【二回戦第四試合】
 (ジョーカー 対 ピュアフォックス)

「これより、二回戦第四試合を行います!」
 黒服の合図と共に、二人の選手がリングへと上がる。
「赤コーナー、『マジシャン・ピエロ』、ジョーカー!」
「ジョーカー」。顔を真っ白に塗り、目と口には黒いペイントを、鼻には黒い付け鼻をしている。服はだぼっとした黒いナイロン地のもので、頭には黒いシルクハットを被り、手には白手袋をはめている。そのふざけた格好とは裏腹に、かなりの実力を秘めた猛者だ。
 一回戦では藤嶋メイを嬲り、ギブアップ勝利を挙げている。
「青コーナー、『天翔ける白狐』、ピュアフォックス!」
「ピュアフォックス」。本名来狐遥。17歳。身長165cm、B88(Eカップ)・W64・H90。長めの前髪を二房に分けて垂らし、残りの髪はおかっぱくらいの長さに切っている。目に強い光を灯し、整った可愛らしい顔に加え、面倒見が良く明るい性格で両性から人気がある。普段は自らが立ち上げたプロレス同好会で活動している。
 一回戦ではグレッグ"ジャンク"カッパーと対戦し、グレッグの特殊な体質に苦戦したものの華麗な勝利を挙げている。今日もいつもの純白のコスチュームでリングに上がっている。
 この試合を裁くのは、いつものレフェリーだった。
 いきなり自分の方に向かってきたレフェリーに対し、ピュアフォックスが指の関節を鳴らす。
「いきなりエロボディチェック? それならこっちにも考えが・・・」
「なんだ、ボディチェックは嫌か? なら、すぐに始めようか」
 レフェリーの信じられない発言に、ピュアフォックスが聞き返す間もなくゴングが鳴らされた。

<カーン!>

(おっかしいなぁ。今までなら、形だけでもボディチェックはしてたのに)
 心の中で首を捻るピュアフォックスに、上体を揺らしながらジョーカーが距離を詰めてくる。
(考えてもしょうがない、試合に集中しなきゃ!)
 頭を切り替え、構えを取る。ピュアフォックスの構えをなんとも思わないのか、ジョーカーは無造作に更に近づいてくる。
「えいやっ!」
 ピュアフォックスのミドルキックはジョーカーの脇腹を綺麗に捉え、コーナーポストにまで吹き飛ばす。倒れ込んだジョーカーは蹴られた箇所を押さえ、リングを転げる。
「?」
 それなのに、ピュアフォックスの顔にはハテナマークが浮かんでいた。
(なんか・・・軽かった)
 綺麗に入った筈なのに、ジャストミートしたときの感触がない。違和感だけが残る。
「どうした、ファイト!」
 レフェリーの促しに押し出されたように、ピュアフォックスが前に出る。
(とりあえず、ボディスラムで間を取って・・・っ!)
 いきなりジョーカーの体が跳ね上がり、右手を一閃する。辛うじてかわしたと思ったピュアフォックスだったが、
「ええっ!?」
 ピュアフォックスのコスチュームが切れ、そこから素肌が覗いていた。
「レフェリー! これ凶器使ってるでしょ!?」
「さぁな。ボディチェックをしてないからわからんよ」
「・・・さっきボディチェックをしなかったの、これが理由だね」
「なんだ、やっぱりボディチェックをして欲しいのか? それならじっくりと・・・」
「もういい!」
 油断はしていなかったが、レフェリーとの口での遣り合いの間にジョーカーが距離を詰めていた。またも右手が一閃する。
「あっ!」
 今度はコスチュームどころか、その下のサポーターまでも切り裂かれていた。切れ目から乳首が覗く。
「可愛い乳首だな」
「うるさいよエロレフェリー!」
 レフェリーの軽口に言い返しながらも、視線はジョーカーから外さない。
「・・・っ」
 ジョーカーを見つめるだけで、ピュアフォックスは前に出ることができなかった。何度もリングに上がった経験が、前に出ることを躊躇させていた。
「どうした、ファイト!」
 動きのない両者に、レフェリーが声を掛ける。その言葉に背を押されたように、ピュアフォックスが前に出る。
「えぇいっ!」
 焦りからか、フェイントもなしでローリングソバットを放っていた。
「えっ!?」
 突然背後から開脚姿で太ももを抱えられ、両手首を捕まえられていた。ジョーカーがローリングソバットに合わせてピュアフォックスの背中側にするりと入り込み、拘束して見せたのだ。覆面美少女の大股開きに会場が沸く。
「これはまた色っぽい格好だな。ボディチェックも進みそうだ」
 ピュアフォックスに歩み寄ったレフェリーが、コスチュームを盛り上げるバストを鷲掴みにする。
「あ、こらレフェリー! 触っちゃ駄目だよ!」
「おいおい、ボディチェックなんだから触らなきゃできないだろ」
 レフェリーはバストを揉むだけでなく、切れ目から覗いた乳首まで弄ってくる。
「さ、さっきはボディチェックをしなくてもいいって・・・」
「いやいや、やっぱりボディチェックは大事だからな」
 あっさりと前言を翻し、レフェリーはピュアフォックスの身体を撫でていく。その手が下腹部を通過し、更に下った。
「あ、そ、そこは!」
「ああ、女独自の隠し場所だ。ここはよく調べておかないと、凶器を隠してるかもしれないからな」
 コスチュームの上からとは言え、秘裂を上下になぞられる。
「だ、駄目だよそんなところ・・・はっ!」
 左右に振られていたピュアフォックスの首が、いきなり後方へと振られる。ピュアフォックスの後頭部は見事にジョーカーの鼻を捉え、拘束を解かせることに成功する。
「もういっちょ!」
 ジョーカーの顔面にエルボーを叩き込み、腕を持ったままフルスイングでロープに振る。あまりのパワーに、ジョーカーも踏ん張ることができずにロープまで飛ばされ、ロープの反動で戻ってくる。
「いくよっ!」
 助走をつけたピュアフォックスが腰を軸に回転する。
 それはピュアフォックス得意のフライングニールキックに見えた。しかし、軌道が普段よりも高い。ピュアフォックスは右太ももと脹脛の裏側でジョーカーの首を捕らえ、加速をつけてキャンパスへと向かう。
「でぃやぁぁぁっ!」
 後頭部からリングに叩きつけられたジョーカーの動きが止まる。
「レフェリー!」
 素早くフォールの体勢となったピュアフォックスが叫ぶ。
「くそっ・・・ワーン・・・ツーゥ・・・」
 レフェリーのカウントが不自然なほどゆっくりと進む。
「・・・スリーッ!」

<カンカンカン!>

 諦めたレフェリーが3つめのカウントを取る。その瞬間、リングにピュアフォックスの勝利を告げるゴングが響き渡った。
 ゴングを聞いたピュアフォックスはコーナーポストへと登り、胸元を押さえ、人差し指を伸ばした右手を高々と掲げる。ピュアフォックスの勝利のポーズに、会場からは惜しみない拍手が送られた。


 二回戦第四試合勝者 ピュアフォックス
  三回戦進出決定


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