【幕間劇 其の六】

「丈の奴め、憤りおって」
 眼下で繰り広げられた闘いに、「御前」は舌打ちしそうな表情となった。
 ジョーカーこと河井丈の実力を、「御前」は高く評価している。人を食ったような闘い振り、凶器を自在に操るスタイル、それに高い身体能力。普段どおりに闘っていれば、例え相手がジルだとはいえ、あそこまで叩きのめされることはなかっただろう。
 僅かに目を細めた「御前」の口が開かれる。
「丈を呼べ」
 今しがた敗北を喫したばかりの男へ、「御前」は冷ややかな声音で伺候を命じた。
 その眼に宿っているのは、憤怒なのか冷酷なのか、常人には判断がつきかねた。


二回戦第六試合へ   目次へ   二回戦第七試合へ

TOPへ
inserted by FC2 system