【第百二話 桐志摩こなみ:捕縛術】


 犠牲者の名は「桐志摩(きりしま)こなみ」。19歳。身長149cm、B81(Dカップ)・W49・H86。くせっ毛をショートカットにしているため、あちこちにはねができているが、それを丹念なブローで可愛い特徴に変えている。目は大きく、あひる口。顔のパーツそれ自体は中の上くらいだが、配置が完璧に近く、男性の視線を奪ってしまう。

 栗栖(くりす)美葉音(みはね)が居る孤児院出身で、歳の近い美葉音と仲が良かった。高校卒業と共に孤児院も卒業し、現在はフラワーショップに勤めている。昼日中に店内で暴れだした酔っ払いを、見事に怪我一つなく取り押さえたこともある。

 そのこなみに、怪しげな招待状が届いた。そこには、こなみがあるイベントに出演すれば、彼女が愛する孤児院に援助が行われるという。こなみが居た頃もそうだったが、孤児院は現在更に厳しい運営を強いられているという。

 孤児院の経営危機に力となれるなら。こなみの想いにつけこみ、<地下闘艶場>は淫らな罠を用意した。


▼△▼△▼△▼△▼△▼



(何、ここの雰囲気・・・)

 花道を進むこなみに、観客たちは卑猥な単語を含んだ声援を飛ばしてくる。耳を塞ぎたくなるような言葉の数々に、こなみは急ぎ足でリングへと向かった。

「え、まさか・・・」

 リングに先に待っていた対戦相手は、なんと男性選手だった。漠然と女性相手だと考えていたこなみは、驚きを隠せないままリングへと上がった。


「赤コーナー、『ブリザード』、コンテ・大倉!」

 こなみの対戦相手は、コンテ・大倉だった。リングタイツ姿の鍛えられた体型に、こなみの体が小さく震える。

「青コーナー、『フラワーガール』、桐志摩こなみ!」

 自分の名前がコールされたので、こなみは教えられたとおりにガウンを脱ぐ。こなみが着ていたのは、妖精を思わせる淡緑色のチュニックだった。ただし肩だけでなく胸元まで剥き出しで、太ももも露わ。かなり露出度が高い代物だった。

 自分に向けられる欲望の眼差しと卑猥な野次に、こなみの頬は紅潮していた。


 ストライプの半袖シャツに蝶ネクタイ姿のレフェリーが、こなみに向かって歩いてくる。

「それじゃ桐志摩選手、ボディチェックを受けて貰おうか」

「そんな、聞いてない!」

「ボディチェックを受けないと試合が始められないぞ。このまま帰るってことか?」

 レフェリーがわざとらしく小首を傾げる。

「それならファイトマネーはなし、孤児院への寄付もなくなるぞ」

「そんな・・・」

 男性に触られることに対する忌避感と、ファイトマネーへの期待が交錯する。しかし、こなみに選べる答えは一つだけだった。

「どうする?」

「・・・わかりました」

「何がわかったんだ?」

「ボディチェックを受けなきゃ駄目なんですよね、なら受けます」

「最初からそう言えばいいんだよ」

 そう言うが早いか、レフェリーがバストを鷲掴みにしてくる。

「っ!」

 思わず張り飛ばそうとした手をなんとか抑え、ぐっと唇を噛む。

(やっぱり、こういうことをするつもりだったんだ)

 屈辱が身を焼くが、孤児院への援助のためだと必死に耐える。

「結構ボリュームがあるな」

 失礼なことを言いながらも、レフェリーの手は止まろうとしない。こなみのバストを撫で、揉み、弾ませてくる。

(しつこい・・・いつまで続ける気なの?)

 レフェリーは好き勝手にこなみのバストを弄り、やめようとはしない。

「これくらいか」

 ようやくレフェリーがバストから手を放す。ほっとしかけたこなみだったが、背後に回ったレフェリーが、今度は胸元から直接手を入れてくる。

「んなっ・・・!」

「なんだ、文句でもあるのか?」

 ブラの上からバストを捏ね回しながら、レフェリーがわざとらしく聞いてくる。

「さっき、あれだけ触っておいて・・・」

「やっぱり服の上からじゃわかりにくくてな。それとも、一度服を脱いでくれるか?」

「そんなことできません!」

「なら、触って確かめるしかないなぁ」

 レフェリーは右手でバストを揉みながら、左手をヒップに這わす。

「ひっ!?」

「身長の割りにデカい尻をしてるな」

 レフェリーはバストとヒップの感触を同時に味わい、一人にやける。こなみには耐えがたい時間だけが過ぎていった。


「よし、何も隠してないようだな」

 ようやくボディチェックと言う名のセクハラを終え、レフェリーが離れる。不快感に身を震わせるこなみを残して大倉に歩み寄ったレフェリーは、大倉には簡単にボディチェックを終え、ゴングを要請した。


<カーン!>


(相手の人はあっさり終わらせて)

 自分と大倉とのボディチェックの違いに、こなみは軽く怒りを覚える。しかし、それも束の間だった。

「今回は随分可愛らしいお姉ちゃんが相手だな」

 大倉が距離を詰めてきたことで、体格の違いを思い知らされる。身長は頭一つ分以上、体重に至っては倍も違うのではないか。知らず一歩下がったこなみに、大倉が一歩近づく。間合いが詰まったことで更にこなみが下がり、大倉は前に出てくる。

「・・・あっ」

 気づけばコーナーを背に負っていた。

「どうした、もう後がないぞ?」

 初めて感じる男への恐怖感。それがこなみを冷静にさせなかった。

「えいっ!」

 体格差があるというのに、大倉へ体当たりを掛けたのだ。

「ほう、積極的だな」

 容易くこなみを抱きとめた大倉は、軽々と頭上へと担ぎ上げた。

「えっ、あっ、きゃああっ!」

 突然視界が高くなり、こなみは小さく悲鳴を上げる。しかしその悲鳴も、リングに叩きつけられたことによって苦鳴に変わる。

「あっ・・・がはっ・・・」

「おっと、強すぎたか?」

 大倉にしてみれば充分加減したつもりだったが、小柄な体躯のこなみには強烈な衝撃だった。

「まあいい、このままお楽しみの時間にするだけだ」

 こなみに圧し掛かり、大倉が唇を歪める。

「ではまず、邪魔な服を脱いでもらおうか」

 大倉が襟元に手を掛けたと思った次の瞬間には、チュニックが音高く破かれていた。

「きゃああっ!」

 一気に臍辺りまで破られたため、花柄模様の入ったブラが露わになる。

「耳が痛いな」

 こなみの悲鳴に顔を顰めた大倉だったが、動きを止めるようなことはしない。

「どれ、次は」

 大倉は引き裂いたチュニックをこなみの肘に絡め、腕の動きを縛る。

「さて・・・」

 一度唇を舐めた大倉は、こなみのバストを揉み始める。

「体格の割に発育が良いな」

「やっ、やめて!」

 徐々に投げの衝撃から回復してきたこなみが身を捩る。しかし大柄な大倉に押さえ込まれ、肘で縛められていては抵抗も弱い。

「下着の上からじゃまどろっこしいな」

 大倉が花柄のブラを掴む。

「まさか・・・」

「それじゃ、生おっぱいを見せてもらおうか」

 とうとうブラがずらされ、形の良い乳房が弾みながら解放される。

「へへ、やっぱり生のおっぱいはいいな」

 唇を舐めた大倉が、こなみの乳房をむんずと掴む。

「やめてぇ、触らないで!」

 嫌悪感が頭を仰け反らせる。しかし、それは大倉へと胸を差し出すような格好となってしまった。

「おっぱいを差し出してくるなんて、随分と積極的だな」

 にやり、と笑った大倉が、こなみの左乳房へと舌を這わせる。

「ひあっ!?」

 ざらつき、唾液で粘ついた感触に身を竦める。

「敏感だな」

 薄く笑った大倉は、更に唾液で乳房を汚していく。

「やめて、気持ち悪い!」

 こなみの科白など無視して左乳房を舐め回していた大倉の舌が、乳首に狙いを定める。

「どれ、ここはどうだ?」

「ひうう!」

 嫌悪感に肌が粟立つ。逃れようともがいても、体格の違う大倉に圧し掛かられてはそれも叶わない。乳房だけでなく乳首までもが大倉の唾液に塗れ、ぬらぬらと輝く。

(あっ!)

 執拗に舐められた乳首が、こなみの意思とは裏腹に硬く立ち上がってしまう。

「そら、こんなになったぞ」

 乳首を指で弾いた大倉が、再び舐め責めを開始する。立ち上がった乳首を唇で挟み、先端を集中的に舐めしゃぶる。

「くぅん・・・」

「どうした、声が出るのか? 我慢する必要なんてないぜ」

 一度舌を離した大倉は、両方の乳房を揉み始める。

「やめてよ、気持ち悪い」

「こっちは気持ち良いからな、やめるなんてできないよ」

 鼻で笑った大倉は、右手だけこなみの乳房から放した。左手で乳房を掴み、乳首を舌で転がす。

(いつまでこんなことされるの? でも、ここでがんばらないと、皆が・・・ええっ!?)

 セクハラを耐える決心をした途端だった。大倉が下着の上からとは言え、秘部を弄り始めたのだ。

(もう、これ以上は・・・)

 淫らな責めを受け続けることが、想像以上にこなみを追い込んでいた。

「ギブアッ・・・」

 勝利を諦めようとした瞬間、それまで静観していたレフェリーが声を掛けてくる。

「孤児院のために頑張るんだろう? ここで諦めるのか?」

 レフェリーの嘲り混じりの呼びかけに、敗北を受け入れようとしたこなみの唇が固く閉じられる。

(そうだ・・・皆のために、みはねぇのために、神父さんのために頑張らないと!)

 まだ逆転は可能な筈だ。そう信じ、淫らな責めを耐える。

「まだ負けは認めないか? こちらはまだまだ楽しめるからいいけどな」

 一々こなみを言葉でも嬲りながら、大倉は左乳房を揉み、左乳首を舐め、秘部を弄る。こなみはセクハラを受けながらも脱出を試みる。そのときだった。

(解けた!)

 諦めずにもがいたことで、肘で動きを止めていたチュニックの残骸が破れたのだ。

「このっ!」

 振った掌が、偶然大倉の耳を捉えた。

「うがっ!」

 鼓膜まで響いた衝撃に、大倉は思わず腰を浮かしていた。

(今だ!)

 回転して逃れようとしたこなみの細い胴に、大倉の太い腕が巻きつく。

「あぐっ、うぅうっ!」

 内臓まで潰されそうな圧迫に、こなみは息をするのも難しかった。

「どうしたお嬢ちゃん、さっきみたいに暴れないのか?」

 ぐいぐいと絞め上げながら、大倉がうっそりと呟く。

「油断したとは言え、かなり痛かったぜ。こんな風にな!」

 耳を撫でた大倉が、片手でバックドロップを放つ。

「はぎゃうっ!」

 後頭部をリングに叩きつけられ、こなみの口から苦鳴が落ちる。

「あ、ぐ、うぅう・・・」

「加減したつもりだったが・・・体重が軽くて勢いがついたか?」

 軽く頭を掻いた大倉だったが、反省した様子ではない。そのまま再びこなみに圧し掛かろうとする。

「ちょっと待った」

 しかし、何故かレフェリーがストップを掛ける。

「そろそろ俺も参加していいか?」

「・・・わかったよ、いいぜ」

 レフェリーの問いに、不承不承だが大倉が頷く。

「それじゃ、俺はおっぱいを」

 レフェリーは大倉の唾液に塗れた乳房を掴み、揉み回していく。

「乳首がもうここまで硬くなってるじゃないか。厭らしいなぁ桐志摩選手」

 人差し指で乳首を連続で弾き、レフェリーが言葉でもこなみを責める。

「それじゃ、俺はこっちを」

 大倉の指が、パンティの中にまで潜り込む。

「きゃあああっ!」

 誰にも触れられたことのない秘裂を直接弄られ、今日一番の悲鳴をこなみが上げる。

「ここまで喜んでくれるとはな」

 こなみが発したのが嫌悪だとわかっていながら、大倉はわざとこなみを貶める。

「ここはどうだい?」

 秘裂だけでなく淫核も弄りながら、大倉はこなみに確認してくる。

「おっぱいはどうだ? ええ?」

 レフェリーは乳房を揉みしだき、乳首を転がす。

(こんなの嫌! 気持ち悪い! でも・・・負けられない・・)

 男たちに責められながらも、こなみは必死に耐えていた。しかし、それにも限界があった。

「どれ、直に拝ませてもらおうか」

 唇を歪めた大倉がパンティから手を抜き、最後に残された一枚に手を掛ける。

(そんな・・・)

 セクハラに耐性のないこなみには、もう限界だった。

(ごめん、皆、神父さん、みはねぇ・・・)

「・・・ギブアップ、です」


<カンカンカン!>


 こなみのギブアップ宣言に、ゴングが鳴らされる。

「なんだ、もう負けを認めたのか」

 レフェリーの嘲笑に、こなみは涙を浮かべたまま唇を噛み締める。

「あとちょっとでオールヌードだったのになぁ」

 パンティから手を放した大倉だったが、特に残念そうには見えない。

「ファイトマネーが欲しければ、何度でも挑戦可能だからな」

「再戦してやってもいいぜ」

 レフェリーも大倉も口々に言いながら、最後とばかりにこなみの乳房を揉み、ようやく離れていく。

(神父さん・・・みはねぇ・・・私・・・)

 皆の役に立ちたかった。闘いの場で辱めを受けてしまった。自ら敗北を認めてしまった。

 様々な感情がこなみの胸を渦巻き、涙となって頬を伝った。



第百一話へ   目次へ   第百三話へ

TOPへ
inserted by FC2 system