幕間劇 其の一

『それでは、これで本日全ての試合を終了いたします! ぜひまた次回もお楽しみください!』
 第八試合も終わり、今日予定されていた全ての試合が終了した。一日に八試合という長丁場だったが、観客はそれなりに満足したようだ。
 「御前」は専用の超VIPルームで、自分専用の椅子に腰を下ろしたままリングを見つめていた。その両脇には黒髪の鬼島洋子と銀髪のナスターシャ・ウォレンスキーが立っている。二人の頬がどことなく赤みを帯びているのは、試合観戦中に昂ぶった「御前」から抱かれた所為だ。
「今日は波乱もなく終わったが、次はどうなるかの」
 事前に予想していた通りの結果に終わり、満足と不満が同居している。
(気になるおなごは一人居るが・・・)
 「御前」の手が一枚の資料を持つ。そこには「王美眉」のデータが写真付きで載っていた。側近の中でも古株の田芝からの推薦で、今回のシングルトーナメントに参戦が許可された。<地下闘艶場>には初参戦となり、どのような闘い方をするのか想像がつかない。そこが「御前」を刺激する。
 写真に写った王美眉は切れ長の目に黒目がちの瞳で、カンフー着の胸元が大きく盛り上がっている。美しさよりも危険な何かを強く感じさせる容姿に、「御前」の口元には微かな笑みが浮かんでいた。
「楽しませて貰おうか」
 「御前」の独り言に、洋子もナスターシャも何も返そうとはしなかった。


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