【外伝 於鶴涼子 其の三】 〜ある一日〜

 五時半 :起床。道場で三十分程、父親との稽古で汗を流す。
 六時  :冷水で汗を流し、朝食と弁当の準備。
 六時半 :朝食。朝食後洗い片付けと洗濯を行う。
 七時半 :出勤。
 八時  :「奏星社」に到着。制服に着替えて朝礼。
 八時半 :受付で業務開始。
 十時半 :他社の営業員のセクハラトークを、にこやかな笑顔と言葉の刃で撃退。
 十二時 :昼休み。お尻へと伸びる総務部長の手を軽やかにかわし、休憩室へ移動。昼食を取る。
 十三時 :業務再開。
 十五時 :他社の御曹司からの求愛を、にこやかな笑顔とにべもない言葉で切り捨てる。
 十七時 :業務終了。
 十七時半:男性社員の誘いをにこやかな笑顔で断り帰宅。
 十八時 :帰宅途中のスーパーで買い物。店を出たところで、チーマー風の男達から怯えた表情での挨拶を受ける。
 十九時 :帰宅。夕食の下拵えをした後道場へ。一時間程道場生に稽古をつける。
 二十時 :夕食の準備。
 二十時半:父親と夕食。
 二十一時:入浴。
 二十二時:就寝。

 ・・・床についても、中々寝付けなかった。寝巻き姿のまま、何度か寝返りをうつ。
(眠れない・・・どうしよう・・・)
「んっ・・・」
 気づけば、右手が寝巻きの上から胸を擦っていた。
(あ・・・また・・・)
 <地下闘艶場>に参戦してから、今日のように我慢できなくなる日が月に何度かあった。それまでは稽古で汗を流せば発散できたものが、最近では表面的には収まるものの、残り火のように涼子の芯に残ることがある。
(こんな淫らなこと・・・)
 心では抑えようとしても、身体が勝手に動き出す。右手は寝巻きの中に進入し、乳房を直接弄る。寝るときにはブラを外しているため、刺激がそのまま伝わってしまう。
(だ、駄目なのに・・・手が・・・!)
 涼子の意思に反し、右手は乳房を揉み、乳首を撫でる。
「ふぅっ」
 思わず声が洩れた。隣室の父親に声が届かないように、シーツを噛んで堪える。
 そんな涼子を追い込むように、左手は秘部へと伸び、秘裂を撫でていた。
(こんな、こんな恥ずかしいこと、してはいけないのに!)
 浅ましいとは思いつつも、指が止まらない。まるで涼子の支配から切り離されたように、涼子の指は涼子の弱点を探り、的確に責めてくる。
 その刺激に、記憶中枢が刺激される。
(<地下闘艶場>で、元橋様にも・・・)
 元橋の手の感触を思い出し、思わず声が洩れる。
(駄目、父さんに聞こえちゃう!)
「ん、んんんっ・・・!」
 歯を食いしばり、必死に嬌声を噛み殺す。それでも、手の動きは止まらなかった。それどころか、水音をさせながらより一層激しさを増していく。
(元橋様は、ここを優しく触ってくれた・・・ああっ! ここも、触って・・・・!)
 絶頂は、突然訪れた。
「はぐぅ、んんん・・・っ!」
 全身が強張り、次いで弛緩する。
 達した瞬間には、決まって元橋の顔が浮かんだ。
(元橋様・・・)
 心の中で呼びかけ、涼子は眠りへと落ちていった。


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