【幕間劇 其の七】

「『御前』、お届け物ですぜ」
 そう言って超VIPルームに入ってきたのは、右目に眼帯をした裏部隊の副リーダー格である無業だった。入り口をくぐったところで脇に退き、後ろの人間を通す。
「御前」専用の超VIPルームに運ばれてきたのは、ボロボロになった河井丈だった。自分の足で立つこともできず、二人の黒服に肩を借りている。
 丈を冷たく見下ろして「御前」が口を開いた。
「丈」
「御前」の呼び掛けに、丈はやっとのことで顔を上げた。
「そこまでの状態にされたのも、自分の好いた女を守れなかったのも、お前が弱かったせいよ」
「御前」の容赦ない指摘に、丈の身体が強張る。自らの眼前で唇を奪われた久遠の姿が、暗い炎となって胸の内を焼く。
「強くなりたいか?」
「・・・はい」
「好いた女を守れる強さを望むか?」
「・・・はいっ!」
 黒服を振り払うようにして、丈が「御前」の前によろめき出る。
「三日。傷を三日で治せ。四日目から地獄を見せてやる」
「・・・お願いしますッ!」
 血を吐くような叫びを聴き、「御前」は静かに頷きを返した。


 三回戦組み合わせ
  第一試合 八岳琉璃 対 カミラ・アーデルハイド・バートリー
  第二試合 伊柄克彦 対 ピュアフォックス
  第三試合 元橋堅城 対 ジル・ジークムント・ヴァグナー
  第四試合 阿多森愚螺 対 於鶴涼子


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