【特別試合 其の二十五 亜留川沙織:護身術】  紹介者:ひみつ様

 犠牲者の名は「亜留川(あるかわ)沙織(さおり)」。15歳。身長156cm。B82(Dカップ)・W55・H81。
 栗色のショートカットで笑顔の明るい活発な女の子。よく通る声と激しいダンスもこなせる高い運動神経の持ち主。護身術を最低限習っただけで本格的な格闘技の経験はないが、運動神経が非常に高く、無理やり押し倒そうとした同級生数人を撃退したことがある。
 清純派アイドルとして人気を徐々に上げつつある彼女であったが、父親が多額の借金を残して蒸発してしまう。そんな彼女を救ったのは、所属しているプロダクションに出入りする資産家が持ちかけた契約だった。その内容は、借金を全額肩代わりする代わりに自分のプロデュースに絶対服従すること。
 契約書にサインした彼女が受ける新しいプロデュース。その第一歩目は・・・・<地下闘艶場>への出演だった。


 ガウン姿の沙織が花道に姿を現した途端、凄まじい歓声が起こる。それも当然かもしれない。
 沙織はテレビの露出も多い現役アイドルであり、知名度も高い。そんな彼女が裏の催し物に参加するというのだから、観客の興奮も既に高まっていた。
 異常な熱気の中、沙織は花道を進み、リングへと辿り着いた。
(この人が、相手?)
 リングに待っていた沙織の対戦相手は、なんと男性だった。汚らしい長髪に無精ひげをぼうぼうと生やし、体つきには締まりがなく、もっさりとしている。生理的な嫌悪感が足を縛るが、それでもリングへと上がる。
 清純派アイドルの登場に、会場からは粘つくような視線が飛ばされていた。

「赤コーナー、『働かない格闘家』、サンダー・桝山!」
 コールを受けた桝山は、ぼりぼりと緩んだ腹を掻く。<地下闘艶場>に初めて登場したときには鍛えられた体つきだったと言うのに、住む場もない身に落ちた今は、格闘家らしい引き締まった肉体の面影は欠片もない。
「青コーナー、『借金返済アイドル』、亜留川沙織!」
 自らの名前がコールされたことで、沙織はガウンを脱いだ。その下から現れた衣装に、会場が沸く。
 上は大きなリボンが各所に配置された可愛らしいものだが、鎖骨が剥き出しとなっている。下はふわふわスカートで段々のパニエつき。ダンスで鍛えられた程よい肉付きの脚は、白のハイソックスが包んでいる。まさしくアイドルというその衣装に、観客席から数多の視線が飛んでくる。
「みんな、応援ありがとー! 今日はがんばりまーす!」
 沙織は握っていたマイクのスイッチを入れ、恥ずかしさを堪えて観客席に手を振る。返って来たのは拍手と指笛、そして卑猥な野次だった。笑顔が固まりかけた沙織だったが、「契約」を思い出して手を振る。
「リングでもアイドルとして振る舞うこと」
 それが資産家が出した試合中の注意事項だった。資産家のプロデュースに従わなければ、莫大な借金はその瞬間から沙織の細い両肩に圧し掛かってくる。父親が蒸発してから資産家が借金を肩代わりしてくれるまでそれほど日にちはなかったが、借金の取立ての凄まじさは骨の髄まで凍えるほど恐ろしかった。
 もう、あんな思いはしたくない。沙織にとって、契約書の存在は絶対だったのだ。

 桝山のボディチェックをあっさりと終えたレフェリーが、沙織の前に立った。
「さて亜留川選手、ボディチェックを受けて貰おうか」
 レフェリーの顔に浮かんでいる表情に、沙織は身を硬くした。芸能界に居る沙織は、男性の欲望の対象に見られることも良くある。そのため、淫欲のこもった視線は敏感に感じ取れる。レフェリーがボディチェックと言いつつ何を狙っているのかは明白だった。
「・・・はい」
 それでも、沙織が拒むことはできない。莫大な借金返済の代わりに交わした誓約書の存在が彼女を縛る。
「それじゃ、早速始めるか。これだけヒラヒラが多いと調べるのが大変だからな」
 言い訳めいたことを呟きつつ、レフェリーは沙織の肩から押さえていく。
(あっ)
 沙織の想像通り、その手はバストの上に置かれた。
「へえ、思ったよりも大きいじゃないか」
 Dカップのバストを揉みながら、レフェリーが笑う。
「そ、そうですか?」
「ああ、アイドルっていうから、もっと小さいかと思ってたぜ」
 つい言葉を返してしまった沙織に、レフェリーも嬉しげに言葉を続ける。その間にも手は止まっていない。
「おっとそうだ、これだけ不自然に大きかったら、きちんと調べないといけないな」
 元からそのつもりだっただろうに、レフェリーは沙織のバストから手を離そうとはせず、無遠慮に揉み回す。
(こんなこと、ホントに嫌なのに・・・)
 父親の莫大な借金が、回り回ってこのようなセクハラを受ける原因となった。どんなに嫌でも、どんなに屈辱でも、このリングで耐えなければならない。借金が原因で恐怖を味わうのはもう御免だ。
「こうやっておっぱいを揉まれるのはどうだ? 芸能界に居るんだから、何度も揉まれてきたんだろう?」
「そ、そんなこと、ありません」
 言葉少なに否定する沙織だったが、レフェリーは手を休めようとはしない。
「アイドル亜留川沙織のおっぱいを揉めるなんてな、レフェリー冥利に尽きるってもんだ」
 衣装の上からとはいえ、芸能人のバストを揉める。役得の機会を逃すわけにはいかなかった。左右から寄せるようにして揉み回し、羞恥に歪む沙織の表情を楽しむ。
「よし、次はこっちを調べるか」
 ようやくバストから手を離したレフェリーは、しゃがみ込んで沙織の股間を覗き込む。
「なんだ、アンスコを穿いてるのか」
 レフェリーの言うとおり、沙織はアンダースコートを穿いていた。
「これじゃあ、触って調べないといけないなぁ」
 たとえアンダースコートを穿いていなくてもそうしただろうに、レフェリーは沙織の秘部を撫で回す。沙織は何も言えず、身を固くするだけだ。
「下着まで脱いでくれるなら、触らなくてもいいんだぞ?」
「む、無理ですそんなの!」
「それじゃあしょうがない、終わるまで我慢するんだな」
 何故か太ももまで撫でながら、レフェリーは厭らしく笑った。

「さて、それじゃボディチェックを終えるとするか」
 ようやくレフェリーが沙織の肢体から手を離し、立ち上がる。
「ま、頑張るんだな、アイドルさんよ」
 レフェリーは沙織のヒップをペタペタと叩き、一度離れる。
「が、がんばります」
 そう律儀に返し、沙織は構えを取った。

<カーン!>

「へへへ・・・この俺が、アイドルと闘えるなんてな」
 桝山は口元をぐいと拭い、既に溢れていた涎を拭き取る。
(うっ・・・)
 生理的な嫌悪感が沙織の背筋を這い登る。
「行くぜアイドルさんよぉ!」
 嫌悪感が体を動かしていた。桝山が伸ばした右手を手繰り込む。
「ええいっ!」
 そのまま自ら倒れ込みながら、桝山の巨体を投げ飛ばす。
(よかった、上手くできた!)
 安堵しながら立ち上がると、片膝をついた桝山と目が合う。
「くそっ、やってくれたなぁ」
 桝山の表情に身が竦む。嫉妬や蔑みの視線には慣れているが、剥き出しの怒りの感情は沙織の恐怖を煽った。
「おらぁぁっ!」
「っ!」
 桝山の体当たりで、コーナーまで吹っ飛ばされる。桝山の巨体はそれだけで武器だった。一発で動きの止まった沙織に近寄った桝山は、無理やり立たせ、背後へと回る。
「そぉら、清純派アイドルの大股開きだ!」
 そのまま太ももの間に手を入れ、抱え上げながら沙織の両脚を大きく開いたのだ。
「やぁぁぁぁぁっ!」
 例えアンダースコートを穿いていたとしても、大股開きは羞恥の体勢だった。
「へへ、髪もいい匂いだ」
 沙織の髪の匂いを大きく吸い込んだ桝山は、首筋を舐める。
「いやっ!」
 その感触に沙織が反射的に首を振ると、髪の毛が桝山の目を叩く。
「つっ!」
 偶然とはいえ、これが桝山を苛立たせる。桝山は沙織の体を抱えなおし、お姫様抱っこのようにする。
「そぉれ・・・よっ!」
 一度沙織の体を持ち上げた桝山は、自らの膝の上に背中から落とす。
「はぐぅっ!」
 背中越しの衝撃が内臓まで揺さぶる。アイドルとはいえ格闘の素人である沙織にとって、重過ぎる一撃だった。
「よし。へへへ、これから本番だぜ、アイドルさんよ」
 舌で唇を湿らせた桝山は仰向けで呻く沙織に馬乗りになり、沙織のバストを両手で掴む。
「これがアイドルのおっぱいか。そう思うともっと興奮するぜ」
 沙織のバストを揉みしだきながら、桝山が舌舐めずりする。
(痛い・・・それに、気持ち悪い・・・)
 背中の痛みとバストを揉まれる気色悪さに沙織が呻く。
「そうだ、ここから手が入るじゃねぇか」
 衣装の胸元から桝山の右手が差し込まれ、ブラの上からバストを弄ってくる。
「あっ、やぁっ!」
 衣装の上からとブラの上からでは、感触がまるで違う。汚辱感は増し、羞恥が沙織を襲う。
「そんな嫌そうな顔するなよ。芸能人なんだ、俺が初めてじゃないだろ?」
「ち、違います、そんな・・・」
 沙織は首を振り、桝山の手からも質問からも逃れようとする。
「やっぱりそうなんだろ? ええ? たかがおっぱい揉まれたくらいでぎゃあぎゃあ言うなよ、アイドルなんだからよ」
 支離滅裂なことを言いながらも、桝山は沙織のバストを揉み続ける。しかし、何故か右手を胸元から抜く。
「まだるっこしいな、アイドルのおっぱいを直に見てやる」
「そんな!」
 桝山が衣装に手を掛けたことで、沙織の表情が強張る。
「おい待て、脱がすな!」
 意外なことに、それを止めたのはレフェリーだった。
「脱がすと、アイドルを苛めてるって感覚が薄くなるからな」
 一瞬レフェリーに感謝しかけた沙織だったが、くだらない理由に怒りを覚える。
(この人たち、厭らしいことしか考えてないの?)
 桝山とレフェリーだけでなく、観客も含めた男性に怒りを覚える。しかしその怒りも次の桝山の一言に停止する。
「おっぱいは駄目でも、パンツはいいだろ?」
「ああ、勿論だ」
 レフェリーの許可を得て、桝山の顔が緩む。
「へへへ、アイドルのパンツを見てやるぜ」
 桝山はアンダースコートを破くような勢いで脱がしていく。
「さすが清純派アイドル、可愛いパンツ穿いてるじゃないか」
 スカートの奥を覗いたレフェリーがにやつく。
「いやっ、見ないでください!」
 足をバタつかせる沙織だったが、レフェリーが押さえ込む。
「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
 じっくりと下着を観賞するレフェリーだったが、それに飽き足らなくなったのか、右手を伸ばす。
「やめてください、そこは・・・っ!」
 制止しようとした沙織の声が途切れる。
「お、あったかいな。アンスコ穿いてたから熱がこもってたんだな」
 伸ばされたレフェリーの手が沙織の股間に触れる。
「へへ、実は感じてたりしてな。案外淫乱アイドルなんじゃないか?」
 桝山も負けじと右手で沙織の股間を弄る。
「やあああああっ!」
 リングに沙織の悲鳴が響く。
「お、喜んでくれたみたいだな」
「よ、喜んでなんか・・・ないです!」
 抵抗する沙織だったが、男二人に圧し掛かられては跳ね除けることはできない。
「ここもいいが、今はおっぱいの気分だな」
 沙織の胸元を眺めた桝山は、再び沙織のバストを揉み始める。
「もうやめて・・・くぅっ」
 言葉でどんなに頼んでも、桝山はバストから手を離そうとはせず、レフェリーは秘部を弄り続ける。
「い、いつまで・・・ふぅんぅっ!」
 心ならずも艶めいた声が洩れてしまった。
「おいおい、なんだ今の色っぽい声は? ええ?」
 聞きとがめたレフェリーが秘部を責めながら言葉でも責める。
「ち、違う、今のは・・・」
「俺にも聞こえたぞ」
 桝山も両手を使ってバストを揉みながら笑う。
「清純派アイドルとは言っても、感じるのは普通の女と一緒だな」
 そこまで言うと何かを思いついたのか、レフェリーは一度頷くと沙織から離れた。
(今の内に、なんとか逃げ出さないと)
 今なら桝山一人が相手だ。先程よりも逃げるチャンスは上がった筈。バストを揉む桝山の手を引き剥がそうとするが、まるで動かない。
「なんだ、もっと強く揉んで欲しいのか?」
「痛い!」
 男の力でバストを握り締められ、沙織が苦鳴を洩らす。
「桝山、おっぱいはいいからあそこを責めてやれ」
 戻ってきたレフェリーが桝山に指示を出す。不審気な表情でレフェリーを見る桝山だったが、何かを納得したのか百八十度向きを変える。足で沙織の両手を、肘で沙織の太ももを押さえてスカートの中を覗き込む。
「待たせたな亜留川選手」
 沙織を見下ろしたレフェリーの手には、沙織の持ってきたマイクが握られていた。
「な、何を・・・」
 沙織の疑問には答えず、レフェリーの手が胸元に入り込み、バストを揉む。
「ほら、観客の皆さんにも教えてやれよ、どこまで感じてるのかをな」
「わ、私、感じてなんか・・・ふああっ!」
 口元に向けられたマイクから顔を背けるが、秘部への刺激で声が上がる。
「さすがアイドル、お客さんが喜ぶことはきちんとできるじゃないか」
 レフェリーは沙織のバストを揉みながら、沙織の羞恥の表情も堪能する。
(そんなつもりじゃないのに! でも、声が出ちゃう!)
 大事な部分は驚くほど敏感になっており、望まぬ筈の刺激に反応してしまう。
「へへへ、アイドルのくせに感じてやがるぜ。淫乱アイドルめ」
 沙織の喘ぎ声が桝山を興奮させる。興奮した桝山はパンティの上からとはいえ秘裂と淫核を責め、沙織の快感を引き出す。沙織は快感によって声を上げてしまい、更に桝山を興奮させる。
「へへ、アイドルのアソコの匂いはどんなだ?」
 桝山は更に顔を近づけ、沙織の股間の匂いを嗅ぐ。
「や、やめて! そんなとこ匂わないで!」
 沙織の哀願も空しく、桝山は鼻から何度も大きく息を吸い込む。
「・・・へ、へへへ」
 匂いを堪能した桝山は、なんと沙織の秘部にむしゃぶりついた。
「やああああぁぁっ!」
 桝山の舌が、沙織の秘部を舐め、唾液に塗し、生暖かい感触を植えつけていく。
「あっ、はあぅっ・・・んうううっ!」
 下着の上からとはいえ、敏感な部分を舐め回される。強すぎる刺激に、沙織はよがり声染みた声を上げてしまう。
「へへ、へへ、感じてやがる。あのアイドルの亜留川沙織が、俺が舐めたら喘いでやがるぜ!」
 更に桝山の舌の速度が上がり、沙織の秘部を蹂躙する。
「やっ、あぅっ、いや・・・はああうぅっ!」
 抑えようとしても抑えきれない声を、レフェリーの握ったマイクが拾う。沙織の喘ぎ声はスピーカーを通じ、会場全ての者たちの耳に届く。
「さすがアイドル、お客さんにはサービスがいいじゃないか。厭らしい声、もっと聞かせてやれよ」
 沙織の両手を膝で押さえつけ、沙織の口元に右手のマイクをつきつけ、沙織のバストをブラの上から捏ね、レフェリーが煽る。
「そんなの・・・いや・・・あああっ!」
 自らの叫びに息苦しくなり、大きく息を吸う。しかし吸った息は喘ぎ声となって口から放たれてしまう。沙織が声を上げるたび、観客席を包む空気を熱量を上げていく。
「へへへ、アイドルのアソコを涎でベチャベチャにしてやったぜ」
 沙織の下着を自らの唾液で濡らしたことで、薄っすらとではあるが沙織の秘部が透けて見える。
「突っ込んでやりたいが、それをすると生きちゃいられない・・・」
 沙織の秘部を指で弄りながら、桝山が一人ごちる。
「・・・そうだ。ここには突っ込んじゃ駄目でも、あっちに俺のあれを入れるのは・・・」
 何故か頷いた桝山は、鈍重な動作で沙織の顔側に体を向ける。
「へへへ・・・」
 危険な光を目に宿し、桝山はレフェリーの手を乱暴にどける。
「お、おい!」
 思わず転げたレフェリーの抗議など耳に入らないのか、桝山は沙織の顔を凝視しながら、自らの唾液塗れにした沙織の秘部を弄り回す。
「どうだ? ええ? 気持ちいいんだろ?」
「ちが・・・ううんっ! 気持ちよく、なんかぁっ、ない、の・・・んんんっ!」
 必死に否定しようとする沙織だったが、可愛らしい唇からは快楽の証が発せられてしまう。
「何が違うだ、感じまくってるくせによ!」
 桝山が細かい振動を送ると、沙織が一声叫んで仰け反る。そのまま何度も咽喉を上下させる。桝山が手を止めると、天井を見上げて荒い息を吐く。
「厭らしい顔しやがって」
 喘ぐ沙織の顔は、美少女というよりも成熟した女性の色香を感じさせる。
「へへへ・・・」
 それに誘われたかのように、桝山が沙織の首筋を舐める。その舌が耳へと移動し、一頻り舐めてから頬へと移る。
「んっ!」
 桝山の舌から逃れようとした沙織だったが、桝山は顎を掴むと瞼まで舐め始める。
「へへ、へへへ・・・次は・・・」
 沙織の鼻筋を通った桝山の舌が、遂に唇に達する。
「へへへ、ほれ、口を開けろよ」
 桝山の舌が沙織の可愛らしい唇を舐め回す。顔を背けようとしても、桝山が沙織の顔を押さえているため叶わない。必死に歯を食い縛る沙織だったが、桝山は反対の手でバストを揉み回す。
「・・・ふああっ!」
 とうとう我慢できずに声を上げた瞬間、桝山が直接唇を重ねてきた。
「ふっぐ・・・んんんっ!?」
 桝山は唇を重ねただけでなく、舌まで差し込んできたのだ。初めてのことに、沙織は目を見開く。反射的に噛みつこうとしても、顎の付け根を押さえられているために口が閉じられない。桝山の舌は沙織の舌を味わっただけでなく、歯、歯茎、上顎の裏など、口中のほとんど全てを蹂躙していく。しかも大量の唾液が送り込まれ、口中を一杯にする。
「んーっ! んぐぅ!」
 口を塞がれているため、臭い唾液を吐き出せず、無理やり飲み込まされる。沙織の咽喉が何度か上下し、その都度桝山の唾液が沙織の体内を汚していく。飲み込み切れなかった唾液の一部が、沙織の口の端から零れていった。
 あのアイドルが、薄汚い男から無理やり唇を犯されている。その背徳的な光景に、観客だけでなく、レフェリーも魅入っていた。
 沙織の口内を堪能した桝山が、一度唇を離す。
「へ、へへへ・・・清純派アイドルにキスしてやったぜ。しかも濃厚なやつをな」
 何度も舌舐めずりを繰り返した桝山は、再びディープキスをしようと唇を近づける。その瞬間だった。
「えいっ!」
 沙織の頭突きが鼻柱を捉えた。威力はそれほどなかったものの、桝山を怯ませるには充分だった。
「やっ!」
 桝山の左手を持ち、手首を思い切り折り曲げながら投げへと繋げる。桝山の太った体が沙織の上から転がり落ち、沙織はようやく立ち上がる。
(勝つんだ、勝てば、この恥ずかしい時間も終わるもの!)
 アイドルとして芸能界を生き抜いてきた負けん気が、闘志となって沙織を奮い立たせる。
「・・・このクソガキがぁ!」
 桝山の押さえた顔の下から、鼻血が垂れていく。
「許さねぇ、絶対許さねぇぞ」
 その怒りの形相に、心が怯みかける。
(ううん、勝つんだ、絶対に勝たなきゃ!)
 拳を強く握り、弱気を追い出す。
「アイドルだろうがなんだろうが、引ん剥いてお仕置きしてやる!」
 喚いた桝山が沙織に掴みかかる。その手が肩口を掴んだ。
「ええいっ!」
 次の瞬間、桝山の巨体が宙を舞っていた。沙織は桝山の手を上から押さえ、体を捻りながら腰を落とすことで投げを打っていたのだ。布が裂ける音に続き、桝山がリングへと頭から叩きつけられる。桝山が沙織の衣装を掴んだまま投げを打ったことで、沙織の衣装が破れ、ブラが露わとなっていた。そちらに目を奪われたレフェリーだったが、桝山の状態に気づくと即座に試合を止める。

<カンカンカン!>

「・・・勝てた」
 呆然と呟いた沙織だったが、口と胸元を押さえ、転げ落ちるようにしてリングを後にする。
(歯磨き、歯磨きしなきゃ! うがいも! 気持ち悪い!)
 口元を押さえ、涙を浮かべて走り去っていくアイドルの後ろ姿に、野次と指笛が浴びせられた。

 あの試合を経て、沙織の声や仕草にこれまでにはなかった艶が混じるようになり、多くの男性を魅了し始めるようになった。
 やがてはトップアイドルの一人として芸能界を席巻するようになる沙織だが、その後も時折あの<地下闘艶場>に出演し続けている。それが契約書の存在のためか、それとも他の理由のためか、沙織自身が明らかにすることはなかったという。


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