【第七十二話 谷早霧絵:護身術 其の二】

 犠牲者の名は「谷早霧絵」。23歳。身長158cm、B86(Eカップ)・W55・H88。背中まである黒髪をいつもポニーテールにしている。細めの目のせいで、冷たい印象を与える美女。豊かな胸、引き締まった腰、張り出したヒップと男をそそるプロポーションだが、現在付き合っている異性はいない。
 前回の<地下闘艶場>での闘いの後、霧絵は勤めていた会社を辞めた。あのようなセクハラがまかり通るリングに、そうと知りつつ霧絵を上げた社長に嫌気が差したからだ。早速職探しを行う霧絵だったが、何故かどこを受けても門前払いの扱いを受けた。見る見るうちに貯金も減っていき、憂慮する霧絵に再び<地下闘艶場>から参戦の要請が届いた。背に腹は替えられず、霧絵は欲望のリングへと向かった。


「これは一体なんの冗談ですか!」
 控え室の中、怒号を上げているのは霧絵だった。手渡されたものを握り締め、体を細かく震わせている。
「今日の衣装だと先程申し上げましたが」
「こんな衣装で闘いなどできません! 他のものを用意してください!」
 更に声を荒げる霧絵だったが、黒髪の女性黒服は小揺るぎもしなかった。
「こちらが用意したものを着用して試合をする。契約書にもそう書かれておりますし、納得してサインして頂いた筈ですが」
 確かに契約書には全て目を通し、衣装の項目にも(不満はあったが)OKを出した。あのとき、ボディチェックの項目を外させただけで満足した自分に腹が立つ。
「・・・せめて、Tシャツくらいは」
「申し訳ありませんが、認められません」
 女性黒服は霧絵の希望を全て跳ね除け、控え室を後にした。
「・・・勘弁してよ」
 顔を覆って俯いた霧絵に、応える者は誰も居なかった。

 ガウン姿で花道を進む霧絵に、前回と同じ、否、前回以上の歓声がぶつけられる。ガウンを羽織った霧絵は、早足でリングへと向かった。
 リングに待っていたのは、やはり男性選手だった。男性選手と並んでにやけた笑みを浮かべるレフェリーを睨みつけ、霧絵はリングに上がった。

「赤コーナー、『ハウンドウルフ』、ジグ・ソリタード!」
 霧絵の相手は野性味溢れるジグだった。久々の登場ではあるが、観客席から応援の声が飛ぶ。
「青コーナー、『美人秘書』、谷早霧絵!」
 自分の名前がコールされ、霧絵は覚悟を決めてガウンを脱いだ。その下には、バスタオル一枚を巻きつけただけの肢体があった。この露出度の高さに観客が大いに沸く。
 胸元は隠されているものの、胸の谷間までは隠せていない。両脚も膝上5cmほどまでしか隠せておらず、霧絵の美脚がよくわかる。観客の視線が気になったのか、霧絵はバスタオルの胸元を更にきつく縛り、その上から手で押さえる。
(こんなバスタオル一枚で衣装だと言い張るなんて!)
 今回は霧絵の提案でボディチェックは行われないため、即座にゴングが鳴らされる。

<カーン!>

(どうしよう、この格好で闘うのはさすがに・・・)
 バスタオル一枚を巻きつけた霧絵の肢体に、観客の視線が突き刺さってくる。羞恥と動きにくさが霧絵を縛る。
(でも、勝たないと。生活費が・・・っ!)
 いきなりジグが突進してきた。足を抱え込もうという狙いの低いタックルに、霧絵が即座に反応する。
「えっ?」
 しかし、ジグの動きは霧絵の予想を裏切った。ジグはリングについた両手で制動をかけ、回転蹴りを放ってきたのだ。頭上から落ちてくるジグの踵を辛くも避けた霧絵だったが、それでもジグの脚を捕らえにいく。
「っ!」
 しかしジグは素早くリングを蹴り、飛び下がっていた。
(速い!)
 ジグの動きは敏捷な野生動物を思わせ、しかも軌道が一定しない。
(それなら)
 足の前後の幅を普段よりも開き、低く構える。攻撃される面を減らすための構えだったが、レフェリーの言葉が邪魔をする。
「お、パンツが見えそうだぞ」
「っ!」
 慌てて裾を押さえ、距離を取る。その隙をジグが捉えた。両手両足でリングを蹴り、一気の跳躍から右手を振る。
「あっ!」
 僅かにジグの爪がバスタオルを掠り、引き裂いていた。バスタオルの切れ目から霧絵の素肌が覗く。そこに気を取られ、またもバスタオルを切られてしまう。
(このままじゃジリ貧だわ)
 ジグのスピードに翻弄され、主導権を握れない。ならば。
(・・・恥ずかしいけど、我慢!)
 霧絵の手がバスタオルの結び目に掛かり、外す。この行動に、観客の視線が一斉に集中した。
「なんだ、ビスチェを着けてたのか」
 がっかりした様子でレフェリーが呟く。肩紐が見えなかったためブラを着けていないと勝手に思い込んでいたが、霧絵はブラではなくビスチェを身に着けていた。
 しかし、会場内は一気に盛り上がった。素晴らしいプロポーションの美女が下着姿で、しかも羞恥に頬を染めて立っているのだ。
 ジグの視線が霧絵の身体を這いずり回り、嬉しげに舌舐めずりする。
 ジグの体がいきなり沈み、一瞬で距離を詰めていた。雄叫びと共に振り上げられた右手は、ビスチェには届かず、バスタオルに捕らわれていた。
「ふっ!」
 霧絵が気合と共にバスタオルを捻り、ジグの右肘に膝を当てながら体重を乗せた。
「グギャァァァッ!」
 右肘を脱臼させられたジグがキャンパスを掻き毟る。レフェリーが慌てて試合を止めた。

<カンカンカン!>

「・・・ふぅ」
 ため息を吐いた霧絵は、思い出したかのようにバスタオルを身体に巻いた。
「いやいや、相変わらず強いなぁ、谷早選手」
 わざとらしい拍手をしながら近寄ってきたのはレフェリーだった。その視線は霧絵の身体を眺め回している。
「試合は終わったんですから、帰らせて貰います」
 レフェリーの視線を振り切るようにリングを降りようとした霧絵だったが、レフェリーの呼びかけに立ち止まる。
「まあ待てよ。もう一試合してみないか?」
「・・・は?」
 この男は何を言っているのか。反論する前にレフェリーが喋りだす。
「もし次の勝負に勝てば、ファイトマネーは全部で三試合分を出す。どうだ?」
 レフェリーの提案に、咽喉まで出掛かった拒絶を飲み込む。もしそれだけのファイトマネーが手に入れば、次の就職まで一息つける。
「・・・わかったわ、受けます」
 霧絵が頷くと、レフェリーの顔に嫌な笑みが浮かんだ。

(え、女の人?)
 花道に姿を現した人影を見て、霧絵は驚いた。また男性と闘わされるものとばかり思っていたからだ。
 リングに上がった女性は、淫らな笑みを浮かべていた。

 対戦相手が揃い、再び選手コールが行われる。
「赤コーナー、『M』、唐辻(からつじ)巳詩夜(みしよ)!」
「唐辻巳詩夜」。20歳。身長164cm、B89(Eカップ)・W61・H84。前髪ともみあげは長く伸ばし、後ろは首まででカットしている。前髪で目線を隠しているが、淫靡で陰気な空気を纏っている。
 以前栗原美緒と対戦し、レスリングのインターハイチャンプにまでなった美緒を寝技で苦しめている。今日は異国の踊り子のように、派手で過剰な装飾がついたビキニ水着を着用している。その爪は全て黒く塗られていた。
「青コーナー、『美人秘書』、谷早霧絵!」
 切れ目が入ったバスタオルを無理に巻きつけた霧絵は、あちこちから素肌が覗いていた。その姿は扇情的で、観客の視線を集めてしまう。
 今回もボディチェックは行われず、レフェリーはすぐにゴングを要請した。

<カーン!>

「うふふ・・・霧絵ちゃん、強いのね・・・」
 巳詩夜が浮かべる笑みに、霧絵は危険なものを感じていた。
(女の人だからって油断できないわ。もしかして、この人もセクハラを・・・)
「うふふ!」
 いきなり伸ばされた巳詩夜の手が、バスタオルを掴んでいた。しかし霧絵も素早く反応し、巳詩夜の手を弾く。否、弾いた手首を掴んでいた。
「はっ!」
 気合いと共に、巳詩夜をリングに叩きつける。背中から落とされた巳詩夜はキャンパスで一度バウンドし、大の字になる。
(まずい、やり過ぎた?)
 罪悪感から、巳詩夜の様子を見ようとしゃがみ込んだ瞬間だった。
「・・・うふふ」
 含み笑いを洩らした巳詩夜の脚が絡みついてきた。
「しまっ・・・!」
 足を刈られ、寝技に引き込まれる。慌てて立ち上がろうとしたときには、既に巳詩夜の手足が絡みついていた。巳詩夜の脚で太ももを纏めて巻かれ、頭上に上げさせられた両腕を左腕で抱えられている。肩が極められているため、自由に動かせない。
「油断・・・した・・・?」
 巳詩夜の吐息が耳をくすぐる。それだけでは終わらず、巳詩夜の右手がバストの剥き出しとなっている部分をつつく。
「ちょっと、そこは!」
「大丈夫・・・これだけじゃ終わらない、から・・・」
 巳詩夜の手がバスタオルに掛かり、優しく揺らしだした。
「あっ、駄目、ずれちゃう!」
「うふふ・・・」
 霧絵が焦る声を上げるのが嬉しいのか、巳詩夜はわざと弱い力でバスタオルを揺する。しかし徐々にではあるがバスタオルが緩み、ずれていく。
 霧絵の胸の谷間が露わになり、ビスチェが覗き、臍まで見えてしまう。遂にはバスタオルが全て開き、パンティまで露わになってしまう。
「うふふ・・・どう?・・・恥ずかしい?・・・」
「恥ずかしいに決まって・・・っ!」
 霧絵の怒りの言葉は、巳詩夜がバストを揉み始めたことで遮られた。
「な、なにをして・・・」
「なに、って・・・気持ち、いいこと・・・」
 巳詩夜はバストを揉むだけでなく、乳首の辺りも刺激してくる。
「あっ、そんな・・・!」
 女性に性的な責めを加えられる。初めての経験に、霧絵の頬が紅潮する。霧絵が身を捩るたび、観客席から粘つく視線が飛んでくる。
(こ、これ以上恥ずかしいことされたくない。もう一試合分のファイトマネーは貰ってるんだし、ここはギブアップしても・・・)
 そんな霧絵の思考を読んだのか、レフェリーが冷たく告げる。
「今ギブアップするなら、ファイトマネーは全額没収とさせて貰うからな」
(そんな、今そんなこと言うなんて!)
 今の経済状態では、ファイトマネーが出なければどうなるか。干上がるのは時間の問題だ。身を捩る霧絵の胸の上を、巳詩夜の手が這う。
「・・・それじゃ・・・ご開帳・・・」
 巳詩夜の手がビスチェのホックに掛かり、滑らかに外す。初めて露わにされた霧絵の乳房に、観客席から盛大な拍手と野次が飛ぶ。
「あっ、なっ!」
「レフェリー、はい・・・」
 巳詩夜は外したビスチェをレフェリーに渡す。受け取ったレフェリーは嬉しそうに匂いを嗅いだ。
「仄かに香る香水がいいなぁ。いい趣味してるぜ谷早選手」
 そう言いながら、目は露わにされた霧絵の乳房に釘付けとなっている。
「うふふ・・・」
 その剥き出しの乳房を巳詩夜の指が這う。黒く塗られた爪が乳首を引っ掻く。
「・・・辛抱堪らん!」
 霧絵のブラをリング下の黒服に渡したレフェリーは、いきなり霧絵の乳房を鷲掴みにした。
「ちょっと! レフェリーまで!」
 抗議の声を上げる霧絵だったが、レフェリーの乱暴な揉み具合に眉を顰める。
「・・・うふふ」
「ふぁっ!?」
 レフェリーに乳房を奪われた形となった巳詩夜は、霧絵の太ももを撫で回し始めた。
「やめて、何か気持ち悪い!」
「そう・・・なら・・・こっち・・・」
 巳詩夜の手が太ももから離れ、下着の中に潜り込む。
「っ!」
 そのまま秘裂をなぞり、淫核を転がしてくる。
「あっ・・・やぁぁっ!」
 霧絵が叫び声を上げても、否、上げれば上げるほど巳詩夜の責めが激しくなる。
「そういや、谷早選手の生のおっぱいに触るのは初めてだな」
 霧絵の乳房を揉みながら、レフェリーがにやける。
「ギブアップしたければしてもいいぞ。手ぶらで帰りたいのならな」
「くぅっ!」
 羞恥と望まぬ快感にギブアップの言葉が零れそうになるが、今ギブアップするわけにはいかない。今日のファイトマネーがなければ、来月の生活すら危ういのだ。身を捩るしかできない美女の姿に、観客の視線が突き刺さる。
「谷早選手のおっぱいも堪らんが、唐辻選手のも味わうとするか」
 レフェリーは右手で霧絵の乳房を揉みながら、左手で巳詩夜のバストをつつく。
「あっ・・・レフェリー・・・突然、すぎ・・・」
 いきなりのことに驚いたのか、巳詩夜の拘束が僅かに緩んだ。
「・・・せいっ!」
 その瞬間を捉え、霧絵は素早い回転で巳詩夜の拘束から逃れていた。
「あっ・・・」
 伸ばされた巳詩夜の手を思い切り弾いた瞬間、なぜか観客席が大きく沸いた。
「・・・あ」
 巳詩夜の手を弾いた霧絵の手が、偶然にも巳詩夜のブラに掛かり、奪い取っていたのだ。
(しまった、返さなきゃ・・・ううん! ここまでされたもの、同情なんてしないわ!)
 霧絵は巳詩夜から奪ったブラを、自らの胸に付け直した。
「人の衣装を取るなんて・・・霧絵ちゃん、酷い・・・」
 そう言いながらも、巳詩夜は乳房を隠そうともしなかった。両手をだらりと下げたまま霧絵に歩み寄る。
「こんな酷いこと、するんだもの・・・もっと酷いこと、仕返しても・・・いいよね?」
 巳詩夜の笑みに、霧絵の背筋で寒気が奔る。
「うふふ・・・仕返し・・・するから!」
 霧絵のパンティ目掛け、巳詩夜の右手が伸ばされる。パンティに掛かる寸前、霧絵の左腕が絡み、後ろ手に捕らえていた。
「ギブアップしなさい!」
 容赦なく捩じ上げながら、霧絵が鋭く叫ぶ。
「これくらいの痛みで・・・負け・・・認められない・・・」
 かなりエグイ角度で右肩を極められているというのに、巳詩夜の声にほとんど変化はなかった。
「このまま我慢するなら、遠慮なく折るわよ?」
「・・・そんなハッタリ、通じな、ぃ・・・っ!」
 巳詩夜の耳に響いた鈍い音と同時に、凄まじい激痛が右肩を襲った。
「あがあぁぁぁあっ!」
 脱臼の痛みに、巳詩夜の体が魚のように跳ね回る。
「言ったじゃない、遠慮なく折る、って」
 さすがに折ることはせずに肩の関節を外すまでに留めたが、霧絵の呟きは苦かった。
「痛い痛い痛いいたいいたいいたいイタイイタイイタイィィィッ!」
 突然巳詩夜が跳ね起きた。前髪に隠された両目が爛々と光っている。
「うフ、フフふフッ! この痛み、こノ快感! モット、もぉっとちょォだぁぁぁイっ!」
 右腕は肩からだらりと下がり、口の端から涎を流しながら、それでも霧絵から目線を逸らさない。
「レフェリー、これ以上は危険だわ! 止めなくていいの?」
「・・・本人がやる気なんだ、止められんよ」
 巳詩夜を見つめながらレフェリーが呟く。その視線は揺れる胸元に釘付けになっていた。
「うフふぁファッ!」
 油断はしていなかった。それなのに、気づけば巳詩夜の片腕タックルでリングに倒されていた。
「くっ」
「逃がサなぁイ!」
 巳詩夜は右脚で霧絵の両腕を、左脚で霧絵の左膝を抱え込んでいた。
「うフふゥ・・・」
 熱い吐息を吐きながら、霧絵の秘部を撫でる。
「快感の、お裾分ケ」
「い、いらないわ!」
 幾ら霧絵が身を捩ろうとも、巳詩夜の関節技はびくともしなかった。
「そっ、か。これジャ、駄目、ヨネ」
 巳詩夜の左手が霧絵のパンティ内部に侵入し、直接秘部をなぞる。
「違う、そういう意味じゃ・・・あぅっ!」
「おー、色っぽい光景だな」
 巳詩夜の背後に移動したレフェリーが、責められる霧絵を見ながら巳詩夜の乳房を揉む。
「そレクらイじゃ、足らないノォ」
 切なげに身体をくねらせる巳詩夜に誘われたか、レフェリーはいきなり乳首を潰す。
「アハぁ! それ! それイイのぉ!」
「あぎぃぃっ!」
 突然霧絵が悲鳴を上げた。巳詩夜が霧絵の陰毛を引き千切っていたのだ。
「痛いデしょ!? でもね、コレが快感ニ変わる、の!」
「あぐぅっ!」
 再び陰毛を引き抜かれ、霧絵が苦鳴を洩らす。
「おいおい、ちょっとやり過ぎじゃないか?」
 相変わらず巳詩夜の乳房を揉みながら、レフェリーが呟く。
「・・・そう、かも? じゃあ、レフェリー・・・もっと、強く」
 なにが「じゃあ」なのかはわからないが、巳詩夜の誘いにレフェリーがさっそく反応する。
「こうか? これがいいのか?」
「うふふ・・・もっと、強く・・・して」
 先程まで霧絵の秘部を苛めていた巳詩夜の左手は、いつの間にか自らの秘部を慰めていた。
「・・・いいかげんに、しなさいっ!」
 霧絵の右脚が跳ね上がり、巳詩夜のこめかみを蹴り飛ばす。勢いよく倒れ込んだ巳詩夜をうつ伏せで押さえつけ、左腕を取る。
「これで、どう!」
 左肩を極めると同時に脱臼させる。
「あギィぃぃあぁァぁッ!!」
 人のものとは思えない苦鳴を上げ、巳詩夜がのたうつ。
「痛い! 痛過ギる! あァ・・・でも、いい! 感じル! 感じ過ぎちゃうぅぅぅっ!」
 僅かに手を動かすだけでも激痛が奔るというのに、巳詩夜は自らの秘部を慰め始めた。
「痛いぃぃっ! 痛、くて・・・イッちゃうぅぅぅ・・・っ!」
 その叫びと共に、巳詩夜の両目が裏返り、白目を剥く。

<カンカンカン!>

 両腕をだらりと下げ、口からは泡を吹き、痙攣する巳詩夜を見たレフェリーはさすがに試合を止めた。
「唐辻選手、しっかりしろ」
 レフェリーは巳詩夜のそばにしゃがみ込むと、いきなり乳房を揉み始めた。
「お、ちゃんと心臓は動いてるな」
 うんうんと頷きながら、乳首までも弄りだす。
「・・・なにを、してるのっ!」
 背後から、バスタオルでレフェリーを弾き飛ばしたのは霧絵だった。
「まったくもう」
 霧絵は巳詩夜の上にバスタオルを掛けると、そそくさとリングを後にした。水着のブラにパンティ姿という美女に、会場からは卑猥な野次が飛ばされ続けた。


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