【前 本編第九十一話】
(これも弱き者を守るためなのです。神よ、お許しください)
もう何度目になるだろうか。栗栖(くりす)美葉音(みはね)は神への謝罪を重ねていた。
美葉音は修道女として教会の運営を助けている。養父(実の祖父であることが後にわかった)のヨハネ栗栖と、教会に併設されている孤児院の運営も切り盛りしているが、収入は少なく、常に財政は火の車だ。
頭を悩ます美葉音に接触してきたのが、裏の催し物である<地下闘艶場>だった。そこで闘えば孤児院に援助があるという条件に美葉音は参戦したものの、そこで待っていたのは女性を辱めることを目的としたリングだった。
リングで美葉音は恥ずかしい恰好を取らされ、胸を揉まれ、秘部まで弄られ、敗北を喫した。それでも(当初の額よりも減らされたものの)援助は受けられ、取り敢えずは一息つけた。
しかし、運営状況がすぐに好転するわけもなく、またも孤児院の財政は破綻しようとしていた。まるで見計らったかのように再び<地下闘艶場>から参戦要請がかかり、美葉音は今<地下闘艶場>の控室に居る。
(なぜ、毎回このような衣装を・・・)
前回は試合用の衣装として、修道服が用意された。しかしスカート部分は膝上まで詰められており、実際試合中は何度も下着を観客に見られてしまった。
今回はロングスカートではあるものの、かなり深いスリットが入れられ、しかも上着は袖がない。普段は衣服に隠された美葉音の白い肌が照明に輝くが、美葉音にとっては羞恥でしかない。肌を見せねばならないことに神への謝罪を続けるが、神からの許しの言葉は降りてこない。
(ああ・・・)
そっと豊かな胸元を押さえると、心臓が早鐘のように鳴っているのがわかる。
(闘いたくはありません・・・でも、皆のためには・・・)
養父や孤児たちの顔が脳裏に浮かぶ。例え淫らな責めを受けようとも、皆に温かい食事を届けるためにはここで闘わねばならないのだ。
(もし地獄に落ちるとしても、それは私だけのこと。皆が笑顔になってくれるなら、それで充分なのですから)
跪き、改めて神への祈りを捧げる美葉音の姿は、神々しくも美しかった。例え、これから汚されることがわかっていたとしても。