絞めを解く。
ミラが離れ際、沙織の耳元に囁く。
「ふふっ、気持ち良かった? お客さんの前で胸を揉まれて、アソコまで触られるなんて、私には我慢できませんわ。普段からこういうことに慣れているんじゃなくて?」
ミラの嫌味にも、胸を隠す沙織は何も返すことができない。
「楚野崎選手、次に何を脱がせるのか決めてくれ」
レフェリーの催促に、ミラは形の良い顎に人差し指を当てる。そして、沙織には邪悪と感じられる笑みを浮かべた。
「それでは、スカートより先に下着を脱いでもらいましょうか?」
このマニアックな選択に、観客席が沸く。
「そ、そんな・・・!」
沙織も観客同様、次はスカートだと思っていた。しかし、パンティだと指定された以上、脱がなければ負けとなってしまう。
「よし、カウント開始だ」
レフェリーの宣言に、沙織は諦めて下着に手を掛ける。スカートに隠されていたパンティが下ろされ、観客の目にも晒される。
リングに落ちたパンティを、レフェリーが拾おうと屈み込む。
「お、絶景だな」
「っ!」
レフェリーがスカートの中を覗き込んできたことに気づき、沙織は慌ててスカートの前を押さえ、レフェリーから距離を取る。
「おいおい、そんなに慌てることはないだろう?」
脱ぎたてのパンティをレフェリーが拾い上げる。そこに、リング下から声が飛ぶ。
「おいおい、まさか被ったりしないよな?」
「・・・それも面白そうだな」
リング下に居た沙織のスポンサーから問われ、レフェリーは沙織のパンティを頭に被る。この間抜けな格好に、場内には失笑も起こる。
(あ、あんな・・・私の下着を、頭になんて・・・!)
レフェリーの行動に怒りが沸く。そして、レフェリーの行動のきっかけを作ったスポンサーにも。怒りのこもった視線をスポンサーに向けると、予想に反して険しい表情がそこにあった。
(あっ・・・)
その表情に沙織は思いだす。自分が借金の取り立てに追われたときの恐怖を。そして、そこから這い上がるために発揮してきた負けん気を。
(そうよ。たとえミラちゃんをどんな恥ずかしい目に遭わせたとしても、絶対に勝たなきゃ。芸能界で生き抜くって・・・芸能界で一番を目指すって決めたんだもん!)
初心を思い出し、改めて闘志を掻き立てる。
「後はスカート一枚になりましたわね。下着もないんですもの、大事なところが見えないように、気をつけないといけませんわよ?」
ミラの嘲弄にも、もう動揺しない。
沙織に反応がないのが癇に障るのか、ミラは尚も言葉を紡ぐ。
「貴女が私の事務所に移籍してくるのを楽しみにしてますからね? そのときには、皆でたーっぷりと可愛がってあげますわ」
ミラの言う「可愛がる」が、言葉そのままの意味の筈がない。今日敗北を喫して事務所移籍となれば、沙織に待つのは灰色の日々だ。
(勝つ、勝つもん!)
あの借金に圧し潰されそうな日々、そんな生活に戻りたくはない。絶対に戻らない!
「えぇいっ!」
もう乳房を隠すことなく、ミラへのタックルを敢行する。
「そんな特攻なんて!」
しかし、ミラの膝蹴りが腹部を抉る。
「あぐぅっ!」
やはりミラは強い。覚悟を決めての攻撃も躱され、反撃をもらってしまう。
(でも!)
絶対に負けたくない、勝ちたい!
「えいっ!」
痛みを堪えてミラのシャツを引き裂いてボタンを飛ばし、ブラを露わとする。
「あっ!」
ミラが思わず胸元を押さえた瞬間、素早くシャツの袖ボタンを引き千切る。
「この・・・!」
ミラが伸ばしてきた手を手繰り、膝蹴りを背中に叩き込む。
「はぐっ!」
ミラが痛みに怯んだ隙に、素早くシャツを引っ張り、奪う。しかもスカートまで毟り取り、ミラを一気に下着姿にする。
沙織が放り投げた衣装を、レフェリーが回収してリング下の黒服に渡す。その視線は沙織の揺れる胸元に釘付けになっている。
「・・・無駄な足掻きを!」
背中の痛みと下着を剥き出しにされた屈辱に、ミラの形相が変わる。
「沈みなさいっ!」
「誰がっ!」
ミラの大振りのパンチを躱した沙織は、ブラの肩紐を掴み、引き下ろす。
「なっ」
ミラが慌てて肩紐を戻そうとした瞬間、背中のホックを外す。
「えっ、ちょっ!」
反射的にブラのカップを押さえようとしたミラの両手首を掴み、巴投げを打つ。咄嗟に逆足で秘部を隠したのはさすがのアイドルだった。ミラの身体がまだ空中にある内にずれてきたブラを掴み、奪い取る。
「レフェリーさん!」
「おっと」
沙織が投げつけたミラのブラを慌てて受け取ったレフェリーが、一度温もりを確認してからリング下の黒服に渡す。
「・・・やってくれますわね」
ブラを奪われたミラの顔が険しくなる。
これでミラの衣装は下着のみ。沙織の衣装はスカートのみ。二人のアイドルは、互いに一枚を残すのみだ。
さすがに、二人の動きが止まる。最後の一枚の攻防となったのだ、相手の隙を狙い、慎重に攻め方を伺う。
「あと一枚、よこしなさい!」
先に動いたのはミラだった。プライドの高いミラにとって、晒された乳房、沙織に追い詰められている事実、観客の野次や視線などは我慢ならなかったのだ。
「っ!」
スカートに伸ばされた両手を阻もうと、沙織も両手を伸ばす。お互いがお互いの両手を掴み、プロレスで言う手四つの体勢となっていた。
セミヌードの美少女アイドル二人が、乳房も露わに手四つで組み合う。テレビでは絶対に見られない遣り合いに、観客席は凄まじい盛り上がりを見せる。
「・・・その手を、放しなさい!」
「絶対、お断り!」
パワーではミラが勝るものの、沙織は巧みに立つ位置を変え、力を逃す。
「どうした、ファイト!」
二人に声を掛けながらも、レフェリーは揺れる二人の乳房に見入っている。
「まったく、小賢しいこと!」「負けない!」
焦れたミラが前に出ようとする。しかし沙織が同時に動こうとしたことで、縺れ合った二人の身体は、ロープ際まで運ばれる。
「あっ」「えっ?」
勢いがついた沙織とミラはトップロープも乗り越え、エプロンサイドへと落ちる。
(危ない!)
沙織はリング下へと落下しそうになり、思わず眼前にあったものを掴んだ。それは、ミラの最後の一枚であるパンティだった。
「よこしなさい!」
対するミラも、沙織の最後の一枚であるスカートを掴む。
沙織もミラも、お互いに最後の一枚を掴みながら、まだ勝利は掴めない。自分の最後の一枚も相手に掴まれているわけで、僅かな油断が即敗北に直結するのだ。しかも下手に動けば落ちてしまうだけでなく、最後の一枚を奪われてしまう。
「放しなさい!」
「嫌です! そっちが放してください!」
互いに最後の一枚を掴み、必死に引っ張る。この一枚を奪った方が勝利者となるのだ、必死になるのは当然だろう。
「さあ、どっちだ、どっちが勝つ?」
レフェリーはロープ際から声を掛けるが、その視線は二人の美少女アイドルの揺れる胸元に釘付けとなっている。
遂にはロープを潜ってエプロンに立ち、超至近距離で美少女アイドル二人の肢体をじっくりと眺める。その頭には、まだ沙織のパンティを被ったままだ。
「ううっ・・・」「くっ・・・!」
沙織とミラには、レフェリーや観客たちの視線など気にする余裕はない。お互いに勝利の鍵であるパンティを、スカートを掴み、力の入れにくい状態で引っ張りあう。
そして、勝敗の決する時が訪れた。
沙織のスカートが破れ、遅れてミラのパンティが破れた。支えを失った沙織はリング下へと落下し、鈍い音を立てる。
「お、おい!」
慌てたレフェリーがエプロンサイドからリング下に降り、沙織の様子を伺う。最初は真剣な顔で沙織の呼吸を確かめていたものの、沙織の呼吸が正常だと見て取った次の瞬間には、乳房を揉みだしていた。
「・・・それで、試合の結果は?」
沙織のスポンサーから冷たい声と視線を浴びせられ、慌てて立ち上がったレフェリーは一つ咳払いをする。
「先に破れたのは亜留川選手のスカートなので、楚野崎選手の・・・」
そこまで言いかけたレフェリーだったが、もう一度沙織に視線をやると、何故か首を振る。
「いや、この試合・・・亜留川選手の勝利!」
レフェリーの裁定に、場内は驚きで包まれる。文句を言いだそうとする観客も居たが、沙織を見ると、何故か納得したように皆頷く。
観客が見たのは、沙織の足首に通されていたパンティだった。
沙織はスカートが千切れる寸前、レフェリーが被っていたパンティを爪先に引っかけ、足に通していたのだ。奪われた衣装を再度身に着けてはいけないというルールはなく、レフェリーは着衣と認めたのだ。
ここで、改めて試合終了のゴングが鳴らされる。
<カンカンカン!>
そのゴングを信じられない思いで聞いていたのは、敗者となった楚野崎ミラだった。
「私が・・・負けた・・・?」
下着が破れ、全裸とされたミラが呆然と呟く。ふらふらと立ち上がろうとしたそのとき、ロープに足が引っ掛かり、後ろに倒れ込んでしまう。
「あっ、そ、そんな・・・!」
後ろに倒れ込んだ勢いで、ミラは四肢をロープに絡め取られていた。手足が広がっているため上手く力を込めることができず、逃げるどころか動くこともできない。
「おいおい、大丈夫か楚野崎選手?」
ミラのそばにしゃがみ込んだレフェリーが、ここぞとばかりにミラの身体を弄る。ミラはオールヌードとなっており、しかもロープに四肢を絡め取られている。抵抗などできる筈もなかった。
「今回はほとんど良い思いができなかったからな、たっぷりと楽しませてもらうぞ?」
さっそくミラのFカップの乳房を揉みながら、レフェリーは更なる辱めを予告する。
「おやめなさい、もう試合は終わったでしょう!? それに、貴方ごときが触っていい身体じゃないですわ!」
口では威勢のいいことを言いながら、全裸となったミラは半泣きの表情になっていた。
「ここは<地下闘艶場>だ。アイドルの常識が通じると思うなよ?」
レフェリーはミラの秘部をじっくりと観察しながら、両手で乳房を揉み続ける。
「あ、貴方ごとき、私が社長に頼めば・・・」
「おいおい、ここの支配者は誰だ? お前も知っているんだろう?」
事務所の圧力でレフェリーを止めようとしたミラだったが、<地下闘艶場>に於いては無駄な抵抗だと思い直す。レフェリーの言う通り、芸能界大手のミラの事務所と言えども逆らえる相手ではない。
「うぅっ・・・」
「理解したようだな、ええ?」
レフェリーは優位に有る者特有の笑みを浮かべ、ミラの乳房の感触を味わい、乳首を擽る。
「理解したところで、今度はこっちだ」
レフェリーは右手を乳房から放し、秘部を弄りだす。
「ああっ、そんなところを触らないでぇ!」
一番恥ずかしい部分まで弄られ、ミラは羞恥のあまり涙を流してしまう。
「おいおい、今更泣き言を言うなよ。自分が勝ったら、亜留川選手をこんな風にいたぶるつもりだったんだろう?」
「そ、それは・・・いやぁっ!」
秘裂だけでなく淫核まで弄られ、ミラは嫌悪の声を上げる。
「それにどうせ毎晩、枕営業でお偉いさんと寝ているんだろう? カマトトぶるなよ」
「いやよ、やめてぇ!」
ミラは必死に首を振るが、ロープに絡まった手足は外れない。レフェリーはにやにやと笑いながら、秘裂を撫で回す。
「さて、中はどうなってるんだ?」
レフェリーの指が秘裂を割り、膣にまで入ってこようとする。
「駄目よ、そこまでするなんて!」
ミラは必死にレフェリーの行動を止めようとするが、虚しい抵抗だった。
「ん?」
しかし、何故かレフェリーが動きを止める。
「この感触、まさか・・・」
秘部から指を外したレフェリーは、両手の指を秘裂に当てる。
「実際に確かめてみるか」
「そんな・・・!」
レフェリーの狙いに気づいたミラが蒼褪める。
「おやめなさい、駄目よ、そんなこと・・・!」
「自分の立場がわかってないようだな。負けた選手が何をされようとも文句は言えない、それが<地下闘艶場>なんだよ」
ミラの言葉など聞き入れはせず、レフェリーはミラの秘裂を開き、奥まで覗き込む。
「・・・やっぱりな」
処女膜を視認したレフェリーが唇の端を上げる。
「枕営業でとっくに経験済かと思ったが、まだ処女だったとはな。汚い手でライバルを蹴落としてきたとは言え、さすがアイドルだな」
「うっ・・・ううっ・・・」
秘めるべき箇所の奥まで覗かれ、ミラは羞恥の涙を流していた。そこに、試合中の自信たっぷりな態度は見えない。
「それじゃ、アイドルの処女マ○コの味を味わっておくか」
レフェリーがミラの秘部へと舌を伸ばそうとした、そのときだった。何者かがレフェリーの肩を掴み、ミラへのセクハラを止めたのだ。
「もう試合は終わりました」
レフェリーの肩を掴んだのは、なんと沙織だった。リング下に落下したダメージはかなりのものだったが、痛みを堪え、凛とした表情でレフェリーを見据える。穿き直した下着以外は何も身に着けていないが、身に纏うのは紛れもないトップアイドルのオーラだった。
「ああ、試合は終わった。これからはお客さんをもっと楽しませる時間だよ」
沙織の手を払ったレフェリーは、わざとらしくミラの乳房を揉む。しかし、レフェリーに冷たい声が掛けられる。
「試合が決着した時点で、もう楚野崎ミラはうちのタレントだ。サービスタイムもそこまでにしといてもらおうか」
リング下のスポンサーがレフェリーに釘を刺す。
「・・・ちっ」
舌打ちしたレフェリーだが、渋々ミラから離れる。離れ際、未練がましく何度か乳房を揉んでから、ではあったが。
「さ、ミラちゃん、いこっ」
ミラをロープから解放し、沙織は優しく手を引く。リング下に降りると、自分も下着一枚という格好にも関わらず、ミラを観客の視線から庇いながら花道を下がっていく。
「・・・なぜ、私を? 試合中、あれだけ酷い言動をしたというのに・・・」
ミラは沙織の顔を見ず、足元を見ながらぽつりと問いかける。
「だって、これからは仲間になるんでしょ?」
当然のことをしたのだと言わんばかりの返しに、ミラの頬が薄く染まる。
「・・・ありがとう。沙織・・・お姉さま」
「え? なにか言った?」
「・・・いいえ、なんでも」
小声でのお礼は沙織の耳に届かず、ミラは更に俯き、沙織に身体を寄せ、控室へと戻っていった。
突然の楚野崎ミラのライバル事務所移籍と、亜留川沙織とのデュエット結成。予兆すらなかったこの電撃移籍は、芸能界でもかなり大きなニュースとなった。
その理由について様々な憶測が囁かれた。ミラが年下の沙織を「お姉さま」と呼び出したことから下世話な方向に想像を掻き立てる者も居た。だが二人の活躍が多くのファンを魅了すると、そんな噂も巨大な熱狂の渦の中に消えていった。
今や二人はトップアイドルの座に君臨している。沙織、ミラ、それぞれのファンに加え、二人のユニットへのファンも付き、絶大な支持を受けている。
あれほど沙織を悩ませていた借金もいつの間にか返済が終わったが、不思議なことに、自分を<地下闘艶場>に導くスポンサーと縁を切ろうとはこれっぽっちも思わなかった。
今はデュエットで出演し、あの恥ずかしい試合で裏社会のファンをも増やしている。