【第百四話 八岳琉璃:総合格闘技 其の五】

 犠牲者の名は「八岳(やたけ)琉璃(るり)」。17歳。身長162cm、B89(Fカップ)・W59・H84。世に名高い八岳グループ総帥を祖父に持つ生粋のお嬢様。生まれつき色素が薄い髪を長く伸ばし、女神が嫉妬しそうな美貌を誇る。白く滑らかな肌は名工の手になる陶磁器を思わせる。美しい大輪の薔薇を想起させる外見と高い気位を持ち、それに見合うだけの才能を持つ。勉学、運動、芸事など各分野に置いて一流の実力を身に付け、「この子が男だったなら」と祖父を嘆かせた。

 自らの有り余る才能を発揮する場として、琉璃は<地下闘艶場>への参戦を拒むことはなかった。そしてまた、琉璃へと参戦依頼が届いた。琉璃は躊躇うことなく承諾し、格闘技のトレーニングを増やすことにした。


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 琉璃が<地下闘艶場>の花道に姿を現した途端、形容し難い咆哮が上がる。その光り輝く美貌に魅せられた者、琉璃の闘い振りに魅了された者、琉璃が汚される瞬間を見たい者・・・様々な感情が渦となり、琉璃を巻き込もうとする。

 しかし、純白のイブニングドレスで進む琉璃は焦り、不安、緊張と言った負の感情を露とも感じさせず、それどころか観客からの視線、欲望、羨望、憧憬、野次などすべてに動じていなかった。

 リングに辿り着いた琉璃は、キャンパスへと続く階段を素早く滑らかに昇り、トップロープを飛び越え、優雅に降り立った。その動作に、またも観客席が沸いた。


「赤コーナー、『マッドハンド』、大瓦来互!」

 琉璃の対戦相手は、二度目の登場となる大瓦(おおがわら)来互(らいご)だった。前回と同じく頭を角刈りにし、右サイドにだけ星模様を入れている。盛り上がった肩から上腕、下腕までを覆う筋肉も凄まじい。太い両手の指も太く、長い。

「青コーナー、『クイーン・ラピスラズリ』、八岳琉璃!」

 しかし、琉璃は大瓦の体躯に怯えた様子など微塵も見せず、いつものように両腕を広げ、観客からの声援、野次、指笛、視線など、すべてを受け止めて見せる。その圧倒的な存在感は、<地下闘艶場>の女王とも呼びたくなるほどの気品に溢れていた。

 立ち姿すら美しい琉璃を見て、大瓦は内心驚きを隠せなかった。

(これが噂の八岳琉璃お嬢さんか。この前のお嬢さんも良かったが・・・)

 前回闘った黒芽(くろめ)雪緒(ゆきお)もいいとこのお嬢様だったが、八岳琉璃は数段上の令嬢だ。上には上が居るとは良く言うが、琉璃こそが頂点ではないか。

 飽きずに琉璃を眺める大瓦の視界にレフェリーが入り込んでくる。

「琉璃お嬢さん、今日こそはボディチェックを・・・」

「ボディチェックは受けない、と毎回申し上げています。いいかげんに学習してもらえませんか?」

「それなら、今回もペナルティを・・・」

 何かを続けようとしたレフェリーの眼前を、凄まじい速度でよぎったものがあった。

「何か仰いましたか?」

 にこりと微笑む琉璃の顔の前に、オープンフィンガーグローブに包まれた右拳があった。

「・・・な、なにもないです」

 固唾を飲んだレフェリーは、冷や汗にも気づかないままゴングを要請した。


<カーン!>


「だらしねぇレフェリーだな」

 レフェリーを睨んだ大瓦が、琉璃に視線を戻す。

「ぐぶっ!?」

 いきなり鼻で灼熱感と衝撃が散った。それも二度同じ場所で。

「ちぃっ!」

 巨大な掌を振るが、凄まじい速度でワンツーを放った琉璃はもうそこには居ない。

(くそっ、聞いてた以上だぜ)

 違和感に鼻の下を拭うと、鼻血が垂れていたことに気づく。

(骨が折れてなきゃいいが)

 今は闘いの興奮でそこまで痛みを感じないが、試合が終われば少なくない痛みが戻るだろう。鼻血のせいで鼻呼吸が難しく、口での呼吸を余儀なくされる。

 荒い息で琉璃に接近し、両掌を振り回す。しかし琉璃のスピードはまるで次元が違う。攻撃は服にすら掠らず、逆に連打を食らう始末だ。

(だが、一発だ・・・一発入れることさえできりゃ、こっちの勝ちだ!)

 自分の破壊力には自信がある。琉璃の攻撃はきついが、意識が断ち切られてはいない。如何に琉璃とは言え女には違いない。耐久力は常人程度しかない筈だ。

 とにかく攻撃を当てようとしたため大振りになっていた。横殴りの一撃が空を切ったとき、いきなり首に弾力があるものが巻きついた。同時に膝裏を蹴られ、膝立ちにさせられる。

「むっ・・・ぐおぉ・・・」

 大瓦の背後を取った琉璃が、スリーパーホールドを極めていたのだ。頸動脈に琉璃の鍛えられ、絞り込まれた腕が食い込む。完璧に極まっているため、琉璃の腕と自分の首の間に手が入らない。なんとかしなければ、数秒でブラックアウトする。前の試合のように。

「ぐぅ・・・おおおっ!」

 前回も雪緒に絞め落とされた屈辱が蘇る。無茶苦茶に両手を振り回し、何とか逃れようともがく。

「っ!」

 そのとき、琉璃の衣装に指がかかった。大瓦にはそれだけで充分だった。

「むがぁぁぁっ!」

 最後の酸素を一気に吐き出しながら、衣装ごと琉璃の体を引き剥がす。引き剥がすと同時に掌底をぶん回す。

「ぐぶぅっ!」

 その掌底が、琉璃の腹部を抉っていた。その威力に琉璃の身体が浮き上がり、リングに崩れ落ちる。

「・・・そらぁぁっ!」

 一呼吸入れた大瓦が、更に背中へと掌底を叩きつける。

「はがぁっ!」

 肺の空気をすべて絞り出された琉璃が痙攣する。

「散々やってくれたな、ええ?」

 荒い息を吐きながら、大瓦は琉璃のドレスの襟を掴んだ。そのまま左右へと引き裂く。衝動のままに大瓦が手を動かすたび、琉璃の肢体が露わとなっていく。そして、琉璃は純白の下着姿とされていた。

「・・・今意識を戻されたらまずいな」

 琉璃の実力は文字通り身を以て味わった。嬲っている途中に目覚められたら、あっさりと状況を覆されかねない。

 大瓦は琉璃を抱え、ロープへと近づく。そのまま、四肢をロープへと絡め始めた。

「・・・よし」

 ロープへと磔にした琉璃をじっくりと眺める。

「八岳お嬢さんを初めて負かした男、か。なかなかいい称号じゃないか」

 そして今から、称号を得た者への褒賞の時間だ。

 大瓦は震える手を伸ばし、下着の上から琉璃の良く育った胸を触る。高級下着の感触と、高級下着以上の触り心地を誇る胸。大瓦の手は段々と大胆に動き出し、撫で回しから揉み込みへと変わっていた。

 しかし、それだけでは物足りなさを感じてしまう。

「・・・よし。琉璃お嬢さんのおっぱい、直に見せてもらおうか」

 涎を拭った大瓦は、琉璃のブラを掴んだ。一息で左右に広げると、高級ブラがカップの繋ぎから引き千切れ、Fカップの乳房が零れた。

 ついに、琉璃の乳房が<地下闘艶場>で初めて晒された。乳首の色素も髪同様に薄く、誰の手にも触れられていないのではないかと想像される。

 大瓦は、琉璃の乳房を茫然と見つめていた。自分が今まで見てきた商売女のものとはまるで違う。比較対象にもできない。

 徐々に欲望が沸き上がる。息を荒げた大瓦は、手加減なしに鷲掴むと、琉璃の芸術品の乳房を揉みくちゃにする。

「ああああっ!」

 大瓦の容赦ない揉みしだきに、琉璃が苦鳴を上げる。

「へへへ・・・」

 琉璃の苦鳴に昂らされた大瓦は、両手で乳房を握って固定し、左乳首へと吸いついた。思い切り吸い上げながら、舌で舐めしゃぶる。

 左乳首を唾液塗れにした大瓦は右乳首へと移行し、左乳首同様に吸い、舐める。

 乳首だけでなく乳房も唾液で汚した大瓦は、欲望の視線を下へと向ける。

「最後の一枚だ・・・」

 純白の高級下着。この一枚がサラリーマンの月収とほぼ同じという代物だ。しかし大瓦がそんな事実を知る筈もなく、一気に破り取る。その瞬間、観客席から悲鳴のような怒号が巻き起こった。

 楚々とした叢だけでなく、ぴったりと閉じた秘裂すらも男たちの目に晒される。

(美しい・・・)

 それが正直な感想だった。琉璃は容貌だけでなく、秘所すら美しかった。

 だが、高貴な美しさは、それを破壊したくなる衝動を人に起こさせる。大瓦は溢れる唾液をそのままに、琉璃の秘所へと吸いついた。

(ああ、うめぇ・・・琉璃お嬢さんの匂いが口からも鼻からも入ってきて堪らねぇ!)

 琉璃の身体は何の反応も返さないが、そんなことはどうでも良かった。ただひたすら閉ざされた秘裂を舐め回す。

 やがて、イチモツが痛いくらいに硬くなる。目の前にある琉璃の秘所と、自分のイチモツの反応が結びつく。

(このまま粛清されてもいい、琉璃お嬢さんの初めての男になれるんだったらな)

 自らの衣装を引き裂き、既に硬く立ち上がったイチモツを琉璃の秘裂に当てる。

(琉璃お嬢さんの中、どんだけ気持ち良いんだろうな)

 溢れる涎を拭うこともせず、突き入れようとした瞬間だった。


<カンカンカン!>


(おいおい、今からいいところじゃないか)

 突如鳴らされたゴングに腹を立て、無視して琉璃を汚そうとする。しかし両手が動かない。

「・・・?」

 否、両手だけではない、足も、身体も、舌すら動かない。心だけが焦るが、脳の信号が体に伝達されず、指一本動かせない。

「おい、担架急げ!」

 どこか遠くでレフェリーの声がする。

(琉璃お嬢さんが病院に行くのか? そこまで酷い責めはしなかったつもりだがなぁ)

 大瓦は気づいていなかった。自分が琉璃に絞め落とされ、短い間に幸福な淫夢を見ていたことを。既にリングに琉璃が居ないことも知らず、担架で運ばれる大瓦へと容赦ないブーイングが投げつけられていた。



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