【特別試合 其の六十三 黒芽雪緒:護身術】
犠牲者の名は「黒芽(くろめ)雪緒(ゆきお)」。18歳。身長163cm、B89(Eカップ)・W57・H84。
良く手入れされた肩までの黒髪。思わず視線が吸い寄せられる形の良い瞳。可愛い顔立ちの良家のお嬢様だが、実はかなり腹黒い性格。自分のライバルになりそうな者は、あの手この手で蹴落としてきた。そこからついた陰のあだ名が「真黒雪姫」。
蹴落とされた者たちの恨みにより、雪緒は淫獄のリングへと堕とされた。なんとか勝利を挙げたものの、<地下闘艶場>からまたも参戦要請という命令が届いた。
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(またこんな衣装を準備して・・・)
目の前に置かれている衣装に、雪緒は内心ため息を吐く。前回は胸の谷間も露わなドレスだったが、今回はセーラー服だ。やはり普通の制服ではなく、襟ぐりが深く、スカートはミニスカートもいいところだ。
(どうせ着て行かないといけないし・・・)
半ば諦めの境地で、雪緒は衣装を手に取った。
ガウン姿の雪緒が花道に姿を現した瞬間、野次や指笛に交じり、怒号までもが飛んでくる。雪緒が蹴落としてきた人間の関係者なのだろう。
(所詮負け犬とその周囲のゴミね。品がないわ)
そんなものに動揺する雪緒ではない。この世は弱肉強食。食われる側が愚かなのだ。
(・・・今の私も、食われる側ね)
皮肉な思いに唇の端を上げる。父親の庇護が及ばない場所に堕とされたのは雪緒自身だ。
(だからこそ・・・)
そう、だからこそ力をつけ、父親の庇護すら必要としない存在とならねばならないのだ。
(まず、今日も勝たなければ・・・)
その思考も、突然停止する。リングの上の人物が目に入ったからだ。
(えっ・・・嘘、でしょう?)
雪緒の視線の先に、信じられない人物が居た。最早野次など耳にすら届かず、雪緒は動揺したままの足取りでリングへと上がった。
「赤コーナー、『貴公子』、甲羅木駁!」
駁のコールに、<地下闘艶場>の数少ない女性観戦者から絶叫が起こる。
雪緒の対戦相手は「甲羅木(こうらぎ)駁(ばく)」だった。甘いマスクと気取らない性格、しかも服の下に隠された肉体は美しさすら感じてしまうほど。今日は道衣の下にTシャツを着込んでいるため、肉体美は伺えない。
テレビや雑誌にもよく登場する人気の芸能人であり、雪緒も大ファンだ。
(他人の空似・・・いいえ、そんな筈ないわ!)
甲羅木駁の出たテレビ、雑誌はくまなくチェックする自分のような大ファンが見間違う筈もない。雪緒は一人胸を高鳴らせていた。
「青コーナー、『真黒雪姫』、黒芽雪緒!」
茫然としていた雪緒に、レフェリーが声を掛ける。
「おい、いつまでガウンを着ているつもりだ」
「あ、はい」
慌ててガウンを脱ぐ。自分が動揺していることに、雪緒は気づいていなかった。
ガウンの下から現れた制服姿に、観客席が沸く。普通のものよりも厭らしさを増しているので、それも当然だろう。
しかし、当の雪緒は歓声も耳に入らなかった。その視線は、駁の端正な美貌に吸いつけられていた。
「それじゃあ黒芽選手、ボディチェックだ」
レフェリーの呼びかけに我に返る。
「えっ・・・」
「ボディチェックだ。前回はあちこちに凶器を隠していたからな、たっぷりと時間を取って調べてやる」
「・・・今日はサービスってことで、やめておきません?」
「ボディチェックを拒むなら、試合が成立しな」
「やります!」
レフェリーが違約金の話しをする前に、雪緒は叫んでいた。駁と試合ができるチャンスを不意にするわけにはいかない。
「わ、わかればいいんだ」
雪緒のテンションに思わず引いたレフェリーだったが、ボディチェックと言う名のセクハラを開始する。
「前はおっぱいの間に凶器を隠していたんだったな」
レフェリーは雪緒の両胸を掴むと、ゆっくりと揉み始める。
(また、無遠慮に触ってきて・・・)
怒りが沸くが、それも駁と試合をするためだと自分を宥める。
「相変わらず、身体は絶品だな。性格は黒いがな」
勝手なことを言いながら、レフェリーは雪緒の両胸を揉み続ける。
(ああもう、早く終わって! 駁様と闘いたいのに!)
厭らしい触り方への嫌悪感と駁との触れ合い、もとい、駁との闘いへの焦燥感が一層拒否感を増す。
「あ、あの・・・まだ、ですか?」
「おいおい、ボディチェックを始めたばかりだぞ。さては、また何か隠しているな?」
レフェリーが背後に回り、雪緒のヒップに股間を押しつけながら、セーラー服の大きく開いた胸元から右手を突っ込んでくる。
「ちょっと!」
「何か文句でもあるのか? ええ?」
「・・・ありませんわ」
文句を言えば、それを理由に卑劣な手段を採るのがこのレフェリーだ。
「ボディチェックは黙って受けてくれないとな」
ブラの上からとは言え、雪緒の左胸を揉みながらレフェリーが薄く笑う。
「今日はおっぱいの間には凶器を隠していないようじゃないか」
今度は胸の谷間に指を上下させながら、レフェリーがからかってくる。
「ええ、今日は何も持ってきていませんから」
雪緒は素っ気なく答える。
「どこまで信じていいのやら」
今度は左手を胸元に差し入れ、レフェリーは右胸を揉んでくる。
(相も変わらずの下衆レフェリー・・・でも、駁様と闘うためですもの)
レフェリーのセクハラを、駁との試合を成立させるためだと耐える。レフェリーがそれをわかっているのだろう、遠慮も無しに胸を揉み込んでくる。
(早く、早く終わって!)
セクハラボディチェックの不快感と駁との闘いへの渇望。やけに時間の進みが遅かった。
「うん、おっぱいには何も隠していないようだ」
ようやく胸から手を放したレフェリーが、信じられないことを言う。
「それじゃ次は、スカートを捲れ」
「んなっ・・・!」
「聞こえなかったか? スカートを捲るんだ」
しゃがみ込んだままで雪緒を見上げながら、レフェリーがにやつく。
「・・・」
怒りを噛み殺し、雪緒はただでさえ短いスカートを掴み、下着がはっきりと見えるように持ち上げる。
「凶器を隠すような黒芽選手だ、しっかりと調べないとな」
レフェリーはそのまま、下着の上から秘裂をなぞってくる。
「そ、そんなところに、隠したりしません!」
「黒芽選手の言葉は信じられないからな」
「だからと言って、そこを触ってくるなんて・・・」
「おいおい、直接調べないだけましだと思えよ?」
わざとらしく振動まで加えながら、レフェリーは雪緒の秘部を丹念に撫で回してくる。
(相も変らぬ変態っぷり! これも駁様と闘うため、これも駁様と闘うため、これも駁様と闘うため・・・)
雪緒は呪文のように繰り返し、レフェリーからのセクハラを耐え続けた。
「・・・何もないようだな」
たっぷりと秘部を弄り回し、レフェリーがようやく立ち上がる。これでセクハラボディチェックも終わったと気を抜きかけた雪緒だったが、レフェリーが信じられないことを言いだす。
「最後に、もう一回確認しておこう」
「・・・さっき、散々調べませんでしたか?」
「黒芽選手のことだからな。どこに凶器を隠しているかわからないだろう?」
雪緒の後ろから抱きついたレフェリーは、両胸を揉み、ヒップを撫で、秘部を弄ってくる。
(な、何度同じことを繰り返せば・・・!)
雪緒の怒りも、レフェリーに直接向けるわけにはいかない。
「すまないな、仕事熱心なものでな」
欲望に顔を緩ませ、レフェリーは雪緒の右胸を揉みながら秘部を弄る。
(ああもう! 早く駁様と闘わせて!)
雪緒の内心は、誰にも届くことはなかった。
一通りセクハラを繰り返してから、ようやくレフェリーが雪緒から離れる。
「うん、今回は何も隠していないようだ。それでは、ゴング!」
<カーン!>
レフェリーの合図で試合開始のゴングが鳴る。
(まったく・・・私の身体を、ここまで玩具にするなんて)
沸き上がる怒りを呑み込み、試合へと意識を切り替える。
(やっと駁様と闘える! でも・・・勝たないと、いけない・・・)
少し冷静さが戻ったことで、自分の現状を確認してしまう。憧れの存在の勝利を願う心と、自分の勝利による利益。相反する事象が雪緒の動きを一瞬止めてしまう。
その瞬間、駁が鋭く踏み込んでいた。しかも雪緒の左手を掴んでくる。
「ひっ!」
その手のあまりの冷たさに、思わず弾いていた。
(失敗しましたわ・・・握手のチャンスだったのに。駁様、意外と冷え性ですのね)
駁の意外な事実を知ることができ、心のノートに書き留める。
(いけない、私は勝利が至上命題。駁様相手でも、気を反らしてはいけませんわ)
緩みかけた気持ちを引き締め、駁に対峙する。しかし、駁の顔を見るとその美貌に溶かされてしまう。
と、またも駁が左手を掴もうとしてくる。
(チャンス!)
こちらも手を出し、駁の冷たい手と絡ませる。
(恋人繋ぎ! それから・・・!)
自分の手を返すことで手首を極め、そのまま押し倒そうとしたものの、手を外され、駁に逃げられる。
(さすが駁様、簡単にはいきませんわ)
押し倒してからのことも既に考えていたのだが、それも叶わず心の中で舌打ちする。まあ握手どころか恋人繋ぎもできたのだから、と考えたところで、更なる欲望が生じる。
(いえ、でも待って・・・今の状況、握手くらいで満足していて良いのかしら?)
目の前に居るのは、あの甲羅木駁なのだ。
(そう、駁様の肉体美を拝めるチャンス!)
涎を零さないように気をつけながら、制服の内側に右手を入れる。その手が引き出されたとき、細い紐が持たれていた。鋭さを秘め、振り方一つで服すら切り裂ける代物だ。
その紐を、ブラの周囲に巻きつけていたのだ。まさかブラに仕込みがあるとは思わないだろう、という雪緒の目算だった。
(駁様、お覚悟!)
駁の肉体を直接見られる期待に胸躍らせ、雪緒が凶器を振るう。
(あっ!)
駁が予想外の方向に躱したため、駁の頬を打ってしまう。
(駁様のお顔を打ってしまうなんて! しかも傷まで!)
凶器が当たった箇所は、思った以上に裂け目ができていた。
「・・・えっ?」
何故か、雪緒の口から疑問の声が零れる。
「・・・気づかれたか」
裂けた頬の下にあったのは傷ではなく、新たな皮膚だった。それは、裂けた頬が作り物であることを示していた。
「貴方・・・誰ですの!?」
その叫びに応えるかのように、駁、否、駁に化けた謎の人物は、裂けた箇所に自ら指を入れ、一気に引き裂いていく。
「・・・その、顔・・・!」
思わず雪緒は一歩後退していた。現れた顔には一本の産毛すらなく、皮膚は骨に張りつき、生ける骸骨のようだ。両眼だけが精気を湛えて爛々と輝き、雪緒を射竦める。
「俺の名は、『京貌(けいぼう)』。億どころか、兆どころか、『京(けい)の貌(かお)を持つ男』だ」
自らを兆を超える顔を持つと言い切った男の傲岸さに、雪緒の奥底でどろりとしたものが蠢く。
「・・・何が京貌ですか」
駁と闘うために、下衆なレフェリーのセクハラにも耐えたのだ。それを全て台無しにするとは。
「よくも・・・!」
騙されていた怒りが雪緒を突き動かす。
「はっ!」
相手が駁でなければ気遣う必要もない。手加減抜きで凶器を振り抜く。
「おっと」
しかしどこから出したのか、京貌は鋼鉄製のトンファーで雪緒の凶器を弾き返す。と同時に、雪緒との距離を潰していた。
「なっ・・・えぐぅっ!」
驚く間もなく、容赦のない膝蹴りに雪緒の身体が浮き上がる。
「うぐっ、ぐふぅっ、はっ・・・」
呼吸すら難しく、雪緒はお腹を押さえたまま悶絶する。
「なんだ、耐久力は紙同然か」
薄く笑った京貌は大きく右手を上げ、ぐるぐると回した。
京貌の合図で、突然上方から巨大な白布が垂れ落ちてくる。四方に落ちた布はリングを覆い、観客の目から隠す。これには当然ブーイングが起きるが、京貌は気にする様子もない。
「今から、凶器を使った罰を受けてもらう」
そう言いながら、京貌は雪緒の両手首を革製の拘束具で縛め、更に拘束具の間にロープを通す。京貌がロープを投げ上げると、照明の間を通って落ちてくる。
「よ、っと」
京貌がロープを引っ張るたび、雪緒の両手首が引っ張られ、身体が持ち上がっていく。
「これくらいにしとくか」
雪緒が丁度立ち上がる形になったところで、京貌はロープをコーナーポストに結びつける。巨大な白布がスクリーンとなり、観客席側で雪緒の影法師が揺れる。
「なあに、罰と言っても大したものじゃない。お前の身体で、俺を楽しませればいいんだよ」
京貌は右手を伸ばし、雪緒の左胸を触る。
「・・・誰の胸を、触っているのっ!」
雪緒は腹部の痛みを堪え、左の蹴りを出す。
「足癖が悪いな」
京貌は最小限の動きで左に躱し、雪緒の秘部を触る。
「んっ・・・このっ!」
刺激を堪え、今度は右で蹴ろうとする。
「ふん・・・」
これも最小限の動きで躱した京貌は、雪緒の右太ももを抱え込む。
「は、離しなさい!」
「嫌だね」
京貌は雪緒の左太ももも抱え込み、腰を密着させてくる。
「なっ・・・!」
既に京貌の股間は硬くなっているのがわかる。
「くくく・・・」
含み笑いを洩らした京貌は、そのままゆっくりと腰を動かし始める。
重なる影法師を見た観客からは、卑猥な野次が飛ばされる。
「やめなさい! 下衆!」
「おいおい、そんなことを言ったら、世の中のお父さん方は皆下衆になっちまうぞ? お前の父親だって・・・」
「お父様を愚弄することは許しませんわ!」
父親のことを出された瞬間、雪緒は叫んでいた。
「そうか、許さないか。ならどうする?」
京貌は余裕の態度を崩さず、腰を動かし続ける。
「貴方を倒しますわ!」
「へえ・・・」
京貌の目が細められ、両手が雪緒の腰から離れる。
「やってみろよ!」
京貌の手が制服の上着に掛かり、次の瞬間には音高く引き裂かれていた。
「この、下衆!」
頭上のロープを掴んで支点にし、両足で蹴りを放つ。
「くくっ、どこを狙ってるんだ?」
しかし、京貌が少し下がっただけで躱されてしまう。拘束されている以上、それも当然だ。
「攻撃ってのは、こうするんだよ!」
京貌の掌底が鳩尾を打ち抜く。
「ぐえぇ・・・っ!」
倒れることも転げ回ることもできず、宙吊りのまま痛みに呻く。
「足癖が悪いみたいだからな、こうしてやろう」
京貌はスカートに手を入れ、パンティを掴んだ。
「な・・・なにを・・・」
「こうするのさ!」
スカートを着けたまま高級下着を引き裂かれ、放り投げられた。
「蹴りたければ蹴ればいい。お前の大事なところが丸見えになるけどな」
「くっ・・・」
スカートを残されたことで、逆に選択肢を狭められる。プライドの高い雪緒にとって、秘部を晒すことは簡単に決意できない。
「理解したようだな」
笑みらしきものを浮かべた京貌が、ブラの上から胸を揉んでくる。
「やめて、触らないで!」
「この状態でも命令してくるとはな」
京貌は呆れながらも、胸から手は放さない。
「だが、俺は、気の強い女が好きでな」
「私は、貴方のような下衆は大嫌いですわ!」
京貌の金的を狙って膝蹴りを出すも、羞恥心からいつものスピードがなく簡単に膝を押さえられてしまう。
「まあ聴けよ」
「んんっ!」
京貌は雪緒の太ももの間に体を入れ、直接秘部を撫でてくる。
「無理やり、ってのも芸がないからな」
京貌は左手で雪緒の尻を抱え、右手で秘部を撫で回す。
「自分から『犯してくれ』と懇願するまで、徹底的に可愛がってやるよ」
「誰が、そのようなことを・・・んんんっ!」
「ああ、今はそう言っていればいいさ」
京貌は雪緒の淫核に振動を送り込み、途中で遮る。
「どこまで耐えられるか、見せてくれよ」
京貌の唇が、ぐいぃと歪んだ。
「あっ、うぅっ、んんんっ!」
京貌の手が蠢くたび、雪緒の口から喘ぎ声が零れる。雪緒が身を捩るたび、リングを囲む白布に映る影法師も淫らに身を捩る。直接見えないことが逆に観客の興奮を煽るのか、凄まじい野次と歓声が飛んでくる。
「どうだ? 少しは挿れて欲しくなったか?」
「・・・ちっとも」
秘部を弄りながらの問いに、雪緒は睨みで返す。
「意地を張れば張るほど、自分がきつくなるだけだってのにな」
ため息を吐いた京貌は、袋の中から何かを取り出す。
「道具が好きな女には、やっぱりこういうのを使わなきゃいけないな」
「っ!」
京貌が雪緒に突きつけたのは、男根を模したバイブだった。
「こいつにはスイッチもあってな・・・」
京貌がどこかを押すと、忽ち振動を始める。
「ああ、心配するな。こいつを突っ込んだりはしないからな」
京貌はTバックの水着を取り出すと、雪緒の秘裂にバイブの竿部分全体が当たるようにしてTバックを雪緒に着ける。
「ひああっ! や、やめ・・・ひぃぃっ!」
「お、予想通り大喜びだな」
雪緒の反応に、京貌は満足気に顎を撫でる。
「やめ、あぐっ、ううう・・・っ!」
無慈悲なバイブは、雪緒の秘部へと絶え間なく振動を送り込み続ける。逃れようのない快感を伴って。
「うっ、うあっ、あぁっ・・・」
もう何分責められ続けているだろうか。時間の感覚を失い、ただ振動に耐え続けるだけだ。
「どうだ? いい加減に入れて欲しくなっただろう?」
それでも京貌の問いには首を振る。
(絶対に・・・こんな男を望んだりは、してやりませんわ・・・!)
腰をひくつかせ、愛液で太ももまで濡らそうとも、雪緒は京貌を拒む。
「・・・強情な女だ」
流石に呆れたのか、京貌が肩を竦める。
「参った、この勝負は俺の負けだ」
(・・・やったわ・・・耐えきってやりましたわ・・・)
ようやく安堵に脱力する。しかし、次の瞬間信じられない言葉が耳を打つ。
「だから、今すぐおっぱじめてやる」
その宣言と共に、京貌はズボンを脱ぎ捨てていた。
「ひっ!」
股間から立ち上がったモノが目に入ってしまい、慌てて顔を背ける。
「嫌われたもんだ」
薄く笑った京貌が、雪緒のTバックボトムの引き裂く。
「っ!」
バイブの振動責めからは逃れられたが、一層の危機が訪れる。
「ま、頑張ったからな、一つサービスをしてやるよ」
京貌が顔をつるりと撫でると、それだけで甲羅木駁へと変じていた。
「甲羅木駁の顔で犯してやるよ。本望だろう?」
(そんな・・・初めてなのに、偽物の駁様が相手なんて!)
唇を噛む雪緒など気にも留めず、京貌は自分のイチモツを雪緒の秘部に擦りつけてくる。
「お前が処女だってことは知ってる。どれだけ締めつけてくれるか楽しみだ」
「・・・やってみなさい。その顔、忘れませんから」
雪緒の言葉に、京貌が大きく笑う。
「そうかそうか! 俺の顔を覚えていてくれるのか! だがな、俺の顔は刻々と変化するんだぞ?」
「必ず見つけ出すわ。どんな貌になっていても、必ず見つけ出して、この世の地獄とあの世の地獄、両方共に味わわせてやりますわ!」
憎しみを視線に篭め、雪緒は京貌を睨みつける。
「処女としての最後の言葉は、それでいいんだな?」
薄く笑った京貌が、自分のモノを掴み、雪緒の秘部へと向ける。
(もっと、違ったロストヴァージンをしたかったですわ・・・)
来るべき痛みと衝撃に備え、雪緒はぎゅっと目を瞑った・・・
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「・・・っ!」
突如目が開く。
(・・・ここ、は?)
辺りを見回すと、窓の外に流れる景色が映る。
(車内・・・それも、かなりの高級車・・・)
内装と振動のなさから瞬時に判断する。
(寝ていた? 何か・・・悪い夢を・・・)
先程まで浮かんでいた光景を手繰り寄せようとしたときだった。
「これから闘いの場へ赴こうというときにうたた寝とは、さすがに黒芽様ですね。余裕を見せつけられましたわ」
慇懃さの中に隠された無礼さに、一瞬怒気が生じる。しかし即座に気持ちを静め、傍らの女性に顔を向ける。
ショートカットに整えられた黒髪と、切れ長の美貌。自分の容貌に自信を持つ雪緒ではあったが、女性としての経験の差を認めないわけにはいかなかった。
「・・・集中力を高めていただけですわ」
「そうですか、それは失礼致しました」
女性は座席に腰掛けたまま、優雅に礼をして見せる。それがきっちり型に嵌っており、雪緒を苛立たせる。
(でも、さっきは何を・・・)
女性とのやり取りの間に、夢の光景は彼方に逃げ去っていた。その代わりに、女性の顔から自分がある場所に向かっていたことを思い出す。
(夢などどうでもいいことだわ。<地下闘艶場>で勝つ。私には、それこそが大事ですもの)
勝利で得る高額のファイトマネーで、自らの地位を確立する手段を採る。雪緒の人生は常に高みになければならない。
今日の試合に備え、雪緒は採れる手段を模索し始めた。それがたとえ、他人から卑怯と呼ばれる手段だったとしても。