【特別試合 其の五十七 常盤院葉月:古武術 其の二】  紹介者:サイエンサー様


 犠牲者の名は「常盤院(ときわいん)葉月(はづき)」。26歳。身長147cm、B81(Dカップ)・W52・H80。

 活発そうな印象を受ける大きな猫目に愛くるしい顔立ち、絹のような黒髪を団子に纏めた可愛い容姿。傍目には少女にしか見えないが、れっきとした成人女性であり、葉月を知っている人間の中には「合法ロリ」と呼ぶ者も居る。

 体格は小柄ながらも相対的なプロポーションは抜群であり、出るべきところはしっかり出ている。そんな外見とは打って変わり、性格は正義感に溢れ、跳ねっ返りがとても強い。

 天津(あまつ)命(みこと)の通う道場の跡取り娘。子供の頃から飛び抜けた運動神経、特に並外れた身体のバネを発揮し、その才能は武芸によって昇華された。これまで実家道場の事務や管理をしながら自身も師範代として指導にあたっていた。

 そんな葉月はある事情から、再び淫虐のリングに上がることとなった。


 前回の試合から暫く後、葉月は以前から付き合っていた彼氏と婚約した。これを機に実家を出ることとなり、道場の師範代も引退することとなった。

<地下闘艶場>での事は忘れようと命と二人で決めていたのだが、今度は葉月の元に招待状が届いた。そこには出場しなければ、葉月の嬲られた写真を婚約者に送り付けるとの文字があった。

<地下闘艶場>との因果を断ち切るため、葉月はヴァージンロードとは似ても似つかない、リングへの道をただ歩く。淫虐からの引退試合へと。


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 赤いヴァージンロードを、スポットライトに照らされた純白の花嫁が進んでいく。否、数多の涙と淫液を吸い込んだ花道を、ウェディングドレス風の純白ドレスを着た葉月が進む。

 綺麗に纏められた髪の上にはベールが掛かっている。ブーケを持つ手はレースの手袋が飾っている。胸元から足先まで続くぴったりとフィットしたドレスには、正面に股下ギリギリまでスリットが入っており、スカートが左右後ろへと流れている。葉月が歩を進めるたびにスリットが割れ、その下に隠れた白のガーターベルトとハイニーソックスが時折ちらりと覗く。

 葉月は前回の参戦時、三連戦全てを勝ち抜いたものの、限界まで体力を使い果たし、試合終了後に失神してしまった。試合中も嬲られた身体は、試合後には更なる淫虐を受けた。闘った男たちから好き勝手に身体を弄られ、裸に剥かれ、数え切れぬほどの絶頂を味わわされた。それを知る観客からは、前回と同じ、否、前回以上の厭らしい野次が飛ばされる。

 それでも葉月は固く唇を結び、花道を真っ直ぐ進んでいく。<地下闘艶場>と決着をつけるために。


 リングの上に待つのは、やはり男性選手だった。それでも葉月は歩を止めず、ブーケを持ったまま階段を昇る。

 リングに上がった葉月はブーケをそっとコーナーポストの近くに置き、対戦相手を睨みつけた。


「赤コーナー、『伸縮自在』、阿多森愚螺!」

 葉月の対戦相手は阿多森(あたもり)愚螺(ぐら)だった。大きめのバンダナを額に巻き、黒いボディタイツの上に道衣を着込んでいる。

「青コーナー、『小さな達人(リトル・マスター)』、常盤院葉月!」

 花嫁姿の葉月に、凄まじい野次、指笛、欲望に満ちた視線が飛ばされる。それでも葉月は凛とした表情で、対戦相手である阿多森を見据えていた。


 阿多森のボディチェックを簡単に終えたレフェリーが、葉月へと近寄ってくる。

「さあ、ボディチェックを受けてもらおうか」

「とか言いながら、また厭らしく触る気だろ? お断りだよ」

 花嫁衣裳とは不似合な言葉で吐き捨てながら、葉月はボディチェックを拒否する。

「ボディチェックを拒むのか? それならそれで構わないが、婚約者の元に誰かさんの写真が届くかもなぁ」

「くっ・・・」

 それを阻止するために<地下闘艶場>の参戦を受け入れたのだ。写真が送られては元も子もない。

「さあ、どうする常盤院選手? ボディチェックを受けたくないならそれでいいぞ? 受けたいのなら、ちゃんと言葉にしてもらおうか」

「・・・ボディチェックを、受けるよ」

「そんな適当な言葉じゃ、ボディチェックはできないなぁ」

 レフェリーはにやつき、葉月に告げる。唇を噛み締めた葉月は、屈辱の言葉を搾り出す。

「・・・ボディチェックを、お願い・・・します」

「そこまで言われたら仕方がないな。動くんじゃないぞ?」

 レフェリーは葉月の両胸を掴み、ゆっくりと揉み込んでいく。

「相変わらず、身体に似合わないおっぱいの大きさだな」

 随分と小柄な葉月だが、胸は身体に似合わぬほどのサイズを誇る。俗に言うトランジスタグラマー体型で、男の欲望をそそる。その胸をレフェリーは遠慮することもなく触り、揉む。

「おっと、おっぱい以外も調べなきゃいけないな」

 レフェリーの右手が胸から離れ、腹部から腰を撫で、尻にまで回る。

「随分と丸みを帯びてきたじゃないか」

 前回よりも女性らしい体型となったことをレフェリーが揶揄する。

「かなり女性ホルモンが出た証拠だな。前回は散々イッてたもんなぁ?」

「・・・っ」

 レフェリーの嘲弄にも答えず、葉月はひたすら沈黙を通す。

「図星か? 人間、正しい指摘をされると言葉が出なくなるらしいからな」

 レフェリーはにやつきながら、葉月の胸を、身体を弄り続けた。


 何分そうしていただろうか。ようやくレフェリーが葉月の胸から手を放す。しかし、それで終わりではなかった。

「それじゃ、次は・・・」

 一度言葉を切ったレフェリーがにやりと笑う。

「自分でスカートを捲れ。下着が見えるようにな」

「んなっ・・・!」

 レフェリーの命令に、葉月は息を呑む。

「早くするんだ。失格にするぞ?」

「くっ・・・!」

 そう言われてしまえば、逆らうことなどできない。葉月はスカートを持ち、覚悟を決めて一気に持ち上げる。露わとなった下着に、観客席からは野次が飛ばされる。

「ほぉ、レースの下着か。色っぽいじゃないか、ええ?」

 勿論見るだけでは終わらず、レフェリーは丹念に秘部を撫でる。下着の上からとは言え、屈辱感が減るわけもない。

「気持ち良いんだろう? なに、ここでは正直に・・・」

 まだ言葉責めをしようとしたレフェリーを遮ったのは、なんと阿多森だった。

「いつまでダラダラやってんだ、さっさと試合を始めやがれ!」

 阿多森の恫喝に、レフェリーは慌ててゴングを要請した。


<カーン!>


「・・・礼は言わないよ」

「いらねぇよ。身体で払ってもらうからな」

 自身が言う通り、阿多森の眼は欲望に光っている。

「まずは挨拶代わりだ!」

 阿多森が右の手刀を振るう。充分に見切った筈の一撃は、ウェディングドレスの左胸元に切れ目を入れていた。

「っ!?」

「どうした? 傷はつけなかったつもりだがなぁ」

 だらりと舌を出した阿多森が、またも右手を振る。

(大丈夫、落ち着いて対処すれば・・・っ!)

 またも避けきれず、今度はウェディングドレスの腹部が横に裂ける。


 普通の一撃ならば、葉月はぎりぎりで躱し、反撃に移れていた筈だ。しかし、阿多森は自由自在に関節を外し、嵌めることができるという異能の持ち主だった。それは攻撃範囲を自由に変えられるということでもあり、無意識に見切りをする葉月には厄介な攻撃だった。


「おらおらぁ、そんなもんかよ!」

 阿多森の腕が鞭のように葉月に襲いかかる。

「くっ!」

 変幻自在の攻撃に普段よりも大きく距離を取らざるを得ず、着地した瞬間、ほんの僅かではあるが体勢が崩れる。

「あっ?」

 そのとき、葉月が狼狽の声を洩らす。いきなり背後から胴を抱えられたからだ。

「おっと、大丈夫か常盤院選手?」

 飛び退いた先にレフェリーが居たのだ。レフェリーは葉月を抱えただけでなく、胸を揉み出す。揉むだけではなく、乳首の辺りを押し込み、振動を加える。

「は、放せ・・・ぁっ!」

 胸を揉まれているだけだと言うのに、葉月は小さく喘いでいた。


 前回の出場で三連戦全てに勝利した葉月だったが、失神している間に捕らわれ、倒した筈の選手から嬲り尽くされた。常識を超える陵辱の結果、後輩の命以上に性感帯を開発されてしまい、快感の目盛を常人の倍近く上げられてしまった。それは婚約者との行為中に何度も達してしまうほどだ。

 セクハラボディチェックのときには必死に耐え抜いたものの、いきなりの胸責めに力が抜けてしまったのだ。


「やっぱり随分と感じやすくなってるようだな。我慢しなくていいんだぞ?」

「黙、れ・・・ああん!」

 反論も自分の喘ぎ声に遮られてしまう。

「よし、そのまま押さえてなレフェリー」

 余裕たっぷりに葉月へと近づいた阿多森は、ウェディングドレスの胸元を大きく引き下げる。

「っ!」

 葉月の小柄な身体には不似合いなほど大きな乳房が解放され、ぶるりと揺れる。

「なんだ、もう乳首がおっ立ってるじゃねぇか」

「あんっ!」

 乳首を弾かれ、葉月の口から甘い声が洩れる。

「げひゃはっ、乳首触られただけで感じてんのかよ。かなり淫乱な身体だなぁおい」

 先程弾いた乳首を曲げた人差し指と中指で挟むと、こりこりと刺激する。

「んぅぅっ!」

 阿多森の乳首責めに、葉月は嬌声を洩らしてしまう。

「それじゃ、こっちでも楽しませてやろう」

 レフェリーは右手を下ろし、秘部へと触れる。

「ひうぅっ!」

「そら、嬉しいだろう? だが、まだ中はお預けだ」

 レフェリーの指は下着の上から秘裂をじっくりと弄り、葉月から嬌声を引き出す。

「乳首だけじゃ物足りねぇな」

 葉月の乳首から手を放した阿多森だったが、勿論それで終わりではない。

「今から、面白いことをしてやるよ」

 にやりと笑った阿多森は、なんと自らの顎関節を外し、蛇が卵を飲むかのように葉月の右乳房を全て口の中に咥え込む。

「はあぁん!」

 右乳房全体を刺激され、乳首は舐め責めを食らう。忽ち右乳首は硬さを増し、更に敏感となっていく。

「こんな責め、婚約者からもされたことないだろ?」

 秘部を弄るレフェリーも言葉で葉月を責める。

「う、るさ・・・あぁん!」

 感度が増した乳房を頬張られ、乳首を舐め回され、秘裂と淫核を弄られ、否応もなく感じさせられてしまう。

(くそぉ・・・こんな、ことされて・・・気持ち良く、なっちまうなん、てぇ・・・!)

 前回の試合で嬲られた経験が、望みもしない感度を上げてしまっている。それが悔しく、反撃の機も掴めない自分が恨めしい。

「あうんっ!」

 最後に乳首を舐め上げた阿多森が右乳房から口を放し、今度は左乳房へと食らいつく。

「あううっ!」

 左乳房を頬張られ、左乳首を舐め回され、唾液塗れとされた右乳房と右乳首を捏ねられる。しかもレフェリーからは秘裂を弄り続けられ、快感を与え続けられる。

 葉月の左乳房を味わった阿多森が口を外し、顎を元通りに嵌める。そのまま葉月の股間の前にしゃがみ込む。

「それじゃ、次は・・・大事なアソコを舐めまくってやるよ」

 阿多森はレースの下着の底を横にずらし、秘部を露わにする。

「や・・・やめ・・・」

 葉月の制止など気にも留めず、阿多森の長い舌が秘裂を割り、葉月の膣へと潜り込んでいく。

「んああああっ!」

「おいおい、そんなにデカい声を出さないでくれよ。驚くだろ?」

 レフェリーは葉月の乳房を揉みながら、にやにやと笑う。

「ああぁっ、駄目だ、やぁん!」

 阿多森の長い舌が葉月の膣を犯す。乳房を、乳首を責められたとき以上の官能に、葉月は叫ぶしかできなかった。

「んあっ、はあん、あううっ!」

 背中を憎い男に預けたまま、感じたくもない快楽に翻弄される。

「ひぐぅぅぅっ!」

 突如葉月の口から絶叫が放たれた。阿多森が膣を舌で責めるだけでなく、指で淫核までも弄りだしたのだ。

「くくっ、随分と気持ち良さそうだ。乳首もそら、ここまで育ってるじゃないか」

 乳房は相変わらずレフェリーの玩具にされ、元々敏感な乳首も扱かれ、潰され、押し込まれる。

(む、胸もぉ・・・アソコもぉ・・・! ああぁ、責められて・・・!)

 元々敏感な乳首だけでなく、前回の参戦で淫虐の渦に叩き込まれた身体は全身が性的な嬲りに反応を返すようになっていた。しかも膣を舌で責められては堪らない。

「あっ、うっ、ふわぁっ!」

 快感を紛らわすために、喘ぐしかできない。しかも乳房へも、乳首へも、淫核へも、そして膣へも、間断なく責めが加えられ続けられているのだ。

「あっ、ああん、ひあぁっ!」

 阿多森の舌は複雑な動きで膣壁を嬲り、官能を掻き立てる。指とはまた違う動きと感触に、喘ぎ声が止まらない。

「うあっ、んんっ、はあぁん!」

 元から敏感な乳首はレフェリーに弄られ、転がされ、声も抑えられない。

(ああっ、こんな・・・こんなのぉ、耐えられない・・・っ!)

 いつしか、腰が勝手に動き出していた。それに気づいた阿多森の舌が激しさを増す。秘部からは卑猥な水音が鳴り、舌の動きを更に滑らかにする。

「おーおー、すごい音をさせているじゃないか。そんなに気持ち良いのかな?」

 両乳房を揉み、乳首を転がしながら、レフェリーは言葉でも葉月をいたぶる。

(こ、このままじゃ・・・また・・・!)

 急上昇する快感曲線が、絶頂を予感させる。

(嫌だ、こいつらにイカされるなんて・・!)

 必死に耐えようとしても、精神力を凌ぐ快感量が襲い掛かってくるのだ。耐えられるものではなかった。

「あぐぅ・・・あっ、はぁぁぁぁぁん!」

 身体を大きく震わせた葉月は、思い切り達してしまっていた。膣からは愛液が迸り、それを阿多森が喉を鳴らして啜り込む。

「おやおや、イッたようだなぁ常盤院選手」

 レフェリーの皮肉にも何も返せない。葉月が達したことに満足したのか、ようやく阿多森の舌が膣から抜かれた。

「・・・はふぅ、はぁぁ、ふぅぅ・・・ふあっ!」

 荒い息を吐く葉月だったが、レフェリーが乳首を弄るとまた喘ぎ声を上げる。

「カカッ、面白いほどに乱れてくれるじゃねぇか。前回はかなり良い経験を積んだみてぇだな」

 舌責めを止めた阿多森は、秘裂と淫核を余裕を持って弄りながら、葉月を言葉でも責める。乳房と乳首を弄り回すレフェリーもそれに続く。

「まあ、前回も散々悦んでくれたからな。元々素質もあったんだろう」

 前回の試合のときにも散々葉月を嬲ったレフェリーが、言葉でも葉月を嬲る。

「常盤院選手、気持ち良くて仕方ないだろう? 正直に言って良いんだぞ、『もっとしてください』ってな」

 この嘲りに、葉月の怒気が沸騰する。

(こいつ・・・どこまで、ふざけたこと言いやがる!)

 自分でも気づかぬ内に、拳を握り締めていた。

(これくらいのことで、負けてられるか!)

 怒りが、一時的とは言え快感を忘れさせた。

「くぅぅぅっ!」

 唇を痛いほどに噛み締め、更に快感を追いやる。

「せぇいっ!」

 レフェリーの腕を掴んで支点とし、阿多森を蹴り飛ばす。その勢いで後方に回転し、レフェリーの背後に下り立つ。

 そのままドレスの胸元を直し、阿多森を睨む。

「カカッ、まだ生きが良いじゃねぇか。嬲り甲斐があるぜ。次はもっともっと感じさせてやるよ」

 阿多森が長い舌を垂らし、唇に残った葉月の愛液を舐め取る。

「・・・攻めも責めもヘタクソ過ぎて、欠伸が出そう」

「ほざいてくれるじゃねぇか、一度失神させてからしこたま感じさせてやるよ!」

 またも阿多森の右腕が伸びる。

「ふっ!」

 同時に残像を残し、葉月の身体が宙を舞っていた。

葉月の残像へ伸びた阿多森の突きは、ウェディングドレスのスカートを貫いていた。

「ふっ!」

 葉月の両太ももが阿多森の右腕に巻きつき、そこを支点に回転する。

「ちぃぃっ!」

 阿多森の伸びた右腕はウェディングドレスの布地に絡め捕られ、戻すことができない。

「せいっ!」

 回転の勢いを利用した葉月の蹴りが、真下から阿多森の顎を蹴り上げる。吹き飛んだ阿多森を巻きついたままのウェディングドレスのスカートで引き寄せ、空中に居るままで無防備な顔面を蹴り抜く。

 葉月の着地に遅れ、阿多森がリングに崩れ落ちた。


<カンカンカン!>


 完全に動きの止まった阿多森に、レフェリーは慌ててゴングを要請していた。

「・・・ふうっ」

 葉月は思わず、大きく息を吐いていた。今回も恥ずかしい思いをさせられたものの、阿多森という難敵を倒すことができた。これで晴れて結婚式に臨める。

 リングを降りようとした葉月の背に、声が投げられる。

「それじゃ、天津選手に宜しくな」

 レフェリーの口調に不吉なものを感じ、葉月はレフェリーに顔を向ける。

「どうした? 天津選手も今度試合をする予定だからな。精々鍛えてやってくれ」

「もう命は関係ないだろ、これ以上彼女を辱めないでくれ!」

 可愛い後輩を守ろうとする一心で葉月は叫ぶ。

「そうは言っても、天津選手は人気でね。もう一度見たいと言う声が多いんだよ」

「でもそれは、私がこの前勝ったことで清算された筈だ!」

「このままじゃ平行線だな」

 顎に手を当てて考え込んだ様子のレフェリーが、一度頷く。

「それじゃあ、常盤院選手が代わりに今ここで闘うか? それで勝てば、天津選手への招待を取消にしようじゃないか。どうだ?」

「・・・やるよ」

 命を二度と<地下闘艶場>には上げさせない。葉月の決心に、レフェリーは唇の端を上げることで応えた。


 数分後、フード付きのガウンを頭から被った選手が姿を現す。トップロープを軽々と飛び越えた選手は、するりとガウンを脱ぎ落した。

「赤コーナー、『マジシャン・ピエロ』、ジョーカー!」

 二戦目の相手は、まるでサーカスのピエロを思わせた。白く塗られた顔、目元のペイント、赤い付け鼻、だぼっとした衣装。思わず気を抜きそうな見た目だったが、ここは<地下闘艶場>だと気を引き締める。

「青コーナー、『小さな達人(リトル・マスター)』、常盤院葉月!」

 先程の見事な勝利のためか、葉月に拍手が送られる。しかしそれも一部の観客にしか過ぎず、野次や指笛で掻き消される。

 当の葉月は場内の騒ぎなど気にせず、静かで深い呼吸でもって、少しでも体力を戻そうと集中する。

「よし、第二戦開始!」

 葉月の体力回復を邪魔するためか、二戦目だからか、レフェリーはボディチェックを行わずにゴングを要請する。


<カーン!>


(あまり回復してないか・・・体力のある内に、速攻で決める!)

 甚振られた時間が長く、しかも絶頂まで持っていかれている。深呼吸くらいではたいした回復になっていない。しかし、攻めなければ勝てない。

 拳を上下に揺さぶるフェイントから、一気の突進で突きを叩き込む。この一撃でジョーカーが吹っ飛び、ダウンする。

 しかし次の瞬間、ジョーカーはヘッドスプリングで起き上がっていた。一度首を左右に倒したジョーカーが、ぬるりと距離を詰めてくる。

「っ!」

 その滑らかさに危険を感じ、回り込むように距離を取る。

(当たった筈だ、なのに・・・)

 ジョーカーの表情は読めず、動きにも遅滞はない。

(けど、時間は掛けられない)

 自らの残り体力を考えた場合、速戦しかない。気味の悪い相手なら尚更だ。

 ジョーカーの出方を伺いながら、ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐く。

(よし!)

 更に息を吸ったところで、円の動きから直線の動きに変えて直突きを繰り出す。しかし、直撃した筈の手応えが薄い。

「シィィィッ!」

 続く連打も全てジョーカーにヒットするが、まるで暖簾を相手に闘っているかのようだ。確かにジョーカーの体を捉えている筈なのに、拳に返ってくる感触が鈍い。

 連打で消費した呼吸を回復しようと、距離を取ろうとした瞬間だった。

「っ!」

 ジョーカーが手袋に包まれた手刀を一閃すると、それだけでウェディングドレスの胸元が切り落とされた。乳房が丸出しとなり、観客の視線が突き刺さってくるのがわかる。

(手袋しててこの切れ味、ありえねぇ)

 考えられるのは、手袋が凶器だということ。

(あの野郎、だからボディチェックとか言い出さなかったな!)

 レフェリーは、チャンスと見ればすぐにセクハラをしてくる最低男だ。それなのに、二戦目の前にボディチェックを行おうとはしなかった。それは、ジョーカーが凶器を使うことを知っていたからだろう。

(なら!)

 凶器を奪い取るため、改めて構えを取る。右の手刀を横薙ぎに薙ぐジョーカーの右手首を掴み、更に上空から襲い来る左手首も掴む。即座に白手袋の嵌め口を持って一気に奪い去る。

(よし!)

 衣装を切り裂いたのは手袋だと看破した葉月は、ジョーカーから白手袋を奪い取った。しかし僅かに生じた隙に、ジョーカーの膝が腹部に突き刺さっていた。

「ぐぶぅっ!」

 強烈な打撃に足元が浮く。ジョーカーは葉月の頭部を掴み、横回転させながら後頭部をリングに叩きつける。

「・・・あっ・・・ぐぅっ・・・」

 頭部への衝撃で脳が揺れ、立つどころか力も入らない。ジョーカーは葉月を軽々と抱え上げると、その小柄な身体をロープで拘束していく。

 葉月は両手を横に広げ、股間が丸見えになるように足をロープに絡ませられた。

「この格好も懐かしいだろう?」

 レフェリーの皮肉にも答えられない。

 ぬるりとリング下に降りたジョーカーは、膝のバネだけでエプロンサイドに飛び上がり、葉月の背後から胸を揉み始める。

「さっきは物足りなかっただろう? 常盤院選手が満足するように、こっちも頑張るからな」

 レフェリーはスカートを前の割れ目から左右に広げ、レースの下着の上から秘部を撫でる。

「だ、まれ・・・下衆、が・・・!」

「なんだ、まだ元気じゃないか。それじゃ、もっと強く責めてやるよ」

 レフェリーは下着の中に手を入れ、直接秘裂を弄りだす。

「くぅぅっ!」

 第一戦で散々舐められたそこを再び責められ、葉月は上げそうになった嬌声を噛み殺す。

「そら、嬉しそうな声が出てるじゃないか」

「・・・お前の、聞き違いだ・・・んんぅ!」

「常盤院選手のおっぱいは、そうは言っていないみたいだがな」

 ジョーカーに揉まれる乳房を見て、レフェリーが嘲る。葉月の乳首は痛いくらいに立ち上がっており、それが官能を得ている証拠となっている。

「まあ、減らず口を叩けるのも今の内だけどな」

 一頻り葉月の秘裂を弄ったレフェリーは下着から手を抜き、ジョーカーに顔を向ける。

「ジョーカー、ローターをくれ」

 葉月の乳房に興奮が増したのか、レフェリーはジョーカーに淫器具を要求する。次の瞬間、どこから取り出したのか、ジョーカーの手の中にピンク色のローターがあった。

「ありがとよ」

 ローターを受け取ったレフェリーは、それを葉月の秘部に当てる。

「まずは慣らし運転といこうか」

 一番弱い振動に設定し、スイッチを入れる。

「んんっ・・・」

 葉月の腰がびくりと跳ねるが、それでも声を噛み殺す。

「常盤院選手、気持ち良いと認めたらどうだ?」

「・・・誰が!」

 歯を食いしばって否定する葉月だったが、レフェリーには逆効果だ。

「今更誤魔化そうとするなよ、気持ち良いことを我慢できないのは知っているんだからな」

 にやにやと笑うレフェリーは、徐々にローターの振動を上げていく。

「うっ、んっ、うぅんっ!」

 機械の振動に責められることで、葉月は嬌声を耐えられなくなる。それでも何故かジョーカーが乳房への責めを止めたことで、意地で声を抑え込む。

「えっ・・・」

 次の瞬間、眼前に二本の筆が出現していた。

 またもジョーカーの仕業だった。葉月に見せつけるように振られた筆は、ゆっくりと下りていく。そして、葉月の乳首へと到達する。

「はぁん!」

 筆の柔らかさと繊細さが、男たちの手とはまた違う色合いで乳首を嬲る。

「だいぶ気に入っているようじゃないか。だが、これも加えたらどうなるかな?」

 レフェリーが秘部からローターを外し、乳首へと近づけていく。

「よ・・・よせぇ・・・」

「レフェリーに命令するんじゃない」

 嘲笑したレフェリーが、抵抗できない葉月の乳首にローターを当てる。

「あぁあっ!」

 筆とはまた違う無機質な振動が乳首に与えられる。乳房と乳輪には筆が這い回り、嬌声が止まらない。

「やっ、やめっ、あはぁっ、だめ、あふぅぅっ!」

 もう言葉にもならず、首を振って紛らわす。否、快感を紛らわそうとしても、ローターと筆の責めに更なる官能に襲い掛かられてしまう。

「おっぱいは駄目か? やっぱりこっちがいいのか?」

 レフェリーは再びローターで秘部を責めてくる。

「ああっ、やめっ・・・んあぁっ!」

 二本の筆で乳輪、乳首を責められ、ローターで秘部を震わせられる。しかも決して強い刺激ではなく、焦らすような責めに悶えさせられる。

「もう、こいつは邪魔だな」

 一度ローターを置いたレフェリーは、あちこち切り裂かれた葉月のウェディングドレスに手を掛ける。

 次の瞬間、白いウェディングドレスは破られ、葉月の肢体から滑り落ちていく。葉月は手袋、ガーターベルト、そして秘部を守るレースの下着のみの姿とされた。

「おーおー、大洪水じゃないか。これで良く感じてないなんて言えるもんだ」

 自らの愛液でぐちょぐちょに濡れそぼった下着を揶揄され、葉月は屈辱に身を捩る。

「こっちも凄いことになっているぞ?」

 ジョーカーの筆にあやされ続けている葉月の乳首はしこり切り、赤みを帯びているほどだ。

「随分辛そうだな、常盤院選手。どれ、楽にしてやろう」

 レフェリーが右乳首に吸いつき、左乳首を扱く。

「はあああっ! ああっ、ふああああっ!」

 敏感な乳首を責められ、またも葉月が絶叫する。しかもジョーカーの操る筆が乳房から腹部を通り、股間周りを撫でてくる。

「ああっ、もう、あっ、ふあぁっ!」

 必死に首を振る葉月が面白いのか、レフェリーが再びローターを淫核に押し当ててくる。

「あっ、がっ、あはぁっ!」

 乳首への舐め責め、乳首への扱き責め、乳房への揉み責め、股間への筆責め、淫核へのローター責め。幾つもの強力な責めを同時に加えられ、葉月は只々絶叫する。

「くくっ、大喜びじゃないか常盤院選手」

 乳首から口を離したレフェリーが、喘ぎ続ける葉月を皮肉る。

「なら、もっと悦ばせてやろう」

 レフェリーの手がローター諸共下着の中に突っ込まれる。そのまま、下着の中で顔を出した淫核にローターを押し当ててくる。

「あああっ! ああっ、ああぁ、あああああああっ!」

 乳首、淫核という敏感な箇所を同時に責められ、葉月は堪らず絶頂していた。

「そら、常盤院選手の大好きなところにも入れてやるよ」

「まて、さすがにそこは・・・うあああっ!」

 レフェリーがこともあろうに、ローターを膣の中に突っ込んだのだ。元々性感帯であり、<地下闘艶場>で開発された膣でローターが暴れ、暴力的な快感となる。下着がローターの落下を防ぐことで、一層快感が生じる。

「ああぅ、ううっ、あはあぁぁっ!」

「うんうん、常盤院選手はやっぱり中が大好きだな」

 ローターを中に入れるだけでなく、レフェリーは葉月のお腹を押さえることで一層感じさせようとする。

「うわっ、うわぁっ、はうああぁぁああぁっ!」

 最早葉月は叫ぶしかできない。そこにレフェリーが救いの手を差し伸べる。

「ギブアップしてもいいからな? まあ、そのときは天津選手に闘ってもらうことになるけどな」

「う、ううっ・・・」

 後輩を守るために挑んだ闘いだ。ギブアップをするわけにはいかない。しかしそれは、嬲られることを耐えることでもあるのだ。

(み、命・・・守ら、なきゃ・・・ああっ、守らなきゃぁ・・・だめぇ!)

 使命感を思い起こし、快感への防壁にしようとするものの、圧倒的な物量差にあっさりと押し流される。

(つ、辛い・・・っ! こんなぁ、こんなのぉ・・・!)

 勝手に腰が動き、唇は嬌声を零す。乳首はしこりきり、愛液は止めどなく流れ落ちる。それなのに男たちは責めを止めるどころか、尚も葉月の敏感なところを更に嬲ってくる。

(あああっ! また、またぁ・・・っ!)

 耐えきることなどできず、更に二度目の絶頂へと押し上げられる。

「ああぁっ、ふあっ、あはぁぁぁぁぁっ!」

 激しい絶叫が葉月の唇から迸り、ロープに縛められた四肢と腰が痙攣する。

「あ・・・ぁぁっ・・・ぅ・・・」

 失神寸前となった葉月の手足を、ジョーカーはロープから自由にしていく。そのままリング寝かせ、フォールに入ろうとしたそのときだった。

「おい、待ってくれ。まだ責め足りないぞ」

 不平を洩らしたのはレフェリーだった。

「な、いいだろ? もう少し楽しませてくれ。これで最後かもしれないんだ」

 ぽりぽりと頭を掻いたジョーカーだったが、大きく肩を竦め、フォールを解く。

「それじゃ、もうちょっと手伝ってくれ」

 レフェリーのずうずうしい物言いに、ジョーカーがゆらりと立ち上がる。

「・・・い、いや、その・・・手伝ってくれると、とても助かるんだ。お客さんも喜んでくれる、と思う」

 しどろもどろになるレフェリーに、ジョーカーが小さく息を吐く。

 ジョーカーは葉月を万歳させるように両腕を上げさせ、背後から羽交い絞めにすると諸共に仰向けで倒れる。しかも両足を股間に差し入れ、開脚を強いる。

「やめ・・・ろ・・・あふぅっ!」

「常盤院選手、諦めろ」

 レフェリーに乳首を弄られ、力が抜ける。次の瞬間には、ジョーカーの脚が葉月の脚に絡められ、大開脚とされていた。

 花嫁の証であるベールを被った葉月が、下着に隠されているとは言え、秘部が露わになるほど大股開きとされてしまう。この光景に、観客席がまた大きく沸く。

「そら、お客さんの声が聞こえるか? 常盤院選手が恥ずかしいことをされればされるほど、お客さんが喜んでくれるぞ」

 葉月の両乳房を揉みながら、レフェリーがにやつく。

「う、る、さ・・・はぁあん!」

 反論しようとしても、乳首を弄られることで封じられる。

「なんだ、おっぱいと乳首じゃ物足りないか?」

 葉月の右乳首を押し潰しながら、レフェリーの右手が秘部へと伸ばされる。

「ここも、下着の上からじゃまだ足りないだろう?」

 一度秘裂を撫でたレフェリーの右手が、下着の中に突っ込まれる。

「そらそら、常盤院選手の大好きなアソコ責めだ!」

 レフェリーの中指が膣を抉り、愛液を掻き出すほどに激しく動かす。

「あああっ! やっ、あっ、やはぁぁぁっ!」

 レフェリーの指で膣内部を掻き回されるたび、官能の大波が襲い掛かってくる。

「諦めてギブアップしたらどうだ? 天津選手が参戦すれば、ファイトマネーが出る。生活が楽になるからそのほうが良いんじゃないか?」

 レフェリーは葉月を色責めで追い込みながら、敗北を認めさせようとする。

(耐えなきゃ・・・負けたら、また命が・・・犠牲になる・・・!)

 後輩を守るため、必死に快感を堪える。しかしそれも僅かな時間で、怒涛のごとく押し寄せる快楽の波に容易く呑み込まれる。

「もう辛いんだろう? ええ?」

 下卑た笑みを顔に張りつかせたまま、レフェリーは葉月の乳房を揉みながら乳首を転がしてくる。

「ギブアップしたらどうだ、常盤院選手? それなら責めも止めてやるぞ」

 もう口を利くことも苦しく、弱々しく首を振る。

「そうか、なら・・・」

 葉月の顎を掴んだレフェリーは、いきなり唇を奪ってきた。

「っ! んむむっ!」

 しかも下着の中に手を突っ込み、秘裂を割って中指と薬指を突き立ててくる。

「んっ、んっ、んんんーーーっ!」

 唇を塞がれては声も出せず、拘束されては身動きもできず、発散できない快感が身体中で爆発する。葉月の腰は派手に跳ね、秘裂からは潮を吹く。

「・・・くくっ、良いイキっぷりだな」

 葉月の潮を浴びた右手を下着から抜いたレフェリーは、右手に残る葉月の愛液を舐め取る。

「自分が今どれだけ厭らしい顔をしてるか、わかってるか? 天津選手だって、そこまで厭らしい表情は見せなかったぞ。なにが『リトル・マスター』だ」

 レフェリーの嘲弄が、葉月の胸に突き刺さる。

(私は・・・何のためにリングに上がった? 何のために二戦目を受け入れた?)

 決して辱められるためではない。大事な後輩である命を、このような下衆な闘いの輪から守るためだ。そのためには、自分の格闘家としての誇りを賭けて闘わねば!

「おおおっ!」

 突如、葉月が咆哮する。形容し難い鈍い音が鳴り、葉月が起き上がる。そのまま前転し、ジョーカーの拘束から逃れる。

「ぐっ・・・うぐぅぅ・・・っ!」

 獣のように呻く葉月の両肩から先が、だらりと垂れ下がっていた。葉月は両肩を極めていたジョーカーの腕を支点とし、自ら肩の関節を外して脱出したのだ。それは皮肉にも、最初の試合での阿多森の闘い方がヒントだった。

「ぶふーっ、ぶふーっ」

 荒い息を吐く葉月だったが、その目は闘志に燃えている。痛みが快感を消し去ったためだ。

 その視線の先で、ジョーカーがゆらりと立ち上がる。垂らした両腕をぶらぶらと振り、葉月を挑発してくる。その挑発に、葉月が一気に前に出た。なんと、踏み込みと同時に脱臼している筈の右腕を振り、手刀を放ったのだ。

 横薙ぎの手刀は、ジョーカーの顎を打ち抜いていた。肩が外れた分、ジョーカーの目算を超えたリーチとなっていたのだ。

「うおおおっ!」

 脱臼した関節を無理やり動かした激痛に咆哮しながら、手刀の勢いを利用して回転する。

「がああっ!」

 更にリングを蹴り、飛び上がる。葉月の回転飛び蹴りがジョーカーの頭部を捉え、吹き飛ばす。蹴りの反動で葉月もリングへと落ち、新たな激しい痛みに身を捩る。

 ジョーカー、葉月が共にダウンしたことで、レフェリーはダブルダウンのカウントを始める。

「ワン・・・ツー・・・」

(・・・立たないと・・・)

「あぐぅっ!」

 動こう、立ち上がろうとするが、肩から発せられる激痛が邪魔する。

 その間にも、レフェリーのカウントは進んでいく。

「フォー・・・ファイブ・・・」

(命を・・・守らなきゃ・・・!)

 しかし、痛みと疲労が葉月の身体に圧し掛かる。両肩は外れ、試合前から延々と嬲り責めを受けてきたのだ。ジョーカーをダウンさせたこと自体が奇跡的だった。

 そして、レフェリーが大きく息を吸う。

「テン!」

 最後のカウントが取られ、ゴングが鳴らされる。リングに立っていたのは、レフェリーだけだった。


<カンカンカン!>


 ダブルノックダウンの裁定に、観客からは凄まじいブーイングが巻き起こる。

「・・・どう決着を着けるつもりだ?」

 いつの間にか、一人の黒服がリングに上がっていた。その問いに、レフェリーは両者引分けで終わらせることができないと悟る。

「じゃあジョーカー、もう少し・・・」

 振り返った先に、もうジョーカーの姿はなかった。一度固唾を飲んだレフェリーは、乾いた唇を舐めて言葉を絞り出す。

「そ、それなら、もう一人新しい選手を・・・」

「もう待機している選手は居ない」

 黒服が冷たく告げる。

「そ、そうか、それならこれで・・・」

「もう一人居るじゃないか。ここに」

 試合を終わらそうとしたレフェリーを、黒服が指差す。

 リング上の遣り取りを見つめていた観客席からは、無慈悲な後押しとなる野次が飛ばされる。

「そう言うことだ、常盤院葉月選手。この男を倒せば、貴女の勝利となる。そのときには、貴女の願いを遵守しよう」

「・・・あんたとの約束なら、信じられそうだね」

 痛覚をぎりぎりと磨り潰すように、腕の動かない葉月がゆっくりと立ち上がる。

「何時でも、どうぞ?」

 手招きはできなかったが、葉月がレフェリーを呼ぶ。

「くそぉ・・・こうなったら自棄だ!」

 レフェリーは葉月に突っ込み、両脚を刈る。

「・・・あれ?」

 なんと、レフェリーのタックルが決まり、葉月を組み伏せていた。タックルで上手く肩も嵌ったのか、葉月は頭を抱えて呻いている。

「なんだ、やっぱり限界だったんじゃないか」

 レフェリーは早速両手を伸ばし、乳首を虐め始める。

「あんっ!」

 忽ち葉月の唇からは嬌声が零れ、乳首も忽ち硬く張り詰める。

「さあ、今度はじっくりと気持ち良くしてやるからな?」

 にやりと笑ったレフェリーは、葉月の左乳首に吸いつく。

「はわぁぁっ!」

 乳首への新たな刺激に、葉月は甲高い声を放つ。レフェリーは右乳首を転がしながら、左乳首を舐めしゃぶる。

「ひぅっ、はっ、あはぁん!」

 レフェリーは乳首責めだけで葉月を昂らせ、喘がせ続けた。


「はっ・・・はふぅ・・・」

 延々と乳首を苛められ、葉月は荒い息を吐いていた。

「まったく、乳首が大好きだな。ええ?」

「あひぃ!」

 両乳首を潰され、またも葉月がよがり声を上げる。

「どれ、こっちのほうはどうなった?」

 レフェリーは葉月の股間へと手を伸ばし、下着の上から撫で回す。

「あはぁん!」

「なんだ、もうびちょびちょじゃないか」

 想像以上の濡れ方に、レフェリーは更ににやける。

「ここまで濡れていたら、気持ち悪いだろう? 脱がしてやるからな」

「あぁ・・・だめぇ・・・」

 弱々しく首を振る葉月など無視し、愛液で濡れそぼった下着に手を掛ける。

「ほら見ろ、こんなに濡れているじゃないか。こんなものをいつまでも穿いていたら駄目だぞ?」

 欲望ににやつきながら、レフェリーは下着をずらしていく。

「それだけは・・・はぁん!」

 葉月が抵抗の素振りを見せると、レフェリーは秘裂への刺激で遮る。

「折角脱がしてやっているんだ、駄々を捏ねるんじゃない」

 そうしておいて、下着をどんどんと脱がしていく。

「そら、脱げたぞ!」

 色の変わるほど愛液に濡れた下着をレフェリーが掲げると、観客席がどっと沸く。そのままレフェリーが下着を観客席に投げ入れると、忽ち争奪戦が巻き起こる。

「待たせたな」

 手ぶらになったレフェリーは、再び葉月へと歩み寄る。

「う・・・うぅ・・・」

 もう何度も達し、話すことすら厳しいのだろう。葉月はゆっくりと首を左右に振る。

「なんだ、嬉しいのか? なぁに、まだまだ気持ち良くしてやるからな」

 レフェリーは小柄な葉月に再び圧し掛かり、下着もなくなった股間を弄っていく。

「そら、どうだ、ええ? もうグチョグチョじゃないか」

「も、もう・・・許して・・・!」

「許してと言いながら、どんどん濡れてきてるじゃないか」

 下着は脱がしたが、ガーターベルトは残したまま葉月を嬲る。

「ふぁっ、はぁん、あふぅっ」

 葉月の唇は喘ぎ声を零し、力の入らない身体をくねらせる。その様に興奮したレフェリーは、葉月の秘裂に指を突き込む。愛液で潤む葉月の秘裂はレフェリーの指を抵抗もなく呑み込み、膣へと導く。

「婚約者を忘れるくらいに感じさせてやるよ!」

 レフェリーは膣内に突き立てた指を激しく動かし、葉月を絶頂に導いていく。

「あはぁぁぁっ! だめぇ、またイク、イッちゃうからぁ!」

「お前に選択肢なんかないんだよ! 何度でもイッちまえ!」

 葉月の懇願は逆にレフェリーの興奮を増し、尚一層の膣責めへと駆り立てる。

「あぁあっ、あああぁぁぁぁん・・・っ!」

 またも達した葉月は、更に続けての絶頂に見舞われ、何度も身体をひくつかせる。

「あやぁっ、あはぅう、あひぐぅっ!」

 何かを言い掛けるものの、圧倒的な量の快感のため、葉月の口からは意味のない言葉しか出てこない。

「なんだ、もうイキたくないのか?」

 膣責めを続けながらのレフェリーの問いに、葉月はがくがくと頷く。

「そうか、わかった」

 レフェリーの指は葉月の膣に入ったままだが、動きは止めてやる。

「俺の言うことは何でも聞くんだ。いいな?」

 この問いにも、葉月は何度も頷く。

「わかったら・・・観客の前で、誓いの口づけをしてもらおうか」

「そんな・・・できない、そんなこと・・・あっ、ああっ、ああん!」

「嫌だと言うなら、素直になるまで責め続けるまでだ」

 レフェリーの指が激しく動き、葉月の膣を責め、更に愛液を迸らせる。

「やめ、あああっ! わかっ、たからぁっ! やめ・・・ってぇぇぇ!」

 葉月の哀願に、レフェリーは責めを止める。

「さあ、誓え。俺の奴隷になるために、な」

「・・・ああぁっ! わかったぁ! するからぁ! あああん!」

 さすがに躊躇していた葉月だったが、レフェリーが淫核と膣内を同時に責めると、震えながらもレフェリーへと唇を近づけていく。

 レフェリーと葉月の唇が重なり、性奴隷の契約が成った。

「・・・それじゃ、褒美の絶頂だ!」

「ああぁっ、あぁん、あふぅぅぅぅっ!」

 にやりと笑ったレフェリーが、膣へと凶悪なほどの振動を送り込む。

「ああぁっ! ああっ、はわぁぁぁぁっ!」

 凄まじい絶叫を放った葉月が、何度も痙攣する。そのまま、ぐったりと力を失った。

「・・・くくっ」

 葉月を見下ろしたまま、レフェリーがゆっくりと立ち上がる。コーナーに向かうと、そこに置かれていた葉月が持ってきたブーケへと手を伸ばす。

 ブーケを拾い上げたレフェリーは、観客席へと投げ込んだ。反射的に受け取った一人の観客に、レフェリーは手招きする。

「おめでとうございます。リングに上がってください」

 レフェリーの招きの意味を理解し、ブーケを持った男はだらしない表情でリングに上がる。

「おい、起きろ。奴隷の分際で、いつまで寝ているつもりだ?」

 レフェリーは葉月の頬を叩き、覚醒を促す。

「・・・ぁっ・・・ぇ・・・?」

 絶頂に次ぐ絶頂で意識を失っていた葉月が、ぼんやりと目を開く。

「さあ、奴隷としての最初のお仕事だ」

「・・・っ!」

 奴隷、の一言に、葉月はすべてを思い出したようだ。そして、リングに居る観客に気づくと自ら身体を抱きしめる。

「それじゃ、お客様にもさっきと同じようにするんだ」

「さっき・・・?」

 わからないのか、わからない振りをしているのか、葉月はぼんやりと言葉を落とす。

「なんだ、はっきり言わないとわからないのか? 口づけをするんだ、ご主人様にな」

 レフェリーはブーケを持ったままの観客に手を向け、にやにやと笑う。

「さあ、自分からキスするんだ」

「・・・」

 一度目を伏せた葉月だったが、ゆっくりと立ち上がり、爪先立ちで震えながら男にキスをする。

「よし、ご褒美だ!」

「あはぁぁぁっ!」

 レフェリーがいきなり秘部へ振動を加えたことで、葉月の顎が跳ね上がる。

「さあ、この厭らしい奴隷を五分間、好きにしてください!」

 レフェリーが退くと同時に、ブーケを放り出した男が葉月へと圧し掛かる。

「ああっ、やめ・・・んんぅっ!」

 男から唇を奪われた葉月は、更に乳房と乳首を同時に弄られる。

「んむぅっ、むっ、んむぅぅぅっ!」

 口を塞がれたまま快楽責めをされ、葉月がくぐもった声で呻く。

「あむぅっぅぅぅぅぅっ!」

 ぴんと足先を伸ばした葉月の身体が、一拍置いて脱力する。しかしすぐに新たな刺激に身を捩り、身体を跳ねさせた。


「時間になりました」

 レフェリーの制止に、葉月の身体を堪能していた男が不満気な様子で離れる。

「それでは、次の幸運な方は・・・!」

 レフェリーは落ちていたブーケを拾い、再び観客席へと投げ込む。観客は我先にと立ち上がり、必死に腕を伸ばす。長身の中年男性がブーケを掴むと、すぐにリングへと上がってくる。

「ではまず、奴隷の口づけをお受けください」

 ブーケを受け取ったレフェリーの言葉に、長身の男性は冷たい笑顔のまま直立不動となる。

「・・・」

 葉月は口づけしようとするものの、身長差があり過ぎて唇が届かない。

「あの・・・このままだと、できない・・・きゃんっ!」

「奴隷のくせに口答えをするな!」

 レフェリーの軽めのスパンキングに、葉月が小さく悲鳴を上げる。

「で、でも・・・」

「仕方のない奴だ」

 レフェリーは葉月の背後に立つと、葉月の股間に手を差し込む。

「あぁん!」

「厭らしい声を出すんじゃない」

 わざと葉月の膣を掻き回しながら、レフェリーは葉月を持ち上げる。

「んっ、んんっ・・・!」

 早く終わってくれとばかりに、葉月は長身の中年男性の唇に吸いつく。

「よし、良いだろう」

 レフェリーが葉月を下ろすと、葉月は股間を庇いながら膝をつく。

「それでは、五分間お楽しみください!」

 合図を聞いた長身の中年男性は、葉月を四つん這いにさせると、小さな身体の背後から圧し掛かる。そのまま乳房を揉みながら乳首を転がし、葉月に無理やり後ろを向かせるとキスを繰り返す。

「んむぅん、あむぅっ」

 苦しい姿勢で舌まで突き込まれ、葉月が苦鳴を洩らす。男は粘っこい口づけを繰り返しながら乳房と乳首を弄り、腰を葉月の尻に擦りつける。葉月の秘部からは糸を引くような粘つく音が響く。

「あむっ、んむぅっ、あはぁぁああああっ!」

 乳房、乳首、秘部への刺激に、葉月がまたも昇り詰める。男はぐったりとなった葉月を背後から自分の胸に抱え込むと、そのままセカンドロープに腰掛ける。ロープの反動を使って腰を振り、両手は葉月の乳房と乳首を弄り回す。

「あはぁあん! こんな、まっ、やあぁぁあん!」

 葉月の唇から、意味を成さない叫びが放たれる。

「あっ、あっ、あっ・・・あああーーーーーーっ!」

 またも葉月が絶叫したとき、制限時間となる。

「時間です」

 レフェリーが告げると、長身の中年男性は葉月を放り出してからゆっくりと立ち上がる。その股間は、葉月の愛液ですっかり濡れそぼってしまっている。

「では・・・」

 レフェリーがブーケを持つと、それだけで観客席が沸く。

 レフェリーがブーケを観客席に投げ込み、男が掴んでリングへと上がる。

 男が五分間葉月を嬲り、リングを降りる。

 レフェリーがブーケを投げ入れ、また観客がリングへと上がり、葉月が嬲られ、時間が来て、観客がリングを降りる。

 何人もの男から代わる代わる嬲られ続ける葉月を見下ろすレフェリーだったが、何故か眉を顰める。

(・・・顎が痛いな)

 その原因を思いつかずに首を捻るレフェリーだったが、すぐに嬲られる葉月の姿に視線を奪われる。下腹部の熱は萎えることなく生じ続けている。

(今すぐにでもおっ始めたいところではあるが・・・)

 さすがにリングの上で抱くわけにはいかない。しかし、この饗宴の後は・・・

 レフェリーは零れて仕方ない笑みを張りつけたまま、観客に嬲られる葉月を眺め続けていた。


「・・・ふう」

 葉月はため息を吐いた。胸元は剥き出しだが、股間は純白の下着に守られている。

 先程、顎への膝蹴り一発で意識を失ったレフェリーを睨みつける。

「キモい顔して寝てるね」

 脱臼の痛みに多量の汗を流しながら、葉月は吐き捨てた。レフェリーから視線を外し、リング下の黒服に向ける。

「悪いけど、肩嵌めてくれる?」

「わかりました、では、一度寝て頂けますか?」

 痛みを堪えてリングに寝た葉月の右手首を持った黒服が、素早く引っ張りながら肩の関節を嵌める。

「あぐわぁっ!」

「左肩も入れますよ」

「はがうっ!」

 さすがに声は殺せず、葉月は獣のような唸り声を上げてしまった。

「控室でテーピングなどを行いますので、もう暫く痛みを我慢してください」

「・・・ありがとね、上手く嵌ってるよ」

 肩の関節が嵌ったことで、痛みが多少治まる。しかし、心には大きな虚脱感が生まれていた。

(もう、前みたいには闘えないな)

 脱臼は靭帯の損傷も伴う。両肩が元の状態に戻ることはないだろう。自分の身体だ、良くわかる。阿多森のような異形の身体ではないのだ。

(こんなとこじゃなく、もっと輝いた場所で引退試合にしたかったけど・・・)

 それでも、闘ったことに後悔はない。

(命、もう、貴女に誘いが掛かることはないよ)

 後輩を守って闘えた、それでいい。

 葉月は格闘家人生としての最後の闘いを終え、<地下闘艶場>を後にした。もうその身体にウェディングドレスは纏われていなかったが、気高い空気を纏った葉月の退場に、会場からは拍手も送られていた。



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