【第十八話 ナスターシャ・ウォレンスキー:コマンドサンボ】

 犠牲者の名は「ナスターシャ・ウォレンスキー」。23歳。身長167cm、B92(Fカップ)・W64・H89。ショートカットに整えられた銀髪、雪原を思わせる白皙の肌、吹雪を閉じ込めたような鋭く光る眼、すっと伸びた鼻梁、妖しく光る唇。ロシアKGB上がりの美貌の女戦士。
 父はKGBの軍事教官を務めるほどの凄腕で、ナスターシャの武の才を見抜き、幼少の頃からコマンドサンボを叩き込んだ。ナスターシャはエリート候補生として幼くしてKGBへと入隊したが、21歳のときに父が政変に巻き込まれて死亡。ナスターシャは自分も政変に巻き込まれることを恐れ、東部で勢力を張るロシアンマフィアの用心棒へと転身した。
 ナスターシャが所属するマフィアのドンはロシアの経済混乱の中でのし上がり、更なる勢力拡大を求め日本にも食指を伸ばした。しかし「御前」との暗闘に敗れ、日本進出は諦めざるをえなかった。この暗闘でナスターシャは「御前」に捕らえられ、解放の条件として<地下闘艶場>での闘いを提示された。勝利すれば放免に加えて百万円のファイトマネー、負ければ「御前」の嬲り者になること。ナスターシャは条件を呑み、<地下闘艶場>へと移送された。


 ナスターシャの入場は<地下闘艶場>では異例とも言えるボディガード付きでのものだった。正確には観客を守るためのボディガードだが、彼らはガウンを纏ったナスターシャとの微妙な距離を保ち、リング下まで案内すると、リーダーらしき男がリングに上がるように促す。
 ナスターシャも隙があれば人質を取って逃亡しようと考えていたが、周りを固める男達はそれを許すだけの隙も油断もなかった。こうなったらリングで対戦相手を倒して賞金と自由を手に入れるだけだ。無論、約束が果たされれば、の話だが。

 リングの上で待っていた対戦相手は、驚くほど普通の小柄な老人だった。黒い道衣姿だが危険な香りはしてこない。
(これは楽勝か)
 気持ちが弛みかけたナスターシャだったが、相手の眼がそれを止めた。深みを湛えたその眼は静かな迫力を宿しており、武術の達人であることを匂わせていた。
(危うく見掛けに騙されるところだった。これは簡単には行きそうにないな)
 緩みかけた気持ちを引き締めなおし、ナスターシャは戦士の表情になった。

「赤コーナー、『最強老人』、元橋堅城!」
 ナスターシャに向かって一礼する元橋。観客から大きな歓声が起こる。おそらく現在<地下闘艶場>最強の男に対し、ロシア美女を辱める姿を今から想像して卑猥な注文を叫ぶ観客もいる。
「青コーナー、『銀豹』、ナスターシャ・ウォレンスキー!」
 名前がコールされ、ナスターシャがガウンを脱ぐ。身に付けているのは男物のワイシャツ一枚だった。白いシャツがナスターシャの膝上までを隠しているが、逆に無防備さを演出している。胸元は盛り上がり、バストの豊かさを想像させる。シャツから伸びた太ももは白く引き締まっているが、なだらかな曲線を描き、裸足へと続く。また黒い下着がワイシャツから透けて見え卑猥さを増しているが、ナスターシャは恥ずかしがるでもなく、堂々としている。
 レフェリーは元橋のボディチェックを終えるとナスターシャに近寄る。
「ナスターシャ、ボディチェックだ」
 レフェリーの言葉にナスターシャがやれやれと首を振る。KGB時代には日本語の他英語、北京語、ハングルなど語学も叩き込まれた。当然レフェリーの日本語も完全に理解できている。
「この格好のどこに凶器を隠すというんだ? それに、入場前黒服たちに散々調べられたぞ」

 ナスターシャが言う通り、監禁場所から<地下闘艶場>控え室に移送されたナスターシャは、服を脱ぐように命令されていた。
「脱がないのなら俺達が脱がしてやるが、どうする?」
 周りを囲むのは屈強な男達。ナスターシャが捕らわれた暗闘の際に見掛けた顔もいる。二、三人なら倒せる自信はあるが、六人ともなるとさすがに無理だ。また控え室の外にも人の気配がある。
(仕方ない、か)
 ここは逆らわない方がいいと判断し、ゆっくりと服を脱いでいく。下着姿になると、見事なプロポーションに口笛が鳴らされる。
「まさか下着まで脱げとは言わないよな?」
「いや、脱げ。元KGBだ、下着に何を仕込んでいるか知れたものじゃないからな」
 半ば覚悟はしていたが、予想が当たっても嬉しくない。ブラを外し、パンティを脱ぐ。全裸となったナスターシャにリーダー格の男が近付く。まだ若く、優しげな顔立ちをしている。勿論見た目に騙されると痛い目に遭うだろう。
「手を頭の上に組め。口の中に何か隠していないかチェックさせて貰うぞ」
 リーダー格の男はまず口を開けさせ、薄手の手袋をしてから中をチェックする。喉の奥まで指が突きこまれ、ナスターシャは吐き気を堪える。リーダー格の男は一通り口腔内を調べた後、ナスターシャの前にしゃがみこむ。
「次は女の穴だ」
「・・・勝手にしろ」
 リーダー格は秘裂を広げ、指を入れる。かなり長い間中をかき回してから指を抜き、尻の穴にも指を入れる。
「おい、そこは・・・!」
「刑務所でもここにモノを入れる奴が多いんだ。当然のチェックだよ」
 ここまでされるとは考えておらず、唇を噛んで耐える。ここも奥まで調べられ、なにも入っていないことが確認される。
「・・・もういいだろう?」
「ああ、そうだ・・・」
「まだだ!」
 頷きかけたリーダー格の声を遮り、先程からにやつきながら眺めていた、右目に眼帯をした男がナスターシャに近付く。
「その胸が作り物ってこともあるからな、俺が本物かどうか確かめてやるよ」
「・・・程々にしとけよ、無業」
 リーダー格の男の許可が出たため、無業と呼ばれた眼帯の男はナスターシャの後ろから歩み寄り、両手で乳房を鷲掴みにして力強く揉み始める。
「おい、もっと優しくできないのか!」
「力を入れて揉まないと本物かどうかわからないだろうが。黙って乳揉まれてろ」
 眼帯の男は暫くナスターシャの巨乳を揉んでいたが、次に乳首を弄りだす。
「・・・乳首も調べなきゃいけないのか?」
「当然だろうが。触ってみなきゃわからないんだからな」
 身体検査と称したセクハラは五分ほど続いた。リーダー格の男は黒い下着の上下と男物のワイシャツ、ガウンをナスターシャに渡し、身に着けるように命令する。
「おい、まさかこの格好で闘えっていうんじゃないだろうな!?」
「そのまさかだ。すぐに着ろ。それとも素っ裸で闘うか?」
 こうなれば受け入れるしかない。男達はナスターシャが衣装を身に着ける間も目を放さず、その一挙手一投足を見守っていた。ナスターシャの準備運動の間もにやつきながら目を放さず、入場の合図が届くまで監視は続いた。

「そうは言ってもなぁ」
 レフェリーの声がナスターシャの回想を破る。レフェリーは自分に向けられたナスターシャの鋭い視線にも怯まず、にやついている。
「俺はこれが仕事だからな。拒むというならファイトマネーはもちろん解放もなしだ。それと俺を人質に取っても無駄だぞ。『御前』は部下に厳しい御方だ、俺ごとお前を殺すだろうな」
 レフェリーの言葉に、ナスターシャもそうだろうと思う。おそらくリング下の黒服達は銃を所持している。ナスターシャが下手なことをすれば射殺する気だろう。「御前」は観客には気を使うが、部下の犠牲はまったく気にも留めない男だと想像できた。
「さっさと終わらせるんだな」
 力を抜いたナスターシャの素足を、レフェリーが脹脛からゆっくりと上に触っていく。ナスターシャは軽く眉を顰めただけで逃げようとはしない。レフェリーの手は太ももを厭らしく撫でた後ヒップに移動し、両手で鷲掴みにして乱暴に揉む。次に腰の括れを通ってバストへと到着し、大きさを確かめるように縁を指でなぞる。それからバストを鷲掴みにし、指を蠢かせる。
 暫く感触を楽しんだ後、右手を股間へと下ろし、秘部を人差し指で撫でる。
「あいつらにはどういう風に触られたんだ? お前の好みを教えてくれればその通りに触ってやるぜ」
「お前、記憶力がないのか。私はさっさと終わらせろ、と言ったぞ」
 体を好き勝手に弄られる不快さに、ナスターシャの声に険が混じる。
「おお怖い怖い。もうちょっとで終わるから我慢しろよ」
「この○○○が・・・!」
 ロシア語で毒づくナスターシャ。それでも逃げようとはせずにボディチェックを受け入れる。レフェリーはもうちょっとどころか暫く楽しんだ後で漸く離れ、ゴングを要請する。

<カーン!>

「お手柔らかにお願いしますよ」
 元橋がにこにこと微笑みながら挨拶してくる。隙だらけに見えるが、攻撃を誘うための演技かもしれない。
(まずはお手並み拝見といくか)
 スピードだけを考えたジャブを放っていく。元橋はそれを完全に見切り、最小限の動きでかわしていく。
(さすがに陽動にもならないか。ならば!)
 ジャブを出すと見せかけて左手を伸ばし、元橋の右袖を捕る。捕った瞬間左足を元橋の首に、右足を右脇下に当て、飛びつき腕十字固めを狙う。しかし元橋は瞬時にナスターシャに掴まれた右袖を外し、関節を捕らせない。ナスターシャは受身を取ると前転で距離を取り、元橋の追い討ちを未然に防ぐ。
「鋭い技ですなぁ。油断していたら右腕を折られてましたよ。まぁ、目の保養にはなりましたが」
「ふふ、サービスしたんだ、腕の一本くらいはくれてもよかったでしょう?」
 二人とも軽口を叩きながらも間合いの取り合いに神経を傾けている。先程の攻防でお互いに油断のならない相手だとわかった。気を抜けばあっさりと敗北を喫するだろう。見て取れないほどの牽制をしながら、少しずつ間合いを詰める。素早い組手争いの後再び間合いが離れる。
「そうそういいところは取らせませんよ、ご老体」
「ふむ、確かに。しかし、胸元はお留守のようですなぁ」
「!?」
 いつのまにか、上から二つ目までのボタンが外されている。ボタンを引き千切るならまだしも、あの一瞬でボタンを二つも外した元橋の手業にナスターシャが驚愕する。一瞬胸元に視線をやった隙に元橋が間合いを詰め、再び組手争いを挑んでくる。
「くっ!」
 応戦するナスターシャだったが、元橋が離れたとき、ワイシャツのボタンは全て外され、黒いブラとパンティが顔を覗かせていた。その光景に観客が沸く。
「さてナスさん、ワイシャツをいただきましょうかな」
 元橋が軽い足取りで近づいてくる。ナスターシャはワイシャツの前を併せ、胸元を隠す。左袖を持たれ、元橋の右手を切ろうと左腕を曲げた瞬間襟を持たれ、思い切り引かれる。
「!」
 肘までワイシャツを下ろされ、自由を奪われるよりはと自ら腕を抜く。ワイシャツは元橋の手の中に残り、とうとう下着姿になってしまう。元橋はワイシャツをコーナーポストにかけると、ナスターシャに向かって微笑む。
「その目はまだ諦めていませんな。さて、なにを見せてくれますかな?」
「そうですね、こういうのはどうですか!」
 言うと同時に左ジャブを放つ。余裕を持ってかわす元橋だったが、
「ぬ!」
 見るというより危険を感じて頭を逸らす。だが完全には避けきれず、右の目尻が切れ、血が垂れる。ナスターシャが指で弾いたボタンがその正体だった。元橋の目を掠め、ワイシャツからボタンをちぎって隠し持っていたのだ。
「ボタンは衣装の一部。卑怯とは言いませんよね?」
 元橋の右に回りこみながらナスターシャが隙を窺う。それをさせたくない元橋だったが、右目の傷から流れる血が気になり、僅かに集中力を奪われる。
 暫く元橋の周りを回っていたナスターシャの手から、何か小さいものが軽く放られた。自分の頭上に放られたものを、元橋ほどの達人が、否、達人だからこそ眼で追ってしまった。
(ボタン・・・!)
 一瞬の隙。
 ナスターシャにはそれで充分だった。元橋の左手を取り、手の平が上に向くように肘を極めながら投げを打つ。ごぐり、という鈍い音が元橋の左肘からした。元橋は投げられながらも右肘でナスターシャの後頭部を打ち、投げから脱出する。
「さすが元KGB、容赦ない攻撃をしてきますなぁ」
「ご老体も、あの一瞬で肘を外すとはお見事ですよ。しかも肘打ちのおまけ付きだ」
 投げを打たれた瞬間、元橋は自ら右肘の関節を外し、折られることを回避した。しかしその代償に右肘を脱臼し、顔には脂汗が浮いている。
「はっ」
 チャンスと見たナスターシャは元橋の右手側からタックルに行く。しかし、そこに動かないはずの元橋の右掌底が飛び、ナスターシャの顎を打つ。
「ぐふっ」
 元橋は右手を振って遠心力で関節を嵌めると同時に攻撃へと繋げた。「元橋の右手は動かない」と判断してしまったナスターシャは不意を衝かれる形となり、まともに顎を打たれて膝から崩れ落ちる。
「さてと。おねんねしてくれている間に縛らせて貰いますか」
 元橋はナスターシャが着ていたワイシャツをコーナーポストから拾い上げ、ナスターシャの両手を背中に回し、素早くワイシャツで縛り上げる。簡単に解けないことを確認し、仰向けにしてブラに包まれたFカップの巨乳をゆっくりとした手つきで擦る。輪郭を確かめるように手を動かした後、優しくバストを揉む。手からは乳肉がみしりと詰まった感触が伝わってくる。
「へへ、じゃあ俺も・・・」
「おっと、貴方は手出ししないで貰えますかな? また利用されたら堪らないですからな」
 於鶴涼子戦で冷静に涼子を追い詰めていった元橋だったが、レフェリーを投げつけられ、一瞬の隙を作ってしまった。その隙を突かれて涼子に頚動脈を絞められ、落とされるという屈辱を味わった。半裸にされながらも勝負を諦めなかった涼子へは尊敬の念すら抱くが、レフェリーに対しては軽蔑の感情しか持てない。
「あのときは悪かったよ。今回は気をつけるから頼む、この通り!」
「ふうむ・・・では私が退きますから、好きにすればどうですかな」
 そう言うと、元橋はナスターシャの上から降りる。レフェリーは急に態度を変えた元橋を訝りながらもナスターシャに圧し掛かり、バストに手を伸ばす。下卑た顔でナスターシャのバストを掴んだレフェリーの胴が、突然締め上げられる。
「あ・・・が・・・!」
 ナスターシャの両脚だった。元橋はナスターシャから降りるときに意識を覚醒させるツボを突き、ナスターシャの意識を取り戻させていた。意識を取り戻したナスターシャは、自分に覆い被さってくるレフェリーに反射的に両脚での胴締めを行っていた。自分が攻撃していたのがレフェリーだと気付いたナスターシャは慌てて技を解く。
「がはっ、がはっ・・・お、お前、俺にこんなことして、ただで済むと、ごほっ、思っているのか!」
 咳き込みながら凄むレフェリーに、ナスターシャが首を振る。
「待て、今のはわざとじゃ・・・」
「黙れ! レフェリーに手を出したんだ、お前の反則負けだ! 今からゴングが鳴るから、『御前』にしっかり奉仕して・・・」
 まくし立てるレフェリーだったが、元橋から頚動脈を絞められて簡単に失神する。
「まったくこの男は・・・大丈夫ですかな?」
「あ、ああ・・・」
 元橋に抱き起こされ、優しく立たされる。事態の推移に頭が付いていっていない。
「勝負はこれからだというのに水を刺されましたな。さて、後ろを向いて頂けますか」
 腕の拘束を解こうというのか。ナスターシャはそう判断し、素直に元橋に背中を見せる。しかし、外されたのは腕の拘束ではなかった。
「!」
 下着がずれ、乳首が見えそうになってしまう。元橋が外したのはブラのホックだった。
「ご老体、これは!」
 飛び退き、距離を取るナスターシャに、元橋は相も変わらず笑顔を見せる。
「悪く思わないでいただきたい。これも契約の内でしてな。あやつめ、貴女の羞恥に歪む顔が見たいと言いましてな。私は拒む立場にないもので」
 悪びれる様子もない元橋に、ナスターシャの顔が強張る。
「・・・この腕を縛ったのもご老体、あなたか!」
「いかにも」
 そのときには元橋の両手がナスターシャのバストを掴んでいた。体を捻ることで逃れようとするナスターシャだったが、元橋は投げを打つでも関節技に極めるでもなくナスターシャを嬲っていく。
(くっ、このままでは)
 元橋の手を逃れながら逆転の手を狙うナスターシャが、力任せに腕を動かす。
(しめた! 弛んだ!)
 ワイシャツで拘束された部分が弛み、腕を無理に引き抜く。しかしそのとき元橋がブラを掴み、次の瞬間手品のようにブラは元橋の手に移っている。
「くっ!」
 左手でバストを隠しながらナスターシャが距離を取る。観客からは美人闘士のセミヌードに大歓声が起きる。元橋はナスターシャに背を向け、リング下の黒服にまだ温もりが残るブラを渡す。チャンスだとは思うものの、罠の可能性を捨て切れず攻められない。替わりにリングに落ちているワイシャツを拾い、胸に巻く。
「さて、あと少しで素っ裸ですな。どうします、棄権しますかな?」
「・・・できるならそうしたいね。しかし、待っているのが陵辱では棄権などお断りだ」
 にこにこと話しかけてくる元橋に、きっぱりと告げるナスターシャ。両手を軽く開き、体の前に構える。
「おやおや、そうですか。それならば勝負を急がせて貰いましょうか」
 元橋の体が沈み、まっすぐにタックルに来る。
(これは・・・罠か?)
 元橋ほどの達人がそのままタックルに来るとは考えられなかった。そのためタックルへの対応が遅れた。次の瞬間には両脚を刈られ、体が宙に浮く。そして胸に巻いたワイシャツは元橋の手にあった。
「くっ!」
 右手でバストを隠しながら左手一本で受身を取る。その両脚が元橋に掴まれる。
「さて、後一枚ですな」
 元橋はワイシャツを黒服の方へと投げ、ナスターシャを眺める。
「そう簡単には渡さんよっ!」
 背中を使ってロープへと向かう。しかし元橋に両脚を引かれ、リング中央へと引き戻される。元橋は左足でナスターシャの左足を押さえ、左手で右足を抱えて下着へと右手を伸ばす。
「やらせるかっ!」
 ナスターシャは両手で下着を掴むが、そのために乳房が観客の目に晒される。それを見た元橋はナスターシャの右足を左脇に抱え、ナスターシャの指を打つ。
「あっ・・・!」
 指の力が緩んだ瞬間下着を抜き取り、天へと掲げる。とうとうナスターシャは全裸とされた。胸元と股間を隠すその姿に、観客から万雷の拍車が鳴らされる。
「さて、とうとう生まれたままの姿になりましたな。まだやりますか?」
「・・・当たり前だろう」
 それでもナスターシャは勝気な表情を崩さない。元橋はやれやれと首を振ると黒服にパンティを放り、ナスターシャへと近づいていく。そして無造作にナスターシャの左手を掴む。
(今だ!)
 その瞬間、ナスターシャは口中に隠しておいたボタンを元橋に吹き付けた。元橋は目を押さえ、リングへと倒れる。
(かかった!)
 これがナスターシャの奥の手だった。ナスターシャにかかれば、例えボタンと言えども恐ろしい凶器と化す。
 勝利を確信し、元橋にとどめを刺そうと馬乗りの体勢になった瞬間、うつ伏せに押さえられる。左腕は背中に回されて元橋の左腕に極められ、右腕は自分の喉の前を通されて元橋の左手に掴まれる。左腕、喉、腰を同時に極められ、身動きも叶わない。
「あっ・・・ぐっ!」
「ボタンで攻撃してくるのは読めていましたからな、目が潰された振りをさせていただきました」
 元橋はナスターシャの耳元で喋りながら、自由な右手をナスターシャの乳房に伸ばし、優しく愛撫する。
「さてナスさん、そろそろ負けを認めませんかな? こう見えても私は女性をいたぶるのがあまり好きではないんですよ」
(なにを白々しく!)
 右手で乳房を揉みながらギブアップを勧めてくる元橋に、厳しい言葉を投げつけたいナスターシャだったが、こうまで完璧に捕らえられてはそれも出来ない。
「あー、まだクラクラする・・・元橋さんよ、こいつの隙を作るためとはいえ、本気で落とすことはなかったんじゃないのか?」
 ナスターシャが責められる姿を眺めつつ、黒服から介抱されたレフェリーが頭を振りながらリングに戻ってくる。
「本気でないと騙されてくれませんよ。お詫びと言ってはなんですが、下半身は貴方に譲りますよ」
「お、いいのかい? へへ、リングの上でスッポンポンの女を嬲るってのは興奮するな」
 レフェリーはナスターシャの両脚の上に座り、剥き出しの秘部に指を這わせる。
「・・・!」
 嫌悪の声をあげたいが、喉が塞がれ声が出せない。元橋に右の乳房と乳首を、レフェリーに秘部を弄られ、何度も体が跳ねる。喉を押さえられているため意識が遠退きそうになるが、その度に元橋は技を緩め、乳房を強めに揉むことでナスターシャを覚醒させる。レフェリーもナスターシャの秘部に指を突き刺し、抜き差しを繰り返す。足をバタつかせて儚い抵抗を試みたが、脹脛の上に乗られてはそれもできなかった。
「さあナスさん、どうしますか。まだ耐えますか? それとも諦めますかな?」
 声が出るように技を緩め、元橋が確認してくる。緩めたと言ってもナスターシャが脱出できるほどの隙は作らない。その間も乳房と秘部への責めは続いている。
「・・・」
「おや、返事がないということは、まだ責められたいと言うことですかな。衆人環視の前で嬲られるより、一人の男に犯されるほうがましだと思いますがな」
「それは、男の勝手な理論だろう!」
 この元橋の言い草には、冷静なナスターシャも激昂した。まだ続けようとした言葉は、乳房と秘部への刺激で止められる。
「くぁぁぁっ!」
「まあいいじゃないか元橋さんよ。ギブアップしたくないって言ってるんだ、このまま責めたほうが客も喜ぶってもんだ」
 レフェリーはにやけたまま秘部を乱暴に責める。
「ぐぅぅっ、絶対に、ギブアップはしないからな・・・!」
 それでもナスターシャは歯を喰いしばり、耐える。
「そうですか。それならどこまで耐えるか試させていただきますよ。審判、退いて貰えますかな」
 元橋の静かな口調に気圧され、レフェリーが素直にナスターシャから離れる。元橋はナスターシャを捕らえたまま反転して仰向けになると、観客の目にナスターシャの豊かな乳房と鳶色の乳首が晒される。
(くっ、なんとかここだけは!)
 苦しみながらも必死に足を閉じ、秘部を隠す。しかし元橋の両足がその間に割り込もうとじりじりと侵入してくる。
(ぁぁぁ、もう、駄目・・・)
 抵抗も虚しく、両脚を広げられてしまう。股間の翳りと秘部が観客へと晒され、狂喜の叫びがあちこちで起きる。
「うっほーっ、これはたまらん!」
 レフェリーも興奮し、腹這いになって股間を覗き込む。そのためレフェリーの影になって見えなくなった観客からブーイングが鳴らされ、渋々立ち上がる。
「はっ・・・くっ、ううっ・・・」
 ナスターシャは痛みに耐えながら、もう一度脚を閉じようとする。太ももに力を入れ、ゆっくりとした動きではあるが少しずつ脚の隙間を狭めていく。しかし、閉じられたと思った瞬間またも元橋に開脚される。何度かそれを繰り返し、ナスターシャは自分が遊ばれていることに気付く。
「頑張るねぇナスターシャ選手。そんなに頑張るお前にご褒美だ!」
 レフェリーは左の乳首を摘まみ、秘部に指を這わせる。
「くぁぁっ、や、めろ、手を放せ・・・!」
 両手両脚を拘束された体勢では言葉で拒否するしかなかった。しかしそれで責めをやめる男達ではなく、無理やり快感を引き出されていく。右の乳房と乳首は元橋に、左の乳房と乳首、秘部をレフェリーに弄られ、喘ぐナスターシャ。とうとう乳首が硬くなり、立ち上がってしまう。
「どうやらご褒美を気に入ってくれたみたいだな。じゃあ、こういうのはどうだ?」
 レフェリーは左の乳首を頬張り、音を立てて啜る。唇と歯で潰し、舌で舐め回す。右手は乳房を揉み、左手は秘部を弄り続ける。元橋は右の乳首に丹念な愛撫を与え、更に立ち上がらせようとする。
「はっ、あ、ああぁっ!」
 快楽へと転がり始めた体を止めるのは難しかった。秘部からは愛液が零れ始め、レフェリーの指の抜き差しに卑猥な水音を奏でてしまう。
「折角だ、ここも舐めさせて貰おうか」
「!」
 レフェリーは秘部の前にしゃがみ込むと、口をつけ、愛液を音高く啜る。
「やめろぉーーーっ!」
 ナスターシャはなんとか脚を閉じようとするが、元橋に逆に大きく開かされる。
「へへっ、うまいねぇ。もっと出してくれよ・・・ん?」
 秘部から口を放したレフェリーが何かに気付く。
「おほっ、お豆が顔を出したぞ。感じてるんだろ? 正直に言えよ」
 秘唇を指で弄りながら、レフェリーがナスターシャを覗き込む。ナスターシャが顔をそむけると、淫核を親指で押さえる。
「はぁぁぁっ!」
「おうおう、喘ぎ声が堪らんね。感じてる以外何物でもないじゃねぇか」
 レフェリーはそのまま秘唇と淫核を責めながら、ナスターシャから無理やり快感を引き出していく。
「感じてなどいない、感じてなどいるものかっ!」
 レフェリーに、と言うよりも自分を叱咤するようにナスターシャが叫ぶ。
「くくっ、ここまでなっててもまだ認めないのかよ。ま、それならそれで楽しめるからいいんだけどな」
 レフェリーは中指を秘部に沈め、親指で淫核を押さえ、空いた手で乳房を揉み、乳首を弄る。元橋は頚動脈を絞め過ぎてナスターシャが失神しないように調節しながら、自分も右手で乳房を柔らかく弾ませ、縁をなぞる。両脚が開閉できないように大きく開かせ、観客の目を喜ばせる。
「乳首立たせて大股開いてアソコを濡らして、これでもまだギブアップしないんだ、お前、マゾだろ」
 レフェリーは指の動きを止めず、ナスターシャをマゾだと決めつける。ナスターシャは喘ぎ声を堪えるのに精一杯で、首を振るくらいしか出来ない。
「マゾじゃないって証明したいなら、ギブアップすればいいだけだぞ。なに、『御前』は優しい御方だ、お前を可愛がってくれるよ。SEX奴隷としてな」
(そんな人生は真っ平だ! 絶対にギブアップなどしない! 絶対に・・・はぁぅぅぅっ!)
 ナスターシャの精神はまだ闘争心を失っていなかったが、身体は屈服を選んだ。レフェリーの秘部と淫核、元橋の乳房と乳首への責めが体中を電流が走ったような衝撃を与え、同時に浮遊感が襲い掛かる。
「くぁぁぁっ! い、イ、ク・・・!」
 今まで耐えに耐えた分、その浮遊感は強烈だった。視界が白く染まり、現実感すら消える。
「はっ、はぁぁぁっ・・・」
 知らず呼吸を止めていたようで、ナスターシャは大きく深呼吸していた。
「くくっ、感じてないと言いながら軽くイッたか? そろそろギブアップする気になっただろ」
 レフェリーは秘唇を撫でながらナスターシャに語りかけるが、ナスターシャは頑なに首を振る。
「い、嫌だ、私は自由を・・・あぅっ、くぁぁっ!」
「嫌だ」と言った瞬間、淫核を潰された。体を震わせるナスターシャに、またも男達は責めを始める。
「ギブアップしないんだな。じゃあ、またイカせてやるよ!」
 レフェリーの宣言に、観客から「イ・カ・せ!」コールが巻き起こる。
(くっ、こんな男の手でイカされてたまるか、耐えるんだ、耐えて隙を見つけて、ご老体を倒すんだ、自由を掴むんだ!)
 ナスターシャの覚悟も、乳房を、乳首を、淫核を、秘裂を、膣口を責められると肉の欲望に溶かされていく。それに呼応して秘部からは愛液が止め処なく流れ落ちる。
「くぅぁぁっ! あぐぅっ!」
 最早逃げるために動いているのか、官能のために身悶えしているのかわからなくなっていく。
「ナスさん、そろそろとどめと行きますぞ、受け止めてください」
 元橋が耳を甘噛みするのと同時に高く立ち上がった乳首を潰す。レフェリーの秘部への責めと相まって、官能の大波がナスターシャを襲い、意識を押し流し、絶頂へと導く。
「うあぁぁぁん、イクっ、イクっ、イッちゃう! うぅぅぅっ・・・」
 ナスターシャは派手に潮を吹き、断末魔の痙攣を起こす。レフェリーは完全に意識を失ったナスターシャを確認し、ゴングを要請する。

<カンカンカンカン!>

 ナスターシャは全裸のまま、担架に乗せられての退場となった。その姿は麻酔で眠らされた女豹にも似ている。向かう先は、二度と出られぬ淫獄。そのことを知る観客からは、名残惜しげな視線が投げつけられていた。


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