一回戦第五試合
 (ビクトリア・フォレスト 対 マンハッタンブラザーズ2号)

「続きまして、一回戦第五試合を行います!」
 黒服の合図に、第五試合で対戦する二人がリングに上がる。
「赤コーナー、『ステイツ・ダイナマイト』、ビクトリア・フォレスト!」
 「ビクトリア・フォレスト」。24歳。身長175cm、B96(Hカップ)・W65・H97。在日米軍横浜基地陸軍第42部隊所属の少尉。はちきれんばかりの肢体を誇る肉感的な美女。栗色の髪をショートカットにしていて、大きな瞳、長い睫、厚めの唇が見る者にセクシーさを感じさせる。
 過去に元橋と対戦し、半裸に剥かれて快楽に失神させられるという屈辱を味合わされた。この大会にその元橋も参加していると聞かされ、リベンジを誓って出場を決めた。今日は白いTシャツに黒い短パンを穿いている。両手にはオープンフィンガーグローブを嵌め、感触を確かめるように手を開閉させる。
 白いTシャツの胸元はビクトリアのバストで盛り上げられ、薄っすらとブラが透けて見える。黒い短パンからは素足が伸び、ヒップは短パンの下で張り詰めている。ビクトリアの魅惑的な肢体に、観客からの厭らしい声援があちこちから飛んでいた。
「青コーナー、マンハッタンブラザーズ2号!」
 先程天現寺久遠と試合をしたばかりのマンハッタンブラザーズ2号がリングに上がる。いつもセコンドについている1号の姿は見えない。
「この試合のレフェリーは九峪志乃です」
 コールされた志乃は軽く一礼すると、ビクトリアとマンハッタンブラザーズ2号をリング中央に呼び寄せた。諸注意とボディチェックを行ってから、志乃は試合開始を告げる。

<カーン!>

「行くわよ!」
 ゴングと共にビクトリアが飛び出し、唸りを上げた左ストレートがマンハッタンブラザーズ2号の頬を抉る。マンハッタンブラザーズ2号は錐揉み状にダウンし、起き上がる気配を見せなかった。ぽかんとするビクトリアを尻目に、志乃が冷静にカウントを進めていく。
「・・・エイト・・・ナイン・・・テン!」

<カンカンカン!>

 あっさりとテンカウントが入り、試合終了のゴングが鳴らされる。
「なによ、一発でダウンって・・・」
 ビクトリアも不満だったが、観客は更に不満だった。セクハラも見せ場もなく、会場中でブーイングが起きる。
 この事態に、リング下の黒服がマイクを持った。
「皆様に説明致します。マンハッタンブラザーズ2号選手は先程の第四試合で大きなダメージを負っていたため、実はドクターストップが掛かっていました。本人がそれを伏せていたためこちらに情報が届くのが遅くなり、このような事態となってしまいました。そのため、只今の試合を無効とし、ビクトリア選手にはリザーブ選手と闘って頂きます!」
 この発表に、観客席は大いに沸く。
「ちょっと、今私が勝ったでしょ! なんでまた試合しなくちゃいけないのよ!」
「確かにそうなんだけど・・・うーん・・・」
 反対にビクトリアはレフェリーの志乃に食って掛かっていた。ビクトリアの言い分のほうが正しいため、また自分も今聞かされた話のため、志乃もなにも返せない。
 この間にリザーブ選手がリングに上がった。
「まあまあビクトリアさん。一回勝ったからちゃんと賞金は出るそうっスよ。それに、自分に勝ったらその分も賞金が出るそうっス」
 この言葉に、ビクトリアの剣幕が収まった。
「・・・そういうことならいいわ。もう一試合しようじゃない。いいアップになったと思えばいいしね」
 ビクトリアは自分自身に言い聞かせるようにして再試合を承諾した。

「赤コーナー、『ステイツ・ダイナマイト』、ビクトリア・フォレスト!」
 今日二試合目となるビクトリアだったが、ほとんどスタミナを使っていない。本人が言うとおり、いいアップになったといったところだろう。
「青コーナー、『ノーペイン』、尾代呑太!」
 対するは尾代呑太だった。体格もいいほうではなく、その実力を知らない観客達から不安の声が上がる。
 志乃は尾代にだけボディチェックを行い、すぐに試合を開始する。

<カーン!>

(・・・ちょっと軽率だったかしら。でも、私の実力を確かめるためだと思えばいいのよ!)
 気分を入れ替え、ビクトリアはオーソドックススタイルに構える。そのまま距離を詰め、尾代の顔にワンツーを入れる。完璧に入ったワンツーに、尾代の頭が後方に流れる。
「シッ!」
 鋭い呼気と共に左ボディブローを入れ、右アッパーで締める。
「さ、これでおしまい」
 両手に残る感触にビクトリアは勝利を確信し、栗色の髪をかき上げる。
「・・・まだ終わってないっスよ」
「!?」
 いきなり、Hカップのバストを掴まれた。
「うっは、すっげぇデカさっスね。さすが白人、堪んないっス!」
 にやつきながらバストを揉んでいるのは、倒したと思った尾代だった。
「どこ触ってるの!」
 尾代の左頬に肘を入れると、その一撃で尾代が離れる。
「いやー、体もおっぱいもデカイと、こっちの体ごと持ってかれるっスね」
 その口調に乱れたところはなく、打撃のダメージは感じられない。
「いいのが入ったっていうのに、平気な顔してるわね」
「ああ、自分痛みに鈍いから、どんだけやられても大丈夫なんスよ」
 左頬を掻きながら、尾代がにかっと笑う。
(それなら、これでどう!)
 ビクトリアのハイキックが尾代の側頭部を捉える。しかし尾代は少し揺らいだだけで、ビクトリアに手を伸ばす。
「効かないって、言った筈っスよ!」
 尾代の手がTシャツに掛かり、一気に引き裂く。

(ぉぉぉ・・・)

 Tシャツの裂け目から、淡いスカイブルーのブラに包まれた見事な美巨乳が覗く。重量感たっぷりのバストは自らの質量と重みで、Tシャツの裂け目を更に広げてその姿を現す。
「うっは、直で見ると凄い迫力っスね! どうせなら、生で見せてもらうっスよ」
「お断りよ!」
 バスト目掛けて伸ばされた尾代の両手を弾き、素早くバックハンドブローを放つ。その一撃は尾代の側頭部を捉えたが、尾代の動きは止まらなかった。再びビクトリアのブラに手を伸ばし、上側にずらす。
「やった、生おっぱい・・・って、ニプレスはずるいっスよ」
 美巨乳が露わになったと思ったのも束の間、ビクトリアはニプレスを装着しており、乳首までは見えなかった。これには場内からもブーイングが起こる。
「このっ!」
 尾代を前蹴りで蹴離し、その隙にブラを直す。
「あー、隠しちゃった。まあいいっス、もう一回見せてもらうっスよ」
 両手をにぎにぎと動かしながら、再び尾代が近づいてくる。
「・・・打撃だけで勝とうっていうのは、虫が良すぎたみたいね」
 ビクトリアの表情が引き締まった。
「打撃以外になにができるんスか!」
 ビクトリアは自分のバスト目掛けて伸ばされた尾代の左腕を捕らえて素早く背中側に回し、そのまま更に捩じ上げる。ごぐり、という鈍い音と共に、尾代の左肩から先がだらりと下がる。
 ビクトリアは尾代の右肩も同様に脱臼させ、立ったままスリーパーホールドを掛ける。もがいていた尾代が白目を剥き、動きを止めたところで志乃が試合を止めた。

<カンカンカン!>

「・・・ふぅ」
 ゴングを聞き、ビクトリアは尾代から離れる。尾代の体は糸が切れた人形のように崩れ落ち、すぐに担架で運ばれていった。
「これで一つ。待ってなさい、モトハシ。必ずリベンジしてみせるから」
 ビクトリアの笑みは、獲物を狙う肉食獣を思わせた。


 一回戦第五試合勝者 ビクトリア・フォレスト
  二回戦進出決定


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