【一回戦第四試合】
 (ジグ・ソリタード 対 ビクトリア・フォレスト)

 先程の試合がもたらした残響に、会場内も未だにざわめきが収まらない。その喧騒を破るかのようにマイクの音が響く。
「続きまして、一回戦第四試合を行います!」
 黒服の合図と共に、対戦する二人がリングに上がる。
「赤コーナー、『ハウンドウルフ』、ジグ・ソリタード!」
 ビクトリアと闘うのは野性味溢れるジグ・ソリタードだった。前回のシングルトーナメントでは八岳琉璃と対戦し、その高い身体能力で琉璃の衣装を引き裂いて見せた。
「青コーナー、『ステイツ・ダイナマイト』、ビクトリア・フォレスト!」
「ビクトリア・フォレスト」。24歳。身長175cm、B96(Hカップ)・W65・H97。在日米軍横浜基地陸軍第42部隊所属の少尉。はちきれんばかりの肢体を誇る肉感的な美女。栗色の髪をショートカットにしていて、大きな瞳、長い睫、厚めの唇が見る者にセクシーさを感じさせる。
 前回のシングルトーナメントでは元橋堅城にリベンジを誓っていたものの、一瞬の油断から虎路ノ山に破れている。今トーナメントも元橋へのリベンジを狙い、白いTシャツに黒い短パンを穿き、両手にはオープンフィンガーグローブを嵌めている。
 今回のレフェリーはいつものレフェリーだった。ジグのボディチェックを簡単に終え、ビクトリアの前に移動する。
「それじゃ、ボディチェックを受けて貰おうか」
 レフェリーの英語に、ビクトリアの眉が寄る。
「・・・また厭らしく触るつもり?」
「そんなつもりはないが、職務を全うしようとするとしっかり触らざるを得ないんだよ。ま、嫌だと言うなら失格になるだけだけどな」
 失格とされれば元橋へのリベンジどころではない。
「・・・我慢するから、さっさと終わらせてよ」
「ボディチェックをさっさと終わらせられるわけがないだろ? じっくりと調べてやるよ」
 レフェリーは、Tシャツを盛り上げるビクトリアのHカップバストを鷲掴みにした。そのまま乱暴に捏ね回す。
「痛いわね! 触り方も知らないの!?」
「なんだ、俺に文句をつけるのか? 失格になりたいってことなら、すぐにでも失格にしてやるぞ」
「この・・・」
 ビクトリアは拳を握り込むが、意志の力で動きを止める。ここでレフェリーを感情のままに殴り飛ばせば、元橋へのリベンジの舞台が消える。
「理解したようだな。それじゃ、ボディチェックが終わるまでおとなしくしてろよ」
 下品な笑みを浮かべたレフェリーは、両手でバストを揉み続ける。
(この変態レフェリー、毎回毎回・・・!)
 必死に怒りを堪えるビクトリアを余所に、レフェリーは両手に余るほどのバストを揉み、捏ね回す。
「これだけでかいと調べるのも大変だぜ」
 白々しいことを言いながら、レフェリーはビクトリアのバストを揉むのをやめない。
(ああ、ぶっ飛ばしてやりたい!)
 それでも、リベンジのためには我慢しなければ。ビクトリアにできるのはレフェリーを睨みつけることだけだった。
「さて、こっちはどうだ?」
 レフェリーの手が短パンの上から股間を撫で回す。
「っ・・・!」
 ある程度予測していたとは言え、不快感が減るわけでもない。ビクトリアは拳を更に握り締め、屈辱にじっと耐え続けた。

「よし、それじゃぁそろそろ始めるとするか」
 ヒップや太ももまで撫で回したレフェリーは、最後にビクトリアの大きすぎるバストを両手で弾ませ、ゴングを要請した。

<カーン!>

(ホントに毎回毎回、このドスケベレフェリーは!)
 ビクトリアは怒りを視線に込め、レフェリーを睨む。ジグから目を離していたのは数瞬だったが、その僅かの間にジグが跳躍していた。
「!」
 寸前で落ちてきた右手をかわす。鋭い一撃に、かわすことしかできなかった。
 ジグは着地と同時に足払いを掛け、これもビクトリアがかわしたと見ると一旦距離を取る。否、下がると見せかけ、低いタックルに入っていた。
「くっ!」
 タックルを潰そうとしたビクトリアだったが、ジグは左に変化し、ビクトリアの左太ももを蹴りながら飛び下がっていた。
「この、ちょこまかと!」
 ジグのスピードと低い体勢に、ビクトリアは翻弄されていた。まるで野生の獣を相手にしているようだ。型に嵌らない動きが読み辛く、後手に回ってしまう。
「シィッ!」
 迎撃しようと振り抜いたアッパーは空を切り、身を伏せたジグが伸び上がりながら右手を振った。
 ジグが右手を一閃した瞬間、ビクトリアのTシャツが斜めに切り裂かれていた。その隙間から、ブラに包まれたHカップの美巨乳が零れ出る。
「っ!」
 頬を赤らめたビクトリアに対し、観客席から野次が飛ぶ。
「色気のないブラだな」
「うるさい!」
 ジグの動きを捉えきれない苛立ちをレフェリーにぶつけ、肩に力の入った構えを取る。
(こいつくらいの相手、すぐに沈めて見せる!)
 元橋へのリベンジを達成するためには、こんなところで足踏みしているわけにはいかない。その思いがビクトリアから余裕を奪っていた。手足を振り回し、徒にスタミナを消費していく。
「シィィッ!」
 ビクトリアの放ったミドルキックを、ジグは体勢を低くしてかわしていた。否、それだけではなく、ロープへと跳び、一気に距離を詰めていた。ジグの有り得ない変化からの跳躍。次の瞬間、ビクトリアのブラが真ん中から断ち切られていた。
「っ!」
 女性特有の羞恥から、ビクトリアは思わず胸元を押さえていた。
「いい光景だな、ビクトリア選手。ギブアップするか?」
「しない!」
 レフェリーの問いに反射的に答え、ジグを睨む。
(胸が見えたくらいで負けられない。絶対に勝つわ!)
 素早い呼吸で胸の空気を入れ替え、胸元から手を放す。断ち切られたブラが真ん中から分かれ、辛うじて乳首を隠している。この扇情的な格好に、観客席から卑猥な野次が飛んでくる。
「お、もうちょっとで乳首が見えそうだぞ」
(うるさい○○○○レフェリー!)
 心の中で放送禁止用語を叫ぶ。しかし目はジグから離さない。
(次に飛び掛ってきたときが最後よ。カウンターを叩き込んであげるわ!)
 拳に力を込め、じわりと距離を詰める。ビクトリアの誘いに乗ったか、ジグが跳躍した、ように見えた。
(っ!?)
 ビクトリアの予想した空間にジグの姿はなかった。ジグは跳躍すると見せかけて素早くビクトリアの股下を潜り抜け、背後を取っていた。そのまま後ろから抱きつき、ビクトリアの露わになった乳房を掴んでいた。
「っ、このっ!」
 乳房への刺激を耐え、後方に肘打ちを出すビクトリアだったが、ジグはビクトリアの乳房を揉みながらも器用にかわしていく。
(なんで当たらない・・・ひぅっ!)
 軽くとは言え乳首に爪を立てられ、一瞬ビクトリアの動きが鈍る。
(こうなったら!)
 自分の乳房を弄っていたジグの指を掴み、関節を逆に捻る。
「アグァァァッ!」
 容赦ない指折りに、ジグの口から絶叫が漏れる。
「ふっ!」
 ビクトリアはジグの手首を極めながら捻り、体重を掛けて倒れ込む。ビクトリアの体重がジグの肘関節に掛かり、鈍い音が響いた。
「グギャァァァッ!」
 ジグの絶叫に、レフェリーが即座に試合を止める。

<カンカンカン!>

 ビクトリアの関節技で、ジグの肘は脱臼していた。またもリングに担架が運ばれ、ジグを乗せて花道を下がっていく。
「・・・これで、一つ」
 元橋にリベンジするまで負けられない。ビクトリアは覚悟も新たにリングを降りた。


 一回戦第四試合勝者 ビクトリア・フォレスト
  二回戦進出決定


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