【第九話 ニナ・ガン・ブルトン:ムエタイ】

 犠牲者の名は「ニナ・ガン・ブルトン」。18歳。身長165cm、B91(Fカップ)・W58・H86。インド出身。大きな瞳と褐色の肌のエキゾチックな美人。紡錘形のバスト、細く括れた腰、形のいいヒップ。腰まで届く黒髪を三つ編みにしている。広大な綿花畑とITで財を成した父親を持ち、幼少の頃はイギリスに留学し、現在は日本に留学している。英語、日本語、スペイン語、フランス語、サンスクリット語、ヒンディー語など十以上の言語を操る才女。イギリスでキックボクシングと出会い、日本ではムエタイジムに通って体を鍛えている。練習している姿が「御前」の部下の目に止まり、<地下闘艶場>へと引きずり込まれることとなった。


 ニナの衣装はベリーダンスのものだった。頭部にはレースの飾り。上半身はビキニに近いくらい露出した服、しかも肩紐がない。下半身はズボンではなく腰までスリットの入ったスカート。男性の欲望が凝縮されたような衣装にニナは暗い表情をしていた。
(私は踊り子としてここに呼ばれたのかしら・・・)
 留学をしているとはいえ世間知らずの箱入り娘であるニナにとって、このような露出度が高い衣装を着るのは抵抗があった。しかし高額のファイトマネーは魅力的で、家族からの仕送りに頼らなくても暫くは生活できる。
 独り立ちすることを改めて決心し、ニナは衣装に着替えるため私服を脱いだ。

 リングに上がって対戦相手を見た時、ニナは驚きを隠せなかった。目の前にいるのは脂肪の塊のような男だった。
(闘う相手が男性だとは聞いていなかったのに・・・)
 身長はニナより頭一つ高く、顔、首、胴体、脚など、あちこちが弛んでいる。頭部には申し訳程度の頭髪しかなかった。よく見ると対戦前だというのにもう汗をかいている。
「赤コーナー、グレッグ"ジャンク"カッパー!」
 コールに答え、グレッグはだるそうに片手を上げる。
「青コーナー、ニナ・ガン・ブルトン!」
 おずおずと頭を下げるニナに、場内から下品な野次が飛ぶ。その野次にニナは頬を赤らめてしまう。

 グレッグのボディチェックを嫌そうに終えたレフェリーがニナに近寄ってくる。
「ボディチェックだ、分かってるな?」
「は、はい、契約書に書いていましたので、読んだので、はい、分かります」
「分ってるならいい。それじゃ早速」
 緊張のあまりしどろもどろになるニナのバストをレフェリーが鷲掴みにすると、ニナは気をつけの状態で固まってしまう。
「うーん、ここまで大きいから何か隠してるかと思ったが・・・」
「な、なにも隠してなどいません!」
 否定しながらもボディチェックを止めようとはせず、ニナはそのまま固まっている。それをいいことに、レフェリーはニナの紡錘形のバストをゆっくりと揉む。
「ボディチェックは大切だからしっかりしとかないとなぁ」
「そ、そうなんですか・・・」
(こ、こんなに恥ずかしい思いをしなければいけないなんて・・・!)
 ニナはレフェリーの言葉を疑うこともせず、ただ耐える。そんなニナを見たレフェリーはバストから手を放し、腰の括れを楽しんだ後スリットの隙間から秘部に手を伸ばす。
「ひっ!」
「女性のここに凶器を隠す選手もいるんだよ、だからここも調べないとなぁ」
「そ、そんな・・・」
 それでもニナは耐えた。人を疑うということを知らずに育ち、今回もそこにつけ込まれている。下着の上からとはいえ秘部を触られ続け、目の端にうっすらと涙が浮かんでいた。
「さて、次は・・・」
 レフェリーは膝をつき、ニナのスカートを捲る。
「あ、そ、そんな・・・!」
「・・・おいおい、黒かよ。人は見かけによらないな」
 ニナの下着はレースの装飾が入った黒色だった。高校の友人から「ニナもこういうセクシーなやつを一つくらい持ってないと!」と勧められるまま購入し、今日偶々履いてきたものだ。レフェリーは暫く下着に見入った後、再び秘部に指を這わす。
「え、さっき調べたのに・・・」
「何か指に当たったんでな、もっと良く調べないと」
「はぅぅ・・・」
 半べそをかきながらも、ニナはボディチェックを止めさせようとはしなかった。

「よーし、何も隠してないみたいだな」
 レフェリーは散々感触を楽しんだ後、漸く試合開始の合図を出した。

<カーン!>

(ううっ、こうなったらこの人を倒してお仕舞いにします!)
 半べそをかいたままグレッグを睨み、両手を高く上げたアップライトの構えから蹴りを出していく。渾身の右ローキックも、べちゃり、という音と共に脂肪に跳ね返される。
「うぇへへぇ、なにかしたかぁ?」
 グレッグは蹴られた辺りをかきながら平然としている。分厚い脂肪が衝撃を吸収するらしい。ならばと右ミドルキック、左ローキック、右ローキックと連続して蹴り込むが、まるで効かない。
(どうしよう、ハイキックなら倒せるかもしれないけど、パンツが見えちゃうかもしれないし・・・)
 下着が見えることを気にしたニナはハイキックを躊躇う。
「うぇへへ、来ないのならこっちから行くぞぉ」
 のそのそと近づいてくるグレッグに対しミドルとローの連打を見舞うが、やはり効いた様子もなく同じ速度で近づいてくる。近づかれると回り込み、諦めずに蹴り続ける。
 そのうち、脂肪だけでなく汗にも打撃が弾かれる。素足に汗が付着する感触が気持ち悪い。グレッグは歩くだけで疲れるのか、頭の天辺からも汗が滴らせている。
 ついにはグレッグの汗は体から足まで伝い、リングの上に撒かれていく。
「えいっ・・・あっ?」
 蹴りを放とうとしたニナはグレッグの大量の汗に足を滑らせ、膝をつく。
「おいおい、大丈夫かよ」
 レフェリーはニナを後ろから抱える振りをしてFカップのバストを掴み、揉みながら抱き起こす。
「あ、あの・・・」
「ああ、お礼はいらんよ」
「いえ、あの、その・・・」
 レフェリーはニナを抱き起こしてからも、バストから手を放さず揉み続ける。ニナは強く言うことができず、結局バストを揉まれ続ける。視線を感じて顔を上げると、目の前にグレッグがいた。
「うぇへへぇ、追いついたぁ」
 次の瞬間、鎖骨と股間に手を入れられ、グレッグの頭上にリフトアップされていた。グレッグの短い指が股間を弄ってくる。
「そ、そこは・・・あの、や、やめ・・・っ!」
 高所の恐怖と股間からの刺激で身が竦む。グレッグは暫くそうしていたが、ニナをボディスラムでリングに叩きつける。
「・・・っ!」
 背中を強く打ちつけられ、息が詰まる。ゆっくりと被さってこようとするグレッグを見て、回転して逃れる。立ち上がろうとして滑り、レフェリーに寄りかかってしまう。
「おっとっと」
 レフェリーはわざとらしく言いながらニナを羽交い絞めにする。もがくニナだったが、レフェリーから逃げられない。もがく間にグレッグがニナの前に立つ。
「うぇへへぇ、でっけぇおっぱいだなぁ」
 そのまま両方のバストを揉まれる。
「いやっ、は、は、放してくださいっ!」
 初めて拒否するニナだったが、グレッグもレフェリーもニナを放さない。
 グレッグは散々バストを揉んだ後、ニナをベアハッグに捕らえる。その強烈な締め付けと汗のぬるりとした感触に、ニナは悲鳴を上げた。グレッグはニナのバストが顔に当たるように調節し、感触を楽しみながら締める。
「あぅぅ、く、苦しい・・・!」
 オリエンタルな美女が痛みに身をくねらせる姿に観客から声があがる。ニナは苦し紛れに肘を出すが、グレッグの頭や側頭部に当たっても力が乗っていないため効いていない。
(こうなったら恥ずかしいけど・・・)
 グレッグの頭を抱え、豊かなバストをグレッグの顔に押し付ける。
「うぇへへぇ、こ、この感触、たまらねぇ・・・」
 始めは喜んでいたグレッグだったが、鼻と口がバストに塞がれて呼吸が苦しくなり、両手をニナの腰から放してしまう。素早く離れて体勢を整えるニナだったが、グレッグの汗が体のあちこちに付着し、不快な感触が残る。特に巨乳の谷間に汗が入り込み、粘つく。
(こんなに気持ち悪いのも、この人の所為。なら、この人を倒さなきゃ!)
 不快感を闘志に変え、グレッグへの攻撃を再開する。
(脂肪に跳ね返されるなら、ここを!)
 脂肪の少ない膝関節の横を狙ってローキックを打つ。
「うぇげえぇぇ」
 グレッグは潰された蛙のような声を上げ、膝への蹴りを嫌がる。
(効いてる! ここだ!)
 効いていると見たニナが、膝への集中攻撃を開始する。グレッグはローキックを避けようとして自分の汗で転んでしまう。
(! チャンス!)
 攻撃の手を緩めず、倒れたグレッグの膝を蹴るニナだったが、後ろからレフェリーに抱きすくめられ、バストを掴まれる。
「倒れた選手への打撃は禁止だ!」
 そのまま紡錘形のバストを捏ねるように揉まれてしまう。
「あぅっ、分かりました、ですから手を・・・」
 ニナは蹴るのをやめたが、レフェリーはバストを揉むのをやめず、衣装の上側から手を突っ込み、直に弄る。
「! やあぁっ!」
 これには驚き、ニナがレフェリーを突き飛ばす。その瞬間、グレッグはリング上の汗を利用して背中から滑り、ニナにスライディングキックを決めていた。
 ニナは脛を蹴られて前に倒れこみ、グレッグに抱擁される格好になる。グレッグはニナの胴に手を回し、両脚をニナに絡める。そのままニナの体を揺すり、感触を楽しみだした。
「やだっ、やだっ、やだーーーっ!」
 股間に男性の固くなったモノが当たり、ニナはパニックを起こした。バストもグレッグの胸板に潰され、更に汗が付着する。
「おいおい、反則を止めようとしたレフェリーを突き飛ばすのは感心しないなぁ」
 そう言うとレフェリーがニナに近寄り、引き締まったヒップを掴む。暫く揉んだ後、スリットから手を差し込んで秘部を触り始めた。
「きゃーっ!」
 突然秘部を触られたことでニナが暴れる。手を振り回すと偶然グレッグの目に当たり、胴を締めていた力が緩む。慌てて逃げようとするが汗で滑り中々立ち上がれない。漸くロープに手を掛けたところで、スカートをグレッグに掴まれる。
(まずいわ、逃げなきゃ!)
 ロープを掴んで無理やり立ち上がる。そのとき布の裂ける音がして、スカートはグレッグの手に残った。
「あ、う、あぁ・・・」
 黒いセクシー下着が観客の目にもはっきりと披露され、歓声と指笛が鳴らされる。ニナは下着を両手で隠し、固まってしまう。
「うぇへへぇ、いい匂いだぁ・・・」
 グレッグはスカートに顔を埋め、嬉しそうに匂いを嗅いでいる。暫く残り香を楽しんだ後スカートを自分の首に巻きつけ、ニナに近づく。
 下着を隠したまま逃げようとしたニナだったが、またも汗で転んでしまう。そこへレフェリーとグレッグが襲い掛かり、レフェリーはニナの両脚を押さえて股間を責め、グレッグはニナの右手の上に座ってバストを責める。
「ひっ!」
 息を呑み、抵抗すらできないニナ。自分の腰をニナの右腕に擦りつけながらバストを揉むグレッグは、左手を衣装の間から差し込み、直接揉み回す。レフェリーは下着の上から秘部を擦る。それだけでは物足りなくなり、太ももを擦りながら秘部を舐める。
 グレッグが乳首を弄り、レフェリーが股間に吸いつくと、大人しいニナが切れた。
「・・・いいかげんに、してーーーっ!」
 空いている左手でグレッグの鼻を打つ。
「ぐべへぇっ!」
 蛙のような鳴声をあげてグレッグが引っくり返る。ニナは自由になった両手で今度はレフェリーをぽかぽか殴りだした。
「わ、分かった、やめるからよせ!」
 大して威力はないものの、大人しかったニナの反攻にレフェリーは戸惑った。ニナと目が合い、その目が血走っているのが分かると静かに後ずさりしてニナから離れる。ニナが立ち上がるのとほぼ同時にグレッグも立ち上がった。
「エヤアァッ!」
 気合一閃、ニナのハイキックがグレッグのこめかみを打ち抜いた。それでも倒れないと見ると、走り寄って飛び膝<カウ・ロイ>をグレッグの顔面に決める。脂肪だらけのグレッグの体が仰向けに倒れ、汗が飛び散る。
 白目を剥いて痙攣するグレッグに、レフェリーが慌てて試合を止める。

<カンカンカンカン!>

 打ち鳴らされるゴングに、ニナは我に返った。自分が下着丸出しの格好でいることに気づくと、目に涙を浮かべ、走って退場していった。

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