【第五十七話 栗原美緒:レスリング+キックボクシング 其の三】

 犠牲者の名は「栗原美緒」。19歳。身長162cm、B87(Eカップ)・W62・H87。肩までのセミショートと切れ長の目が特徴的だ。その顔立ちは美少女と言っていいが、芸能人ではない。高校生の時にレスリングでインターハイ優勝し、天才少女と呼ばれた。レスリングの才能に加え、その凛とした美貌で一躍アイドルとなり、マスコミにも大きく取り上げられたほど。
 現在は大学生だが、一時期レスリングは引退していた。しかし現在は大学のレスリング部に所属し、キックボクシング部にも顔を出して打撃の練習も積んでいる。
 過去に二度<地下闘艶場>に参戦し、二度とも敗北を喫している。今回は三度目となる登場だったが、なぜか美緒に気負いは見られなかった。


 今日美緒に用意された衣装は、サッカー日本代表ユニフォームの青いレプリカだった。ただしTシャツの丈が少し短く、おへそがちらりと見えるようになっている。
「よかった、今日の衣装は少しましね」
 過去に参戦したときの衣装は露出度の高いものばかりだった。それに比べ、今回の衣装はおとなし過ぎる。
「・・・何か仕掛けがあったりする?」
 引っ繰り返したり裏返したりして確認してみたが、別に変わったところはなさそうだった。完全に疑いを捨てたわけではなかったが、美緒は衣装に着替えて入場の合図を待った。

 花道に姿を現した美緒に、観客席から卑猥な声援が飛ぶ。久しぶりに見たアイドル並みの美貌に、興奮そのままに叫ぶ者もいる。美緒はそれらを黙殺し、リングへと上がった。

(あれ、今日の相手って女の人?)
 リングに待っていたのは、いつものレフェリーと女性選手だった。こちらの女性はサッカー日本代表の白のレプリカを身に着けている。
「赤コーナー、『M』、唐辻(からつじ)巳詩夜(みしよ)!」
「唐辻巳詩夜」。20歳。身長164cm、B89(Eカップ)・W61・H84。前髪ともみあげは長く伸ばし、後ろは首まででカットしている。前髪で目線を隠しているが、淫靡で陰気な空気を纏っている。
「青コーナー、『アマレス界のアイドル』、栗原美緒!」
 美緒の名前がコールされると、観客席から拍手が起こる。しかし観客の視線は美緒の美貌、ユニフォームを押し上げるバストとヒップ、剥き出しの太ももなどに集中していた。
(まったく、いつもながら嫌な雰囲気)
 美緒は顔を顰め、頭を振った。

 レフェリーは顔を緩ませながら、まずは巳詩夜のボディチェックを行う。太ももを撫で回した次にヒップを撫で、お腹を通ってからバストを弾ませる。
「あん、そんな風にされると感じちゃう・・・」
 レフェリーの厭らしさに満ちたボディチェックだというのに、巳詩夜は目を潤ませて腰をくねらせた。
「そうかそうか、ここをこんな風にされると、どうだ?」
「いい・・・でも、今はこれくらいで・・・」
 巳詩夜は秘部で動いていたレフェリーの手をそっと外し、美緒へと顔を向ける。その目に込められた光は、美緒の背筋を震わせた。

「久しぶりだな栗原選手。元気にしてたか?」
 巳詩夜から離れたレフェリーが、今度は美緒のもとへと向かう。
「・・・また変なことするつもり?」
「何を言っているのかわからんなぁ。今からするのはボディチェックだぞ?」
 顔は緩んでいたが、レフェリーはユニフォームの上から軽く押さえる程度のボディチェックを行う。
(ま、このくらいなら我慢して・・・!?)
 気を抜きかけたところで、レフェリーの手がバストを弾ませる。
「ちょっと!」
「少し当たっただけじゃないか。そう目くじら立てるなよ」
 レフェリーはにやりと笑うと、試合開始の合図を出した。

<カーン!>

(まったく、毎回毎回あのエロレフェリー!)
 レフェリーの行為に怒りが沸くが、試合が始まってしまったため、無理やり気持ちを切り替える。
(女の人相手か・・・本気でやっても大丈夫かしら)
 高校レスリング界では絶対女王として君臨した過去を持ち、<地下闘艶場>では男性選手とも遣り合える実力がある。そんな美緒でも、目の前の女性の実力を測りかねていた。<地下闘艶場>に上がる以上それなりの実力は持っているのだろうが、男性選手に仕掛けるくらいの力で行ってもいいのか、その判断ができない。
「うふふ、栗原美緒ちゃんと試合・・・嬉しい・・・」
 動かない美緒に、巳詩夜が一歩距離を詰める。また一歩間合いを詰め、美緒に右手を伸ばしてくる。
(ええい、どうにでもなれ!)
 巳詩夜の右手を掴み、掴んだ瞬間体を回転させながら投げを打つ。美緒の体ごと巻き込んだ逆一本背負い投げに、巳詩夜が背中からリングに叩きつけられる。しかも美緒は自分の体を預け、自分の体重も使って威力を上げていた。
(あっちゃ、やり過ぎちゃったかな)
 後悔が脳裏を過ぎったが、そんな心配は杞憂だった。
「痛い・・・痛いけど、いい・・・」
(え、な、なにこの人)
 かなりいいタイミングで投げることができたため、威力も高かった筈だ。それなのに、巳詩夜の口から洩れるのは苦鳴ではなくうっとりとした口調だった。
「今度は、私が責める番・・・」
 巳詩夜の手が、美緒の下からバストを触る。
「うふふ、栗原美緒ちゃんのおっぱい・・・柔らかい・・・」
 触るだけでは終わらず、美緒のバストを揉んでくる。
「え、ちょ、どこ触ってるのよ!」
「どこって・・・栗原美緒ちゃんのおっぱい・・・」
「くっ!」
 巳詩夜の手を弾き、転がって距離を取る。
(やっぱり<地下闘艶場>ってことね。女性選手が相手だからってセクハラがない、なんてことないんだ)
「あん、逃げられちゃった・・・」
 巳詩夜がゆっくりと立ち上がる。まるで操り人形が糸で持ち上げられたかのような、違和感のある動きだった。
「やっぱり、栗原美緒ちゃん・・・強いね・・・」
 前髪に隠されている巳詩夜の目が光った。
「行くよ・・・」
 低く構えた巳詩夜が、ゆらりと前に出る。否、揺らぐような動きだと見えたタックルが、気づいたときには目前まで迫っていた。
「!」
 しかし、美緒も即座に反応して上から体を被せて足を取られないようにする、「がぶり」の体勢になる。
「うふふ・・・」
 巳詩夜が含み笑いを洩らしたかと思うと、美緒の視界は上下反転していた。
「え? なに? あぐっ!」
 巳詩夜が美緒を上に乗せたまま立ち上がり、背中からリングに落としたのだった。
(しまった、油断した!)
 痛みを堪えて巳詩夜から離れようとしたが、巳詩夜は巧みに体を移動させ、美緒を逃さない。
「逃げちゃ、駄目・・・」
 巳詩夜の右手がTシャツの裾から潜り込み、下着の上から美緒のバストを掴む。
「ま、また人の胸触って! やめなさいよ!」
「嫌・・・やめない・・・」
 巳詩夜は美緒の抵抗を巧みに封じながら、美緒のバストを揉み続ける。
「これもいいけど・・・やっぱり、生・・・」
 そう呟いた巳詩夜がブラのホックまで外し、ブラの隙間から侵入して乳房を直に揉んでくる。
「ちょっと、そんなとこまで・・・んぁっ!」
 巳詩夜の巧みな攻めに、美緒が喘ぐ。美少女同士が絡み合う様に、観客席から唾を飲み下す音も聞こえる。
「これが栗原美緒ちゃんのおっぱい・・・柔らかいのに弾力もあって・・・一級品・・・」
 巳詩夜はうっとりした口調で、美緒の乳房を揉み続ける。時折乳首も転がし、刺激する。
「んぁっ! 駄目、変なとこ触らないで!」
「ここは嫌? なら・・・」
 巳詩夜の手が美緒の乳房から離れる。ほっとしたのも一瞬だった。
「ほら、脚も広げちゃう・・・」
 巳詩夜の手は美緒の太ももにかかり、いきなり大きく開く。
「な、ちょっと!」
 美緒の抗議にも動きは止まらず、巳詩夜は美緒の股間に手を這わせ、緩い刺激を送ってくる。
「嫌だ、そんなところ触らないでよ!」
「駄目、もっと触るわ・・・」
 巳詩夜の指がズボンの足側の穴から侵入し、下着の上から秘部を撫でる。
「どうした栗原選手、ギブアップか?」
 美緒の意識が自分の秘部に行ったと見たレフェリーが、ギブアップの確認をしながらバストを揉む。
「ちょっと、レフェリーまでなにして・・・んあぁっ!」
「気にするな、意識があるかどうかの確認だ」
「また勝手なことを・・・あ、そこは!」
 バストを揉んでくるレフェリーに意識が行っている間に、巳詩夜が直に秘裂を撫で回してきた。
「うふふ、栗原美緒ちゃんのあそこ、まだ初々しい感じ・・・まだヴァージン・・・?」
「駄目よ、そんなとこ・・・くぅんっ!」
「それじゃ、そろそろブラを拝見するか!」
 レフェリーは美緒のユニフォームを鎖骨までずり上げる。勢いよく捲くったため、ブラも一緒にずれて乳首が露わになる。
「綺麗な色をしてるじゃないか。ヴァージンってのは本当みたいだな」
「やめて! こんなこと・・・ふぁっ!」
 レフェリーから乳首を摘まれ、抗議も止められる。
「うふふ・・・初物・・・栗原美緒ちゃんの初めて、もらってもいい・・・?」
(なっ!)
 この巳詩夜の言葉に処女喪失の危機を感じ、美緒に闘志が戻る。
「このっ!」
 巳詩夜の腕を太ももで挟み、体を捻りながら関節技に移行する。
「あ・・・駄目・・・」
 巳詩夜も防ごうとするが完全には防げず、腕を捻られる。
「でも・・・逃げる・・・」
 咄嗟に回転しようとした巳詩夜だったが、美緒の反応のほうが速かった。
「これで、どう!」
 美緒は巳詩夜を胴締めスリーパーに捕らえ、喉元を容赦なく絞め上げる。
「ああっ、苦しい・・・でも、それがいい・・・」
(ひぃぃっ!)
 巳詩夜の反応に内心悲鳴を上げながらも、美緒は技を緩めようとはしなかった。巳詩夜は口から涎を流しながら、自らのバストと秘部に手を伸ばし、自らを慰める。
「あ、イク、イッちゃう・・・! だめ、まだだめなのにぃ・・・」
 巳詩夜は何度か痙攣すると、ぐったりと脱力した。判断に迷っていたレフェリーだったが、巳詩夜の口から泡が吹き出ているのに気づき、慌てて試合終了の合図を出す。

<カンカンカン!>

 ゴングが鳴らされても、美緒は技を解こうとはしなかった。レフェリーが試合終了を告げるがそれでも解こうとせず、最後は黒服から無理やり技を解かされた。
「え・・・え? 終わったの?」
 レフェリーの表情と会場の雰囲気、それに横たわる巳詩夜の姿を見て、美緒がようやく現実を受け入れる。
「・・・疲れた」
 <地下闘艶場>で何人もの男性選手と闘ってきたが、ここまでの変態と闘ったことはなかった。心身共に疲れきった美緒の視界の端に、もぞりもぞりと動くものがあった。
「栗原美緒ちゃん・・・もう一回、しましょ」
 まるでゾンビのように、四つん這いのままにじり寄ってくる巳詩夜だった。
「・・・いやぁぁぁっ!」
 美緒はその顔面に手加減抜きのキックを入れると、一目散にリングから逃げ出した。

 控え室に飛び込んでシャワーを浴びることもせずに着替え、女性黒服の挨拶も聞かずに会場から飛び出す。美緒は自宅に帰りつくまで一度も後ろを振り返らなかった。


 その後、美緒は何日にも渡って夢でうなされた。その夢は決まってテレビの中から巳詩夜が四つん這いで這い出してくるという、有名なホラー映画のようなものだったという。


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