【第九十四話 九条雪那:薙刀 其の二】

 犠牲者の名は「九条雪那」。20歳。身長160cm、B97(Iカップ)・W58・H86。背中で一纏めにされた美しく長い黒髪。その名の通り雪を思わせる白皙の肌。優しい目元、すっと伸びた鼻梁、可愛らしい桃色の唇。愛らしい顔立ちは見る者を惹きつけずにはおかない。幼い頃から嗜みとして華道、茶道、乗馬、習字などを習い、護身の術として薙刀を習った。その腕前は師範クラス。
 九条グループ総帥を祖父に持ち、蝶よ花よと育てられた生粋のお嬢様。しかし祖父の薫陶を受け、芯の強い女性へと育った。祖父の権勢は「御前」に引けを取るものではなかったが、その祖父が昨年急逝し、九条グループは相続を原因とした身内争いで分裂、見る間に衰退して行った。
「御前」の策略で高額の借金を背負った雪那が、<地下闘艶場>への出場要請を拒めるわけもなかった。


「・・・嘘、ですよね?」
 用意された衣装を見て、雪那はこれしか言えなかった。
「いいえ、今日の試合ではこれを着て頂きます」
 鬼島洋子は丁寧な言葉で侮蔑を包み、雪那を見下ろしてくる。
「それとも、これを着ずに試合を放棄しますか?」
 もし雪那が試合をしなければどうなるのか。それを知っていながら、否、知っているからこそ洋子は雪那を追い詰めてくる。
「・・・わかり、ました」
 視線を落とした雪那は、衣装へと力なく手を伸ばした。

 花道へと足を踏み出した途端、眩い照明が目を射る。観客席からは厭らしい野次や指笛も飛び、雪那の不快感を煽ってくる。木製の薙刀を携えた雪那は唇を結んで顔を強張らせ、淫辱が待つリングへと向かった。

「赤コーナー、『トータストンファー』、亀河健史!」
 雪那の対戦相手は亀河(かめがわ)健史(たけし)だった。以前ルシーラ・フォン・ディルクラントと対戦し、いいところなく膝を蹴り砕かれて敗北している。それを知っている観客からは小さくないブーイングが飛ばされる。亀河は不機嫌な表情でそちらを睨むが、特に何を言うでもなく木製のトンファーを玩ぶ。
「青コーナー、『ホワイトスノー』、九条雪那!」
 コールを受けた雪那だったが、なかなかガウンを脱ごうとしない。
「おいおい、九条選手。早くガウンを脱ぐんだ」
 レフェリーに急かされ、諦めた雪那はガウンを脱いだ。
(ぉぉぉぉぉっ・・・)
 その途端、会場がどよめいた。雪那が下着姿だったためだ。否、よくよく見ればシースルー生地のスーツを着ている。ネクタイだけはシルクの上質なものだが、シースルー生地に合わせると下着にネクタイだけに見え、逆に観客の興奮を煽る。
 レフェリー、亀河、観客。会場中の視線を浴びせられる雪那は、自然と両腕で身体を隠していた。
「さぁて、ボディチェックの時間だ」
 雪那の肢体をじろじろと眺め回しながら、レフェリーが歩み寄ってくる。
「ちょっと待ってください。今回、ボディチェックはなしと決めた筈です」
「はぁ? 俺は何も聞いてないぞ」
「そ、それに、こんな衣装のどこを調べる必要があるんですか」
「下着があるじゃないか。下着の中に隠してるかもしれないだろ?」
 雪那が何を言おうと、レフェリーは取り合おうとしない。
「でも・・・やっぱり、おかしいです」
 それでも雪那は諦めず、なんとかボディチェックを回避しようとする。
「あくまでもボディチェックを拒む、と言うんだな?」
 レフェリーの目が険しくなる。
「意味がありませんから」
「それじゃ、雪那お嬢様は失格になるな。ファイトマネーは払えないぞ。それに・・・『御前』からどんな罰を受けるんだろうなぁ」
 レフェリーの独り言めかした脅迫に、雪那は唇を噛む。レフェリーの言葉は言い掛かりに近いものだったが、雪那には受け入れるしか選択肢がなかった。
「・・・わかり、ました」
「最初からそう言っとけば、余計な時間も取らなくて済んだのにな。ほら、一度薙刀を置きな」
 レフェリーは衣装の上から透けて見える雪那の肢体をじっくりと眺めると、おもむろにその胸元へと手を伸ばした。
「相変わらず大き過ぎるおっぱいだな。『御前』に揉まれて、また大きくなったんじゃないか?」
 雪那のバストをじっくりと揉みながら、レフェリーが顔を覗き込んでくる。雪那は顔を背け、屈辱と胸に与えられる感触から目を逸らす。
「こうやって下から持ち上げると、ずっしりと重みが感じられるぜ」
 レフェリーは雪那の爆乳を下から支え、重みを確かめる。何度か上げ下げしてから、再び揉み始める。
(我慢しなくては。借金の返済を早めるために、たった何分か触られるだけだから)
「御前」の策略によって膨大な借金を背負わされた現在、月に一度「御前」の辱めを受ける身となっている。それを考えれば、今日の試合の恥ずかしさも耐えなければ。
「あっ!」
 突然レフェリーから秘部を触られ、思わず声を上げていた。
「どうした? ボディチェックは隅々まで行わなきゃならないんだぞ?」
 しかしレフェリーはわざとらしくボディチェックを主張する。
「で、でも、そんなところは」
「ん? ここは女独自の隠し場所だからな、じっくりと調べないといけないのさ」
 レフェリーの指が雪那の秘部を這い回り、雪那に恥辱と不快感を与える。
「それとも、試合放棄を選ぶか?」
 バストと秘部を撫で回し、レフェリーがにやつく。
(できるならそうしたい、でも・・・!)
 試合をしてファイトマネーを手に入れなければ、「御前」から受ける辱めは当分続く。それを思えば、耐える一手しかなかった。

「それじゃ、そろそろ試合を始めるかな」
 ようやく満足したのか、レフェリーは雪那の身体から離れた。
「ほら、お前さんの武器だ」
 レフェリーは薙刀を拾い、雪那のバストへと押し付ける。
「わかってます!」
 レフェリーの手から奪い取り、下段に構える。

<カーン!>

「噂には聞いてたが、すげぇ爆乳だな」
 シースルー越しのバストを見つめ、亀河がにたりと笑う。
(いつもいつも、殿方というのは!)
 コンプレックスである胸を無遠慮に見られ、怒りが湧き上がる。
「はぁっ!」
 怒りを薙刀に乗せ、横薙ぎの一撃を放つ。
「っとぉ!?」
 鋭い一撃に、亀河は慌てて飛び退った。しかし素早く掻い込まれた薙刀の突きが追いすがる。
「ちぃっ!」
 トンファーで弾くが、即座に次弾が飛んでくる。
 雪那の攻撃は実力なのか、怒りの所為か、鋭く亀河を追い詰めていく。
(このまま一気に決めます!)
 長引けばどんなセクハラを受けるかわからない。勝負を決める一撃を放とうとしたそのとき。
「!?」
 薙刀を振ろうとした先にレフェリーが居た。慌てて薙刀を止め、手元に掻い込む。
(何故そんなところに居るんですか!)
 他の女性選手ならば、容赦なくレフェリーごと攻撃していたかもしれない。しかし、優しい気性の雪那は、対戦相手以外への薙刀での攻撃を躊躇った。
「へっ、甘過ぎるお嬢さんだぜ!」
 雪那の攻めが途切れ、亀河の反撃が始まる。リーチは薙刀が圧倒的に勝るものの、間合い内に入り込まれてはトンファーの速度と回転力に防戦一方へと追い込まれる。
「おっほ、揺れてる揺れてる」
 亀河の指摘どおり、雪那が薙刀を振るうたび、下がるたび、身を捩るたびに、Iカップを誇る雪那のバストが派手に揺れる。
「おらぁっ!」
 トンファーが頭上から襲い掛かる。薙刀を掲げ、危うく受け止める。
「あぐふっ!」
 しかし、腹部に亀河の膝が突き刺さっていた。動きの止まった雪那の足を払った亀河は、諸共に倒れることで体重を浴びせる。鈍い音がして、雪那の体が苦悶のために体を折る。
「あ・・・ぐぅ・・・」
 痛みを堪える雪那を、亀河の視線が犯す。
「このまま触ってもいいが・・・おお、手近なもんがあるじゃねぇか」
 亀河はトンファーを放り出し、雪那の首を絞める。否、雪那の首からネクタイを毟り取るように外した亀河は、そのネクタイで雪那を後ろ手に縛り上げる。
「へへへ・・・」
 一度口元を拭い、盛り上がった胸元へと手を伸ばす。まずは撫でようとした手は止まらず、バストを勢いよく掴む。
「すげぇ、すげぇ、すげぇ・・・」
 同じ言葉をただ繰り返し、亀河は雪那のバストを捏ね繰り回す。
「い、痛い!」
 男の手で力一杯握られ、雪那の胸には痛みしか与えられない。
「触るとデカさがよくわかるぜ。手に余る大きさってのは初めてだ」
 そんな雪那の訴えなど気づかず、亀河は痕が残りそうなほどに握りしめる。
「こんだけの巨乳、直揉みしたらどんだけなんだろうな」
「遠慮すんな、したきゃしろよ」
 レフェリーからけしかけられ、亀河の顔が厭らしく歪む。
「そうだよな、したけりゃしていいんだよ」
 唇を舐めた亀河は、シースルースーツのボタンを外し始めた。
「や、やめてください」
 雪那の懇願は逆に興奮を煽り、亀河の目が吊り上がる。
「まどろっこしい!」
 二つ目を外そうとしたところで、亀河は生地を掴み、引き裂いた。
「あああっ!」
 例え透けて見えていたとしても、衣服を破られる恐怖で雪那は叫んでいた。
「それじゃ、この邪魔なブラも・・・」
 雪那の怯えなど目に入らず、亀河は雪那のブラに手を掛ける。
(このままでは、見られてしまう!)
 乙女の羞恥が爆発力となった。
「んんんっ!」
 リングを蹴り、その勢いで亀河を弾き飛ばす。そのまま転がって距離を取り、片膝立ちで体勢を整える。
(今のうちに、このネクタイを!)
 縛められたネクタイを取ろうするが、立ち上がりかけた亀河の姿が目に入る。
(急がないと! あ・・・は、外れない!)
 摩擦係数の低いシルク製ネクタイの筈だが、焦りが雪那の手を外させない。
「やってくれるじゃねぇかお嬢さんよ。だが、逃げもせず、ネクタイも外さずっていうのは、もっと触って欲しいってことだろ!?」
 言うが早いか、亀河は再び雪那を押し倒す。
「あうっ!」
 肩を強打した雪那が呻く。
「焦らすのが上手いお嬢さんだぜ」
 雪那の腹部に跨り、またも雪那の爆乳を掴んだ亀河は、ブラの上から揉み回す。
「こりゃまた滑らかな肌だ。お嬢様育ちは元が違うな」
 レフェリーは雪那の太ももを撫で回し、一人悦に入る。
(また人の身体を無遠慮に!)
 潔癖な雪那にとって、他人から身体を好きに弄られるのは嫌悪を掻き立てられる行為だった。しかし両手を縛られ、自分の背中で押さえている状況では逃げるのが厳しい。
「く、ううっ」
 何とか身を捩ってみるが、お腹の上に乗った亀河を跳ね返すことができない。
「無駄無駄。今度は逃げられないぜ」
 亀河の手がブラを掴む。
「やめてください! 見えてしまいますから!」
「何言ってやがる、見るためにしてるんだろうが!」
 怒鳴るのと同時に、亀河が乱暴にブラを剥ぎ取る。
「きゃあああああっ!」
 雪那の悲鳴の大きさに比例するかのように、露わにされた美巨乳が盛大に揺れる。
「すげぇ・・・」
 その光景に、亀河は思わず生唾を飲み込んでいた。
「・・・おっと、見てるだけじゃ勿体ねぇな」
 暫く雪那の乳房に見入っていた亀河だったが、存在感溢れる美巨乳に手を伸ばす。
「へ、へへ・・・なんてデカさだ、手に余るぜ」
 亀河は雪那の美巨乳を撫で、擦り、弾ませ、揉み、捏ねる。圧倒的な質感に、亀河は憑りつかれたかのように乳肉をいたぶる。
「放して! 触らないでください!」
 雪那が叫び、身を捩っても、亀河には聞こえていないのか、一心不乱に両手の指を動かし続ける。
「すげぇ、すげぇ、すげぇ・・・」
 乳房の感触にただただ呟きながら、好き勝手に揉み込んでいく。
「・・・はーっ、こいつは堪らねぇな」
 一つ息を吐いた亀河はようやく少し落ち着いたのか、揉み込む手を止め、撫でることで輪郭をなぞっていく。
「デカいだけじゃねぇ、乳首も綺麗な色してるじゃねぇか」
 亀河は雪那の右乳首に吸いついた。
「いやあああっ!」
 雪那の上げる悲鳴など気にも留めず、赤ん坊のように乳首を吸い上げる。否、吸うだけでは終わらず、舌で舐め回し、甘噛みする。
「うめぇ、お嬢さんの乳首は味も抜群だぜ」
 乳房を握って乳首を強調させ、更に吸いつく。
「も、もう嫌です、舐めないで、触らないで!」
「何言ってやがる、乳首がおっ立ったじゃねぇか」
 硬くなった乳首を指で捏ね回した亀河は、再び乳首に吸いつく。
「いや、もう・・・!」
 幾ら雪那が身を捩ろうとも、乳房を押さえられていては限界がある。
「乳首もこんなになってるんだ、こっちはどうだ?」
 尖った乳首を扱いた亀河は、右手を雪那の股間へと下ろしていく。
「ああっ、そこは!」
 必死に太ももを閉じ、侵入を防ごうとする雪那だったが、男の力には敵わなかった。
「なに強情張ってんだよ、脚開きな!」
 強引に手を割り込ませた亀河は、雪那の秘部へと指を押しつける。
「あっ」
「なんだ、もう濡れてるじゃねぇか」
 下着の上からでもわかる湿りに、亀河がほくそ笑む。
「違います、これは・・・」
 雪那の反論も鈍い。

 前回の試合で敗北を喫した雪那は、その後「御前」に愛液を採取される身となっている。それは雪那が処女であり、処女の愛液は一部の権力者にとって回春の薬として高く取引されることに由来する。
 しかし、愛液を採取されるということは快感を覚えさせられるということと同義になる。「御前」によって、雪那は感じやすい身体へと変えられていたのだ。

「何が違うんだよ、実際濡らしといてよ」
 鼻を鳴らした亀河は、下着の中に手を潜り込ませる。
「いやああああっ!」
 直接秘裂に触れられ、雪那は嫌悪の声を上げた。
「触ったら濡れてるのが良くわかるぜ。認めちまえよお嬢さん」
 愛液が滲む秘部を撫で、亀河が薄っすらと笑う。
「それとも、俺の指で処女膜破ってやろうか?」
 亀河の指が秘裂を割りかけ、雪那を乙女の羞恥とそれを失う恐怖が襲った。
「ギ・・・」
「ん?」
「ギブアップします! ギブアップしますから、もうやめてください!」

<カンカンカン!>

 雪那の敗北宣言に、レフェリーが憮然とした表情でゴングを要請する。
「もうちょっとサービスしろよお嬢さん。それとも、『御前』とのことが止められないくらいいいのか?」
「ち、違います! いいから、もうやめさせてください!」
 ゴングが鳴っても亀河は雪那から離れようとはせず、乳房と秘部を責め続ける。
「おい亀河、離れろ。あんまりしつこいと、『御前』から大目玉食らうどころの話じゃなくなるぞ」
「仕方ねぇか。そう言やこのお嬢さん、『御前』の玩具だったもんな」
 亀河は渋々雪那から離れたが、その目は美巨乳に吸いつけられたままだ。
(違う・・・私は、玩具なんかじゃ、ない・・・)
 雪那の呟きは誰に届くこともなく、心中に消えた。


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