【二回戦第二試合】
 (カミラ・アーデルハイド・バートリー 対 ビクトリア・フォレスト)

「それでは、二回戦第二試合を行います!」
 黒服の合図と共に二人の女性がリングへと上がる。
「赤コーナー、『ドラキュリーナ』、カミラ・アーデルハイド・バートリー!」
「カミラ・アーデルハイド・バートリー」。19歳。身長172cm、B102(Jカップ)・W60・H89。内側から輝きを発しているかのような亜麻色の髪。長い睫毛。妖艶な瞳。赤くぬめる唇。「魔王が祝福を与えたような」人間離れした美貌に、万人が惹きつけられてしまう。
 一回戦では恵比川福男相手に余裕の勝利を挙げ、一躍優勝候補に躍り出た。今日は半袖、膝までの黒のボディタイツの上に白のTシャツを重ねている。
「青コーナー、『ステイツ・ダイナマイト』、ビクトリア・フォレスト!」
「ビクトリア・フォレスト」。24歳。身長175cm、B96(Hカップ)・W65・H97。在日米軍横浜基地陸軍第42部隊所属の少尉。はちきれんばかりの肢体を誇る肉感的な美女。栗色の髪をショートカットにしていて、大きな瞳、長い睫、厚めの唇が見る者にセクシーさを感じさせる。
<地下闘艶場>で元橋に徹底的に嬲られ、今回もリベンジを誓ってシングルトーナメントに参加した。一回戦ではジグ・ソリタードと闘い、ジグのスピードに翻弄されたものの最後には勝利している。
 今日も前回同様、白いTシャツに黒い短パン姿で、両手にはオープンフィンガーグローブを嵌めている。
「この試合を裁くのは、三ツ原凱です!」
 凱がリングに上がると、観客席から懐疑的な視線が飛ぶ。そんな視線も知らぬ気に、凱はカミラとビクトリアに通常のボディチェックを行うとゴングの合図を出した。

<カーン!>

(素人の女性選手か・・・本気で行っていいのかしら?)
 軽くステップを踏みながら、ビクトリアは軽い困惑を抱えていた。
 元橋と闘うためには倒さねばならない相手ではあるが、女性相手にどこまでやっていいものか。考えるビクトリアにカミラが声を掛ける。
「アメリカの軍人だと言いましたわね。それほど大きな胸だと、任務どころか歩くだけでも邪魔になるでしょうに」
「・・・あんたに言われる筋合いはないわね」
 ビクトリアもかなりの大きさのバストを誇るが、カミラのバストはそれを凌駕していた。
「あら、嫉妬ですか?」
 挑発するかのように、カミラは自分の胸の下で腕組みしてみせる。そのため豊か過ぎるバストが寄せられ、更に盛り上がる。ビクトリアは眉を顰めただけで、観客席のほうから大きな歓声が上がる。
「私より大きいからって、バストには変わりないじゃないの」
「貴女のような脂肪の固まりと、私の美しい芸術品のような胸を一緒にしないでくださいな」
「・・・なんですって?」
 カミラの挑発に、ビクトリアから殺気混じりの憤怒が放たれる。
「あら、怒りました? 人間は事実を指摘されたときに一番怒りを覚えるそうですわね」
 くすくすと笑うカミラに、ビクトリアの頭の中でブレーキが壊れる音が響いた。
「後悔する間も・・・与えないわよ!」
 ビクトリアの両拳がいきなりのトップスピードでカミラに襲い掛かる。しかし。
(当たらない! 掠りもしないってどういうこと!?)
 ビクトリアが繰り出す高速コンビネーションブローを、カミラは余裕を持って悉くかわして見せる。
「どうしました? そろそろ本気を出してくれても宜しくてよ」
 しかも挑発のおまけつき。
「この・・・!」
 それでも連打を放つビクトリアが唇を噛む。
 突如、ビクトリアのストレートの軌道が変わった。ストレートを放った瞬間、わざと軸足をずらすことで軌道を変える技術だった。威力は落ちるものの、ビクトリアの動きに慣れた相手には有効な攻めだった。
 元橋との再戦に備え、ビクトリアが密かに磨いてきた技だった。
「っ!?」
 それでもカミラはぎりぎりでガードしたが、ビクトリアはそのカミラの腕を抱え込んだ。
(捕らえた!)
 抱え込んだカミラの左肘ごと体を回転させる。容赦なく左肘を破壊しようという動きだった。
「なっ・・・」
 しかし、ビクトリアの口からは驚愕が零れていた。
 カミラは自らも同じ向きに回転することでビクトリアの投げを無効化し、しかも回転しながら、完璧に極められていた左腕を引き抜いていたのだ。
「これですわ・・・殺気混じりの容赦ない攻撃! これこそ闘いの真骨頂ですわ!」
 左腕を折られかねない攻撃を受けたというのに、カミラが上げたのは喜びの声だった。
(こいつ・・・どっか壊れてるんじゃないの)
 一歩間違えば左腕が一生使えないような抜き方だった。カミラの見せた思い切りのいい脱出方法と歓喜が、ビクトリアの背筋を冷たく撫でる。
「さあ! もっと私を楽しませなさい! 『ノイエ・トート』を、カミラ・アーデルハイド・バートリーをその身に刻んであげますわ!」
 両手を広げたカミラが無造作に距離を詰めてくる。
「ちぃっ!」
 確かに捉えた筈のミドルキックは空を切った。
「くっ!」
 ならばと放ったハイキックは、柔らかく反らされ、カミラの頭上から反対側へと抜けた。
(そんな、この距離よ!?)
 焦ったビクトリアは、キックではなく手技を選択していた。
「シィィィッ!」
 鋭い呼気を吐いたビクトリアが、右のストレートのフェイントから左のバックハンドブローを放つ。
「・・・こんなものですの?」
 大の男でも沈めることができる一撃が、カミラの右手によって捕らえられていた。
「もう飽きましたわね。終わりにしましょう」
 カミラが滑るように左肘を極めにきた。
(まずい!)
 左腕を折られまいと肘を曲げた瞬間、その曲げた動きを利用され、一気に後方に崩されていた。
「くっ!」
 逆にその勢いに乗り、リングを蹴りながら左膝を跳ね上げてカミラの後頭部を狙う。
「なっ!?」
 しかし、カミラは後方に目でもついているのか、僅かに首を傾げることでこの奇襲をかわして見せた。カミラの口元に浮かんでいた微笑が、ビクトリアの網膜に焼きついた。
 後頭部からリングに叩きつけられたビクトリアの動きが止まる。カミラはビクトリアの胸を枕にするかのように左肘を置き、頬杖をついて凱を見上げた。
「ワン、ツー、スリー!」

<カンカンカン!>

 凱がスリーカウントを取り、カミラの勝利が決まった。ゆっくりと立ち上がったカミラが、ある色を含んだ視線でビクトリアを見下ろす。
「貴女、中々良かったですわよ」
 カミラの長い指が自らの唇を這う。舌の先端が現れ、人差し指をちろりと舐めた。
 カミラは失神したビクトリアの身体をコーナーポストにまで運んで座らせ、両手首をロープに絡めた。何事が始まるのかと観客が注視する中、ビクトリアの乳房を剥き出しにし、ゆっくりと揉み始める。
「本当に大きいですわね。私ほどではないにせよ」
 魔少女が現役のアメリカ軍人の胸を揉む。その目を疑う光景は、やがてエロティックな興奮を観客にもたらしていく。
 観客の視線が集中するリングの上で、やがてビクトリアの乳首が硬さを備えて立ち上がった。
「ふふっ・・・」
 妖しく淫らな微笑を浮かべたカミラが、ビクトリアの乳首を舐めしゃぶる。赤い舌が蠢くたび、ビクトリアの乳首が更に硬度を増す。
「そろそろ良いかしら」
 カミラが唇を開く。犬歯が覗いた。次の瞬間、カミラはビクトリアの乳首に噛み付いていた。目を閉じたままのビクトリアの眉が寄る。
 強く噛まれた乳首から血が滲む。カミラは乳首に吸い付き、その血を舐め始めた。余りにも異常な光景に、場内は静まり返っていた。しかし、徐々に異様な欲望が場内を満たしていく。
「そこまでにしておきましょう」
 凱の掛けた声に、振り向いたカミラは艶然とした笑みを浮かべていた。
「まだ足りませんが・・・レフェリーたる貴方がそう言うのであれば、やめてあげても宜しいですわよ」
 カミラは自ら唇をなぞり、血化粧を施す。
 唇をビクトリアの血で濡らしたカミラの妖貌に、会場内の視線が吸い寄せられていた。


 二回戦第二試合 カミラ・アーデルハイド・バートリー
  三回戦進出決定


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