幕間劇 其の六
「・・・・・・」
三回戦第三試合が打ち切られ、元橋、美眉両者が担架に乗せられて運ばれていく。「御前」は沈黙を保ったままその光景をじっと見つめていた。
(余計な足枷を加えてしまったか。元橋師匠、済まなかったな)
元橋が闘いだけを考えていれば、これほどの苦戦はしなかった筈だ。心の中だけで詫び、目を閉じる。
「ようやく王美眉のデータを得られましたが・・・元橋と相打ち、ですか」
書類を持ったまま超VIPルームに入室したのはナスターシャだった。
「これで終わりですね。データも無駄になった」
ナスターシャの軽い苛立ちのこもった科白に、「御前」が首を振る。
「否、これから役に立つ。見せよ」
ナスターシャから王美眉のデータを受け取り、素早く目を通す。
「・・・ほぉ」
そこに書かれていた事実に、「御前」の口角が上がる。
「よくやったナスターシャ」
「あ、ありがとうございます」
次に来るであろう「褒美」に、ナスターシャが距離を近づける。しかし、途中でその動きが止まった。
「御前」の口元に、獣の笑みが浮かんでいた。