【第三十二話 房貞沙莉:護身術】

 犠牲者の名は「房貞沙莉(さり)」。23歳。身長168cm、B88(Eカップ)・W63・H92。くせっ毛をウルフカットにし、太目の眉は整える程度に抑えている。時代に逆行するようなスタイルも、沙莉の美貌を逆に際立たせていた。
 大学の教育学部を卒業して探偵事務所に入ったという変り種。警察の目が届かない犯罪から市民を守りたいという正義感からの就職だったが、彼女の美貌と豊かなプロポーションは嫌でも人目を引き、尾行や浮気調査などには向かなかった。しかし探偵事務所の所長から沙莉にしかできない依頼があると言われ、有頂天になった沙莉は自分からその仕事をさせて欲しいと頼み込んだ。まさか自分を標的にした依頼だとは思いもよらずに。

 沙莉にしかできない依頼とは、潜入捜査だった。女性を無理に闘わせ、それを観戦するという裏のリングがあるらしい。その詳細を探って欲しいというのがその内容だった。一番情報を得られるのは実際にその場に立つことだとして、所長が手を回し、沙莉は選手としてリングに上がることになった。


 試合当日、沙莉の自宅には黒塗りのリムジンが迎えに来た。度肝を抜かれた沙莉を乗せたリムジンは静かに走り出し、会場へと向かう。窓には内側からもスモークが張られ、外の様子を窺うことができない。試合会場の場所を知ろうと注意していたが、かなり複雑なコースを通ったようで自分がどの方向に向かっているのかがわからなくなってしまった。
 会場に到着した沙莉は車内でアイマスクをされ、控え室へと導かれた。そこで、試合に着る衣装だと渡された衣装は・・・
「こ、これが衣装?」
 沙莉の手の中にあるのは、黒のホットパンツと薄い黄色のハイソックス、黒のリングシューズ、それに幅広のサスペンダーだった。
「あの、上着が足りないみたいなんですけど・・・」
 案内してくれた黒髪の女性に尋ねると、女性は微笑と共にそれで全てだと答えた。
「で、でも、これだと胸が見えちゃう・・・」
「下着は着けてもかまいませんよ。では、すぐにお着替えください、試合開始まで時間がありませんので」
 女性はそれだけ言うとすっと控え室を出て行く。沙莉は間を外され、視線を落として手の中の衣装を見る。
「・・・これも調査のためよ、耐えるのよ沙莉!」
 沙莉は羞恥に頬を染めながら、渡された衣装へと着替えた。さすがに素肌にそのままサスペンダーを着ける勇気はなく、肩紐のないブラをしたままだ。
(多分、出場する女性は皆この衣装を見に着けさせられているのね。観客はそれを見て楽しんでいる、そうに違いないわ!)
 羞恥と怒りに顔を赤くしながらも、沙莉はウォーミングアップを行った。しかし動くたびにサスペンダーがずれ、豊かなバストの外側へと位置を変える。やはりブラなしでは闘えない。沙莉は覚悟を決めた。

 入場した沙莉を待っていたのは、スポットライトと観客の歓声だった。沙莉に投げつけられる言葉は、主に沙莉の突き出したバストとスカイブルーのブラに対してのものだった。観客からの粘つくような視線を耐え、花道をリングへと向かう。

 リングで沙莉を待っていたのは、試合を裁くのであろう男性レフェリーと男の選手だった。
「えぇっ、対戦相手って女の人じゃないの!?」
 リングに上がるまでは対戦相手が女性だとばかり思い込んでいた沙莉は、思わず叫んでいた。
「なにを言ってるんだ? 対戦相手が男だからって問題ないだろう」
 問題は大いにあるが、あまり文句を言って潜入調査に支障が出てはまずい。沙莉は文句をぐっと堪え、男性選手を見る。頬に数条の傷が走り、それが引き攣れて異相となっている。全身のあちこちにも傷が走り、とりわけ左脇の傷が目を引く。全身を走る傷といい、筋繊維を束ねたような肉体といい、かなりの猛者だと感じられた。
 知らず体が震えていたのは、武者震いか、それとも目の前の男への恐れ故か。

「赤コーナー、古池虎丸!」
 虎丸とコールされた男はそれに応えるでもなく、臍の上の傷をぼりぼりと掻く。
「青コーナー、房貞沙莉!」
 沙莉がコールされると、また観客席が沸く。沙莉へ直接厭らしい言葉を投げつける者や、虎丸に卑猥な注文をつける者もおり、沙莉の神経を逆撫でする。思わず声のした方を睨みつけるが、そのことでまた囃し立てられる。これでは堂々巡りだと気づいた沙莉は深呼吸し、虎丸を睨みつけた。

「さて房貞選手、ボディチェックの時間だ」
 虎丸のボディチェックを簡単に終えたレフェリーが、沙莉の前に立った。
「でも・・・」
 男性から身体を触られる、という行為に嫌悪感が先立つ。
「おいおい、ボディチェックを受けないのか? なら失格負けになるぞ?」
 まだ何も掴んでいないに等しい状況では、退場させられるわけにはいかない。沙莉は一度下を向いたものの、レフェリーを睨むようにしてボディチェックを承諾する。
「そうか、なら大人しくしてろよ。抵抗したら反則負けと見なすからな」
 レフェリーはそう言うとしゃがみ込み、リングシューズから触っていく。リングシューズはすぐに終わり、ハイソックスに覆われたふくらはぎから太ももを撫でるように触っていく。ある程度は覚悟していたものの、レフェリーの厭らしい手つきに鳥肌が立つ。
「さ、さっさと終わらせてください!」
「まぁ待てよ、まだ調べてないところがあるんだからな」
 レフェリーはサスペンダーを持つと、軽く引っ張っては放すを繰り返し、沙莉のバストへと当てる。その度に沙莉のバストが揺れ、リング内外の男達の目を楽しませる。
「人の胸で遊ばないでください!」
「サスペンダーを調べていただけじゃないか。気が短いな」
 レフェリーはもう一度サスペンダーでバストを揺らすと、ブラに包まれた沙莉のバストを手で掴む。
「あ、何を・・・!」
「何を? ボディチェックに決まってるじゃないか。ブラの下に何を仕込んでいるかわかったもんじゃないからな」
 レフェリーはにやにやと笑いながら、ボディチェックとは名ばかりのセクハラを行う。
「い、いい加減にしないと・・・!」
「レフェリーに手を上げたら反則負けだぞ。さっきも言ったよな?」
 思わず張り飛ばそうと構えた沙莉の右手を見て、レフェリーが言葉で抑える。沙莉は歯を軋らせながらも自分を宥め、手を下ろす。
「そうそう、ちゃんとわかってるじゃないか」
 その後もレフェリーは沙莉のバストを揉み続けた。沙莉の我慢も限界に近づいたとき、漸くその手が離れていく。
「別におかしなところはなさそうだな。それじゃ、試合を始めるか」
 最後にバストを一撫でしておいて、レフェリーが試合開始の合図を出す。

<カーン!>

(ここまで、ここまであからさまに体を触られるなんて!)
 怒りに震える沙莉。しかし今のセクハラは、試合前のボディチェックだと言い抜けられれば罪に問えないかもしれない。
(試合中に証拠を掴んでいくしかないわ)
 しかし証拠を集めることは、自分の身体を生贄に捧げることでもある。
(ただではやられないんだから!)
 探偵事務所で護身術を習い、実際に痴漢を捕らえたこともある。目の前でただ突っ立っているだけの男に負ける筈がない!
 沙莉は軽く手を開き、半身になって構える。虎丸は構えるでもなくのそりと歩み寄ってくる。そのまま右手を伸ばし、沙莉の左手首を掴む。
「!」
 沙莉は手首を内側に捻りながら引きつけ、虎丸の手から逃れる。
(いつの間に手首を持たれたの?)
 沙莉の目には、虎丸の手を伸ばす瞬間が写らなかった。気づいたときには手首を掴まれていたのだ。
(油断してたわけでもないのに・・・)
 もう一度構え直す沙莉に、またも虎丸がゆったりと歩調で歩み寄り、気づけば手首を掴まれていた。
「くっ!」
 先程と同様に逃れようとしたが、虎丸の手が万力のように沙莉の手首を締めて逃れられない。それならと肘を畳んで脇を絞め、膝を曲げて投げを打つ。投げが決まったと思った瞬間、虎丸の手は沙莉から放れていた。
(なぜ・・・なぜ相手の動きが見えないの?)
 焦る沙莉の手首に、三度虎丸の手が巻きつく。引かれる力を感じた沙莉は手を引きつけ、腰を落とすことでそれに抵抗する。
(幾ら男の力でも、重心を落として手を引きつけていれば・・・!)
 物理学上は力でも負けない筈だった。しかし、虎丸が軽く手を引いたと見えたとき、沙莉の足はリングから浮いていた。
「嘘っ!」
 次の瞬間には、虎丸の顔が目の前にあった。虎丸は沙莉の手首を掴んで高く掲げたまま、左手でブラに包まれたバストを掴む。
「うくっ、このっ!」
 動かせる右手で虎丸を打つが、打たれている本人は気にも留めていないようで、沙莉のバストを揉み続ける。
「なら、これでっ!」
 右手で沙莉の左手を捕らえている虎丸の手を掴み、腹筋の力で両脚を引き付け、虎丸の顔面へと蹴りを放つ。鼻を蹴られた虎丸は沙莉を放してしまい、沙莉は受身を取って立ち上がる。
(さすがに顔面を蹴られれば効くでしょ!)
 虎丸を見るが、虎丸は鼻を掻いているだけでたいして効いているようには見えない。
(・・・かなり打たれ強いみたいね。いつの間にか手を掴まれている原因もわからないし、ただでは済まないかも・・・)
 沙莉は手合わせの間に、相手との実力差を肌で感じていた。彼女には珍しく、弱気な考えが浮かぶ。動きの止まった沙莉に、のそりのそりと虎丸が近づく。
「!」
 また捕まえられてはかなわない。虎丸の手の届かない位置へと回り込む。虎丸は焦るでもなくのそりと沙莉に近づき、沙莉がその距離を嫌って離れるということが繰り返される。
(でも、このままじゃどうしようもないわ・・・あっ!)
 気をつけながら動いていたつもりだったが、いつの間にかコーナーを背に負っていた。
「しまった!」
 慌てて不利な位置から逃れようとしたが、次の瞬間には虎丸の胸の中に抱え込まれ、背後からバストを鷲掴みにされる。
「放してっ!」
 虎丸の手首を掴んで引っ張るが、まるで放れない。それならばと指を掴んで引っ張るが、それでもバストから放れない。
(んんっ・・・ここまで力の差があるなんて・・・くぅっ)
 沙莉が抵抗する間にも、バストは虎丸の手の中で形を変えていく。虎丸が怪力の持ち主の割には繊細な責めを加えてくる。
「んぅっ!」
 両手で虎丸の左手の人差し指を掴み、逆関節を極めると漸く解放される。前転して距離を取って立ち上がると、虎丸は胸を掻きながらもその場から動いていなかった。その態度が余裕たっぷりに見えて小憎らしい。
(どうしよう、どうしたら・・・)
 攻め手がまるで思いつかず、歯噛みしながらも虎丸に近づけない。沙莉が立ち上がって構えたのを見てとると、虎丸がゆっくりと近づいてくる。
「っ!」
 反射的に、掌底を虎丸の顔面に叩き込んでいた。しかし虎丸は意に介した様子もなく、沙莉の両腕を捕らえる。
「しまっ・・・きゃぁっ!」
 虎丸はそのまま居反り投げで沙莉を後方へと投げつける。両腕を捕まえられていては受身を取ることができず、投げ一発で沙莉の動きが止まる。
 虎丸は痛みに呻く沙莉の前に立ち、両脇を持って立たせると、胸元と股間を持って一気にリフトアップする。
「あっ、くぅっ!」
 高く掲げられ、バストと秘部を弄られる。高所の恐怖に身が竦み、抵抗も弱くなってしまう。
「や、やめて・・・そんなとこ触らないで・・・くぅっ」
 虎丸はただ差し上げているだけではなく、軽く揺することで微妙な振動を与えてくる。
「ぅぅっ、やめて! 放して!」
 力が乗らない状態ながら、右手で虎丸の左腕をバチバチと叩く。虎丸はそれが鬱陶しくなったのか、抱え上げ続けるのが面倒臭くなったのか、沙莉をリングに放り投げる。
「くっ!」
 なんとか受身を取り、立ち上がる。しかし目の前には虎丸が居た。虎丸の手はブラを掴み、無造作に引っ張るとブラは虎丸の手に移っていた。
「きゃぁぁぁっ!」
 ブラが毟り取られ、沙莉の乳房が晒される。慌ててサスペンダーで乳首を隠し、その上から腕で押さえる。
(こ、ここまでされるなんて! これはセクハラっていうレベルじゃないわ!)
 沙莉は羞恥に頬を染め、胸元を隠す。そんな沙莉の態度など意にも介さず、虎丸はブラをリング下の黒服に渡す。
「それでは試合後、脱ぎ立ての房貞選手のブラをオークションに懸けたいと思います! 振るってご参加ください!」
 マイクでの説明に、会場から大きな拍手が起こる。
「ちょ、ちょっと待って、人のブラを勝手にオークションするだなんて!」
「ああ、あれは房貞選手の私物だったな。後でその分の代金は払うから問題ないだろう?」
 沙莉の抗議もレフェリーには通じなかった。
「こ、こんなことが許されるわけないでしょう! さっきまでのセクハラの件もあるし、主催者を告発するわ!」
 沙莉の言葉に、リング上だけでなく、会場全体が静まり返る。
「・・・なんて言った?」
 レフェリーの声が低くなる。その目が冷たい光を湛えている。沙莉は、自分が言うべきでない言葉を放ってしまったことに気づいた。
「こ、告発するって言ったのよ! 今までにもこういう試合で女性達を嬲ってきたんでしょう? 絶対に、許さないわ!」
 それでも、沙莉の正義感は言葉を取り消さなかった。しかし自分の言葉に熱くなり過ぎ、虎丸が背後に回ったことにまるで気づかなかった。気づいたときには両手を一纏めにして吊り下げられ、太ももを抱えられていた。
「お前、自分が何を言ったかわかっているのか? んん?」
 身動きできない沙莉にレフェリーが近づき、サスペンダーの脇から沙莉の乳房を掴むとゆっくりとほぐすように揉み込んでくる。
「あふっ・・・んんっ!」
 乳房を直に責められるのは堪らなかった。無意識によがり声めいたものを洩らしてしまう。
「なあ房貞選手、告発なんて馬鹿なことはやめておこうぜ。自分の無力さを思い知らされるだけだぞ」
 レフェリーの忠告染みた脅迫にも、沙莉は首を横に振る。
「い、嫌よ、絶対に貴方達を許さないんだから・・・あふぅっ!」
「そうかい、なら、心変わりするまで体に頼むまでだ」
 レフェリーは強弱をつけながら乳房を揉み、沙莉から快感を引き出そうとする。沙莉はそこまで快感は感じなかったものの、沙莉の体は刺激に応え、静かに乳首を立ち上げていく。
「んん? 乳首が硬くなってきたじゃないか」
 レフェリーはサスペンダーを持つと、軽く引っ張っては放し、沙莉の乳首を叩く。
「あっ、やっ、そんなの・・・くふぅっ」
 立ち上がった乳首をサスペンダーで叩かれると、心ならずも甘い声が洩れてしまう。
「おっ、気に入ってくれたみたいだな。じゃあもう少しこうやって・・・」
「き、気に入ってなんかいない! やめてっ!」
 レフェリーは暫くそうやって沙莉の乳首を苛めていたが、やがて飽きたのかサスペンダーから手を放し、虎丸に指示して沙莉をリングにうつ伏せの状態で押さえつけさせる。
「でっかい尻だな。二人で触ってもまだ余りそうだぜ」
 虎丸と一緒にヒップを撫で回し、レフェリーが下品な感想を漏らす。
「いやっ、気持ち悪い・・・!」
 沙莉は何とか逃れようともがくものの、虎丸の力が強く、背中を押さえられているだけだと言うのにまるで動けない。
「尻もいい感触だが、やっぱりここだな・・・」
 ヒップを撫でていたレフェリーの手が位置を変え、沙莉の秘部を触る。
「ひっ!」
 ホットパンツの上からとは言え、まさか大事なところまでを触られるとは思わなかった。沙莉は尚一層暴れるが、虎丸の力は少しも緩まず、ただ体力を消耗していく。
「んー、ズボンの上からじゃ全然感触がわからんなぁ。虎丸、引っくり返せ」
 頷いた虎丸が沙莉を引っくり返そうとした瞬間、沙莉が虎丸の下から這い出す。
「はっ、はっ、はっ・・・」
 やっとのことで立ち上がり、荒い息を吐く。胸元を押さえ、頬を染めた姿が男の欲情をそそる。
「上手く逃げたじゃないか。ほら、もっと逃げなきゃ捕まるぞ」
 レフェリーの煽るような言葉に合わせるように、虎丸がのそりと距離を詰めてくる。
(どうせ見えないのなら・・・)
 覚悟を決めた沙莉は、虎丸の手が右手首を掴む瞬間に集中し、手が触れたと感じたと同時に逆間接を極めながら投げを打つ。
(決まった!)
 と思ったのも束の間、自分が寝技に引き込まれ、両手と右足を捕らえられていた。
「ど、どうして・・・」
 虎丸は逆間接を極められたと見るや自ら飛ぶことでダメージを無くし、飛んだ力を利用して沙莉を寝技に引きずり込んでいた。左手で沙莉の右手を押さえ、右脚で沙莉の右脚を、左脚で沙莉の左手を捕らえ、動きを封じる。
「さぁて、お願いの時間の始まりだ。房貞選手がわかってくれるまでじっくり体にお願いしてやるからな」
 厭らしい笑みを浮かべたレフェリーが、しゃがみ込んで沙莉の顔を覗き込む。
「くっ・・・!」
 沙莉は唯一動かせる左足でレフェリーを蹴ろうとするが、無理な体勢からではまるで届かない。
「おっと、危ない危ない」
 わざとらしい言葉と共に左脚を押さえ込まれ、四肢を拘束されてしまう。
「くっ、放して、放しなさいよ!」
「まだそんな口を利くのか? しょうがない・・・そんな房貞選手には、こういう責めが必要だな!」
 レフェリーはサスペンダーを掴み、手荒く左右に広げる。
「きゃぁぁぁっ!」
 沙莉の悲鳴と共に、Eカップの美乳がぶるりとまろび出る。
「まだ乳首が立ってるな。ズボン越しの愛撫が気持ちよかったか?」
 レフェリーは乳房を軽く撫でた後、乳首を弾く。
「やめてって言ってるでしょ! 絶対に許さないんだから・・・あぅぅっ!」
 沙莉の抗議は乳首を潰されることで遮られた。
「これだけじゃまだわかって貰えないか・・・なら、こういうのはどうだ?」
 レフェリーの手でホットパンツのフックが外され、ジッパーが下ろされる。
「あ、ああ・・・」
 まさかそこまでされるとは思わなかった沙莉は、呆然となってしまう。しかしそれだけでは終わらず、レフェリーの手が秘部へと伸び、撫で回してくる。
「いやぁぁぁ・・・!」
 秘所を弄られ、悲鳴を上げる。
「なんだ、処女でもあるまいし、そこまで嫌がらないでもいいだろう?」
「そこを触られれば、女の人は誰だって・・・あくっ」
 どうにかしてやめさせようともがく沙莉だったが、虎丸の拘束は少しも緩まなかった。
「下着の感触もいいが、やっぱり生で味わいたいな」
 そう言うと、レフェリーの手が下着の中にまで潜り込んでくる。
「いやっ、いやっ、いやぁっ!」
 直接秘部を弄られるおぞましさに、沙莉はあられもない叫びを上げた。それで責めをやめるレフェリーではなく、淫らな責めで沙莉を苛み続けた。

「そろそろわかってくれたかい?」
 沙莉を責める手を止め、レフェリーが沙莉の顔を覗き込む。
「ぜ、絶対に、許さないんだから・・・あぁぁっ!」
 それでも沙莉はギブアップをしなかった。筋金入りの正義感が彼女を支えていた。しかし、それは男達の欲望に身を晒し続ける結果となっていた。
「やれやれ、ここまで強情だとはな。虎丸、もう終わらせていいぞ」
 レフェリーの声に虎丸が頷き、技を掛け直そうとしたそのとき、沙莉の膝が虎丸の左手を打ち、怯ませた。同時に肘で虎丸の脇腹を打ち、漸く拘束から逃れることに成功する。
 ロープ際まで転がり、ロープを掴んで立ち上がる。そうでもしなければ、立つことすら辛かった。
(でも、絶対諦めない。こいつを倒して、女の子たちの無念を少しでも晴らさないと!)
 サスペンダーを直して虎丸を睨み、前へ出ようとした瞬間、
「あっ」
 疲労からか、沙莉の膝が崩れる。しかし、その偶然が虎丸の技の正体を見破らせた。
 膝が曲がることで虎丸の手の動きを違う角度から見ることができ、動き出しのスピードと伸びてくるときのスピードがまるで違うことがわかった。
(そうか、初速のスピードを脳に刷り込んで、実際は加速することで判断を狂わせていたのね)
 初速とそれ以降のスピードの違い。それが見えない動きの正体だった。沙莉は膝が崩れた体勢から前転で虎丸の脇を抜け、距離を取って立ち上がる。
 虎丸がのそりと近づき、左手を掴みに来る。
(!)
 少し早いタイミングでかわすことで、虎丸の掴みから逃れることができた。
(やったわ、これなら・・・)
 そう考えたのも束の間だった。虎丸のタックルにあっさり捕まり、反り投げでリングに叩きつけられる。
「あぐぅ!」
 容赦のない投げに、沙莉の動きが止まる。そのため再び両手を一纏めにして吊り下げられ、太ももを抱えられた。
「どうやっても諦めないようだからな、気持ちよさにどこまで耐えられるか、試すとしようか」
 レフェリーはまず乳房を責めることに決め、軽く撫でる。
「まだ乳首が立ってるな。色々言い訳してたが、気持ちいいんだろ?」
「違うわ! ただの生理現象よ!」
「そうかそうか、生理的に感じやすい、ってことだな?」
 レフェリーは沙莉の乳房を揉みながら、固くなった乳首を捏ねる。
「ひぅぅっ!」
「くくっ、素直な反応で嬉しいぜ」
 レフェリーは沙莉の乳房を鷲掴みにし、強めに揉みしだく。人差し指と中指の間に乳首を挟み、捏ねながら乳房を揉む。
「いやっ、やめて、そんなの・・・!」
「気持ちいいんだろ? 正直になれよ」
「違う、そんなんじゃない! 貴方達に触られたからって・・・あふぅっ!」
 あくまで快楽を認めない沙莉に、レフェリーが暗い笑みを浮かべる。
「それじゃあ、ここに直接聞くか」
「そんな・・・あぁぁっ!」
 レフェリーの右手が下着の中に入り、蠢く。
「やめて・・・やめてぇっ!」
 レフェリーの指が秘裂の中に潜り、掻き回す。レフェリーの指が動くたび、淫らな水音が沙莉の耳に届く。レフェリーは指を抜くと沙莉の前に翳し、わざとらしく尋ねる。
「ほれ、この濡れた指はなぜだ? ん?」
「そ、それは・・・ううっ・・・」
 理由を言える筈もなく、沙莉の顔が快楽と羞恥に赤らむ。
「お前にもわからないなら、観客の皆さんに判断して貰うとするか」
 レフェリーの右手が下着に掛かり、焦らすようにゆっくりと下ろしていく。その間にも左手は沙莉の乳房を揉み、乳首をつついている。
(嘘、そこまでするの!? そんな・・・)
 見られたくない、でも負けを認めたくもない。迷う沙莉だったが、乳房と乳首に与えられる刺激と、羞恥には勝てなかった。
「・・・ギ、ギブアップ」

<カンカンカン!>

 敗北を認めた沙莉の耳に、無情なゴングの音が響く。快楽責めに屈した沙莉の目には、悔し涙が光っていた。


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