【第十三話 沢宮琴音:ボクシング】

 犠牲者の名は「沢宮琴音」。26歳。身長163cm、B86(Dカップ)・W61・H88。肩まで伸びた美しい黒髪。母性を感じさせる下がり気味の目尻で、右目下に色っぽい泣きぼくろがある。普段は和太鼓の奏者で、オフのときはボクシングジムで体を鍛えて公演に備えている。
 去年中堅の音楽会社社長と結婚。しかし近年の音楽業界の冷え込みで夫の会社は倒産寸前となった。<地下闘艶場>の顧客だった夫は琴音を「御前」に売り込むことで援助を求め、琴音の資料を見た「御前」は<地下闘艶場>の生け贄にすることを決めた。


 琴音に用意された衣装はチャイナドレスだった。
(見たことはあったけど、こういうものだったかしら?)
 顎に人差し指を当てて考える。胸の谷間が見えるほどの穴が前面に空けられ、後ろは背中が全て見えそうなほどの大きな穴が空けられている。スリットは腰の上まで入っており、下着のサイド部分が見えそうだ。
『頼む、会社のために一肌脱いでくれ!』
 夫の懇願に試合を承諾したものの、こんな卑猥な衣装を着させられるとは思っていなかった。軽いため息を一つついた後、チャイナドレスに着替えて入場の合図を待った。

 琴音がリングに上がると、異様な興奮が会場を包んだ。
 初めて人妻が<地下闘艶場>のリングに上がった。オープンフィンガーグローブとハイヒールを履き、その衣装は布地の少ないチャイナドレス。胸と背中に大きな穴が開けられ、胸の谷間とブラジャーの紐が覗く。腰高のスリットからはパンティのサイド部分が見え隠れしている。琴音の放つ大人の魅力と色香が会場の興奮を誘っていた。
(え、今日の相手って・・・男性?)
 レフェリーらしき男性とオープンフィンガーグローブを着けた男性がリング上にいる。体中の筋肉が盛り上がっているが、首の筋肉が特に太い。少々のパンチでは効きそうにない。
「赤コーナー、蒲生漣次!」
 蒲生がコールに応えて両手を上げた後、体中を叩いて気合を入れる。
「青コーナー、『美しき人妻』、沢宮琴音!」
 琴音はコールへの応え方が分からず、軽く頭を下げることで済ます。そこに観客から卑猥な冗談が投げつけられ、琴音の羞恥を誘った。

 レフェリーは蒲生のレフェリーチェックを済ませ、琴音の前に立った。
「若奥様は初めてですよ。心を込めてボディチェックをさせていただきます」
 妙に丁寧な口調で語りかけるレフェリーだったが、その顔はにやけ、琴音の全身を嘗め回すように視姦する。いきなりバストを掴み、円を描くように揉み始める。
「毎晩旦那から揉まれてるんだろ? どんな風に揉まれてるんだ?」
 先程の丁寧な口調は消え、下品な地が出た口調で厭らしく聞いてくる。
「・・・貴方よりは上手いわよ」
 この琴音のセリフにレフェリーの顔が強張る。
「ああそうかい。まあ好きにさせて貰うさ」
 レフェリーは前の穴から両手を入れ、穴を広げるようにして突っ込み、下着越しに乱暴にバストを揉む。レフェリーの欲望に満ちたボディチェックを、琴音は唇を噛んで耐える。契約書にはレフェリーに逆らわないこと、レフェリーに手を上げないこと、ボディチェックを拒んではならないことなどが書かれていた。夫のためだと自分に言い聞かせ、バストへの責めを耐える。
「さて、次は下のチェックだ。自分でスカートをめくれ」
「ええっ」
 驚いた琴音だったが、躊躇も僅かな間で、顔を背けながらスカートの裾を掴んで上に上げる。パンティの色は赤だった。
「さすが人妻、中々派手な色の下着ですなぁ」
 レフェリーがにやつきながらパンティをつつく。そのまま手を滑らせ、パンティ越しに秘部を擦る。
(耐えなきゃ、これくらい耐えなきゃ・・・!)
 スカートの裾を握り締め、ただ耐える琴音。レフェリーの指が遠慮もなく下着越しに秘裂を押さえてくる。逃げ出しそうになる体を叱咤し、そのままの姿勢を崩さない。
 レフェリーは琴音の肢体を散々楽しんだ後、ゴングを要請した。

<カーン!>

(あなた、帰ったら覚えてなさい!)
 夫への怒りで頬が紅潮するのが分かる。その感情のままに拳を握りこむ。オープンフィンガーグローブを初めて着けたが、ボクシンググローブのような安心感がない。
(それでも行くしかないわ)
 覚悟を決め、ステップを踏みながら蒲生に近づく。
(練習通りにすればいいんだから・・・最初はワンツーから!)
 琴音のワンツーを、蒲生は顔面で受けて見せた。にやりと笑い、もっと打って来いと挑発する。
(まったく効いてないみたい・・・どうしよう・・・)
 履き慣れないハイヒールとエロティックな衣装、ボディチェックとは名ばかりのセクハラ、欲望剥き出しで琴音を見つめる観客。それらの諸条件が琴音の動きの切れを奪い、パンチの威力が出ない。ダメージがいかないことで気後れが生じ、蒲生が前に出る分だけ後ろに下がってしまう。
 蒲生は一気に間合いを詰めて琴音を抱きしめ、抱き心地を楽しんでから反り投げで後方に投げる。投げ技は素人の琴音に受身など取れるはずもなく、まともにリングに叩きつけられる。プロレスのリングとは言っても受身を取れないと衝撃はそれなりにある。痛みで動けない琴音に蒲生が跨り、バストを下から揉みながら剥き出しになった部分に舌を這わす。
「人妻ってだけで興奮するぜ。しかもこんな綺麗な新妻なら尚更だ!」
「や、やめて!」
 蒲生の両手首を思い切り握る。大太鼓を叩くことで鍛えた握力で蒲生の手首を握り締めると、蒲生は痛みに顔を歪め、バストから手を放した。琴音は蒲生の手を振り払い、転がって距離を取る。
(まさかあの人、ここがそういう場所だと知ってて私を出場させたの?)
 夫への不信感が頭を過ぎる。
(ううん、今は試合中。集中しなくちゃ)
 気持ちを切り替え、ファイティングポーズを取る。ステップからワンツーを当てるも、やはりハイヒールのせいで力が乗らない。蒲生に捕まえられそうになり、慌てて距離を取る。
(普段はスニーカーだからハイヒールだと動きにくいわ・・・脱いでもいいわよね)
 ハイヒールを手早く脱ぐと、そこへ蒲生がタックルに来た。つい和太鼓を叩く癖で、手に持ったハイヒールで蒲生を打つ。当たったのがヒール部分だったため、蒲生の額から出血が起こる。
「なんてことを、凶器を使うのは反則だ!」
 驚きの声を上げたレフェリーが、琴音を後ろから羽交い絞めにする。
「ち、違うんです、つい癖で・・・」
 弁解する琴音に、額から血を流しながら蒲生が近づく。口元まで垂れた血を指で掬い、琴音の唇に紅を引くように塗る。赤く染まった唇が男の劣情をそそる。
「奥さん、額が割れちまったよ。やり過ぎだよな」
 琴音の手からハイヒールを奪い、リング下に投げる。
「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ・・・」
「謝って済まそうってのは甘いんじゃないか? ああ?」
 バストを掬うように揉む蒲生は、そのまま自分の血の付いた唇を奪った。
「ん、んんっ!」
 首を振って拒もうとした琴音だが、顎を掴まれて強引に口付けを受ける。その光景に興奮したのか、レフェリーはスリットから手を差し込んで秘部を弄る。
(あなた、ごめんなさい!)
 唇を奪われた罪悪感が夫への謝罪となる。それだけでは済まず、体は二人の男に玩ばれている。
(あ、右手が、動く!)
 レフェリーが秘部を弄るために右手を解放している。右手を握りこみ、フックで蒲生のボディを打つ。素足でリングを掴んで打ったため、先程までのパンチとは体重の乗り方が違う。
「ぐっ!」
 ボディを押さえ、蒲生が距離を取る。その間に琴音はレフェリーを振り払うと、ダッキングしながら蒲生との距離を詰め、ワンツーからアッパーを放つ。その一撃で蒲生の顎が跳ね上がり、リングに倒れこむ。
(倒れた・・・お願い、立ってこないで!)
 レフェリーがカウントを取り始めるが、遅々として進まない。カウントファイブまで進んだところで蒲生が四つん這いになり、頭を振る。琴音が中途半端な位置取りをしていると見ると、その状態からのタックルで琴音を倒す。琴音は無意識に両脚を胴に絡め、ガードポジションを取っていた。
「奥さん、効いたよ。あんなパンチ打てるんだな」
 そう言うと琴音の両脚のフックを無理やり外し、太ももを掴んで抱え、下着越しに秘部を舐める。
「あっ、やめて、そこは・・・!」
 スカート越しに蒲生の頭を叩く。撥で太鼓を叩く動きは予想以上に威力があった。蒲生は眉を顰め、反動をつけて立ち上がり、パワーボムの体勢になる。
 しかしリングに叩きつけるのではなく、エプロンサイドまで移動してトップロープに足が掛かるように琴音を下ろす。重力でスカートが下がり、赤いパンティが剥き出しになる。
「落ちる! 落ちちゃう!」
 リング下に頭から落ちるのではないかという恐怖に、琴音が悲鳴をあげる。意味もなく両手を振り回す。蒲生は自分の体で琴音の足を押さえながら股間を弄る。レフェリーはリング下に降り、バストを揉む。
「落ちないように支えてやるよ。どうだ? もっと強く支えようか? それとも優しく支えた方がいいのかな?」
 下手に動くと落ちるかもしれない、そう思うと責められることに抵抗できない。徐々に頭に血が昇り、苦しくなってくる。
「やめて! 頭に血が昇って・・・!」
 その叫びに、蒲生が足を放した。リング下に向かって落ちる琴音。悲鳴は一瞬だった。
「おっと」
 床に激突する前にレフェリーがその体を支え、リングに凭れ掛けさせる。後ろから琴音のヒップに股間を押しつけながら、バストを捏ね回す。その間に蒲生はカットバンで傷口を塞いだ。
「頭に血が昇ったって? ならマッサージをしてやるよ。しっかり受け止めな!」
 頭痛と鼻の奥の痛みに加え、落下の恐怖を味わった琴音は動けなかった。そのため心ならずもレフェリーからのセクハラを受け入れた格好になってしまう。股間に硬いモノがあてられ、バストを好きなように揉まれる。
 血を止めた蒲生がリング上からぐったりとした琴音に近づく。背中の穴から露出しているブラのホックを外し、そのまま抜き取ろうとするが、チャイナドレスに引っ掛かって外れない。
 頭痛が治まっていくとともに、股間に当たる男性のモノとバストを揉まれる感触に意識がはっきりとしていく。
「ああっ、や、やめてください!」
 どうにかレフェリーを振り払い、蒲生から遠いところに回りこんでリングに戻る。
 微かに残る頭痛を堪えてステップインから左右のフックを放つが、見切られてバックに回られ、そのままうつ伏せに倒される。蒲生は琴音の顎に両手を掛け、キャメルクラッチに極める。
「あ、く、ううっ・・・」
 苦しいが声を出せず、痛みに背骨が悲鳴をあげる。と、顎に掛かっていた蒲生の両手がバストへと伸び、そのまま揉みこんでくる。
「どうだいバストクラッチの味は? 苦しいだけじゃないだろ?」
 逃れようとする琴音だったが、首と足を動かすくらいしかできない。蒲生は左手を前面の穴から入れてブラの上からバストを揉みながら、右手をチャイナドレスの留め金に伸ばし、肩と首の留め金を外す。はらり、と合わせ目が開き、赤いブラジャーが晒される。
(ああっ! そんな・・・)
 先程ホックを外されていたため、バストとブラの間に隙間ができる。その隙間に手を入れられ、蒲生から直接乳房を捏ねられる。
「おい蒲生、お客様にもサービスしなきゃいかんぞ」
 レフェリーが指示を出すと、蒲生はキャメルクラッチを外して琴音の首を押さえ、チャイナドレスの後ろ襟を掴んで背中側に思い切り引く。琴音の肩から背中までが露わになり、チャイナドレスで肘を拘束された格好になる。
「おら、立て」
 蒲生は琴音を立たせると太ももを持って抱え上げ、無理やり開脚させる。
「いやぁっ、やめてください!」
 琴音の哀願など聞かず、蒲生は観客席に向かって琴音の開脚姿を披露する。レフェリーが近寄り、スカートを捲ったままずれ気味のブラを上げる。人妻のあられもない姿に興奮する観客に応え、蒲生が更に開脚させる。
「酷い・・・ここまでするなんて・・・」
「ギブアップするかい? こっちは構わんが、会社の社員は何て言うかなぁ」
 レフェリーが乳首を弾きながら琴音に話しかける。会社のことを持ち出されては、琴音は沈黙するしかない。結局、四方の観客に開脚を披露された。
「ギブアップしなかったってことはまだ闘う意思があるってことだな? じゃあ・・・もうちょっと付き合って貰うか」
 蒲生は琴音の腹部に膝蹴りを入れ、リングに転がす。痛みにもがく琴音に、蒲生とレフェリーが圧し掛かる。蒲生は秘部を弄りながら太ももを撫で回す。レフェリーは乳房を直接揉み、乳首を弄る。
「はっ、はぁっ、もう、やめて・・・いやぁぁぁっ!」
 泣きながら許しを請う琴音。しかし男達はセクハラをやめるどころか、ますます責めを強くしていく。
「もういやぁ、ぎ、ぎぶ・・・」
 ついに耐え切れずギブアップを言おうとした琴音。だが、レフェリーから口を塞がれる。
「!」
「まだこっちは楽しみたいんだよ。もうちょっと我慢してな」
(そん、な・・・)

 解放されたのは、それから十五分が経過してからだった。肌のあちこちが唾液で光り、無理やり引き出された快感に秘部から愛液が零れる。最早立ち上がることもできず、琴音は涙を流していた。
「さて奥さん、旦那と社員のためにまだ頑張るかい? それなら付き合ってやるよ」
 レフェリーは琴音の顔を覗き込み、ギブアップの確認をしてくる。
「・・・」
 夫の顔が脳裏に浮かび、躊躇する。しかし、再び責めが始まると絶叫した。
「ギブアップです! もういやぁっ!」

<カンカンカンカン!>

 ゴングが鳴らされると、男達は渋々琴音から離れた。肩を震わせ、泣き崩れる琴音の姿に、観客から卑猥な言葉が投げつけられた。
「奥さん、旦那に飽きたらまたおいで」
 蒲生の嘲るようなセリフにも反応せず、琴音は泣き伏した。


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