一回戦第九試合
 (元橋堅城 対 森下恋)

「皆様、本日も<地下闘艶場>にお集まり頂き、誠にありがとうございます。本日は、一回戦第九試合から行います!」
 場内に流れたアナウンスに、試合開始を待ちわびていた観客達から歓声が上がる。
「選手、入場!」
 黒服の合図と共に、二人の男女がリングに上がった。
「赤コーナー、『最強老人』、元橋堅城!」
 黒い道衣を着た小柄な老人に、観客から耳を劈くような声援が飛ぶ。
 「元橋堅城」。<地下闘艶場>には四回登場し、二勝二敗と成績だけ見れば平凡な数字だ。しかしその実力は誰もが認めるもので、<地下闘艶場>最強との呼び声も高い。
「青コーナー、『カメラウーマン』、森下恋!」
 「森下恋(れん)」。23歳。身長167cm、B90(Eカップ)・W65・H92。普段は黒ぶち眼鏡をしており、肩まで届く髪をひっつめにし、主にトレーナーにパンツルックという色気のない格好で過ごすことが多い。しかし眼鏡を外した素顔はモデル並みで、そのプロポーションは抜群。
 今日の恋は自前の柔道着を着ており、中には白いTシャツを着込んでいる。眼鏡は掛けておらず、その美貌に観客席が沸く。
「この試合のレフェリーは、九峪志乃が勤めます」
 リングに上がった志乃の姿に、観客席から驚きの声が上がる。志乃は昨日とは違い、ミニスカート姿だった。恥ずかしげに頬を染める姿は、志乃が望んでした格好ではないことを教えてくれた。
 それでも志乃は通常のプロレスの試合のように元橋と恋をリング中央に呼び寄せ、諸注意を与えた後ボディチェックを行う。
「それでは、ファイト!」

<カーン!>

「お爺さん、悪いけど容赦しないわよ」
 元橋の実力を知らない恋は、ゴングと同時に無造作に間合いを詰める。あくまでもスポーツとしてしか柔道をしてこなかった恋は、元橋の凄みを感じ取ることができなかった。自分より背の低い元橋の奥襟を取り、払い腰を掛ける。
「!?」
 引き手、体移動共完璧だったのに、元橋の体はぴくりとも動かなかった。
「おやおや、老人だからといって、手加減はしてくれなくても大丈夫ですよ」
 にこにこと微笑む元橋に、恋の頭に血が上る。
「ええい!」
 今度は大外刈りを仕掛けるが、まるで巨木に打ち込んだように小揺るぎもしない。
「まだまだ技が甘いですぞ?」
 その言葉を最後まで聞く前に、恋の体は宙に浮いていた。
「え・・・あぐっ!」
 背中を襲った衝撃は、今まで受けてきた投げ技の比ではなかった。
「あ・・・ぐぅっ・・・」
「おやおや、やり過ぎてしまいましたかな。ま、それはそれとして」
 元橋はしゃがみ込むと、帯を残したまま恋の上着を脱がしてしまう。
「え、ちょっと、なにしてるの!」
 痛みに呻いていた恋だったが、柔道着を脱がされたことで慌てて立ち上がる。
(また人の服を脱がすなんて、今までと同じじゃない! でもこのお爺さん、投げようとしてもまるで崩れないし、投げの威力は半端じゃないし。一体何者?)
「さて、それでは続けましょうかな」
 リング下の黒服に上着を渡した元橋が、再び恋に歩み寄る。
「くっ!」
 Tシャツ姿とされた恋は、本能的に組手でいいところを取ろうとしていた。それをさせじと元橋も恋の手を弾き、自分がより良いところを掴もうとする。激しい組手争い。その最中、恋の柔道着の下がすとんと落ちる。
「え、な?」
 それに気を取られた瞬間、恋の体が宙を舞う。元橋の見事な背負い投げに、恋はリングに背中から落とされた。
「あっつぅ・・・あっ!」
 そのときには、もう柔道着のズボンはなかった。元橋は組手争いの最中恋のズボンの紐を外し、足元に落ちた瞬間ズボンを踏んで背負い投げを掛けていた。そのため恋がリングに投げられたときには、Tシャツに黒帯を残した格好になってしまっていた。
「ほほぅ、中々可愛らしい下着を着けていますな。似合っていますぞ」
 元橋からパンティのことを言われ、顔を赤らめた恋が慌てて脚を閉じる。既にズボンは元橋の手によってリング下の黒服に渡されており、取り戻すことはできそうにない。
(こ、こんなお爺さんに・・・!)
 いつまでも寝転がっているわけにもいかず、立ち上がって構えを取る。しかし、羞恥から構えが小さくなっている。
「それでは、次はTシャツを頂きましょうかな」
 元橋が軽く宣言し、するりと間合いを詰める。
「くっ・・・」
 恋も応戦せざるを得ず、激しく動くたびにTシャツの下からちらりと下着が覗く。
「それ」
「えっ!」
 組手争いの中だというのに、元橋は少しずつ恋のTシャツの裾をずり上げていた。恋が裾を押さえようとすればバストをつつき、恋がバストを守ろうとすればまたTシャツの裾を持って引き上げる。恋が胸元と裾を押さえると、無防備なヒップを撫でる。
「お爺さん、いいかげんにして!」
「そうですか、では遊びはこの辺で」
 恋は元橋に左手首を持たれ、背中に回されてしまう。動きを封じられたところで右手も同様にされ、元橋の左手一本で拘束されてしまう。
「では、Tシャツを頂きますぞ」
「そんな、きゃっ!」
 元橋がTシャツを捲り上げたため、青いブラが露わになる。剥き出しにされた上下の下着に観客が沸く。元橋は恋の両腕を放すと同時に一気にTシャツを脱がし、リング下の黒服に渡す。恋は反撃もできず、胸元と股間を隠す。
(どうしよう、柔道着とTシャツ、全部取られちゃった・・・)
 とうとうTシャツも取られた恋は、上下の下着に黒帯を巻いただけの姿になってしまう。豊かなプロポーションの美女のフェティッシュな格好に、観客席には深く頷く姿も見える。
「さてお嬢さん、次はどちらの下着がいいですかな?」
 元橋のこの質問に、恋の頭に血が上る。
「どっちもお断りよ!」
 沸騰した感情そのままに、恋は得意の大外刈りに入っていた。
「ええいっ!」
 先程仕掛けて小揺るぎもしなかった大外刈りだったが、怒りに任せた勢いが技に破壊力を上乗せしていた。
「むっ!?」
 元橋の上体がぶれる。しかし、それも一瞬だった。
「肝が冷えましたよ。ですが、まだまだです」
 恋の大外刈りを堪えた元橋の手が恋のブラのホックを外し、そのまま流れるように肩紐を外す。
「え、えぇっ!?」
 気づいたときには、まるで手品のようにブラは元橋の手の中に移っていた。ブラを奪われた恋は胸元を隠し、羞恥に頬を染めて立ち尽くす。元橋はリング下の黒服にブラを渡すと、微笑を浮かべたままの顔で恋に向き直る。
「さて、後一枚ですな。大丈夫、帯だけは残しておきますので」
「そんな気遣いいらないわよ!」
 恋は仕方なく帯を胸まで引き上げ、乳首が隠れるように締め直す。
「ほほぅ、上手い隠し方ですな。ですが、色っぽさも上がりましたよ」
「この・・・言わせておけば!」
 恋の忍耐力と羞恥心を、怒りが吹き飛ばした。策も駆け引きもなく、一気に突進する。
「ほう」
 今日一番のスピードで元橋に迫る。予想以上の恋の動きに、元橋が感心したように呟く。
(捕まえた!)
 恋の両腕は元橋の胴体を抱えていた。そのまま元橋を持ち上げようとした恋だったが、元橋の体はぴくりとも動かなかった。
(嘘、なんで!?)
 身長差と体重差を考えれば、恋のほうが圧倒的に有利だ。それでも、事実として元橋を持ち上げることができない。
 その原因は、元橋の裸足にあった。元橋は強力な足の指の力でリングを掴み、しかも恋の胸元にある帯を持ち、上手く力を逸らしていた。
(こんなバカなことあるわけないわ!)
 焦る恋だったが、逆に足元がリングから離れる。
「えっ!?」
 元橋が恋の帯だけでなく胴を抱え、軽々と持ち上げていたのだ。次の瞬間には、背中からリングに叩きつけられていた。
「・・・かはっ」
 肺の空気が全て体外に絞り出されたようだった。息が詰まり、空気が肺に入ってくれない。
 完全に動きの止まった恋の両手を、元橋がロープに絡めて動かせないようにする。そのまま恋のお腹の辺りに腰を下ろし、恋の乳首を隠していた帯を下にずらす。その途端、恋の乳房が弾むようにして姿を現す。この光景を見た観客が指笛を鳴らす。
 元橋は一度恋の乳房を撫でると、両手で乳房を愛撫する。決して激しい動きではなかったが、確実に恋の快感を引き出していく。
(やだ、このお爺さん巧い・・・)
 元橋の手が動くたび、乳房から快楽の波動が生まれる。以前<地下闘艶場>で闘った男達とは技量が比べ物にならない。
(で、でも、こんなリングで感じてなんかやらないんだから・・・ふあっ!)
 元橋は恋の乳房を左手で責めながら、右手で乳首を転がしていた。いつしか、痛みを快感が上回っていた。
「さて、ではそろそろ・・・」
 元橋の手が、恋の青いパンティーに掛かる。
「お爺さん、そ、それだけは・・・!」
「おや、これを脱いで貰ってお終いにしようと思いましたが、まだ満足できなかったようですな。それでは・・・」
 元橋の指が太ももの隙間に滑り込み、パンティーの上から秘部を撫でる。
「ふぁぁっ!」
 乳房とは違う強烈な快感が恋の背骨を走り抜ける。元橋は恋の秘裂を下着越しに優しく撫で、淫核を押さえる。
(駄目、上手すぎる! 声出さないようにするのが精一杯・・・!)
 それでも快感を堪えて元橋を上から落とそうと体を捻るが、新たな刺激に力が抜ける。その繰り返しで、恋の快感数値はどんどんと上げられていった。

 恋を責める元橋を見つめていた志乃だったが、その様子がどこかおかしかった。頬はほんのりと染まり、太ももをもじもじとすり合わせる。
(こ、こんな濃密な責め方もするの? ここまで来たらプロレスとかセクハラの域を超えてるじゃない・・・あ、まずい)
 自分の身体の変化に気づき、頬が赤くなる。
(今は試合中で、ここはリングの上よ! しっかりしなきゃ!)
 そう自分を叱咤するが、一度気づいてしまった以上、中々冷静にはなれなかった。その証拠は、ロープブレイクを取らないことでも明らかだった。

「それでは、覚悟はできましたかな?」
 元橋の手が再び恋のパンティーに掛かる。
(こ、これ以上は、もう・・・!)
「ギブアップ!」

<カンカンカン!>

 恋のギブアップを聞いた志乃が、我に返ってゴングを要請する。
「残念、後一枚だったのですが」
 ゴングを聞いた元橋はパンティーから手を放し、にこにこと微笑んでいる。ロープ際に動くと繊細な手つきで恋の手首をロープから外し、手を取って立たせる。
「え・・・あの・・・」
 今まで快楽責めをしてきた元橋から優しくあつかわれ、どういう反応を示していいかわからず、恋が戸惑う。
「もう試合は終わりましたからな。私の仕事も終わったということですよ」
 元橋は最後に恋のお尻を軽く叩き、リングを降りた。
(・・・年の功、ってやつなのかしら)
 恋はここまで辱められながらも、元橋を憎むことができなかった。再び黒帯で乳首を隠し、観客からの卑猥な歓声の中、顔を赤らめて退場していった。


 一回戦第九試合勝者 元橋堅城
  二回戦進出決定


 リングを降りた志乃は、すぐにトイレへと駆け込んだ。急いで個室に入り、ドアを乱暴に閉める。もどかしげに下着を下ろして便座に座り、トイレットペーパーで秘部を拭う。
(嘘でしょ、こんなに濡れてる・・・)
 トイレットペーパーは、志乃の愛液でぐっしょりと濡れそぼっていた。目を下ろせば、下着にも濡れた染みがある。
(試合中にこんなになるなんて・・・レフェリーとしてどうなのよ)
 トイレで自己嫌悪に陥る志乃だった。


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