一回戦第七試合
 (グレッグ"ジャンク"カッパー 対 本多柚姫)

「これより、一回戦第七試合を行います!」
 黒服のコールに、第七試合で対戦する二人がリングに上がる。
「赤コーナー、『ミスターメタボ』、グレッグ"ジャンク"カッパー!」
 グレッグの体はまるで脂肪だけからできているようで、顔、首、胴体、脚など、あちこちが弛んでいる。頭部には申し訳程度の頭髪しかなかった。よく見ると対戦前だというのにもう汗をかいている。
「青コーナー、『江戸っ子料理人』、本多柚姫!」
 「本多柚姫」。20歳。身長157cm、B85(Eカップ)・W59・H84。父親が板前で、柚姫も幼い頃から包丁を握って料理に親しんでいた。高校生の頃には父親の店を手伝うようになり、高校を卒業してからは親元を離れ、修業のため各地を転々とした。最近は客寄せのため、胸元にサラシを巻き、諸肌脱ぎで魚をさばくというパフォーマンスを行っている。
 <地下闘艶場>に参戦した際は早矢仕杜丸を二撃で沈め、続くナスターシャ・ウォレンスキー戦では激闘の末両者KOとなっている。その高い実力に、玄人好みの観客から支持されている。
 今日は上に袖の短い道衣と中に黒いTシャツを着、下に青い短パンを穿いて、短パンの下からは黒いスパッツが伸びている。
 レフェリーはいつもの小悪党面の男だった。
「久しぶりだな、柚姫選手。今日も活躍を期待しているよ」
 レフェリーの言葉に、柚姫は何も返そうとはしなかった。

 グレッグにおざなりのボディチェックを行ったレフェリーが、柚姫の前に移動する。
「さ、ボディチェックだ。今日はどうする? 脱ぐか? それとも触って調べるのがいいか?」
「好きにしなよ」
 柚姫が投げやりな態度で言う。前回はかっとなった勢いで半裸姿を披露したが、今日はそこまでの気はない。
「そうか、じゃあ今日はきちんとボディチェックさせてもらうぞ」
 しゃがみ込んだレフェリーは短パンの横側を押さえ、徐々に手を上へと移動させていく。その手は柚姫の腹部を撫で、バストへと到達する。
「どこ触ってやがる!」
 柚姫がレフェリーの手を払うと、レフェリーはわざとらしく肩を竦めて見せる。
「膨らみに何を隠しているかわからんからな、触って調べないと。それとも、この前みたいに脱いで見せてくれるのか?」
「くっ・・・」
 今日は前回と違い、頭に血が上っているわけではない。そのため、勢いで脱ぐことも躊躇われる。
(ちっ、こんなことなら出場するんじゃなかったよ。でも、客との約束だからね)

 柚姫がこの大会に参加したのは、ある契約先との関係があった。少し胡散臭い相手ではあったが、よく柚姫を呼んでくれるお得意様で、この相手が今回のシングルトーナメントへの参戦を勧めてきたのだ。もしいい成績を残せれば、給金の大幅アップも考えるという条件は魅力的だった。前回と同じ舞台に多少の不安もあったが、柚姫は参戦を決めた。

「わかったよ、好きにしな」
「そうか、物分りがよくて助かるよ」
 レフェリーはにやりと笑うと、再び柚姫のバストに手を伸ばした。かなりみしりと詰まった感触に、自然と頬が緩む。
「中身がこんなにたっぷりとしていたとはな。この前は惜しいことをしたもんだ」
「・・・」
 こんなことくらいでキレる柚姫ではなかったが、不快感を感じないわけではない。屈辱に眉を寄せ、レフェリーのセクハラを耐えた。

「さて、そろそろ試合を始めるかな」
 思う様柚姫のバストを揉んだレフェリーが、満足気な表情でゴングを要請する。

<カーン!>

(あんのエロレフェリー、人の胸を好き勝手に揉みやがって)
 柚姫の怒りは、目の前の対戦相手に向けられた。
(ドデブに恨みはないが、さっさと決めさせてもらうよ!)
 一歩で間合いを詰め、右肘を鳩尾に突き刺す。
「ぐうぇへへ、効かねぇぞぉ」
 綺麗に急所に入ったというのに、グレッグは平気な顔で柚姫を抱き締めようと両手を広げる。
「ふっ!」
 しかし、柚姫の掌底に顎が跳ね上がる。
「あいででで、歯がいでぇ」
 口を開けたところを下から叩かれたため、勢いよく歯を打ち合わせてしまった。舌は噛まなかったものの、不快な痛みが残る。
「そら、もう一丁!」
 再び柚姫の掌底がグレッグの顎を叩く。
「あぐべっ!」
 再度の痛みに、グレッグは背を向けて逃げ出す。
「逃がすか、もう決めさせてもら・・・?」
 グレッグに追い討ちしようと踏み込んだ瞬間、足元がずるりと流れる。
(なんだ、えらく滑る!)
 すぐに体勢を立て直したものの、グレッグに攻撃が届かない距離を取られてしまった。
「あいでぇ・・・お前、かなり痛いぞぉ」
 全身を汗まみれにしたグレッグが柚姫を指差して喚く。
「あのな、ここはそういう闘いの場だろうが。痛いの痒いの言うほうがおかしいだろ」
「うるせぇぞぉ! お前みたいな女は、こうだぁ!」
 グレッグは自分の体の表面を流れる汗を掬い、柚姫に投げつける。
「うわ、汚ねっ!」
 柚姫も反射的に避けようとしたが、全ては避けられずに体に付着してしまう。
「そぉら、もういっちょぉ」
 グレッグは何度も汗を掬い、柚姫に投げつける。そのたびに柚姫は避けるが、いつしかリングはグレッグの汗で濡れそぼっていった。
(くそっ、気色悪さに逃げてたら、いつの間にかあいつの汗でべとべとだ)
 リングだけでなく柚姫の剥き出しの腕や脚にまで汗が掛かっており、気色悪さが先に立つ。
「うぇへへ、こうなったらもう俺の勝ちだぞぅ」
 グレッグがふやけた笑みを浮かべ、柚姫に向かって右腕を伸ばす。
「そうかい、良かったな!」
 その手を手繰って脇固めを狙った柚姫だったが、汗のためにグレッグの腕がすっぽ抜ける。
「チャンスだぞぉ!」
 グレッグは背後から柚姫を抱え込み、コーナーポストへと体ごとぶつける。
「ぐぁっ!」
 グレッグの巨体とポストに挟まれ、柚姫が苦鳴を洩らす。
「うぇへへ、お前のおっぱいの感触、調べさせてもらうぞぉ」
 動きの止まった柚姫のバストを、グレッグの短く太い指が捏ね回す。
「どこ触ってんだっ!」
 柚姫はグレッグの足を踏みつけ、怯んだ隙にコーナーから逃れる。
「っと!」
 しかし、グレッグの汗塗れになったリングは思いの外滑りやすかった。転倒はしなかったものの、バランスを取ることに神経を割かれる。
「うぇへへ、また捕まえたぁ」
「!」
 またもグレッグが背後からバストを掴んでくる。
「離せこの!」
 指を掴んでもぎ離そうとしたが、グレッグの汗のために滑って掴むことができない。
「うぇへへ、けっこうでかいんだなぁ。それに感触もいいぞぉ」
 グレッグは柚姫の抵抗など気にせず、バストを揉み続ける。
(滑るってんなら、それを利用してやる!)
 自分の両肘をグレッグの腕と自分の体の間に滑り込ませ、隙間を作る。その隙間を前面にまで持って来ることでようやくグレッグのバスト責めから逃れる。すぐにロープを掴み、グレッグと距離を取る。
「うぇへへ、上手く逃げたなぁ」
 グレッグは自分の汗が満面に撒かれたリングの上を、平気な顔で歩み寄ってくる。
「・・・仕方ないか!」
 柚姫は突然道衣を脱ぎ、右手に持つ。黒いTシャツが汗で張りつき、柚姫の肢体を浮かび上がらせる。
「色っぽいなぁ本多選手。全部脱いでもいいんだぞ?」
 レフェリーの揶揄など気にせず、近寄るグレッグを睨みつける。
「なんのつもりか知らねぇけど、なにやっても無駄だぞぉ」
 両手を広げてきたグレッグに、道衣を頭から被せる。
「んだ? なんだぁ?」
 視界を奪われたグレッグの動きが瞬間止まる。
「・・・フシッ!」
 両足を肩幅に開き、膝を内側に入れた騎馬立ちとなった柚姫が、手刀にした指先をグレッグの喉元に突き刺す。上半身だけの力を使った一撃だったが、道衣を頭に被ったままのグレッグの巨体が、膝から崩れ落ちた。
 レフェリーが慌てて近寄って道衣をはぐり、グレッグが気絶しているのを確認してゴングを要請する。

<カンカンカン!>

 勝利のゴングが鳴らされると道衣を拾い、柚姫はリングを後にした。
「きったねぇなぁ。シャワーで落ちるのかこれ?」
 グレッグの汗に塗れた体を見下ろし、一つ頭を振った。

 リング上ではグレッグが担架で運び出され(重い上にリングが滑るためかなり苦労した)、今日はまだ試合があるため、おおわらわで清掃が行われた。


「・・・グレッグの奴は最終試合に使うべきだったの」
 「御前」の呟きに、洋子もナスターシャも答えることができなかった。
 洋子は乱れたスーツ姿で椅子に崩れるように座り込んでおり、ナスターシャは「御前」から腰を持たれ、今まさに背後から貫かれている。
 各試合を超VIPルームから観戦していた「御前」はまず洋子を抱き寄せて奉仕させ、激しく犯した。それでも猛る逸物は治まらず、今はナスターシャを後背位で犯している。
 洋子は喘ぎを、ナスターシャは嬌声を放つことしかできなかった。
「これだけ昂ぶるだけでも、トーナメントを開いた甲斐があったわ」
 ナスターシャを激しく責めながら、「御前」は尚沸き上がる欲望に身を任せた。


 一回戦第七試合勝者 本多柚姫
  二回戦進出決定


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