【特別試合 其の六十九 ルシーラ・フォン・ディルクラント:傘術】


 犠牲者の名は「ルシーラ・フォン・ディルクラント」。16歳。身長161cm、B93(Hカップ)・W56・H86。名匠が筆でひいたような眉、光を宿した大きめな瞳、形の良い鼻梁、ふっくらと膨らんだ桃色の唇。一目見るだけで異性を惹きつける強烈な美貌。流れるような紺碧の髪を先端で纏め、豊かな胸の前に垂らしている。その眼は誇りに煌き、美貌をより輝かせている。

 中東にあった小さな公国の公女。ルシーラが幼い頃に政変が起こり、公王であった父母と共に亡命。公国に進出していた日本企業の伝手を頼り、現在はルシーラのみ日本で暮らしている。

 公女であったルシーラにとって、日本での一般生活は刺激に満ちたものだった。しかし、先立つものは必要であり、<地下闘艶場>からの誘いに参戦、見事に二試合で勝利を挙げた。

 類い稀な美貌、滅多に見ない武器術、卓越した強さ。観客からの強い要望もあり、ルシーラに二度目の参戦要請がもたらされた。


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「またワンピース、ですか?」

<地下闘艶場>の控室。ルシーラは用意されていた衣装に呟く。

(良い生地ではありますが・・・なぜここまで薄いのでしょうか?)

 ワンピースを確かめてみたルシーラは小首を傾げる。前回の参戦時もワンピースだったが、色がダークブルーだったため下着が透けることはなかった。しかし、今回のワンピースは純白。生地が薄いこともあり、照明の下では下着が透ける可能性が高い。

(しかし・・・着なくてはいけませんものね)

 契約上、ルシーラが衣装を身に着けなければ罰金が待っている。それは今のルシーラには厳しい。ルシーラは品の良い私服を脱いできちんと畳み、ワンピースを手に取った。

 背中側からスカート部分の内側に両足を入れ、肩紐を掛ける。背中のファスナーを上げ、胸元を整える。

「やはり・・・」

 着替え終わり、鏡で確認すれば、やはり下着が透けて見えている。

 鏡の中に映る自分の姿に小さくため息を落としたルシーラは、愛用の日傘を手に取った。


 ガウン姿のルシーラが花道に姿を現した途端、会場内をため息が覆う。公女として磨かれた挙措とその美貌が、そうさせてしまう。

 歩く姿も優雅に、花道を進む。ルシーラが歩みを止めると、否、歩みを止めても感嘆の吐息は止まらなかった。


 リングに待っていたのは、前回も試合を裁いたレフェリーと見知らぬ三人の男たちだった。三人共黒の革ズボンを穿き、どこか自信なさ気に立っている。

 ルシーラは知らなかったが、男たちは茨木美鈴の奴隷・スレイブズだった。実力には疑問符がつくこの人選に、観客の中には訝し気に首を捻る者も居た。


「赤コーナー、『嫌われレフェリー』、・・・!」

 コールされた男性選手はスレイブズではなく、なんといつも試合を裁いているレフェリーだった。観客席からは驚きの声が上がる。


 何故レフェリーが選手として登場したのか。これにはある事情があった。

 ルシーラの対戦相手を決める際に希望者が殺到し、危うく殴り合い寸前にまでなりかけた。

 これを回避するため、<地下闘艶場>の男性選手が集められ、籤引きが行われた。冗談で引いたレフェリーが当たりを引いてしまい、喧々囂々の状況となった。

 しかし元橋(もとはし)堅城(けんじょう)の「ま、引いてしまったのなら仕方ありませんな」との一言に文句も萎み、レフェリーも何かを考えついたのか、自信満々で試合に臨んだ。


 レフェリーの表情とは裏腹に、観客席からはブーイングが飛ばされる。しかしレフェリーは余程自信があるのか、にやついた表情を崩さなかった。

「青コーナー、『亡国の公女』、ルシーラ・フォン・ディルクラント!」

 自分の名前がコールされ、ルシーラは躊躇いながらもガウンを脱ぐ。その途端、場内が沸く。

 生地の薄い純白のワンピースはルシーラの肢体にほとんど張りつき、見事なプロポーションを浮かび上がらせている。しかも生地が薄いことで、ルシーラの下着の上下も照明に透けて見えている。ある意味、直接見えるよりも扇情的だ。

 ルシーラは観客席から飛ばされる欲望の視線にも、野次も、賞賛の声にも反応を返すことはなく、愛用の日傘を確認していた。


「お姫様、今日は宜しくお願いしますね」

 スレイブズを後ろに従え、レフェリーが挨拶してくる。

「貴方が今日の相手、ですか?」

 ルシーラは立ち姿だけでレフェリーの実力を見抜き、小首を傾げる。

「いえいえ、俺は武器なんか使えないですからね。この男たちが俺の武器代わり、構わないでしょう?」

「いいえ、構います」

「えっ?」

 何故か自信たっぷりだったレフェリーが言葉に詰まる。

「わたくしが望んだのは、強い方との試合です。この方々との試合では・・・」

「もういい、行けお前たち!」

 逆切れしたレフェリーが、スレイブズを嗾ける。


<カーン!>


 スレイブズがルシーラに襲い掛かったことで、試合開始のゴングが鳴らされる。

(実力じゃスレイブズなんか相手にならないが、打たれ強さと数の有利さで・・・!)

 前回のルシーラの試合を間近で見て、正直その華麗さと技量に目を奪われてしまった。しかし手数で押せばどうにかなる筈だ。そのために茨木美鈴に頭を下げ、かなりの嫌味と見返りを条件にスレイブズを借り受けた。

(後は押さえつけて・・・あれだけのボリュームだ、実際に揉んだらどれほど・・・は?)

 レフェリーの未来予想図は、呆気なく崩れていた。僅かな時間でしかなかったのに、スレイブズが三人共リングの上に倒れていたのだ。

「やはり、こうなりますわね」

 一人一撃で戦闘能力を奪ったルシーラがため息を落とす。


 この結果は必然だった。スレイブズはM男の集団であり、無意識に痛みを求めてしまう。ルシーラの攻撃を避けるという選択肢は始めからなかった。

 ルシーラにしてみれば、隙だらけの男たちに一撃を入れるのは簡単なことだ。しかもルシーラは急所を捉える技術も習得しており、その一撃で戦闘不能に陥らせることもできる。


「では、お次はどなたでしょうか?」

 ルシーラの問いに、レフェリーは何も返せない。予備の選手は今回居ない。自分だけが楽しむために断ったためだ。

「・・・代わりの選手は来ない、ということですわね」

 ルシーラの表情が落胆へと変わる。

「では、終わりと致しましょう」

 ルシーラの日傘の先端が、レフェリーへと向けられる。レフェリーの頬から汗が垂れる。

(く、くそっ、本当ならこんな感じになっていたのに・・・!)


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「手こずらせてくれましたねぇ、お姫様」

 スレイブズたちに押さえつけさせたルシーラを見下ろす。こちらを睨む美貌、横になっているのに衣装の上からでもわかる大きな胸の膨らみ、胸元から覗く豊かな谷間、引き締まった腰、張り出したヒップ、隠されている秘部、太もも・・・どこを見ても魅力的だ。

(だが、見ているだけじゃもったいないからな)

 レフェリーはルシーラの腹の上に馬乗りになると、Hカップの両胸を撫で回す。いきなり掴むのは惜しいような気がしたのだ。

(これは凄い・・・やっぱり触るだけじゃ物足りん!)

 ルシーラの胸の感触に、レフェリーの辛抱もあっさり吹き飛ぶ。いきなりワンピースを引き千切り、無理やりブラを露出させる。

「随分と良い生地を使ってるじゃないですか」

 ブラの表面を撫でながら語りかける。しかしルシーラはこちらを睨んだままだ。

「生意気な視線ですねぇお姫様」

 ルシーラの目が気に入らず、両手でブラに包まれたHカップバストを鷲掴みにしてやる。そのまま好き勝手に揉み込んでいくが、ルシーラの視線は変わらない。

「それじゃ、そろそろ生のおっぱいを見せてもらいましょうか」

 この強気を崩さないお姫様を、とことん苛めてやりたい。その欲望のまま、ルシーラの背中に手を回す。ルシーラの美巨乳に顔を埋め、ブラのホックを外す。

「さて、生のおっぱいを・・・くくっ、止めても無駄ですよ」

 ルシーラの制止を無視し、ブラを剥ぎ取る。

「・・・ふぉぉ・・・」

 感嘆の声しか出なかった。横たわった姿勢でも崩れないHカップの乳房。その頂点で息づく薄桃色の乳首。

「さすが本物のお姫様だな・・・」

 乳房の形の美しさに、思わず生唾を飲み込む。Hカップの大きさでありながら、まるで美術品のように美しい。

 その美しさに魅かれるかのように、知らず乳房に手を伸ばしていた。

「こいつは、すごい・・・」

 触れ心地も抜群だった。表面は滑らかで、傷一つない。触れただけで震えるのに、ゆっくりと掴んでいくと適度な弾力もある。

 もう駄目だった。理性も吹き飛び、神々しさまで感じる乳房を無意識に揉みしだいていた。乳房を揉みながら、まだ柔らかいままの乳首を摘まみ、丁寧に撫で上げていく。その刺激に応じるかのように、乳首がゆっくりと立ち上がっていく。

(お姫様の乳首だって、こんなになるんだな)

 自らの手で公女の乳首を硬くしてやった。それが達成感となる。己の昂りのまま、左乳首に吸いつく。そのまま吸い上げながら舐め回し、甘噛みしてから、右乳首も同じように舐めしゃぶる。

「・・・ぷふぅ」

 両方の乳首を唾液塗れにして、一度顔を上げる。今度は布一枚にだけ守られた、ルシーラの秘められた箇所を見つめる。

「そ、それじゃあ、お姫様のパンツを・・・」

 溢れ出る涎を拭うことも忘れ、ゆっくりと両手を・・・


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「ぐげっ!」

 現実逃避も長くは続かなかった。鳩尾へと食い込んだのは、日傘の先端だった。

「う・・・おぉ・・・」

 内臓を貫いた衝撃に、膝の力が抜ける。両膝から崩れ落ちたレフェリーの頸椎に、狙い澄まされた一撃が突き込まれた。

 脳へと繋がる神経回路が一時的に遮断され、レフェリーの意識が落とされる。


<カンカンカン!>


 レフェリーが戦闘不能だと判断され、試合終了のゴングが鳴らされる。

「わたくし、意外と残酷ですのよ。お忘れかしら?」

 日傘を閉じたルシーラはリングの上で横たわる男たちを一瞥し、それでも華麗な一礼を以て戦闘態勢を解いた。

 リングを降り、日傘を携えて花道を下がっていく元公女には、野次を上回る声援が送られていた。



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